2009/05/28
貸し借りの関係。
昨年11月18日、労働基準法が一部改正された。但し,施行は平成22年4月1日か らである。今回、改正の目玉は法定割増賃金率の引き上げであった。しかし、審議の過程 では,それ以上に目玉であったのは,自律的労働時間制度の導入ではなかったか。自律的 労働時間制度とは,一定以上の年収のホワイトカラーを週40時間の法定労働時間の規制 から外そうとするものであり、いわゆるホワイトカラーエクゼンプションといわれたもの である。 導入が見送られたのは、労働側の反対があったためである。反対の理由は,労働時間の コントロールを外せば,過労死や心の問題がさらに悪化するからというものであった。し かし、見送られたからといって,経営側があきらめたわけではない。次回改正時には再提 案してくることは間違いないと思われる。なぜなら、雇用形態が多様化し,成果主義人事 、成果主義賃金制度が進めば進むほど,労働者の雇用管理は個別的にならざるを得ず,そ れに対応するには、雇用管理を労働者個人に委ねた方が効率的であるからだ。労働契約法 はその対応策の一つとして成立したが,自律的労働時間制度は見送りとなり、対応策とし ては中途半端なままに終わってしまったということになる。 労働側が反対した理由の背景にあるのは、経営側に対する不信感としか考えられない。 とすれば、経営側が再提案し,労働側に受け入れさせるには,その不信感を払拭させてお かなくてはならない。しかし、不信感を払拭させるなどということは容易にできるもので はない。ことに、労使関係においてはである。 容易でないとするのであれば、あとは、貸し借りの関係で行くしかない。割増賃金率の 引き上げは結局50%に落ち着いたが、この50%という引き上げ率は,当初、経営側は 猛反対していたものである。それが50%に落ち着いたというのは経営側が譲歩したから である。経営側が割増賃金率の引き上げで譲歩したのであれば、労働側は自律的労働時間 制度で譲歩しなければならなかったはずであるが、労働側はしなかった。それは,ある意 味,経営側が労働側に貸しを作ったという見方もできる。 もっとも、その程度の貸しで,労働側が次回の改正時に譲歩するという保証はない。そ れならば、さらに貸しを作っておく必要があったのではないか。そして、その貸しを作る 場として,今年の春闘が考えられたのではないか。今年の春闘において、連合は8年ぶり にベアを要求したが、経営側はそれを拒否した。おりからの世界的不況でそれどころでは ないということもあったが、そのような苦境であればこそ、労働側の要求に応じておれば ,経営側は労働側に大きな貸しを作れたはずである。要求を拒否したというのは、その貸 しを作る機会を逃がしたということで、中途半端な労働時間管理制度が、次回の改正時以 後も続くことを予感させる。 ************************************************************************** 社労士の目で見る事件と世相 発行システム:『まぐまぐ!』 http://www.mag2.com/ 配信中止はこちら http://www.mag2.com/m/0000173882.html ご意見ご感想はこちらまで toto3@r2.dion.ne.jp *************************************************************************


