●●関学先端研メールマガジン [ 第2号 ] 2008/5/10
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関西学院大学 先端社会研究所
http://asr.kgu-jp.com/
関学先端研メールマガジン
□■第2号■■(2008/5/10) ■□
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−目 次−
■ エッセイ(2) 「副所長ご挨拶−社会調査の困難と利用」(渡邊勉)
■ 先端社会研究所の開設について(再掲)
■ 今後の研究会・イベントの予定
・ 先端社会研究
・ 先端社会研究所定期研究会(第1回)
■自著を語る(三浦耕吉郎)
■先端的な社会研究を考えるためのブックガイド(竹中克久)
■ 編集後記
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│ ■ エッセイ(2) 「副所長ご挨拶−社会調査の困難と利用」
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先端社会研究所では、「他者問題の解明」を研究の根幹においています。その際、私た
ちは理念的な研究というよりは、経験的な研究に軸足を置いた研究をおこなっていくこと
を目指しており、社会調査の重要性を認識しています。そこで考える必要がある課題は、
社会調査の困難をいかにして解決していくかという問題と、社会調査をいかにして利用し
ていくかという問題であると思います。
現在、周知のように日本社会において社会調査はますます困難な状況になってきていま
す。それは日本に限ったことではないかもしれません。個人情報に対して社会全体が非常
に敏感になってきています。こうした中、私たちは個人情報を守ることに細心の注意を払
いながら調査をおこなっていくとはいえ、社会調査においてプライバシーにまったく触れ
ずに調査することはできません。特にサーベイ調査をおこなうことは、近年ますます難し
くなっています。選挙人名簿や住民基本台帳の閲覧が制限されたことにより、サンプリン
グが難しくなっていますし、また回収率も年々低くなっています。
このように社会調査が難しくなっている一方で、社会調査の重要性はますます増してい
るように思います。社会が大きく変化していく中で、人々の意識、行動はますます見えに
くくなっており、社会調査は、社会全体の動き、動向を知るための、唯一の有効な手段で
あるといえます。
そうであるとすれば、今後どのようにして社会調査をおこなっていけばいいのか、どの
ような調査が可能なのかを考えていくことは、最重要な課題であると言えます。これまで
理論的に考えられてきたような無作為抽出によるサンプリングができないような状況にお
いて、いかなる調査が可能なのか、回収率が低い調査からどのようにして経験的一般化し
ていくことができるのかなど、課題は多いと思います。
さらに、今後は単に社会調査をおこなうだけではなく、それをいかにして社会に還元
し、実践につなげていくかも大きな課題といえます。社会への還元や実践は耳あたりがよ
く、また社会から求められているのも事実かと思います。ただ研究所の本分は研究にある
ことから、私たちは時流に流されることなく研究者としての自律性を保ちつつ、そもそも
社会への還元、実践とは何なのかを見据え、いかにして社会に還元していくかということ
を考えていくことが肝要であると考えています。
渡邊勉(関西学院大学先端社会研究所副所長・関西学院大学社会学研究科教授)
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│ ■ 先端社会研究所の開設について(再掲)
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21世紀COEプログラム「『人類の幸福に資する社会調査』の研究」の成果を継続・発展
させて、2008年4月に先端社会研究所が開設されました。
先端社会研究所は、グローバル化によって引き起こされるさまざまな社会問題を「他者問
題」と捉え、調査研究しようとする社会学および社会福祉学の研究所です。その目的は、
次の4点です。
* 1 他者をキーワードとした新たな知的枠組を構築し、世界に向けて発信する。
* 2 1の研究に基づき、質的調査と量的調査の統合的データベースを構築する。
* 3 独創的な研究を行う若手研究者を育成する。
* 4 研究成果を社会に還元する実践的な知をめざし、市民との対話を通じた調査研
究を行う(これをソーシャルサイエンスショップ、通称Sキューブと呼ぶ)。
先端的な社会調査研究の世界的拠点として、大学と社会との双方向の研究・情報交換、社
会調査に関するデータベースの構築、若手研究者育成などに取り組んでいきます。
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│ ■ 今後の研究会・イベントの予定
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各情報は先端社会研究所ホームページ http://asr.kgu-jp.com/ にも掲載しています。
問い合わせ先は、指定がなければ先端社会研究所事務室(社会学部3階、tel:0798-54-
6085)です。
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「先端社会講義/研究 I―暴力と安全―」
グローバル化の影響が全地球規模で広がっていく今日の世界状勢のもとで、近代社会の誕
生以来なかば自明されていた思想・概念の有効性が疑念に曝されると同時に、現実社会に
おける様々な理念や制度も根本的な見直しを迫られている。こうした時代状況のもとで、
ミクロ/マクロにまたがる「暴力」をめぐる諸現象/事象が現代社会に現れている。それ
らを科学的に分析するとともに有効な対応策を講じることが、今日の社会科学に切に求め
られている。多様な形態における「暴力」として発露する社会問題は、従来からの暴力の
延長であると同時に、新たな形態/内容を呈してもいる。本講義では、社会学/社会福祉
学/社会地理学といった異なる学問領域の研究者による共同講義を通じて、現代を特徴づ
ける多様な暴力の実態について論じる。そのことを通して、今後必要とされる「安全」の
条件について考える。
場所:関西学院大学上ケ原キャンパス 社会学部棟3階 先端社会研究所セミナールーム
時間:春学期不定期土曜日 13:10〜16:20
5月17日(第8回・9回):児童福祉のための安全の条件
担当者:前橋信和(関西学院大学人間福祉研究科)
講義概要:
児童は、愛され、守られ、健全に育てられる。これは人類共通の理念であり、日本国憲法
に則り、児童憲章、児童福祉法に規定されている。また、児童権利宣言、児童の権利に関
する条約では国際的な宣言や条約として児童の権利が明記されている。
ところで、子どもにとって最も信頼すべき保護者から、また生存の基盤である家庭におい
て子どもの安全が暴力によって脅かされる事象が次々に生じている。毎週一人の子どもが
虐待により死亡するという深刻な状況である。
子どもに対する暴力の状況と、そのような現象に対する救済や回復に向けた社会の対応、
課題等を明確にし、今後を展望する。
◎ 子ども虐待の現状
◎ 法的、制度的対応の仕組み
◎ 発生のメカニズム
◎ 課題
◎ 今後の展望
5月31日(第10回・11回):国家の変容と移民の排除/包摂
担当者:山口覚(関西学院大学文学研究科)
講義概要:
現代イギリス,特にスコットランドにおける移民の在り方について見ていきたい。スコッ
トランドは1999年に実施された権限委譲によって一定の自治権を得たが,軍事や外交と
ともに移民政策に関する権限はなおもロンドンのウェストミンスター議会が保有している。
こうした権力の二重構造が生じている状況下で,アサイラム・シーカー(庇護申請者)や
ポーランド系移民たちがスコットランドでどのように遇されているのかを見ていきたい。
必要に応じて日本の事例,たとえば沖縄出身者などについて触れるかもしれない。
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先端社会研究所定期研究会(第1回)
先端社会研究所では、今後定期的に、研究活動の趣旨に即した研究会を開催してゆく予定
です。第1回の研究会は下記の通り開催されます。学内のみならず、学外からの参加者も
歓迎いたします。
「景観を計量社会学する」
共催:関西学院大学社会学部研究会例会
日時:5月28日(水)15:30〜17:30
場所:E号館103号
報告者:渡邊勉(関西学院大学先端社会研究所副所長・関西学院大学社会学研究科教授)
中野康人(関西学院大学社会学研究科准教授)
司会:古川彰(関西学院大学社会学研究科教授)
概要:
景観とは、一方でみんなが景観を享受できるという公共財としての特徴を持っています
が、基本的に景観を形成しているのは個人の所有物である土地や建物であり、私有財とし
ての特徴も同時に有しています。それゆえ、景観を維持するために、単純に規制すれば解
決するという問題ではなく、景観についてさまざまな意見を持つ他者といかに理解し合う
か、合意をするかという「他者問題」であるともいえます。
本研究会では、西宮の都市景観(中野)、安曇野の農村景観(渡邊)という景観をめぐ
る状況が大きく異なる2つの事例について、意識調査、GIS、国勢調査データなどさまざま
なデータを計量的な手法によって分析することで、景観の問題を社会学的にどのように扱
うことができるのか、問題提起をおこなっていきます。
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│ ■ 自著を語る
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21世紀COEプログラムの研究成果として、先頃「屠場(とじょう) みる・きく・た
べる・かく 食肉センターで働く人びと」(三浦耕吉郎編著、2008年、晃洋書房)が
出版されました。ここでは本書の編著者である三浦耕吉郎教授による紹介を掲載します。
「『屠場(とじょう) みる・きく・たべる・かく 食肉センターで働く人びと』を刊行
して」
本書は、関西学院21世紀COEプログラムにおける「構造的差別を生きる人びとの価
値観の多様性にかんする研究」班が、三年間にわたり西宮市食肉センターでおこなってき
た調査実践の報告書である。ルビつきの題字や長めの副題には訳がある。ある授業でため
しに尋ねてみたところ、「屠場」を正しく読め、かつその意味を理解している学生の数は
全体の三割弱ほどでしかなかった。したがって、本書の内容を示すためには、どうしても
副題に「食肉センター」という語が必要だったのである。それにしても毎日の食卓に欠か
せぬ牛肉や豚肉、そしてホルモン類を生産している屠場が、私たちの意識のなかでは、な
ぜ、かくも縁遠き存在になってしまっているのだろうか? 本書は、こうした問いへの一
つの回答であると同時に、屠場という場所とそこで働く人びとの思いを、研究者の範囲を
こえたより多くの人びとへ伝えていくことを目的としている。
第一部「屠るという仕事」では、牛や豚を屠殺し、解体する現場をリアルに描写する一
方で、そうした仕事に携わる屠夫(とふ)の人たちの心情に迫っている。また、第二部
「食の世界」では、食肉や内臓の卸業者の方々に登場していただき、食肉の捌き方から品
質管理の方法、そしてエサの秘密にかんするお話、それから内臓屋さんにじっさいに生出
演していただいた「ホルモン講座」の実況中継が収録されている。はたして本邦初公開
(?)の垂涎の部位とは、なにか? まさに、乞ご期待!。第三部以降は、現在の屠場を
とりまくさまざまな問題群と、それにたいする関係者の多様な取り組みの実践に焦点がお
かれている。たとえば、屠場での仕事が不可避的にまとわざるをえない「きたなさ」。あ
るいは、「いのちを終わらせる」行為が抱え込まざるをえないジレンマ。仕事というもの
が本来的にまとっているこのような両義的性格への着目は、従来の職業社会学や職業威信
調査が依拠してきた理論的パースペクティヴにたいして根本的な変更を迫らずにはおかな
いだろう。
また、「『人類の幸福に資する社会調査』の研究」という本プログラムとの関連でいえ
ば、社会調査と社会政策の連携を主題化したSキューブの試みに、本書は一定の貢献をな
しうるものと思われる。市営食肉センターの今後の経営形態にむけて、学識経験者をまじ
えて策定された市の施策(そこにはセンターの民営化とともに、閉鎖もが視野に納められ
ていた)。私たちの調査は、その施策に異をとなえるセンター関係者の声に耳を傾けるこ
とからはじまった。というよりも、私たちの調査は、たまたまそうした状況に「巻き込ま
れる」かたちで展開していった、といった方が正確だろう。結果として、本書は、市の施
策にたいして大幅な見直しを要請するものとなっている。こうした調査経過自体のなかに
も、今後Sキューブをつうじて社会調査と市民との協同のあり方を模索していくうえでの
一つの大きなヒントがあるように思われる。
三浦耕吉郎(関西学院大学社会学研究科教授)
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│ ■ 先端的な社会研究を考えるためのブックガイド
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本コーナーでは毎回、新たな社会現象を取り扱った文献、斬新な視点が見られる文献な
ど、研究対象や視点に先端性が見られる社会科学系の文献を紹介してゆきます。
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Rafaeli, A., and Pratt, M. G. (eds.), 2006, “Artifacts and Organizations:
Beyond Mere Symbolism”, (London: Lawrence Erlbaum Associates Publishers)
組織文化理論や組織シンボリズム研究、あるいは組織美学のなかで、1990年代より「アー
ティファクト=モノ」概念が着目されている(例えば、P.ガリアルディによる『シンボル
とアーティファクト』 “Symbols and Artifacts: Views of the Corporate Landscape”,
P. Gagliardi, 1990など)。伝統的な組織論は、「組織」を合理性を志向する存在である
としてきた。ところが、近年の組織論は、文化やシンボルといった、一見すると非合理的
なものをその研究対象に含めるようになってきている。本書、ラファエリ=プラットによ
る『アーティファクトと組織』もその一連の流れに位置づけられよう。
本書はイントロダクションを含めると16編の論考から成る。そこで扱われるアーティ
ファクトは、組織の空間や建造物、あるいは商品やロゴなど多岐にわたる。編者の簡潔な
定義によれば「組織メンバーによって組織のなかに導入された無生的な物体」がアーティ
ファクトである。
伝統的な組織論では、アーティファクトではなくシンボルを、そしてシンボルよりは文
化[システム]を重視してきた。また、誤解を恐れずに言うならば、この傾向は社会学に
も見られるものであった。文化は意味を共有されたシンボルから構成されている。そし
て、我々はその文化を読み解くために、シンボルの読解に尽力してきた。確かに、アー
ティファクトに着目することも、その作業の延長線上に位置づけることは可能である。し
かし、これをパラダイムシフトの契機と考えることも可能ではないだろうか。
我々は、日常的に「他者」と接触せざるをえない組織・社会に生きている。そこでは、
一枚岩的な文化概念や、意味が共有されたシンボルといった概念は意味をなさない。文化
的多様性やシンボルの多様な解釈といった視点ですら、いささか不十分である。
現代組織を例に取ってみても、組織にとっての他者は内部にも外部にも存在しているこ
とは事実である。とりわけ外部の他者を想定した場合、顧客などもありうる「他者」の一
つでしかない。組織を観察するオーディエンスや利害関係者であるステークホルダーな
ど、物見遊山的な「他者」から熱心な「他者」まで多くの「他者」との接触にさらされる
状況は、これまでになく組織の活動を複雑にしている。文化やシンボルを共有できない
「他者」との交流が常態化し、「他者」との一時的で偶発的な接触が頻繁になっている状
況では、表層的な景観や音といったアーティファクトがきわめて重要な存在となっている
ことは否めない。
もっとも、本書において、アーティファクト自体の位置づけや、それを研究する意義が
必ずしも共有されているわけではない。ただ、このような切り口が、現代組織の複雑さ、
ひいては現代社会の複雑さを読み解く視点の一つになりえるのではなかろうか。
竹中克久(関西学院大学先端社会研究所専任研究員)
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│ ■ 編集後記
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21世紀COEプログラムの連続シンポジウム報告記録書およびパンフレット「総括と
展望」の送付申し込みは、先月締め切りました。大学に所属する研究者、大学院生の方々
のみならず、社会の各方面にて活動されている方々からも多数のお申し込みをいただき、
ありがとうございました。大学の研究活動に対して社会から寄せられる期待を感じると共
に、それに対してどう応えてゆくかを考え続けることの重要性を、改めて認識しました。
次回のメールマガジンは6月中旬発行の予定です。
岩佐将志(関西学院大学先端社会研究所専任研究員)
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□発行 関西学院大学先端社会研究所
所長 荻野昌弘(関西学院大学大学院社会学研究科)
事務室 関西学院大学先端社会研究所事務室
〒662-8501 西宮市上ヶ原一番町1-155
Tel:0798-54-6085 Fax:0798-54-6089
HP:http://asr.kgu-jp.com/
□メールアドレスの変更、その他のお問い合せ、配信停止の希望は
→ kgcoemm@gmail.com (担当 岡本)まで。
□尚,このメールマガジンの最初あるいは最後に挿入されている広告と
本研究所は一切関係がありません。
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