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テレビ報道は解説委員の見方、新聞記事は論説委員の見方。弁護士には弁護士の見方があり、社会保険労務士には社会保険労務士の見方がある。みんな違う。どのように違うか、興味のある方は覗いて見ませんか。

  • 発行周期 不定期
  • 最新号 2009/11/12
  • 部数 158部
  • メルマガID 0000173882
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2009/11/12

沈まぬ太陽。

 近年,個別労働関係紛争が増加している。増加している原因として、終身雇用制度
の崩壊と労働組合の役割の比重低下があげられている。つまり、多少の不満はあって
も,雇用が保障されているから我慢するとか,あるいは、労働組合は社内の個別紛争
は外部に持ち出すことはせず、内部で自主的に解決するとか、というようなことが、
雇用の保障がなくなり、労働組合の組織率が低下したことなどによって、紛争が起こ
れば、すぐに外部に持ち出されるようになったということである。外部とは司法の場
であり、ADR(裁判外紛争解決手段)の場合もある。
 個別労働関係紛争の一つに配置転換をめぐる紛争がある。そして、その配置転換を
めぐる紛争といえば、今,公開中の映画「沈まぬ太陽」の主人公のモデルとなった人
物も配置転換によって苦難を味わったサラリーマンである。しかも、配置転換された
理由が労働組合の委員長としての組合活動にあるという。組合活動を理由とした配置
転換とは、不当な目的、動機による指揮命令権の発動であり,権利の濫用としてこれ
を無効とするというのは、東亜ペイント事件判決で示されたとおりである。だから、
「沈まぬ太陽」のモデルとなった人物も訴えるという行動を起せば,配転命令を撤回
させられた可能性もなかったとはいえまい。もっとも、東亜ペイント事件の判決は昭
和61年7月14日の判決であり,「沈まぬ太陽」のモデルとなった人物が配転命令
を受けたのは昭和39年であるから,同じような内容の判決を貰えたかどうかはわか
らない。
 しかし、それにしても元労働組合の委員長であったという人物は、なぜ提訴しな
かったのか。実は、それこそが昭和30年代ということではないのか。昭和30年代、
そしてそれに続く昭和40年代というのは高度経済成長期である。終身雇用制度は
確固たるものであり、企業別労働組合は個別紛争を表立てることはしなかった。サラ
リーマンは愛社精神に満ち,多少の不満は胸の内に収め,我慢することを当然のこと
としてきた。労働組合は社内の個別紛争は外部に持ち出すことはせず、社内で自主的
に解決してきた.そのような中,労働組合の委員長としては,自分だけが外部に判断
を仰ぐというようなことはできない。だから、不当な業務命令であったも、受け入れ
ざるを得ない、というような時代ではなかったか。個別労働関係紛争が増加している
という現実は、まさにそうした時代が終わったという証明に他ならない。

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