2009/11/10
『 煩悩 』 10
この話は、11月1日から始まっていますので、初めての方は 最初からお読み下さい。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 『 煩悩 』 10 伊藤一刀斎は、なんで逃げるようなことをしたかというと、試合を すれば必ず自分が勝って、相手を殺すことになる。無益の殺生をせ んならん。と、自分で分かってるわけですね。それほど自信があっ たわけです。だからそういうことをしちゃいかんし、相手も死ぬん だし、こっちも無益の殺生だというので、試合を避けて、逃げるつ もりじゃないけど避けたんですね。ところがそれを余計な事を言う 者があって、結局相手を殺してしまったんです。 それを逃げてしまったら噂が立ちますね。伊藤一刀斎が逃げたぞと。 ですが、そういうことを全く気にしていないんですね。 ところが、中途半端な剣の出来る者であったら、なにがなんでもや っつけんならんということになってきて、我が可愛いから。名誉心 があるからなんとか、かんとかあるんでしょうけど、伊藤一刀斎は 逃げてしまった。 あとで、若し逃げ切ってしまったら、あいつは卑怯者だと言うだろ うけど、そんなことは気にしていない。気にしてなければ逃げるな んてしないですよね。 だから一芸に達した人は、白隠禅師のような境地の人が会得してる んじゃないかなと思いますね。 同じ謙虚な話しを前にもご紹介をしたと思いますが、幕末の剣士の 中に男谷精一郎という人があったんですが、この人は、どれくらい 強いか分からなかったというのです。それと勝海舟のお父さんと、 男谷精一郎とは同じ先生に付いて学んだ兄弟弟子なんですね。そし て勝海舟も成長して、その男谷精一郎に剣を学んだんですね。 九州の何処やらに、島田虎之助という人がいたんですね。 この人は非常に剣の強い人だったんです。それで武者修行だという て、田舎では分からんというので、やっぱり江戸へ出て来ないとい かんというので、遥々江戸へ行って、そして此処、此処という道場 へ行って他流試合をするんですが、皆負かすんですね。 そして車坂という所になんとかという剣客が居て、そこへ他流試合 を申し込んだところが、そこで初めて負けた。 そしてその時に、島田虎之助が、私は随分江戸へ来てあちこちの道 場をまわてきたけど貴方ほどの出来るお方は居られない。私は貴方 にだけ負けた。と言うと、その道場の先生は、男谷精一郎の道場へ 行って来たかと言うたんですね。 はい、行ってきましたと。行ってきたのか。それで試合をしたのか。 試合はしました。どうだった。引き分けたんですと。 然しながら、私ほうが少し部があったと思います。同じ引き分けは したんだけど、こっちの方が部があった。だから言うならば勝った と思いますと言うたんですね。 続く。。。


