2005/12/05
『NPOの学校』第3回 映画『イン・ハー・シューズ』が描く自分探し
▼△▼△▼『NPOの学校』▼△▼△▼ 皆さん、こんにちは。NPO Communicationsの高坂大樹です。 このメルマガでは、NPOに関連する様々な事柄、社会・経済・政治・文化・ 法律・環境問題・国際情勢などについて、理論と実践の両面から情報を発信し て行きます。どうぞよろしくお願いします。 第3回目は「映画『イン・ハー・シューズ』が描く自分探し」と題して、現在 公開中のアメリカ映画『イン・ハー・シューズ』の鑑賞を兼ねて、NPO活動 と現代人の生き甲斐ということについて考えます。 ----------------------------------------------------------------- ★映画『イン・ハー・シューズ』が描く自分探し★ NPO活動は何のために行なうのだろうか。第一に公益(社会貢献)に寄与す ることを目的としていることは言うまでもないだろう。NPO活動は世のため、 人のために行なうものであるということだ。 NPO活動を何のために行なうのかという問いの答えは、実はそれだけではな い。第二の答えは、NPO活動は自己実現のために行なうというものである。 自己実現とは、自分のためということだ。単に自分のために自己満足で行なう ということではないが、自分のため、自己を満足させるために行なうものであ るということは間違いない。 自己満足と言っても、趣味のような自己完結した行為とは異なり、NPO活動 のような社会的活動は他人と関わらなければならず、当然のこととして他人に 対する義務と責任が伴う。しかし、義務と責任と言っても、NPO活動は決し て苦行ではなく、やり甲斐であり楽しみでもなければならない。そこに、世の ため人のためだけではなく、自分のためであるという意味がある。世の中の役 に立つボランティアだから楽しんではならない、あるいはこれは正しいことだ からやらなければいけないなどというような考え方は、誤った価値観だと思う。 NPO活動は、公益(社会貢献)に寄与するとともに、そのことによって自己 評価とやり甲斐と満足感を与えてくれるものと考えるべきである。 NPO活動とは社会参加であり、社会貢献であり、社会に対する責任感を持つ ことであるが、同時に、社会参加によって自分の存在を示し、新しい自分を発 見し、生き甲斐を味わうことである。社会に貢献することが、自分は世の中や 他人のために役に立っている存在であるという自己評価と満足感を自らに与え る。世のため人のために役に立てること、他人から必要とされることは、人間 にとって喜びなのである。 今回紹介する映画『イン・ハー・シューズ』は、弁護士とフリーターという対 照的な姉妹を主人公に、NPO活動と自分探しというテーマを描いた作品であ る。ジェニファー・ウェイナーのベストセラー小説を映画化したもので、主演 はキャメロン・ディアスとトニ・コレット、監督はエミネム主演のラップ映画 『8Mile』などのカーティス・ハンソン。日本では今年11月12日(土)に 公開され、このメルマガを発行する時点ではまだ上映している。大ヒットとは 言えないが、静かな支持を得て、ロングランとなっている作品である。ストー リーを紹介しよう。 ★ ★ ★ 妹のマギー(キャメロン・ディアス)は抜群のスタイルと美貌の持ち主。しか し難読症という学習障害によってまともに教育を受けておらず、問題児として 成長し、30歳を間近に控えながら定職も持たずに男から男を渡り歩いて暮ら している。 姉のローズ(トニ・コレット)は優秀な弁護士。しかし容姿やセンスに自信が なく、恋愛に関しては不器用で失敗ばかりしてきた。しかし、ローズにもやっ と恋人ができる。相手は勤務先の上司の弁護士。そこに、マギーが転がり込ん できて居候するようになる。ローズは靴やドレスを山のように買い込んでいた が、それらを実際に身につけることはなく、ふだんは地味な恰好をしていた。 マギーはそんなローズを持ち前のセンスで美しくセクシーに変身させる。しか し、ローズの留守中に彼女の恋人を誘惑してしまい、それがバレて姉妹の仲は 決定的に決裂、マギーは姉のアパートを追い出されてしまう。 どこにも行く当てのないマギーは、亡くなったと聞かされていた母方の祖母エ ラ(シャーリー・マクレーン)が健在で、老人ホームで暮らしていることを知 り、エラのもとを訪ねる。エラは孫娘の突然の訪問に喜ぶが、マギーはそこで も生活態度を改めないばかりか、エラのお金をくすねようとするありさま。エ ラはそんなマギーを働かせようと考え、老人ホームに頼んで老人たちの世話を する仕事に就かせる。 そんな時、マギーはホームの盲目の老人に詩の朗読を頼まれる。難読症のマギ ーはそれに応えることができなかったが、英文学の教授であった老人はマギー の障害を見抜き、ゆっくりと詩の内容を解釈しながら読んでいく方法を教える。 元教授はマギーの感受性豊かな詩の解釈にA+の成績をつけ、教育にコンプレ ックスのあったマギーは元教授に認められたことを転機に、新たな自分を発見 するようになる。 やがてマギーは老人たちの買い物を引き受けるコミュニティ・ビジネスを始め、 さらに老人ホームに暮らしている女性たちにファッション・コーディネイトを するという自分の才能を活かせる仕事も手がけるようになる。 一方、マギーが出て行った後、ローズは弁護士事務所をやめ、忙しい人のため に犬の散歩を代行する仕事を始める。そんなローズのもとにエラがマギーの消 息を書いた手紙をよこす。マギーは祖母と妹に会いに、老人ホームに向かう…。 ★ ★ ★ 実はこの姉妹は一心同体のようになかよしである。幼い頃に母親を亡くし、父 親の再婚相手の継母とはそりが合わず、家庭環境に恵まれずに育ったためにお 互いを心の支えとして生きてきたのだ。祖母が亡くなったことになっていたの は、母親の死をめぐって祖母と父親の間に対立があったからだった。長く母親 の死を引きずっていた家族だったが、姉妹が祖母と再会したことをきっかけに、 姉妹、祖母、そして父親も、母親の死後失われていた家族の絆を回復し、姉妹 はそれぞれ自分が必要とされる居場所を見出すというハッピーエンドで映画は 終わる。 お分かりのように、これは自分探しの映画である。タイトルは自分にぴったり 合う靴(生き方・居場所)と出会うための心の旅という意味だろう。フリータ ーのマギーだけではなく、エリートのローズも自分探しをしているのだが、N PO活動に自分の居場所を見出すのはマギーである(ローズは自分を本当に愛 してくれる結婚相手と出会う)。NPO活動をする人は、自分の個性を活かせ る、自分でなければ駄目と思える仕事を求めているものである。マギーは持ち 前の魅力があったために男にたかって生きてくることができたが、自分の生き 方に満足していたわけではない。働こうとしなかったわけではなく、難読症で 十分な教育を受けていなかったために、就職してもどうしてもうまく行かなか ったのだ。そんなマギーが初めて自分を必要としてくれる場所と出会う。社会 貢献を通して自分が個人として、そして社会的存在として成長・発展し、自ら を価値あるものと感じられるようになるという過程が、ここには描かれている。 自分探しは自己実現のための模索としての意味を持っている。はっきりした目 的を持たずに、NPO活動をしながら漠然とした自分探しをしている人も少な くないだろう。マギーのように偶然関わりを持ったNPO活動を通じて、自己 実現のきっかけをつかむこともあるだろう。そういう場合でも、自分探しをし ていたからこそ出会いが生まれるのだ。求めよ、さらば与えられん、である。 『イン・ハー・シューズ』 製作2005年、アメリカ 監督カーティス・ハンソン 出演トニ・コレット、キャメロン・ディアス、シャーリー・マクレーン 公式サイト http://www.foxjapan.com/movies/inhershoes/ ----------------------------------------------------------------- ★NPO用語集★ 「非営利セクター」 市民による公益活動の領域を非営利セクターと言います。第三セクター、民間 セクター、市民セクター、インディペンデント・セクター、ボランタリー・セ クターなどとも言います。 「第三セクター」 国家・行政が担う公共セクターを第一セクター、企業が活動している私的セク ターを第二セクターと呼ぶのに対して、NPOなど民間の非営利セクターを第 三セクター(サードセクター)と呼ぶこともあります。日本で第三セクターと 言う場合は行政と民間の共同経営体を指すのが一般的ですが、国際的には第三 セクターとは民間の非営利セクターを指します。 ----------------------------------------------------------------- 私は現在いくつかのNPOに関わっていますが、このメルマガを通じて、NP Oについてさらに深く学んで行きたいと思っています。皆様のご意見を頂けれ ば幸いです。NPOに関するご質問等も受け付けています。 NPOのネットワークを作って行きたいと思っていますので、お気軽にコンタ クトして下さい。どうぞよろしくお願いします。 ----------------------------------------------------------------- 『NPOの学校』第3回 映画『イン・ハー・シューズ』が描く自分探し 平成17(2005)年12月5日 メルマガ『NPOの学校』は不定期に発行しています。 ご意見・ご感想・体験談などをお待ちしています。 ボランティア・スタッフ募集中。 相互紹介のメルマガを募集しています。希望される方はメールでご連絡下さい。 発行者 : 高坂大樹 メール : npo@nponet.com NPO Communications : http://npocom.net/ このメルマガは『まぐまぐ』で発行しています。 登録・解除はこちらから: http://www.mag2.com/m/0000175067.html


