2009/11/12
沈まぬ太陽。
近年,個別労働関係紛争が増加している。増加している原因として、終身雇用制度 の崩壊と労働組合の役割の比重低下があげられている。つまり、多少の不満はあって も,雇用が保障されているから我慢するとか,あるいは、労働組合は社内の個別紛争 は外部に持ち出すことはせず、内部で自主的に解決するとか、というようなことが、 雇用の保障がなくなり、労働組合の組織率が低下したことなどによって、紛争が起こ れば、すぐに外部に持ち出されるようになったということである。外部とは司法の場 であり、ADR(裁判外紛争解決手段)の場合もある。 個別労働関係紛争の一つに配置転換をめぐる紛争がある。そして、その配置転換を めぐる紛争といえば、今,公開中の映画「沈まぬ太陽」の主人公のモデルとなった人 物も配置転換によって苦難を味わったサラリーマンである。しかも、配置転換された 理由が労働組合の委員長としての組合活動にあるという。組合活動を理由とした配置 転換とは、不当な目的、動機による指揮命令権の発動であり,権利の濫用としてこれ を無効とするというのは、東亜ペイント事件判決で示されたとおりである。だから、 「沈まぬ太陽」のモデルとなった人物も訴えるという行動を起せば,配転命令を撤回 させられた可能性もなかったとはいえまい。もっとも、東亜ペイント事件の判決は昭 和61年7月14日の判決であり,「沈まぬ太陽」のモデルとなった人物が配転命令 を受けたのは昭和39年であるから,同じような内容の判決を貰えたかどうかはわか らない。 しかし、それにしても元労働組合の委員長であったという人物は、なぜ提訴しな かったのか。実は、それこそが昭和30年代ということではないのか。昭和30年代、 そしてそれに続く昭和40年代というのは高度経済成長期である。終身雇用制度は 確固たるものであり、企業別労働組合は個別紛争を表立てることはしなかった。サラ リーマンは愛社精神に満ち,多少の不満は胸の内に収め,我慢することを当然のこと としてきた。労働組合は社内の個別紛争は外部に持ち出すことはせず、社内で自主的 に解決してきた.そのような中,労働組合の委員長としては,自分だけが外部に判断 を仰ぐというようなことはできない。だから、不当な業務命令であったも、受け入れ ざるを得ない、というような時代ではなかったか。個別労働関係紛争が増加している という現実は、まさにそうした時代が終わったという証明に他ならない。 **************************************************************************** 社労士の目で見る事件と世相 発行システム:『まぐまぐ!』 http://www.mag2.com/ 配信中止はこちら http://www.mag2.com/m/0000173882.html ご意見ご感想はこちらまで toto3@r2.dion.ne.jp ****************************************************************************



