『死者と仏事』 5
この話は、5月11日から始まっていますので、初めての方は
最初からお読み下さい。
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『死者と仏事』 5
「或は病人をして未だ終わらざるとき(つまり臨命終のとき)或は見聞せしめる」
着物とか物でしたら持ってきてこれはお前のものだろうと言えますね、或は見せる。
これをお前のためにこれを売って、そしてお地蔵さんの像を作らせてもらうぞと、お地
蔵さんの絵を描いてもらうぞと言うて聞かしめるということです。
「舎宅、財物等をもって自身のため地蔵菩薩の形像を塑画することによって」
これはお前のためだぞと、家族が勝手にするんじゃないんだ、お前の供養のためにお地
蔵さんを作り、お地蔵さんを描くんだぞということを、よく認識させるということで
す。
「この人、若し業報にして当に重病を受くべきものならんもこの功徳を受けて寿命が延
びる」
本来ならば死ぬところだけれども、それをしてもらったがために助かる。
と、いうこともあるということですね。
これの実際のことを紹介を致しますが、現にそういうことがあるのです。
「若しこの人、業報にして命尽きて当に悪道に出すべきものならんも、この功徳を受け
て命終の後、即ち人天に生ずることを得て諸の罪消滅するに至る」
人間に生まれるか、場合によっては天上界へ生まれるか。
信仰実話全集という本があるのですが、この中にこういうお話があるので紹介をしま
す。
江戸時代の終わりごろに臨済宗の誠拙(せいせつ)という人のことなんですが、江戸の
ある豪商の一人娘が大病にかかり、金に任せて医薬やら祈祷やら百方手を尽くしたが一
向、貢献がなく娘はいよいよ命旦夕(たんせき)に迫った。(臨命終ですね)時に、円
覚寺、誠拙は生き仏様だということを聞いたその金持ちは、早速金で和尚を迎えた。娘
の命の助かるように祈願を願った。
よしよし、ありがたい手法をしてやるぞ。
しかしお布施は前金だぞ。俺は後金というやつが嫌いでな。
へえへえかしこまりました。この娘の命さえ助かることでしたら、身代半分無くしたっ
てかまやしません。
そうか。そんなにたくさんはいらんが、金子百両に米百俵、それをすぐに円覚寺に送り
届けよ。
供養をしなさいということですね。えらい高いお布施だとは思ったが、身代半分と言っ
た手前値切るわけにもいかず、娘助けたさ一念で、和尚のいうとうりにした。
和尚は、もったいぶった調子で般若心経を一遍、祈祷はそれだけで済んだ。
そして人を遠ざけて、ただ病める娘の枕辺に座し、しんみりと聞かすのであった。
娘よ、死ねよ。安心して死んでいけ。
お前もこんな大家の娘と生まれてきながらその栄華も身につかさずに死んでいくとはま
ことに気の毒だが、宿命というものは神仏でもどうにもなるものではない。
続く。。。


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