2008/04/19
[リスクマネジメント No. 48]易姓革命と万世一系
日付:2008-04-19 [リスクマネジメント No. 48]易姓革命と万世一系 1年ほど休刊しておりましたが,復活いたしました。復活第1回目の記事は, 「易姓革命」についてです。 日本人と中国人は見た目は同じだが,国民性は全く異なる。水と油くらい違 う。邱永漢氏はその著書の中で「中国人は商人,日本人は職人」ということを書 かれているが,実際に中国人と関わってみると,決してそうとは思えない。ごく ごく一部の中国人は確かに商売上手であるが,一般的な傾向として,ステレオタ イプとも言うが,中国人が商売上手であるとはとても思えない。一時的に儲かっ て羽振りが良いが,10年も経つと没落しているということが多い。また,日本人 が本当に職人気質のみで商才がなかったとしたら,とても経済大国と言われるよ うになるとは思えないのであるが,いかがであろうか。 では,日本人と中国人で何が根本的に異なるかということであるが,それは 「易姓革命」と「万世一系」という言葉に隠されていると私は思う。 易姓革命について,三省堂「大辞林」第三版では次のように説明されている。 儒教の政治思想の基本的観念の一。天子は天命により天下を治めているのであ るから,天子の家(姓)に不徳の者が出れば,天命は別の有徳者に移り(命が革 (あらた) まる),王朝は交代するというもの。 また,ウィキペディアでは次のように説明されている。 易姓革命(えきせいかくめい)とは,古代中国において,孟子らの儒教に基づ く,五行思想などから王朝の交代を説明した理論。 天は己に成り代わって王朝に地上を治めさせるが,天が徳を失った現在の王朝 に見切りをつけたとき,革命(天命を革(あらた)める)が起きるとされた。そ れを悟って,君主(天子,即ち天の子)が自ら位を譲るのを禅譲,武力によって 追放されることを放伐といった。無論,神話の時代を除けば禅譲の事例は実力を 背景とした形式的なものに過ぎない。 (以下略) [ウィキペディア: http://tinyurl.com/68s7ql] すなわち,王朝は継続するものではなく変わるのが当たり前という考え方であ る。ちなみに,易姓革命の「革命」は,revolutionの訳語としての「革命」とは 意味が異なる。 はっきり言って,これは武力によって奪取された新王朝の正当性を誇示するた めのこじつけであろう。中国の歴史を見れば明らかなように,中国の王朝は武力 によって奪取され,王族の継続性は全くない。漢を建国した劉邦や明を建国した 朱元璋は農民出身であり,特に朱元璋は乞食同然であった。 一方,万世一系について,三省堂「大辞林」第三版では,次のように説明され ている。 永遠に一つの系統が続くこと。多く皇統についていう。 また,ウィキペディアでは次のように説明されている。 万世一系(ばんせいいっけい)は,天皇の皇位継承について,皇統の一系や天 皇制の永続などを主眼とする思想のこと。日本神話に登場する初代神武天皇から 現在まで,王朝が断絶することもなく,一貫して天皇家によって日本は統治され てきたとする史観に基づいている。 (以下略) [ウィキペディア: http://tinyurl.com/5vgp3g] 日本の皇室は今上天皇で第125代であり,神話の時代の実在を疑われている天皇 を除いても,最低4世紀から1700年間続いている。すなわち,日本の皇室は世界最 古の「王族」である。日本では,平安時代中期あたりから権威と権力の分離が進 み,鎌倉幕府成立でこの分離が決定的となる。すなわち,権威の象徴として皇室 は存続し,権力は鎌倉幕府以降明治維新まで,武力によって政権交代が行なわれ るようになった。権威の象徴としての皇室の存続は現代日本においても最重要課 題であることは,つい最近の「女系天皇容認」問題で日本国中が大騒ぎになった ことでも明らかである。 すなわち,日本では権威の交代も意味する「易姓革命」ということはあり得な い。逆に日本にあって中国にあり得ないのが「万世一系」である。このことが, 日本人と中国人の国民性に大きく反映している。 易姓革命は儒教に組み込まれた観念のひとつであるから,中国人にしみ込んだ 観念と捉えることができる。すなわち彼らは「変わって当たり前」と思ってお り,「継続は力なり」などとは少しも思っていない。しかも,「やばい」と思っ たらすぐ逃げる。背景には,中国の社会は安定していないということがあり,そ れが易姓革命という言葉に集約されているとも言える。したがって,我が身に降 りかかる危険を察知して回避する危機管理の知恵は,日本人よりはるかに勝って いる。それは,自分の周囲の人間関係をぶっ壊そうが関係ない。要するに自分勝 手なのである。 方や日本人は,「継続は力なり」と思っており,継続した人間関係を維持する ことが大事と思っている。人間関係を継続させるためには目立ったことをしない ようにし,自分の周囲のことを気にかける。しかしながら,それが高じて他人の 言動ばかり気にかかって物事をはっきり言うことが敬遠され,その場で確認する ことをせずに憶測だけで物事を判断するようになる。外国人から「日本人は何を 考えているのかわからない」と言われる所以である。 一方「継続は力なり」と,こつこと研鑽と努力を重ねて技術を磨いていくこと を誇りとし,そこに人間としての価値を見つけている。すなわち,邱永漢氏の言 う「日本人は職人」という部分は当たっている。「技術立国」とはまさに日本の ためにあるような称号であり,その象徴的な存在として日本刀がある。世界にあ またある刀剣の中で,日本刀はその頂点に君臨する。 もっとも中国人に「職人」がいないかというとそんなことはなく,創業200年を 超える紹興酒の酒造元が存在したりする。ただしこれは例外的であり,易姓革命 の延長線上にある文化大革命(こちらの革命はrevolutionの意味。ただし,実態 は異なる。)では「伝統」をぶっ壊しまくった。例えば山東省の料理,魯菜の 1000年の伝統は文化大革命において途切れてしまい,日本人の佐藤孟江・浩六ご 夫妻が継承している(お二人は山東省政府から「魯菜特級厨師」及び「正宗魯菜 伝人」の称号を授与されている)。 このご夫妻を題材にしたドキュメンタリーが作られているが,これを観るとこ こで述べている日本人と中国人の考え方の違いが如実にわかる。 ドキュメンタリー「味」李纓監督 http://www.eiga-kawaraban.com/ 03/03100201.html http://www25.big.jp/~yabuki/2003/cd031111.htm 易姓革命は日本人に理解できないし,万世一系は中国人に理解できない。すな わち,お互い同じ価値観に基づいて友好を深められるなどということはあり得な いのである。 _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ リスクマネジメント・雑学の泉・発行人 荒木純夫(あらきすみお)・転載は発 行人の署名を必ず含めてください。署名なしの転載は固くお断りします。・発行 システム:『まぐまぐ!』 http://www.mag2.com/ ・配信中止はこちら http:// www.mag2.com/m/0000176001.html _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/


