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2008/09/13

●●関学先端研メールマガジン [ 第6号 (その1)]  2008/9/13

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       関西学院大学 先端社会研究所

       http://asr.kgu-jp.com/

       関学先端研メールマガジン

      □■第6号(その1)■■(2008/9/13) ■□


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 −目 次−


■ エッセイ(6) 「町並みに見る個人主義と集団主義」(前村奈央佳)
■ 終了したイベントの報告
・     先端社会研究所定期研究会(第3回)
■ 今後の研究会・イベントの予定
・     2008年度先端研ウィーク
・     先端社会講義研究II「環境と共生」
■ 旧21世紀COEプログラムに関連した情報
・   第56回現代人類学研究会
■ 自著を語る「日本の民俗<3> 物と人の交流」(島村恭則)
■ 編集後記

 
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│  ■ エッセイ(6) 「町並みに見る個人主義と集団主義」
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 日本が酷暑と大雨に苦しめられていた7月末、私は運良くドイツに避難していた。
ブレーメンで開催されるIACCP(the 19th International Congress of the International
Association for Cross-Cultural Psychology)で発表するためだった。とは言っても、
もっと涼しいだろうと期待していたのだが、私が着いた頃は現地でも稀にみる暑さだっ
たようで、慣れない土地で日中の暑さと日本以上に厳しい日差しと戦うはめになった。
おまけに、普段は涼しいドイツの鉄道やホテルにはクーラーが十分に設置されておら
ず、外はともかく、日本の屋内の快適さに今さらながら感心させられた。

 発表が終わると、昨年日本に来ていたドイツの友人が、私をコブレンツという町に
連れて行ってくれた。そこは、古い町並みを残すかわいらしいところだった。駅中心
部から少し離れたところに、ドイツ統一を成し遂げたヴィルヘルム1世の騎馬像があっ
て、そこから川が見渡せた。そこはラインとモーゼルが一つになる美しいところで、
川の流れに沿うように、古城や教会、古い町並みが続いていた。初めて見る美しい景
色に、私はたちまち恋をしていた。典型的な夏のヨーロッパのイメージみたいに、オー
プンカフェでゆっくり座ってビールを飲む、ということもやってみた。そして、のん
びり美しい川と町並みを眺めながら、日本との違いについて思いを巡らせた。

 ドイツは中世のような古い町並みを残していることで有名である。確かに、私が今
回訪れた町もみな、建物が古く、統一感のようなものがあって、日本でみられるよう
に、木造の民家の隣に鉄筋のマンションができて、その向かいにラーメン屋の看板が
ある、というようなことはない。友人に尋ねると、ドイツでは公的機関が計画的に町
並みを整え、美しい景観を保つしくみになっているそうだ。特に戦後、廃墟となった
町を復興させるとき、官民が一体となって美しい町並みを築き上げたらしい。そして、
バリアフリーとは程遠いごつごつした石畳を幾度も補修し(実際、重いスーツケース
を運ぶのにかなり苦労した)、古くなった家や教会を補修し、100年前も100年先も、
人々は同じ景観を愛し続けるのだ。

 かくも計画的に町並みを創り上げ、慈しみ、守り、保持していこうとするドイツの
伝統はいかにして生まれたのか。祖国の歴史に対する敬愛の念であろうか。同じよう
に敗戦を経験した日本では、官が強制するでもなく、人々の手によって復興が成し遂
げられた。細い道、曲がりくねった道、和洋ごちゃまぜの家々、乱立する電柱、看板。
確かに日本にも、美観地区と呼ばれる地域が存在しているが、その数はごく少ない。
2つの国に、この違いが生じたのはなぜなのか。答えの一つとして、日本は地震をよ
く経験するという環境上、古い建物を残すことが難しい、ということが考えられる。
震災を経験した神戸がそうであるように、ひとたび町が破壊されたとき、復興の機会
に建物や町並みそのものが一新される。古いものを残すことは難しい。だが、建物を
建て替える機会が多いからと言って、町並みに対して無頓着で、統一感がないことの
説明にはなっていない。

 集団主義と言われてきた日本人なのに、町並みや景観に対しては実に個人主義的で
ある気がしてならない。夢のマイホームを建てようとするとき、隣の家と自分の家に
統一感を持たせようと考える人はまずいないだろう。公的機関の計画に従って、「周
囲に合わせて」生活空間を創っていくドイツと、そこには大きな文化差があるようだ。
これらについては調査したわけでも文献を調べたわけでもなく、まだ個人的な感想に
すぎないのだが、ドイツの美しい景色とビールに酔いながら、ふとそんなことを考え
ていた。



前村奈央佳(関西学院大学大学院社会学研究科研究員)




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│  ■ 終了したイベントの報告
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先端社会研究所定期研究会(第3回)


日時:8月1日(金)13:30〜15:00

場所:先端社会研究所セミナールーム


概要:

 この研究会には先端社会研究所の専任・兼任研究員が出席し、今後の共同研究計画
について話し合いが行われました。その結果、「戦争が生み出す社会」というテーマ
で複数年に渡る研究プロジェクトを遂行してゆくことで合意に達しました。ここでは
戦争研究を社会学上の重要課題と捉え、「移動」と「空間」に着目する新たなアプロー
チや、それに伴う社会調査法の革新を視野に入れた研究を進めてゆく予定です。その
目指すところは、戦争によって生み出されるさまざまな「他者」を、空間の問題とし
て捉えることの重要性を指し示してゆくことにあります。

 今年度は萌芽的研究の期間と位置づけ、今後の定期研究会において研究報告を行う
ことになりました。



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│■ 今後の研究会・イベントの予定
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「2008年度先端研ウィーク」

(このイベントの紹介は長くなりますので、詳細は本メルマガ第6号(その2)にて
 掲載します。)



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先端社会講義II/研究II  「環境と共生」


担当者:

三浦耕吉郎(社会学研究科)、野波 寛(社会学研究科)、中野康人(社会学研究科)、
武田 丈(人間福祉研究科)、古川 彰(社会学研究科)、


講義概要:

 グローバル化の影響が全地球規模で広がっていく今日の世界状勢のもとで、近代社
会の誕生以来なかば自明視されていた思想・概念の有効性が疑念に曝されると同時に、
現実社会における様々な理念や制度も根本的な見直しを迫られている。

 なかでも20世紀後半からローカルにそしてグローバルに問題化されていった環境問
題は、いまや人類が直面し解決すべき最大の社会問題とも認識されている。しかし、
環境悪化や資源枯渇問題は人類のだれにでも一様の問題として立ち現れているのでは
なく、問題そのものが人をさまざまに分節化し、その分節化があらたな問題を引き起
こし続けている。

 本講義では、社会学、社会心理学、社会福祉学などさまざまな切り口から環境と人
との関係のあり方にアプローチすることを通して、21世紀初頭の社会がいかなる問題
に直面しているのかについて考える。



[近日中の講義予定]


開催場所はいずれも関西学院大学先端社会研究所セミナールーム(社会学部棟3階)
です。


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日時:10月4日(土) 13:10-16:20

講師:三浦耕吉郎

テーマ:環境表象のクリティーク−屠場をめぐる環境と差別−

内容:
 
 この講義では、生活環境の「美しさ」や「汚さ」にかんする表象、あるいは、「(動
物を)屠るという仕事」をめぐる表象が、差別とどのような関係にあるかについて、
西宮市食肉センターでのフィールドワークをもとに考えていく。

キーワード:環境のヘゲモニー、仕事の両義性、構造的差別



**********


日時:10月18日(土) 13:10-16:20

講師:野波 寛

テーマ:環境問題の発生メカニズムと解決手段:社会心理学的アプローチより

内容:

 ごみ分別など足元の問題から、地球温暖化のようなグローバルなものにいたるまで、
環境問題の社会的構造を理論的にとりまとめると’囚人のジレンマ’と呼ばれるシン
プルなゲームにいきつく。社会心理学やゲーム理論の知見を生かして環境問題の構造
を概観し、その解決手段について論じる。

キーワード:囚人のジレンマ、コモンズ、信頼、合意形成、正当性


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│  ■ 旧21世紀COEプログラム関連の情報
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第56回現代人類学研究会 

特集:「実践の人類学 パートII :アクションから見える調査の未来」

日時:9月27日(土) 14:00〜

場所:東京大学駒場キャンパス14号館407号室

地図:http://www.u-tokyo.ac.jp/campusmap/cam02_01_13_j.html


発表者および発表タイトル:

◇亀井伸孝(東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所 研究員)
「特集の趣旨」

◇飯嶋秀治(九州大学大学院人間環境学府 人間共生システムコース 共生社会学 
 准教授)
「施設という生活世界で―人間共生システムコースの実践」

◇内藤順子(日本女子大学人間社会学部現代社会学科 日本学術振興会特別研究員)
「人類学的営為の未知数性:チリの開発援助現場で暗中模索する」

◇服部志帆(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科 研究員)
「カメルーンで森と人の共存の道をさぐる−これまでの研究をもとに私が実践できる
 こと」


特集の趣旨(亀井伸孝:本特集企画者):

 2006年7月、本研究会で「特集・実践の人類学」が開催された。その研究会の討論
における大きな論点のひとつとして、以下のポイントがあった。

 「『実践性』を旨とする、専門性の高い人類学の新領域を設ける必要がある」のか。
それとも、「個々の人類学者が、いわば基礎的なリテラシーのひとつとして、だれし
もあるていどの実践の ノウハウを身に付けておくことが望ましい」のか。そのとき
の発表者の一人である亀井(当時、関西学院大学COE)は、討論のなかで主として後
者を主張していたが、その場での結論は出なかった。

 関西学院大学社会学研究科21世紀COEプログラム「『人類の幸福に資する社会調査』
の研究」(2003-2007年度)の一環として開催された、若手フィールドワーカーらに
よる連続ワークショップ「多文化と幸せ」は、足かけ5年間におよぶ共同研究の活動
の中で、しいて分類すれば後者の系譜に属する議論を中心に行ってきた。その成果は、
フィールドとホームを行き来し続ける研究者らによる個人的アクションを集積した論
集『アクション別フィールドワーク入門』(武田丈・亀井伸孝編、世界思想社、2008
年)として結実した。

 本特集は、そのワークショップメンバーである若手人類学者を中心に構成するかた
ちで企画された。関学COEの共同研究の成果をふまえて、冒頭の問いに関する議論を
再び行ってみたいというのが、本特集の意図するところである。

 研究/実践」の両極のはざまに位置するグレーゾーンとしての個人的アクションの
数かずとは、それ自体が魅力的なフィールドであるだろう。それらに向き合うことは、
フィールドワークと実践の関わりをとらえ返し、調査という営為の今後のあり方を示
唆する切り口を私たちに与えてくれるにちがいない。多くの方がたの議論への参加を
呼びかけたい。


◇参考リンク◇
現代人類学研究会「特集・実践の人類学」(2006年7月23日)
http://anthrop.c.u-tokyo.ac.jp/2006/0723c.html

関学COEワークショップ「多文化と幸せ」
http://kamei.aacore.jp/kgcoews/kg_coe_ws.html

『アクション別フィールドワーク入門』
 http://kamei.aacore.jp/sekaishisosha2008-j.html


連絡先:現代人類学研究会事務局(info@anthrop.c.u-tokyo.ac.jp) 



(情報提供=亀井伸孝 東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所 研究員/
           関西学院大学先端社会研究所兼任研究員)


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│  ■ 自著を語る−「日本の民俗<3> 物と人の交流」
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「方法としての写真―『日本の民俗』3(物と人の交流)―」

                    島村恭則(関西学院大学社会学部教授)


 この本は、「市と行商」(山本志乃)、「旅と観光」(川森博司)、「異文化の交
流」(島村恭則)の3章から構成されています。わたしが執筆した3章の「異文化の
交流」は、福岡市に暮らす在日朝鮮半島系住民の民俗誌です。

 これまで、「在日」というと、大阪の生野区か、東京都の三河島ばかりがとりあげ
られ、しかも、ほとんどの研究が、「民族文化」「民族的アイデンティティ」の持続
や変容を問うというものでした。これに対して、ここでは、福岡という、これまで研
究のなかった、しかし朝鮮半島系住民にとっては下関と並んで「重要な場所」(敗戦
=解放直後、下関と福岡には朝鮮半島帰還をめざした朝鮮半島系住民が全国から多数
集結した。ただし、相当数の人が、結局、帰還せずにそれらの地にとどまり、その後
ふたたび日本各地に移動して、日本定着に向かうことになった。これが戦後「在日」
の起源である。朝鮮半島系住民のライフヒストリーの中には、下関や福岡がよく登場
するのである)をフィールドにしました。

 そして、よくあるような「はじめに『民族文化』『民族的アイデンティティ』あり
き」の調査・分析ではなく、とにかく、そこで営まれている「生活の総体」を観察し
(これこそ民俗学的方法です)、その上で、「民族文化」「民族的アイデンティティ」
についても、それがかれらの生活の中でどのような位置をしめているのか、を検討し
たのが、この民俗誌の内容です。

 ところで、私のこの民俗誌の特徴は何かというと、フィールドの街角写真を可能な
限りで多用している点です。たとえば、こんな写真を載せています。集住地区の一角
の、道路の壁面に黒ペンキで描かれた落書きの写真です。そこには、


 勝手に騒いで何やかやと言わせてるバカども! 
  死んでから苦しむ人間の手本である!


という言葉が書かれ、そこから→が以下の語句に向かって引かれています。


 市役所(大阪) 
 人夫出しのおやじ・あねご
 (パチンコ屋)  むすこ
 まご
         銀行
         税務署

    狂ってる親子 近畿一円〜九州一円


 これは、おそらくはこのフィールドに多い朝鮮半島系住民「人夫出し」(労働者の
派遣をする「口入れ屋」のこと)のもとで働く(働いていた)労働者の一人が描いた
ものと思われます。この落書きの正確な意味は、描いた本人にしかわからないもので
はありますが、落書きの主が、「人夫出しのおやじ」以下その家族や、市役所、銀行、
税務署を「死んでから苦しむ人間の手本」「バカ」と考えているのであろうことは推
測されます。

 このフィールドには、「人夫出し飯場」(「口入れ屋」が経営する労働下宿のこと)
がたくさんあり、日雇い労働者はそこで暮らしています。そして、彼らは、その人夫
出し飯場について、「人夫出しっていうのは、つまりタコ部屋。入ったら最後、借金
漬けにされて、手元にもらえる給料はすずめの涙。どうしても前借りせざるをえず、
それが雪だるまのようにふくらんで、借金返済がおわらない。それで抜け出すことが
できない」「人夫出しのオヤジやセワヤキのにいちゃんがやくざ者で逃げ出そうにも
逃げ出せない」などと語っています。

 実は、人夫出し飯場に暮らす日雇労働者はそのほとんどが「日本人」なのですが、
彼らは、朝鮮半島系住民が経営する「人夫出し飯場」で、半ば囲い込まれるような形
で暮らしていた(いる)のです。そしてそこでは、日雇労働者による借金の前借りな
どが行なわれていることも多く、そのため、「日本人」日雇労働者が、「人夫出し」
朝鮮半島系住民に従属するという力関係が存在しているのがふつうです。つまり、朝
鮮半島系住民集住地区の中には、こうした階層性が入れ子状に存在しているのですが、
そんな状況が、この落書きからも読み取れます。

 あるいはもう一つ、この本には、やはり街角にあった「アパート入居者募集」の貼
り紙の写真も載せてあります。その貼り紙には、「2DK空室有り! 生活保護者歓
迎!家賃3万7千円〜」とあります。ここからは、この地域で長らく行なわれてきた、
社会的弱者を対象とした「間貸し」の習慣の存在を確認することができます。

 わたしは、フィールドワークのときには、だいたい一日80枚から100枚の写真
を撮っています。それらには、読み取るべき現場の情報が満載されているわけですが、
それをながめながら研究上の問題発見や論点の構築を行なうというのが、わたしの研
究の方法になっています(もちろん、撮影したのはこのわたしであり、撮影する際に
は、写真撮影直前に自分で現地の観察を行なっているわけですから、正確には、現地
の観察から問題発見、論点の構築を行なっていることになりますが、現地ではめまぐ
るしく動いているので、やはりじっくり問題発見、論点の構築をするのは、あとから
写真を見ながら、ということが少なくないわけです。つまり、写真は、観察メモのよ
うなもの)。

 というと、なんだかすごいことをしているように聞こえるかもしれませんが、この
方法は、別にわたしだけがやっているわけではなく、この手の研究をするフィールド
ワーカーは、多かれ少なかれこういうやり方をとっていると思います。中でも、この
方法の大先達といえば、宮本常一です。

 日本中を歩き回った「旅する巨人」宮本常一は、およそ40年にわたって旅を続け、
常に写真を撮り続けていました。その数、フィルムにして1600本といわれていま
す。その宮本の写真のうちの約3000カット(および彼が手帳に記していた日記)
は、2005年刊行の『宮本常一写真・日記集成』(毎日新聞社。上・中・下の3巻
セットでなんと6万円)におさめられていますし、彼の撮った写真を中心とする書物
も多数出版されるようになっています。

 いくつか、ここで紹介しておくと、宮本常一『空からの民俗学』(岩波現代文庫、
2001年)、同『私の日本地図』シリーズ(現在、「8瀬戸内海III周防大島」編
と「9武蔵野・青梅」編が復刊されて未来社から刊行中)、あるいは、周防大島文化
交流センター編著『宮本常一写真図録』第1集(「瀬戸内海の島と町―広島・周防・
松山付近―」、みずのわ出版、2007年)、佐野眞一編著『宮本常一の写真に読む
失われた昭和』(平凡社、2004年)などがあります。

 また、宮本における「方法としての写真」とはどのようなものかについての論評も
書かれるようになってきました(戸田昌子「宮本写真をどう読むか」『宮本常一―
「失われた日本人」を訪ねて―』(別冊太陽148、平凡社、2007年))。

 それらをご覧になると、民俗学の研究にとって、写真がいかに重要か、がお分かり
いただけると思います。

 さて、話がいささかそれました。『日本の民俗』3、に戻しましょう。今回の本の
中では、わたしは宮本常一には直接言及しませんでした。しかし、共著者の川森博司
さんが、この本の「あとがき」で、宮本常一を引きつつ、わたしたち共著者3名の意
図するところを的確にまとめてくれています。最後に、その文章を引用しておきます。


  現代日本で暮らす人々にとって民俗学の役割は何だろうか。多くの人々にとって、
  その焦点はぼやけているように思われる。この書物では、民俗学がいま取り組む
  べき現場はどこにあるのかということに徹底してこだわろうとした。宮本常一は
  「人の見のこしたものを見るようにせよ、その中に大事なものがあるはずだ」と
  いう父の言葉を書き記している。現在の民俗学に必要とされるのも、目の前にあ
  りふれているにもかかわらず見落とされているものを発見する精神なのだ。

  本書の各論考に付されている写真を眺めてもらえば、筆者たちが現場に立ち向か
  う精神を感じていただけるのではないかと思う。そして、論考を読み進んでいた
  だければ、現場に入り込んでいく実感を味わっていただけるのではないだろうか。
  慣れ親しんだ民俗学のイメージからすれば、それはいささか違和感の伴う体験に
  なるかもしれない。むしろ、そうなってほしいと筆者たちは望んでいる。期待さ
  れる民俗学のイメージを裏切る冒険の精神こそ、現在の民俗学に必要とされると
  われわれは考えているからだ。

  それぞれの論考は筆者たちの時間をかけた現地調査にもとづくものである。現地
  で時間をかけて筆者たちが求めようとしたものは「生き方としての民俗」「生き
  る方法としての民俗」という言葉でまとめることができる。それは自分自身の生
  き方を求めるたびでもあり、現代社会の生きがたさに突破口を開こうとする旅の
  記録でもある。これを読んだからといって読者の生きがたさが解消するわけでは
  ないだろう。でも、現実を別の角度から見る視点を得て、がんじがらめになって
  いる現実を少しずつ解きほぐしていく手掛かりをどこかでつかんでもらえれば、
  と切に願っている。民俗学は、この現実のなかでさまざまな立場の人々が「いっ
  しょに生きる」方法を探る学問なのだから。「物と人の交流」を通して、「いっ
  しょに生きる」方法を模索したのが本書である。(川森博司「あとがき」より)



島村恭則・川森博司・山本志乃『日本の民俗』3(物と人の交流)、吉川弘文館、
2008年6月、3000円+税。



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│  ■ 編集後記
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 大学の夏休み期間はキャンパスの人影もまばらでしたが、そんな中で本研究所のス
タッフは今後の活動について打ち合わせを積み重ねてきました。共同研究「戦争が生
み出す社会」の開始、「2008年度先端研ウィーク」の開催など、秋学期から研究所の
活動は本格化してゆくことになります。これらの情報は逐次公開して参ります。

 なお、今回は都合により、「先端的な社会研究を考えるためのブックガイド」はお
休みさせていただきました。



岩佐将志(関西学院大学先端社会研究所専任研究員)



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□発行 関西学院大学先端社会研究所
 

所長 荻野昌弘(関西学院大学社会学部)
事務室 関西学院大学先端社会研究所事務室
〒662-8501 西宮市上ヶ原一番町1-155
Tel:0798-54-6085   Fax:0798-54-6089
HP:http://asr.kgu-jp.com/

□メールアドレスの変更、その他のお問い合せ、配信停止の希望は
 → kgcoemm@gmail.com (担当 岡本)まで。
 

□尚,このメールマガジンの最初あるいは最後に挿入されている広告と
 本研究所は一切関係がありません。

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