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テレビ報道は解説委員の見方、新聞記事は論説委員の見方。弁護士には弁護士の見方があり、社会保険労務士には社会保険労務士の見方がある。みんな違う。どのように違うか、興味のある方は覗いて見ませんか。

  • 発行周期 不定期
  • 最新号 2009/11/12
  • 部数 158部
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2009/02/03

解雇か除名か。

 若麒麟の処分が解雇と決まった。妥当な処分と評価したい。当初、除名処分を含めて
といわれていたが、それは見送られたということだ。そもそも、除名処分とすることの
意味は,ひとえに退職金を不支給としたいという協会の意思にあった。では不支給とす
法的根拠はどこにあったのかとなると、以下の一連の規定による。
 まずは、寄付行為施行細則、退職金規定、従業員退職金支給規定。
 第8条
 懲戒、又は悪質な事由により退職した者に対しては退職金を減給し、又は支給しない
 ことがある。
 これだけを見れば,若麒麟に退職金を支給しなくてもよいことになる。だが、次のよ
 うな条項もある。
 第2条
 本規定の従業員とは年寄、力士を除く協会所属員とする。
 つまり、力士である若麒麟には第8条は適用されないのである。すると、退職金は支
払わなくてはならない。それでも、協会は若麒麟に対して退職金を払いたくないのであ
るから、さらなる法的根拠が必要となる。その法的根拠とは次の規定である。
 寄付行為施行細則,退職金規定、力士養老金(退職金)および勤続加算金支給規定
 寄付行為施行細則、第94条および故意による無気力相撲懲戒規定による除名処分を
受けた者には退職金は支給しない。
 即ち,力士に退職金を支給しないためには除名処分が必要なのだ。では、除名処分を
行なうにはどうすればよいのか。寄付行為施行細則第94条である。
 年寄、力士,行司およびその他協会所属員として相撲の本質をわきまえず,協会の信
用もしくは名誉を毀損するがごとき行動をなしたる者、あるいは品行不良で協会の秩序
を乱し,勤務に不誠実のため、しばしば注意するも改めざる者ある時は、役員、評議員
,横綱、大関の現在数の4分の3以上の特別決議により,これを除名することができる。
 特別決議を実施すればよいのである。横綱,大関の現在数とあるから朝青龍も参加し
なければならないのだ。
 
 以上の規定こそが、力士への退職金を不支給とすることの法的根拠となるのであるが、
今般,その決定は見送られた。
 見送った理由は、まだ25歳の若麒麟の将来を考慮したことになっているが、鵜呑み
にはできない。若ノ鵬、露鵬、白露山への処分との兼ね合いがあるからである。その中
でも若ノ鵬に対しては既に退職金が支払われているのであるからなおさらである。
 若ノ鵬が退職金を支給されたのは処分が除名ではなく解雇だからである。逮捕された
理由も、どちらも大麻所持であるから、一方では解雇であり退職金が支給されているの
に対して,他方では除名処分で退職金が支給されないでは相当性において問題がある。
相当性ということについては、民事上軽々しく扱えない。それについて、最高裁判決が
ある。
 高知放送事件 昭和52年1月31日 
 午前6時,ラジオのニュースを読まなければならない宿直中のアナウンサーが寝過ご
してしまい、ニュースが放送できなかった。2週間後,同じアナウンサーが又寝過ごし
てしまい,ニュースが放送できなかった。そのため、アナウンサーは懲戒解雇された。
ところが、その宿直中のアナウンサーを起こす担当者も寝過ごしていて,処分を受けた
のであるが、譴責処分にとどまった。アナウンサーに対する処分は苛酷であるとして、
処分は社会的に相当なものとして是認できない、従って解雇は無効となったという事件
である。
 この判決に照らしてみれば、若麒麟を除名処分にして退職金を不支給とすることは、
若ノ鵬に比して相当とはいえまい。若麒麟を除名処分とするのは協会の勝手ではあるが
、訴えられればおそらく負ける。解雇処分に留めたのは,それを回避したものとして賢
明ではないか。
 いずれにしても、解雇処分でも退職金を不支給とするには,寄付行為施行細則の改正
が必要である。そして改正したならば、ほったらかしにするのではなく、常に見なおす
ことが必要である。若ノ鵬に退職金を支給した際、武蔵川理事長も改正しなければなら
ないというようなことを言っていたが,改正する前に今回の事件となり、協会執行部も
狼狽してしまったということか。

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