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2008/06/12

●●関学先端研メールマガジン [ 第3号 ]  2008/6/12

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       関西学院大学 先端社会研究所

       http://asr.kgu-jp.com/

       関学先端研メールマガジン

      □■第3号■■(2008/6/12) ■□


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 −目 次−
 

■ エッセイ(3) 「『まだ近い過去』の視点から」(岩佐将志)
■ 終了したイベントの報告
・   国際シンポジウム「1960年代の学際的調査−回顧と展望」に出席して(荻野昌弘)
・  文化人類学会で関学COE成果の分科会開催 (亀井伸孝)
■ 今後の研究会・イベントの予定
・     先端社会研究
・     先端社会研究所定期研究会(第2回)
・   先端社会研究所創立記念シンポジウム
■自著を語る(高坂健次)
■先端的な社会研究を考えるためのブックガイド(Ralf Futselaar)
■ 編集後記

 
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│  ■ エッセイ(3) 「『まだ近い過去』の視点から」
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21世紀が早くも8年目を迎えた現在、1990年代は過去として客観的に振り返ること
が可能な時期になりつつある。歴史研究の対象としては新し過ぎ、現代社会論の対象とし
てはやや古いこの時代について論ずることは、さほど現代の社会学者の関心を引くテーマ
にはなっていないように思える。しかしこの辺りで一度この「まだ近い過去」に立ち返り、
そこから現代社会を照射してみることも大切なのではないだろうか。

そんな思いで図書館の新聞縮刷版をめくっていたところ、興味深い記事に出会った。19
91年元旦の朝日新聞に掲載された「国民意識探る本社定期世論調査」である。この時期
の日本は「物は豊かになったが心の豊かさを失った」との批判が内外から聞かれる経済大
国であった。また前年8月に発生した湾岸危機に際し「金は出すが血は流さない日本」と
米国から揶揄され、日本人の国際貢献のあり方について議論が盛んになっていた。そんな
時代状況がこの世論調査には色濃く反映されている。

調査では「日本は21世紀になっても、経済大国であると思うか」との設問に対し、全体
の50%が「そう思う」と回答、「そうは思わない」の37%を上回っている。特に男女
とも若い層ほど日本の経済力に楽観的な見通しを持つという結果が示されている。また国
際社会とのかかわりについてみると、「軍隊を持てるよう憲法を改正することへの賛否」
に関して「賛成」13%、「反対」81%と、反対派が大きく上回っている。「湾岸戦争
のような国際紛争が起きた場合、日本はどんな態度をとるべきか」という問いに対しては
「資金援助にとどめる」33%、「外交面で努力する」29%、「民間人グループを派遣」
19%、「自衛隊を派遣」9%という回答が示されている。調査結果を総括して、記事で
は「国際化へのドア半開き 出方をうかがう日本人」という見出しを用い、当時の日本人
の国際化に対する微妙な心境を表現している。

湾岸戦争が勃発したのはこの記事掲載から僅か半月ほど後のことだった。この時代の雰囲
気の中、私を含めた当時の多くの若者が国際貢献に興味を持ち、実際それに関連する仕事
に身を投じた。当時の精神のままにこうした活動を継続している人もいれば、さまざまな
理由で別の方向に転換した人もいる。何れにせよ、当時の「若者」の多くは湾岸戦争前後
の記憶の延長線上に今を生きているのではないだろうか。

当時に比べ、ビジネス、旅行、留学、市民活動など、さまざまな形で海外生活を体験する
日本人は飛躍的に増大した。一方で、今や在日外国人は日本各地で日常のありふれた光景
となっている。国際貢献論議が盛んだった頃にもてはやされた「地球市民」を目指さずと
も、社会学者ウルリッヒ・ベックの言う「ありふれたコスモポリタニズム」は既に多くの
日本人が経験していることである。しかしそうかと言って、日本と国際社会との関係を継
続的に思考する意志のある日本人が増えているかと言えば、ことはそう単純ではないだろ
う。1990年代よりも反って保守化が進んでいるという声さえ聞かれる現代の日本に
あって、日本と国際社会とをつなげてゆく思索と行動を続ける必要を感じる。



岩佐将志(関西学院大学先端社会研究所専任研究員)




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│  ■ 終了したイベントの報告
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先端社会研究所では、市民と共同で調査する可能性を追求しており、同じような問題意識
に基づいて、フランス国立科学研究センターと共同研究を進めています。その成果に基づ
いて2008年5月16日、17日にブルターニュで行われたシンポジウム「1960年
代の学際的調査−回顧と展望」(ブルターニュ・ケルト研究センター主催)にて、当所荻
野昌弘所長が参加、報告を行いました。以下は荻野所長によるシンポジウム回顧録です。



国際シンポジウム「1960年代の学際的調査−回顧と展望」に出席して

                    
 1960年代にフランスの北西部に位置するブルターニュ地方の小さな街プロゼウ゛ェット
で、大規模な学際的調査が行われた。それは、五年間にもわたり、その間、多いときには
百人前後の研究者が、街に滞在することになった。調査目的は、集団遺伝学上、均質的な
コミュニティを調査し、医学・生物学と人類学、民俗学、地理学、歴史学などの人文・社
会科学との学際的研究を行うことであった(この点に関しては、『先端社会研究』第4号
所収のアンドレ・ビュルギエール論文に詳しい)。

 社会学者の調査チームが加わったのは、調査の最終年度に当たる1965年のことだった。
それは、調査全体から見れば、小さな規模のものだったが、のちに他の調査チームに比べ
て、はるかに大きな反響を呼ぶことになる。それは、調査を指揮したエドガール・モラン
が出版した著作(邦訳『プロデメの変貌』法政大学出版局)がもたらしたものである。反
響といっても、学術的な成果に関するものではなく、記述内容に関して、プロゼウ゛ェッ
トの住民からクレームがつけられたのである。たとえば、プロゼウ゛ェットの男性の日常
では飲酒が欠かせないという記述に対して、プロゼウ゛ェットでは、アルコール中毒の男
性が少なくないかのような印象を与え、市民の名誉を傷つけたという批判が浴びせられた。
私自身、数年前に初めてプロゼウ゛ェットを訪れた際、「父の名誉が傷つけられた」とい
う男性に出会った。

 調査者と調査対象者のあつれきという社会調査が引き起こす古典的な問題が、ここには
典型的に表れている。ただ、他の場合と大きく異なるのは、当時学生としてモランの調査
チームに加わっていたベルナール・パイヤール(仏国立科学研究センター主任研究員)が、
プロゼウ゛ェット市民と当時調査に参加した研究者との交流の場を定期的に設けていると
いう点である。先端社会研究所の前身に当たる21世紀COEプログラムでは、ここに着目し、
2005年9月にパイヤール氏らを招いて、シンポジウムを開催した。

 5月16日、17日の二日間にわたったシンポジウム「1960年代の学際的調査−回顧と展望」
(ブルターニュ・ケルト研究センター主催)に、今回、私が参加したのは、その延長線上
にある。シンポジウムの趣旨は、当時実際に調査に関わった研究者と、調査対象であった
住民が一同に会し、調査の総括を行うことにあったが、私は、モランらが行った調査が今
日いかなる意味を持つのかについて講演を行い、その後聴衆とのあいだに質疑応答の時間
が持たれた。講演の主な論点は、以下の三点である。

1 社会調査における調査者は、調査地においては「他者」であり、今回のシンポジウム
においてもこの点が最大の問題である。
2 第一回目の調査から50年経った時点で、再調査をするべきである。
3 第一回目の調査で収集された映像資料等を活かした調査を行うべきである。

 研究者の側からは、この論点に賛同する意見が大勢を占めたが、2の再調査のアイディ
アに関しては、プロゼウ゛ェット市長から否定的な見解が出た。それは、第一回目の調査
と同様の問題が、再調査を行う上でも生じる可能性があるというものだった。なお、5月
19日付Ouest-France紙に私へのインタビューが掲載されている。



荻野昌弘(関西学院大学先端社会研究所所長)



なお、先端社会研究所では上記シンポジウムと同様の問題意識に基づき、7月13日に研
究所創立記念シンポジウムを開催します。詳細は「今後の研究会・イベントの予定」をご
参照ください。



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文化人類学会で関学COE成果の分科会開催 (2008年6月1日)


2008年6月1日、京都大学で開催された日本文化人類学会第42回研究大会で、
『アクション別フィールドワーク入門』の著者たちによって構成される分科会
「アクションというフィールド (Field of Actions)」が開催されました。
『アクション別フィールドワーク入門』は、関西学院大学COEワークショップ
「多文化と幸せ」の成果であり、同COE出版助成制度により刊行されたものです。

分科会の報告記事を、こちらでごらんいただけます。
http://kamei.aacore.jp/sekaishisosha2008_essay-j.html#essay_1

■分科会概要
日本文化人類学会第42回研究大会
分科会「アクションというフィールド」(分科会代表者: 亀井伸孝)
2008年6月1日(日)(第2日目)10:15-12:15
京都大学吉田南総合館(北棟)3階38講義室(H会場)

■発表者一覧
亀井 伸孝(東京外国語大学; 関西学院大学先端社会研究所兼任研究員)
吉野太郎(関西学院大学総合政策学部)
服部 志帆(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科)
米田 信子(大阪女学院大学)
飯嶋 秀治(九州大学大学院)
コメンテータ: 鈴木 紀(国立民族学博物館)

■書誌情報
武田丈/亀井伸孝編. 2008.『アクション別フィールドワーク入門』
京都: 世界思想社.

■関連リンク
『アクション別フィールドワーク入門』公式サイト
http://kamei.aacore.jp/sekaishisosha2008-j.html

関学COEワークショップ「多文化と幸せ」
http://www-soc.kwansei.ac.jp/kamei/kg_coe_ws.html


亀井伸孝(東京外国語大学アジア・アフリカ研究所研究員/関西学院大学先端社会研究所
兼任研究員)




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│  ■ 今後の研究会・イベントの予定
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 各情報は先端社会研究所ホームページ http://asr.kgu-jp.com/ にも掲載しています。
 問い合わせ先は、指定がなければ先端社会研究所事務室(社会学部3階、tel:0798-54-
 6085、E-mail: asr@kwansei.ac.jp)です。


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「先端社会講義/研究 I―暴力と安全―」


グローバル化の影響が全地球規模で広がっていく今日の世界状勢のもとで、近代社会の誕
生以来なかば自明されていた思想・概念の有効性が疑念に曝されると同時に、現実社会に
おける様々な理念や制度も根本的な見直しを迫られている。こうした時代状況のもとで、
ミクロ/マクロにまたがる「暴力」をめぐる諸現象/事象が現代社会に現れている。それ
らを科学的に分析するとともに有効な対応策を講じることが、今日の社会科学に切に求め
られている。多様な形態における「暴力」として発露する社会問題は、従来からの暴力の
延長であると同時に、新たな形態/内容を呈してもいる。本講義では、社会学/社会福祉
学/社会地理学といった異なる学問領域の研究者による共同講義を通じて、現代を特徴づ
ける多様な暴力の実態について論じる。そのことを通して、今後必要とされる「安全」の
条件について考える。



場所:関西学院大学上ケ原キャンパス 社会学部棟3階 先端社会研究所セミナールーム
時間:春学期不定期土曜日 13:10〜16:20



6月21日(第12回・13回):受講生による報告会/講師によるコメント 
この授業では、全ての回の授業を踏まえて、受講者が自身の研究テーマに即しての報告を
行う。



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先端社会研究所定期研究会(第2回)


先端社会研究所では、定期的に研究活動の趣旨に即した研究会を開催してゆく予定です。
第2回の研究会は下記の通り開催されます。学内のみならず、学外からの参加者も歓迎
いたします。



研究会題目:「『民族』の記憶と表象」


共催:関西学院大学社会学部研究会例会
日時:6月25日(水)17:00〜18:30
場所:関西学院大学上ヶ原キャンパス E号館104号教室

報告者:島村恭則(関西学院大学社会学部教授)
コメント:山路勝彦(関西学院大学社会学部教授)
司会:阿部潔(関西学院大学社会学部教授)


報告タイトル:「『他者』性の民俗学へ」

概要:
民俗学は、当事者性を重視し、フィールドで出会う「小文字」のことばにこだわりなが
ら、「生活の総体」をまるごと捉えようとしてきたところに特徴がある。これは民俗学と
いう学問の方法的個性であり長所であるといえるが、一方で、フィールドを国内に限定し
がちで(一国民俗学)、かつ国内の文化的多様性についてもこれを正面から取り上げるこ
とは少なかったという問題がある。さらに、議論を民俗学という狭い学問体系の中に閉じ
込めがちで、隣接諸学との対話や相互乗り入れについてはきわめて消極的であった。これ
らの欠点は、一言で言えば、「『他者』性の欠如」ということになるが、報告者は、こう
した民俗学の欠点を克服した上で、民俗学が本来持つ学問的個性を十分に深化させた新た
な民俗学のあり方―「『他者』性の民俗学」―を模索中である。

 本報告では、報告者の構想する「「他者」性の民俗学」について、在日朝鮮半島系住民
のもとでのフィールドワークの成果等もふまえながら、構想を述べたい。



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関西学院大学先端社会研究所創立記念シンポジウム
「大学と市民をつなぐ学問の可能性」



子どものいじめ、環境破壊、食の安全をはじめとして、私たちの身の回りでは数多くの問
題が日々起こっています。このような問題を解決するためには、今までのように行政だけ
に任せてはおけないと多くの市民が感じており、もはや陳情型の市民運動によるのではな
く、市民が自分たちで政策提言をしていくことが必要とされています。こうした中、今わ
れわれ市民に求められているのは、市民それぞれが自分たちの身の回りで起きていること
を知り、分析し、政策提言をする力を養うこと、つまり「市民の調査力」を涵養すること
です。

 今春開設した関西学院大学先端社会研究所では大学の研究を市民に開いていくことを基
本方針にして、市民、大学、行政の共同研究の可能性を追求していきます。今回の開設記
念シンポジウムでは、ホタルダス、水環境カルテなどユニークな住民との共同調査を研究
の柱としてこられた嘉田由紀子さんに、大学と市民、行政をつなぐ研究のあり方について
講演をお願いしました。その講演を受けて、当研究所の高坂健次氏(社会学)、芝野松次
郎氏(社会福祉学)で、市民に開かれた研究のあり方についてディスカッションを展開し
ます。



日時:7月13日(日) 13:30-16:30 (13時開場)
場所:関西学院大学上ヶ原キャンパス
   人間福祉学部G号館202号


プログラム:
 13:30-13:45    挨拶 荻野昌弘(関西学院大学先端社会研究所所長)
 13:45-14:45    講演 嘉田由紀子(滋賀県知事、元京都精華大学教授)
 15:00-16:30   パネルディスカッション
          嘉田由紀子
          高坂健次(関西学院大学社会学部長)
          芝野松次郎(関西学院大学人間福祉学部長)
          司会: 古川彰(関西学院大学社会学部教授)


嘉田由紀子氏プロフィール:
京都大学大学院修了(農学博士)。滋賀県立琵琶湖博物館、京都精華大学教授を経て2006
年から滋賀県知事。専門は環境社会学。琵琶湖での人々の暮らしについての詳細な研究を
30年以上つづけている。また学部時代に探検部員として訪れたアフリカ・マラウィ湖での
調査も継続している。著書に『水と人の環境史』、『生活世界の環境学』、『水辺遊びの
生態学』、『水辺ぐらしの環境学』、『環境社会学』、『生活環境主義でいこう!―琵琶
湖に恋した知事―』など多数。



本シンポジウムは参加費無料で一般公開されます。お問い合わせ先は、関西学院大学先端
社会研究所事務室です。




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│  ■ 自著を語る
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21世紀COEプログラムの研究成果として、先頃「幸福の社会理論」(放送大学教育振
興会 2008年3月20日 189ページ 本体価格2000円)が出版されました。ここでは本
書の著者である高坂健次教授による紹介を掲載します。


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厳密に言いますと、この本は自著ではなく共著です。放送大学のラジオテキスト(2008年
度〜2011年度)として書き下ろされた本書は、私以外に阿部潔(関学大 社会学部)、浜
田宏(東北大学 文学研究科)、山泰幸(関学大 人間福祉学部)のお三方にそれぞれ3
回分の講義を担当していただいた結果の「共著」です。私たちは、関西学院大学21世紀
COEプログラム「『人類の幸福に資する社会調査』の研究」(2003年度〜2007年度)にかか
わってきましたが、COEプログラムでは専門的な研究成果の一端を啓蒙的大衆的なかたち
で披露することも必要だと聞かされておりました。そこへちょうど放送大学からのお話が
あり、お引き受けした次第です。まずは、以下に章のタイトルと担当者の名前を記してお
きましょう。

第1章    幸福の理論史(高坂)
第2章    不幸の減算(高坂)
第3章    幸福の民俗理論(山)
第4章    不幸の民俗理論(山)
第5章    死者の幸福(山)
第6章    幸福の測り方(浜田)
第7章    幸福感の現状(浜田)
第8章    幸福な社会のデザイン(浜田)
第9章    承認と幸福(阿部)
第10章    監視と自由(阿部)
第11章    公共圏と他者(阿部)
第12章    災害の不幸(高坂)
第13章    グローバル化(高坂)
第14章    「取り逃がした機会」(高坂)
第15章    理論と実践

このリストを見ていただければお分かりのように、トピックは「人類の幸福」をめぐって
網羅的とも相互排反的とも言えませんし、5年間の研究成果を忠実に反映できているわけ
でもありません。或る他大学の同僚からは「ずいぶんと偏頗なトピックだね」とのコメン
トが返ってきましたが、私たちとしてはそれでも理論から実践、古層から現代、質と量へ
と必要最小限のトピックをコンパクトに取り上げたつもりです。「幸福」というややもす
れば日常知や倫理、教訓に流れっぱなしになりかねないテーマを経験科学の平面に位置づ
けることができたならそれで本講義の当面の役割は果たせたと思っています。

(なお、初版には私たちの手の及ばなかった校正ミスやミスプリが何箇所か残ってしまい
ました。急遽、正誤表を付しましたが、もしそれさえも抜け落ちているばあいは教育振興
会もしくは私あてにご請求ください。)
                                  



高坂健次(関西学院大学社会学部教授)




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│  ■ 先端的な社会研究を考えるためのブックガイド
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本コーナーでは毎回、新たな社会現象を取り扱った文献、斬新な視点が見られる文献な
ど、研究対象や視点に先端性が見られる社会科学系の文献を紹介してゆきます。



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Stewart Lone (ed.), Daily Lives of Civilians in Wartime Asia; From the Taiping 
 Rebellion to the Vietnam War (Greenwood Press 2007)



支配者の人生に関する記述は別として、歴史の書物では何千年もの間、戦争が主な題材で
あった。近い時代の戦争の歴史について書くことは今や紛れもない産業となり、毎年何千
巻もの著作が生み出されるようになっている。しかしながら歴史に興味のある社会科学者
にとって、これらの著作は限定的な価値しか持っていない。その理由の一端は、これらの
大部分はどうひいき目に見ても質が平凡なものだからである。しかしより大きな理由は、
戦史家は社会学者が正に興味を持っていることを無視してしまう傾向があるからである。
戦争が戦闘状態にない人々とその社会に与えた直接的および持続的な影響について満足な
記述がなされることは稀なのである。そうしてみると、本書が本質的に東アジアにおける
戦時中の社会に関する社会史を記述するという大きな挑戦をしていることは賞賛に値する。

本書は高い目標を掲げているだけに、各章の執筆者たちは題材の範囲と字数の問題に直面
しているが、新しい時代を扱う章になるにつれてこの問題は減少している。例えば第二次
世界大戦やテト攻勢のことについては、多くの読者にわざわざ注意を促す必要はないくら
いだろうが、彼らが太平天国の乱やフィリピン革命についての詳細な知識を持っていると
前提することは出来ないだろう。したがって、これらの紛争を扱っているR. Gary 
TiedemannとBernadita Reyes Churchillは、その政治的および軍事的背景となる情報を
提供することに多くの、いや実際大半の、与えられた字数を割いている。その点に関して
は彼らは賞賛すべき仕事をしており、これらの論文はこうした紛争の適切な紹介になって
はいる。しかし日常生活の分析という点から見ると、このような題名の本の中で取り扱う
にしては到底正当化出来ない程度のものになってしまっている。

(歴史的な)時間が進むに連れ、各章はそれぞれにかなり異なるやり方ではあるものの、
実際の生活の状況についてより多くの字数を割くようになっている。本書の主題に内在す
る困難はさまざまな方法で解決され、結果として本書は単に多くの紛争を扱うだけでなく、
非常に多くのアプローチを用いてこれを行うものとなっている。私が最も深みのある論文
だと思ったのは、編者自身による日清・日露戦争時の日本に関するものである。本章は戦
時中の日常生活について特によく描いているだけでなく、その質的および量的な側面に関
する概観を提示しており、その意味で最も完成度が高い。Shigeru Satoによる日本占領下
インドネシアに関する章も同様に広い視野を持っているが、原資料の相対的な不足という
明らかな理由により、(量的な)情報の密度にやや欠けている。

残りの3つの章はどれも、以上の章に比べて概観的なものではなくなっている。特に賢明
なのはDi Wangによる章で、ここでは1937年から1949年までの戦間期中国における茶店
に焦点が当てられている。ひどく困難な時期の、広大な地理的範囲という題材上の問題に
直面し、彼はどこにでもある中国の茶店を考察することを通して日常生活を眺めるための
窓口を提供している。これは大変有効な戦略であり、本章はおそらく本書の中で最も刺激
的である。

Andrei Lankovによる朝鮮に関する章と、編者であるLoneによる南ベトナムに関する章と
の間には、興味深い対照性が存在する。Lankovが主に暴力的な状況下での市民の闘争を描
いているのに対し、Loneはベトコンの勝利に至るまでの年月の間、南ベトナムの都市部に
は事実上暴力が存在していなかったことを主に記述している。これらの章はいずれも興味
深いものの、本書の扱う範囲が広過ぎるのではないかという疑問を抱かせる。このように
広範に渡る副次的話題、地域、そして時代が扱われているということが編者の序章に紹介
されていないという事実は、このように思うのが私だけではないだろうことを示している。

そうは言うものの、本書は全体として東アジアの戦争の社会史に関する今日の到達水準に
関する洞察を与えてくれるものである。各章には抜け落ちている部分が多いのは避けられ
ないが、それは本書のような文献には普通のことである。各章に挿入された文献リストは、
読者が更なる知識を求めようとする際に非常に有効なガイドとなるだろう。しかしながら
相変わらず残ってしまう避け難い感覚が何かと言えば、何千、何百もの本や論文が書かれ
ているにも関わらず、戦争が日常生活に与える影響については悲痛なまでに少ないことし
か分かっていないということである。



Ralf Futselaar(関西学院大学先端社会研究所専任研究員)
(原文は英語、訳=岩佐将志[関西学院大学先端社会研究所専任研究員])
 


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┌────────────
│  ■ 編集後記
└─────────────────────────────
 
 先端社会研究所が開設されてから2ヶ月余りが経ちました。新しいメンバー、事務室、
研究室であたふたと活動を開始したようなところですが、少しずつ研究所の態様を整え始
めています。7月13日には本研究所の春学期最大のイベントとなる開設記念シンポジウ
ムを開催いたします。多くの方々のご来場をお待ちしております。
 次回のメールマガジンは7月中旬発行の予定です。



岩佐将志(関西学院大学先端社会研究所専任研究員)

 

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□発行 関西学院大学先端社会研究所
 

所長 荻野昌弘(関西学院大学社会学部)
事務室 関西学院大学先端社会研究所事務室
〒662-8501 西宮市上ヶ原一番町1-155
Tel:0798-54-6085   Fax:0798-54-6089
HP:http://asr.kgu-jp.com/

□メールアドレスの変更、その他のお問い合せ、配信停止の希望は
 → kgcoemm@gmail.com (担当 岡本)まで。
 

□尚,このメールマガジンの最初あるいは最後に挿入されている広告と
 本研究所は一切関係がありません。

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