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「アートで社会を変える」というキャッチフレーズのもと、アート界の成熟と芸術文化の社会普及をめざしている<NPOアートシンクタンク>のメルマガです。まずはアートの鍵で魅力的な扉を開けてみましょう。建築の若手研究者・木下知威(ともたけ)さんの寄稿も好評連載中!

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2009/12/31

アートシンクタンク通信 vol.132 ■Les Clefs d'Art=アートの鍵/木下知威「ホログラフィー・アーキテクチャー」

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 ■NEWS!   2009.12.31版  http://art-thinktank.com
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 ★次号は1月14日配信です★

 ▼2009年も大変お世話になりました。
 お蔭様で、本メールマガジンの配信や、まちの写真講座、子供アート講座な
 どの開催、オープンアーキテクチャーへの企画協力など、各種事業を進めて
 いくことができました。
 沢山のご協力を頂き本当に有難うございました。新年もどうぞよろしくお願
 いいたします。

 スタッフ一同

 ▼にっぽんmuseumの「まちの写真講座──フォトジェニックシティー」は、
 次回2010年の1-2月の開催を予定しています。フィールドは、人形町、佐賀
 町、水道橋、横浜などが候補に挙がっています。
 
 開催情報は追ってご案内いたします。どうぞお楽しみに。

 ▼北九州イノベーションギャラリーでのゲーム機展示のお知らせ

 木下知威さんからのお知らせですが、下記の展示が九州に巡回しています。
 「コンピュータスペース」や「パックマン」の筐体も展示され、より豊かな
 展示になっているとのことです。「コンピュータスペース」が土日祝の10
 時から12時だけ点灯させてゲームのデモをみせるのには注目です。

 「ザ・テレビゲーム展──その発展を支えたイノベーション」

 世界最初の家庭用テレビゲームの試作機「BROWN BOX」をはじめ、世界初の
 商用家庭ゲーム機「ODYSSEY」、1980年代に大ヒットした任天堂株式会社の
 「ファミリーコンピュータ」など、2000年頃までのゲーム機約30台が展示さ
 れる。

 日時:12/26-3/14 9:00-19:00
 場所:北九州イノベーションギャラリー(産業技術保存継承センター)
    企画展示ギャラリー
    (鹿児島本線『スペースワールド駅』下車、徒歩約5分)
 入場:500円

 ▼サーバーの相性等によりメールを受信できないトラブルが多発しておりま
 す。にっぽんmuseumでは、お申込いただいた方には必ずお返事をいたしてお
 ります。1週間経過してもこちらからご連絡が行かない場合は、メールを受
 け取れていない可能性がございます。その場合、お手数ですが当団体ブログ
 のメールフォームや別のアドレスから再度ご連絡いただければ幸いです。対
 策に努めておりますが、何卒ご理解いただきますようお願い申し上げます。

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 ■Les Clefs d'Art=アートの鍵 「ホログラフィー・アーキテクチャー」
           「松田聖子、鏡、篠原一男」(2/2)  木下知威
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 ★☆メルマガ編集長
 ☆★天内からのコメント

 建築計画・設計の木下知威(きのしたともたけ)さんの連載です。

 前回から、ゲームから一旦離れてミラーとハーフミラーの知覚がもつ性質に
 ついてのお話、視覚と認識のお話です。前回ご紹介くださった中では、当時
 絶大な視聴率を誇っていた「NHK紅白歌合戦」で松田聖子が「ロックン
 ルージュ」という歌を歌っていました。今回は同年に同じ歌を歌っていた民
 放からの高視聴率番組の動画からお話が始まります。

  建築の設計から竣工までには,ご存じのとおり長大な時間がかかるので、
 なかなか建築家が同時代性を「鏡のように」映し出すことは困難なのです
 が、その分都市や建築のレヴェルに同時代から得た要素を発展させる(そし
 て大抵の場合はそれが長く残る)という大きな仕事になります。鏡というモ
 チーフはふだんあまり都市の要素とは思われていませんし、日眩(グレア)
 の元として周囲に忌避されることもしばしばみられますが、都心部で効果的
 に使用された例をご紹介くださいます。その「同時代性」のもう一つの現れ
 が松田聖子なのです。

 今週の参考資料はこちら→http://d.hatena.ne.jp/M_perrier/20091231
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 ★松田聖子、別バージョンから

  1984年、松田聖子がミラーのドレスをまとって歌ったのと同じ歌を、鏡の
 破片がちりばめられたようなセットで歌っている動画もあります。これは当
 時の代表的な音楽番組「ザ・ベストテン」のセットで、衣服から背景に鏡が
 移動したわけです。

 鏡の破片がちりばめられたかのようなカーブする階段は、カメラが動くとキ
 ラキラ反射し、またライトも点滅し、よりキラキラ感を強めています。背景
 にある樹木の葉もアルミニウムのような素材で、キラキラ輝く感覚の一助と
 なっています。

 この「ロックンルージュ」は青春にあふれた歌詞です。

 「髪にグリース光らせて決めてるけど絵にならない」
 「海へ行こうぜって指を鳴らすけれど動機が不純だわ」
 「話ほどはもてないのよ 100万ドル賭けていい」
 「防波堤を歩くときジョーク並べて笑わせたの」
 「横断歩道 白いストライプの上」
 「シグナル変わるまでに I WILL FALL IN LOVE」
 「花びら色の春に I WILL FALL IN LOVE」

 グリース、海、100万ドル、防波堤、横断歩道、シグナル、花びらという単
 語はキラキラ、ギラギラする言葉があります。反射するイメージです。

 この歌を想起すると、わたしは東京国立近代美術館に何点か所蔵されている
 中沢弘光の絵画を思い出します。たとえば、「おもいで」というよくしられ
 た絵では点描に近いかたちで光を描きますが、キャンバス全体に光沢感のあ
 る色、レモンイエローペールには、恍惚というか、おぼろげな感じが漂って
 います。

 また中沢が波を描く場合、光沢感のあるホワイトをよく含んだ色彩を横に細
 長く隆起するようにのせていくので、視覚的に波が光に反射しているかのよ
 うに感じます。その中沢は「夏」という、女性が海をバックに日傘を差して
 いる絵もあって、これは「ロックンルージュ」を思い出すような絵ではない
 でしょうか。

 ★篠原一男の「鏡」へのアプローチ

  前回「「ザ・ベストテン」の鏡の回転扉がある時代を生きた篠原一男はミ
 ラーを意識した建築家なのでしょうか」と書きました。わたしが知るかぎ
 り、篠原がハーフミラーを使った例は3件あります。

  まず、前回ご紹介した、1981年の「ミニマリズムの機械」のドローイング
 です。ちょうど松田聖子の人気が爆発しているときでした。

  次に「花山の病院」(1988)という、篠原によれば「病院らしくない病院
 を目指した」建築があります。外面のガラスにハーフミラーが使われた部分
 があり、外の風景を借りるような切り取り方に、実験的な感じがする建築で
 す。カーブする廊下の外側にハーフミラーが使われ、光があたる角度が変化
 します。

  最後に篠原一男アトリエ+太宏設計事務所の「熊本北警察署」(1990)が
 あります。当時の熊本県知事・細川護熙による熊本アートポリス計画の一環
 です。ハッブル宇宙望遠鏡のように細長い建築で、逆三角形のファサードが
 目をひきます。BBPRの「トーレ・ヴェラスカ」というミラノの集合住宅
 を想起させるファサードですが、「トーレ・ヴェラスカ」以上に横に広いの
 です。この正面にまるごとハーフミラーが使われています。

  「花山の病院」、丹下健三の「ハナエ・モリビル」ではハーフミラーをず
 らしながら配置したのに対し、フラットな面として一面で表現しているとこ
 ろが大きな違いです。

  篠原は、このテトリスのブロックのようなファサードは力の表現ではな
 く、「街に向かって晴れやかで楽しい表情をつくるためである」と書いてい
 ます。この警察署は熊本市の中心街にあって、車の通りは頻繁で、周辺にビ
 ルも多くあります。

  この大きな鏡は、そのビルや車を映し、この場所──都市のリズムを増幅
 するように機能しています。警察署の前は駐車場として大きく広げられた空
 間なので、鏡はより多くを映し出し効果を発揮します。

  しかし夜になると、内部の照明が構造体を浮かべるようで、印象ががらり
 と変わります。平面図をみると、ハーフミラーに面したところは剣道場や柔
 道場、総合指揮所、ロビーなので、夜には剣道や柔道の鍛練にいそしむ署員
 がみられます。昼には鏡のようなハーフミラーが、夜にはガラスのようにな
 り、見られる立場が入れ替わります。ハーフミラーの「マジック」が解けて
 しまうわけですね。

 ★「鏡」が映し出すものとその意義

  建築専門誌『建築文化』の1991年1月号に、篠原はこの設計を依頼された
 とき「それまで考えてみたこともない計画主題」だったと書いています。住
 宅設計から建築を考えてきた篠原に、この設計依頼は驚きだったわけですが、
 同時に「公共性と都市性という、今私に一番興味ある項目にそれは直結して
 いた」というスタンスも興味深いところです。

  公共性とは、誰にでもみたり感じたりできること、都市性とは、街の性
 格、雰囲気だと簡単にいってみましょう。そこに篠原の考えるハーフミラー
 の役割があるのではないでしょうか。

  ガラスを不透明にして光を調節するという、ただプライバシー確保の機能
 のみハーフミラーに課したのではないでしょう。鏡のようにみえる特性を利
 用し、外側の風景を写し取る機能に篠原は注意しているのではないでしょう
 か。

  これに先行する例が、「ハナエ・モリビル」であり、「花山の病院」であ
 るわけです。「ハナエ・モリビル」は、自身のファッションを映し出す鏡が
 表参道に好ましいという考えでしたが、篠原はそれを「公共性」と「都市
 性」と、より端的に述べて、両方の意味を含んだ、両義的な建築を示してい
 るのではないでしょうか。

  現在は、篠原のいう公共性と都市性に対し、ハーフミラーを用いない建築
 もあります。鏡に自分を映すと後ろの樹木も共に鏡に映るはずで、自分が動
 けば鏡の自分も動くし、木の枝が風に揺れたら鏡の枝も揺れます。そこで、
 「ハナエ・モリビル」のすぐ近くの伊東豊雄「TOD’S」(2004)を思い出し
 てみましょう。樹木の形態が建築となったようなビルディングです。

  この樹木の隙間にたいへん透過性の高いガラスがあって、店員や服の様子
 がわかります。このビルディングのプレゼンテーションムービーをみると、
 表参道の樹木が重なり合って、ビルディングを構成する流れになっており、
 樹木への意識を窺えます。ハーフミラーこそ使用しませんが、まるで鏡のよ
 うに表参道の並木がビルディングに投影されたイメージは「ハナエ・モリビ
 ル」と共通しています。

  松田聖子の「ロックンルージュ」には、衣装、セットともに花びらから海
 まで大小問わず、鏡のように反射する要素があります。彼女が歌う瞬間、声
 と表情によって街の構成要素がからまりあい、キラキラ輝きます。わたしに
 とっては中沢弘光の絵画のようです。

  一方、篠原一男は3つの建築でハーフミラーの特性としてプリズムのよう
 な光を透過する性質を求め、また一方では都市にリズムを与える要素として
 活用しました。つまり、鏡を介して篠原一男と松田聖子が出会い、デュエッ
 トしているのです。

 今年一年、お読みくださりありがとうございました。どうかよいお年を。

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 ☆★メルマガ編集長・天内の
 ★☆「驚きの3日間」
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  ある日、僕の生まれ育った杉並から静岡に移った友人から電話があり、い
 きなり「同じ小学校の友人Aと友人Bが今週末結婚するんだけどさー」。そ
 の二人が付き合っているということを聞いたときもずいぶんたまげました
 が、結婚がもう決まっていたのですね。僕は夜に飲み屋で祝福しましたが、
 昼には僕たちの小学校の担任の先生が、小学校時代の二人の作文を朗読した
 そうです(罰ゲーム?)。来年もよろしくお願い申し上げます。
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