『NPOの学校』第2回 現代史とNPO
▼△▼△▼『NPOの学校』▼△▼△▼
皆さん、こんにちは。NPO Communicationsの高坂大樹です。
このメルマガでは、NPOに関連する様々な事柄、社会・経済・政治・文化・
法律・環境問題・国際情勢などについて、理論と実践の両面から情報を発信し
て行きます。どうぞよろしくお願いします。
第2回目は「現代史とNPO」と題して、NPO法が成立した歴史的背景を踏
まえながら、これからのNPOの役割について考えてみます。
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★現代史とNPO★
NPOについてより深く知るために、前世紀末の日本でNPOがクローズアッ
プされ、NPO法が制定されるに到った歴史的背景を振り返ってみよう。特定
非営利活動促進法いわゆるNPO法が施行されたのは、1998年12月1日
である。成立してからまだ七年にしかならないが、この法律の成立までに市民
活動の長い歴史があったことは言うまでもない。
NPO法制定の直接的なきっかけになったのは、1995年1月の阪神淡路大
震災でのボランティアの活躍だと言われている。この時、全国から市民ボラン
ティアが災害や復興支援に集まり、多額の寄付金も寄せられ、災害支援、災害
復興に大きな力を発揮した。阪神淡路大震災はボランティアの意義とパワーが
広く認識される象徴的な出来事だったと言えるが、災害支援、災害復興に働い
たボランティア団体の多くが法人格を持たない任意団体であった。
NPOが活動する際に、人材や物資を適切かつ効率的に配する組織は欠かせな
い。市民が公益を目的としたNPO活動を本格的に行なおうとする場合に、契
約上の制約があり、税制上の優遇も受けられない任意団体では活動を効果的・
持続的に行なうことに支障がある。一方、90年代になってから国際的なNG
O活動が盛んになる中で、法人格を持たない日本のNGOは不利な取り扱いを
受けることが少なくなかった。
このような状況を踏まえ、NPOに簡易な手続きで法人格を取得できるように
しようという趣旨で制定されることになったのが、NPO法である。付け加え
れば、NPO法は官僚が作った法律ではなく、議員が立案した議員立法である。
法案作成過程には市民団体も参加しているので、市民による市民のための法律、
市民立法であるとも言える。
NPOが重視されるようになった国際的な背景についても、ざっと概観してお
こう。東西冷戦の崩壊によって社会保障が手薄になった旧社会主義諸国におい
て、NPOのニーズが著しく高まったこと。世界的な小さな政府への流れによ
る規制緩和・民営化・分権化に伴ない、NPOの役割が高まりつつあること。
先進国全般に見られる高齢化……こうしたものが現代においてNPOが重視さ
れるようになった要因として挙げられよう。そしてこのような歴史状況と並行
して、低コストで草の根の市民レベル、世界規模でのネットワーク形成を可能
にする情報化革命が起こったことが、一挙にNPOの時代を出現させたと言え
るだろう。
国際社会に見られるこのような状況は、日本にもそのまま当てはまる。日本で
もまた、社会構造の大きな変化によって、環境問題、高齢化、高齢化による社
会保障制度の揺らぎ、国際化、治安問題、価値観の多元化、女性の社会進出と
少子化や子育ての問題、教育問題など、様々な問題が噴出している。これらは
行政の限界とリンクして現われているものなので、問題の解決を行政(お上)
まかせにすることはできないのは自明である。また、民間セクターであっても、
企業は営利を原理とするゆえの限界を持つ。こうした状況にあって、市民セク
ターが行政や企業では掬い取れない社会的諸問題の担い手にならなければなら
ないことは当然なのである。
問題は山積しているが、行政改革や情報化革命によって市民の活動の範囲は飛
躍的に拡大している。大変な状況だが、この状況は民主主義を促進し、市民の
領域の自立性を高めていくチャンスでもある。様々な問題を政府だけでは対処
できなくなっている現在、市民自らがお上意識や行政依存の体質を脱却し、当
事者意識を持って当たることが求められているのである。
日本社会、そして国際社会の変化によって、NPOが大きな役割を担える、ま
た担わなければならない時代が来た。しかし、いくら社会のニーズとそれを担
おうとするNPO側の欲求があったとしても、状況に対応するノウハウやスキ
ルがなければ、充分には対応し切れないであろう。NPOの役割や重要性はま
すます増し、現に市民活動は裾野を広げ、活発化しているが、問題解決のため
には市民の側も自らの力を高めていかなければならない。
NPOを組織し持続的に運営するとなれば、資金の獲得、会計管理、マーケテ
ィング、人材確保、労務管理、行政や企業とのパートナーシップの構築、メデ
ィア戦略などのマネジメントが必要になる。またリーダーには、組織そのもの
に対するリーダーシップやガバナンスも必要になる。もちろん、手弁当のボラ
ンティアの価値が減じるものではない。これからも個々のボランティアは大き
な力になる。しかし、現代の社会的状況に対応するには、それだけでは限界が
あるのもたしかである。
事業型NPO、社会起業家、あるいは五十嵐敬喜教授の言う市民事業の時代の
到来によって、NPOにも民間企業と同じような経営的観点が求められるよう
になりつつある。付け加えれば、市場モデルを取り入れるのはそれ自体に目的
があるわけではない。それはあくまで公益という目的を効果的・持続的に実現
するために必要なのである。
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★ピーター・F・ドラッカー氏のこと★
11月11日、カリフォルニア州クレアモントの自宅で経営学者でNPOにも
関わりの深い人物であるピーター・F・ドラッカー氏が亡くなりました。95
歳でした。
ドラッカーはオーストリア生まれ、フランクフルト大学で学び、その後イギリ
ス・アメリカへと渡り、ニューヨーク大、クレアモント大教授などを務めまし
た。社会の中に経済・経営を位置づけ、企業活動と社会的役割を結びつける思
想家として、アメリカを始めとする世界の経営学・経営哲学に大きな影響を与
えました。
NPOの理論家としても知られ、NPO活動を人間の成長の場と捉え、社会を
改良し発展させる市民の使命と責任を説きました。ドラッカーの『非営利組織
の経営 原理と実践』(上田惇生・田代正美訳、ダイヤモンド社、1991年)は、
NPOのバイブルの一冊として読まれています。
ドラッカー氏のご冥福をお祈りします。
参考URL
上田惇生「入門ピーター・ドラッカー−8つの顔」
http://www.iot.ac.jp/manu/ueda/interviewJ.html
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★NPO関連の本★
五十嵐敬喜・萩原淳司・勝田美穂
『ポスト公共事業社会の形成 市民事業への道』
法政大学出版局、2005年7月
破綻した旧来型の公共事業システムを分析し、それに代わるポスト公共事業社
会の在り方を提言した本。現状の民営化路線による公共事業改革には市場化の
功罪両面があるので、それを踏まえながら、地域や市民のニーズに密着した市
民セクターによる自治的な公共事業の方向を提案している。
新しい公共空間を担おうという志を持つNPOにとって、大変参考になる一冊。
跡田直澄
『利益が上がる!NPOの経済学』
集英社インターナショナル、2005年9月
日本ではNPOはあくまでボランティアであり、ビジネスをするのは不純だと
いう考え方が根強い。著者はそうした偏見は日本のNPOが発展するネックに
なっているとして、事業型NPOの社会的意義とアメリカ的なビジネスモデル
によるノウハウを説いている。
ビジネス本のスタイルで、事業型NPOの金儲けや節税の方法をぶっちゃけて
書いている。
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★NPO用語集★
「ボランティア volunteer」
ボランティアとは強制ではなく自発的な意志で公共への奉仕活動をする人のこ
とです。元々は義勇兵という意味でもありました。
ボランティアは一般的には無償で行なうものを指しますが、交通費などの実費
や一般市場のレートより少ない対価を受ける有償ボランティアも増えています。
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私は現在いくつかのNPOに関わっていますが、このメルマガを通じて、NP
Oについてさらに深く学んで行きたいと思っています。皆様のご意見を頂けれ
ば幸いです。NPOに関するご質問等も受け付けています。
NPOのネットワークを作って行きたいと思っていますので、お気軽にコンタ
クトして下さい。どうぞよろしくお願いします。
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『NPOの学校』第2回 現代史とNPO
平成17(2005)年11月21日
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