2008/12/13
【頑張れ!!マイナー種牡馬とその産駒たち】 第253号
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(Mさんより頂いたメールを抜粋) ☆★☆ 勝ち上がり馬 ☆★☆ アッミラーレ産駒 チュニジアンブルー 牡2 5回中山2日 5R ダート・右 1800m 2歳新馬 血統 母 エアレジェーロ、 母父 アレミロード 毛色 黒鹿毛 戦績 1戦1勝 生産者 酒井牧場(浦河町) 調教師 尾形 充弘(美浦) 調教代わりにコースを1週?遊びながら走って圧勝!勝浦も舌を巻く強さ。 ●レース後のコメント(勝浦騎手) 「攻め馬に乗った感じでは、そこそこ普通に走れるかなぁという感触を得ていた んですが、レースでは意外にも自分から走ろうとしてくれなくて…。ふざけたり しながらも長く脚を使ってこれだけの勝ち方をするんだから、持っている能力は かなり高いですよ。今日は能力だけで勝ってくれました。精神面の成長が課題に なってくるでしょうが、当然上積みはあるだろうし、この先とても楽しみです。 芝で走らせも悪くはない気がしますが、まだ分からないですね」 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ シングンオペラ産駒 シングンレジェンド 牡2 5回中山1日 5R 芝・右 1800m 2歳新馬 血統 母 ピロット、 母父 ラムタラ 毛色 鹿毛 戦績 1戦1勝 生産者 ヒカル牧場(新冠町) 調教師 高市 圭二(美浦) “伝説”はここから始まる。しぶとさ発揮し、逃げ切り勝ち。父、兄が成し得な かったクラシック出走へ一歩前進。 ●レース後のコメント(高市圭二調教師) 向こう正面では遊びながら走っていましたが、直線で追ってからはしっかり走っ てくれました。とてもいいストライドをしているし、兄より距離が延びていいね。 じっくり調教を積んできた甲斐がありました。まだ勝ったばかりで次は未定です。 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ☆★☆ 注目馬 ☆★☆ メイショウホムラ産駒 メイショウバトラー 牝8 15着 5回阪神2日11R ジャパンCダート ダ・右 1800m 3歳上OP もう十分だ。よくやった。見るも無残な大差の最下位。それでも誰もお前をけな たりしないはず。 ●レース後のコメント(福永騎手) 流れにも乗れて上手く競馬が出来ましたが、さすがにこのメンバーでは厳しいで すね。よく頑張っていますが、最後は力尽きてしまいました。 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ メジロブライト産駒 マキハタサイボーグ せん6 6着 5回中山1日11R ステイヤーズS 芝・右 3600m 3歳上OP 展開が…。遅い流れに“意外性の玉無し長距離砲”が今年は不発… ●レース後のコメント(吉田豊騎手) 「スローペースで馬群が一塊になったので、その外を通ることになったのが痛か ったですね。去年は途中でばらけてみんなが動いてくれましたが、今年は自分か ら動くしかありませんでした。展開と位置取りの分ですね。それでも中山の長距 離は走りますね」 (11月29日、30日開催分) ☆★☆ 注目馬 ☆★☆ ザグレブ産駒 コスモバルク 牡7 17着 5回東京8日10R ジャパンC 芝・左2400m 3歳上OP 大外枠が災い…。道中に掛かり通しで直線失速…。それでもバルクの闘争心の火 はまだ燃えていた。 ●レース後のコメント (松岡正海騎手) 「久しぶりでも出来は良くて、掛かるほど元気があったんですが…。本当はもう 少し内に入れて、3・4番手で競馬をしたかったのですが、大外枠ではそれも出 来ず先行する形になってしまいました。残り1000mでハミをとってくれて、 手応えは良かったんですが…」 (田部和則調教師) 「直線で息が切れてしまったのは、急仕上げの分ですかね。故障明けのレースで したから、とにかく無事に帰ってきてくれて安心しています」 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ラスカルスズカ産駒 サワヤカラスカル 牝3 10着 5回京都8日11R 醍醐S 芝・右 1200m 3歳上1600万下 最速の上がりで追い上げるも、スタート直後に挟まれる不利が響き10着… ●レース後のコメント(浜中俊騎手) スタート後に挟まれて遅れたのが痛かったですね。この距離であれだけ遅れると さすがに苦しいですね。 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ セイウンスカイ産駒 ニシノプライド 牡4 12着 5回京都8日11R 醍醐S 芝・右 1200m 3歳上1600万下 一体どうしちまったんだい…?お前のプライドはそこまでか…。先行策から直線 失速。よもやの大敗。 ●レース後のコメント(和田騎手) いいポジションで上手く流れに乗れてスムーズな競馬が出来たんですが、直線で はまったく伸びませんでした。よく分からないです。 (11月22日、23日、24日開催分) ☆★☆ 勝ち上がり馬 ☆★☆ ゴールドヘイロー産駒 シーフォーアイ 牡2 5回京都3日 6R ダート・右 1200m 2歳500万下 血統 母 リンガスフラワー、 母父 オジジアン 毛色 青鹿毛 戦績 1戦1勝 生産者 鹿嶋牧場(新ひだか町) 調教師 岩戸 孝樹(美浦) 余裕残しの馬体で4馬身差圧勝!楽しみな奴が出てきた。その名もC Four I。 ●レース後のコメント (松岡騎手) 競馬センスの良い馬ですね。ゲートもポンと出てスムーズにレースが出来ました。 まだ馬体に余裕があったので、絞れてくればもっと良くなりますよ。ダートの短 距離が合っていますね。 (岩戸孝樹調教師) 「稽古の時から水準以上のものを感じていましたが、まだまだ良くなる余地を残 していると思っていました。少し余裕のある馬体で勝つんですから、能力の高さ を再認識しました。まだ良化の余地を残しているので今後が楽しみです。パドッ クではおっとりとし過ぎているようで、やる気があるのか心配していたんですけ ど、とても良い走りをしてくれましたね。やはりダートの方が合っていそうです ね」 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ゴールドヘイロー産駒 アイレンベルク 牝2 5回京都5日2R 芝・右 1400m 2歳未勝利 血統 母 トップアイレン、 母父 トニービン 毛色 鹿毛 戦績 4戦1勝 生産者 グラストレーニングセンター(浦河町) 調教師 佐藤 正雄(栗東) 「もう、怖くないもん!」 課題の馬込みを克服し、切れ味発揮!派手なメンコを被った小柄な少女が4戦目 で堂々初勝利 ●レース後のコメント(田村太雅騎手) 「外に1頭馬がいる形でしたけど、前々走と違って怖がるようなことはありませ んでした。大分レース慣れしてきたと思います。前回のように競馬は出来たし、 追えばしっかり伸びますし、快勝でした」 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ スピードワールド産駒 キューバンエイト 牡2 5回京都5日2R 芝・右 1400m 2歳未勝利 血統 母 キューバンダンス、 母父 サニーブライアン 毛色 鹿毛 戦績 6戦1勝 生産者 スピードフアーム(浦河町) 調教師 和田 正道(美浦) 休養で成長。4馬身差の逃げ切り勝ち!その名の通り曲芸飛行で軽く飛んだ? ●レース後のコメント(北村友一騎手) 「今日はゲートの出も速く、4コーナーでの手応えも楽でした。追い出してから スッと反応してくれました。終いも楽でしたよ。強かったですね。やはり一息入 れたのが良かったのでしょう。前走札幌の時と比べて、かなり馬が良くなってい ましたからね。軽い芝も合っているのでしょう」 ☆★☆ 注目馬 ☆★☆ サニングデール産駒 キングパーフェクト 牡2 3着 5回東京6日 5R 芝・左1400m 2歳新馬 皇成乗って1番人気も、3頭の追い比べで競り負ける…産駒初勝利はお預け… ●レース後のコメント(三浦騎手) 「道中いい感じで、4コーナーを回ったときも手応えが良くて、これはいけると 思ったんですが、最後3頭併せたとき内の馬が外にモタれてきて集中出来なかっ たようです。あれで集中出来るようになってくればいいんですがね…」 (11月15日、16日開催分) ☆★☆ 勝ち上がり馬 ☆★☆ バトルライン産駒 ラインオブナイト 牡2 5回京都3日 6R ダート・右 1200m 2歳500万下 血統 母 モスフロックス、 母父 サンデーサイレンス 戦績 3戦2勝 生産者 社台ファーム(千歳市) 調教師 庄野 靖志(栗東) さすが、騎士の系譜!こいつの勝負根性は本物!剣のような切れ味で差し切り! ●レース後のコメント(C.ルメール騎手) 「スピードがあって、癖のない乗りやすい馬です。距離は延びてもよさそうです」 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ヒシアケボノ産駒 オオヒメ 牝4 3回福島8日12R 相馬特別 ダート・右 1150m 3歳上500万下 血統 母 オジョウサマ、 母父 スリルショー 戦績 24戦3勝 生産者 武田 豊文(茨城県) 調教師 柄崎 孝(美浦) 「そこのけ!そこのけ!姫の御成り〜!!」 馬群の間隙を突く巧走!小回り福島で3戦全勝。“大柄な姫”は意外と御器用で… ●ジョッキーのコメント(柄崎騎手) 「本当はもう少し前へ行きたかったんだけど、ペースが速くてついていけません でした。手応えは十分だったけど直線では前が壁になってしまい、厳しい展開で したが、前が上手く開いてくれました。馬群の中で我慢させられたことは収穫で したね。馬体減は問題ありませんでしたよ」 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ アッミラーレ産駒 オーゴンシャトル 牡2 5回京都4日 2R ダート・右 1400m 2歳未勝利 血統 母 ベルキス、 母父 エルハーブ 戦績 3戦1勝 生産者 酒井牧場(浦河町) 調教師 河内 洋(栗東) 札幌で強敵に揉まれた経験が活きた好走。従姉ライジングショットの無念を晴ら す初勝利! ●レース後のコメント (藤田騎手) 「スタートはよくないと聞いていたのですがポンと出てくれました。北海道で強 いメンバーに揉まれて地力をつけていますよ」 (河内洋調教師) 「思ったより前で流れに乗れました。終いもしっかりしていますね。これなら上 のクラスでも楽しみです」 ☆★☆ 注目馬 ☆★☆ スエヒロコマンダー産駒 メトロシュタイン 牡4 6着 5回京都4日10R 比叡S 芝2400m 3歳上1600万下 「これじゃ、勝てねぇ…」 出遅れ、スローペース。いつもの負けパターンに祐一の凡騎乗…。敗因のオンパ レード… ●レース後のコメント(福永騎手) 「前に行きたかったけど、ゲートの中でうるさくて遅れてしまいました。スロー だというのは分かっていたんですが、流れに乗れていなかったし、器用な脚もあ りませんから…」 (11月8日、9日開催分) ☆★☆ 勝ち上がり馬 ☆★☆ リキアイワカタカ産駒 アートオブウォー 牡4 5回京都1日12R ダ・右 1400m 3歳上1000万下 血統 母 オステリア、 母父 リファーズスペシャル 戦績 17戦4勝 生産者 岡田 猛 (静内町) 調教師 小原 伊佐美(栗東) 26キロの馬体減で掛かっても何のその。適距離に戻ればここでは力が違う。 ●ジョッキーのコメント(小原騎手) 「ペースが遅くて引っ掛かってしまいました。軽めの調教ながら馬体が大きく減 ってしまい心配していたんですが、これで勝つんだから力のある馬です」 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ タイキシャーロック産駒 サンアスレチック せん4 3回福島5日7R ダ・右 2400m 3歳上500万下 血統 母 アルファジェット、 母父 ファストトパーズ 戦績 21戦3勝 生産者 坂本健一(静内町) 調教師 小島 茂之(美浦) 「みちのく一人旅」。福島で逃げればとにかく強い!福島で逃げて負けなしの3 勝目。 ●ジョッキーのコメント(的場勇人騎手) 自分が騎乗した2戦より馬がよくなっていました。2週目の向こう正面でもう押 し切れると思いました。自分の形になると本当に強いですね。 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ラガーレグルス産駒 ラガーチトセオー 牡6 3回福島6日5R ダート・右 1700m 3歳上500万下 血統 母 タカヤスホープ、 母父 ホープフリーオン 戦績39戦3勝(地方4戦2勝) 生産者 (有)飯田牧場(門別町) 調教師 大久保龍志(栗東) “演歌な男”がついにやった!苦節3年。中央35戦目で父に初勝利をプレゼン ト! ●ジョッキーのコメント(荻野琢真騎手) 中舘さんにマークされ、前の馬が外に寄れたので内を突きました。今日は状態も 良かったので反応も鋭かったです。 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ スエヒロコマンダー産駒 イナズマアマリリス 牝2 5回京都2日11RファンタジーS 芝・右1400m 3歳OP 血統 母 イナズマラム、 母父 ラムタラ 戦績 8戦4勝(地方5戦2勝) 生産者 小泉牧場 調教師 角川秀樹(北海道) 意外性の血を継承!ブービー人気で重賞初制覇。初夏の花アマリリスが晩秋に早 くも開花。 ●レース回顧 好スタートを決めると、すんなり先行。緩い流れにもピタリと折り合い、一団と なった馬群の最内でジッと待機。直線に入って追い出し、果敢に最内を突いたが、 先頭コウエイハートが外鞭に反応して内にヨレたため、その外へ進路変更。瞬時 に反応し、鋭い伸び脚を発揮。残り100mで抜け出すと、ゴール前では内から ワンカラット、外からアディアフォーンの猛追を凌ぎ切った。 ●レース解説 『ポイント1 レース経験』 このレースを振り返る上で、まずこのレースが2歳馬のレースだということを 念頭に置かなくてはいけない。 それを前提にせず、経験豊富な古馬のレースと同じように「展開」や「騎手の腕」 がどうだのと安易に考えてしまうと誤った見方をしてしまう。 このレースの結果を大きく左右したのが「レース経験」だった。 この時期の2歳馬は、まだキャリアの浅い馬が多い。 そういった馬たちは、まだ競馬を日々覚えている段階だけに、レースで能力を出 し切れない場合も多々ある。 このレースで断トツの1番人気に支持されたワイドサファイアなどもその最たる 例。 ユーイチが“シーザリオ級”と絶賛する素質馬のワイドサファイアもこのレース では出遅れたり、掛かったりするなど随所に幼さを露呈し、能力を出し切れずに 終わった。 ユーイチも敗因に「キャリア不足」を挙げ、仕方ないという趣旨のコメント。 むしろレースで揉まれる経験が出来たことは良かったと前向きに捉えている。 これに対し、勝ったイナズマアマリリスは、メンバー中で最多の出走経験があっ た。 2着ワンカラットは前2走とも重賞に出走。レベルの高いレースで揉まれた経験 はメンバー中随一だった。 「幼稚園児の運動会」と準えられる2歳戦。 展開云々以前に、まず馬がきちんと競馬をしてくれるかということが問われる。 このレースでも出遅れたり、掛かったり、ヨレたりと幼さを露呈する馬が続出。 その中で、イナズマアマリリスは終始無駄のない大人びたレース運び。これが勝 利の大きな要因となった。 2歳馬のレースでは、騎手は勝負とは別に、騎乗馬に競馬を覚え込ませるとい う「教育係」の役目も担う。 だから、レース経験の浅い馬に騎乗した騎手は、純粋に勝利だけを追求すればい いという訳にはいかない。 競馬で競うだけでなく、他にもいろんなことに気を配らなければならないことが 多いからだ。 スタートや折り合いはもちろんのこと、馬群への入り方、コーナーワーク、鞭の 使い方など挙げれば切りが無いほど。 馬群の中で怯んだり、コーナーで膨れたり、鞭を嫌がったりと、レースで相手と 競う以前の問題という馬も中にはいる。 しかし、イナズマアマリリスには、そんな心配はまったくの無用だった。 騎乗した池添も「乗りやすくて楽だった」との弁。余計な心配をすることなく騎 乗できたということだろう。 例えば、直線で最内を突こうとした場面。このとき、斜め前にいたコウエイハー トが按上の田村騎手の外鞭に対し、過剰に反応して内にヨレたことで、進路が塞 がってしまう。だが、イナズマアマリリスはまったく臆することなく進路変更の 指示に素早く反応することができた。 前が塞がったとき、進路を変更することは、競馬の中ではごく当たり前の騎乗。 しかし、これが2歳馬のレースとなると、話は違ってくる。 急に前方を塞がれたことで驚いて怯んでしまう馬もいれば、瞬時の進路変更にス ムーズな脚捌きができず、モタついてしまう馬もいるからだ。 だが、イナズマアマリリスはそういった事態にも難なく対応。 レース後、池添もこの場面のイナズマアマリリスの反応を「外に切り替えても、 ちゃんとハミを取ってくれましたからね」と称賛。 接戦となったこのレース、もしこの場面で少しでもモタついてしまっていたら、 この勝利はなかったはず。 僅差で2着に敗れたワンカラットがまさにそれ。 「直線で自分が行こうとしたところに、先に勝ち馬に入られて切りかえたロスが 痛かった」と藤岡佑介騎手はこれを敗因に挙げて悔やんだ。 この進路を切り替えたときのワンカラットの動きを見ると、イナズマアマリリス に比べてややスムーズさを欠き、藤岡佑介騎手が一瞬追えなくなっている。(写 真5) 藤岡が言うように、結局このロスが勝敗を左右した。 もし、イナズマアマリリスの反応が少しでも遅れていたら、ワンカラットとは逆 の立場になっていただろう。 まさにこの勝利は、イナズマアマリリスの「経験」と「センスの良さ」によって 掴んだものと言えよう。 イナズマアマリリスの「センスの良さ」が表れた場面はまだある。 瞬発力を発揮し、抜け出した後、両脇のワンカラットとアディアフォーンの猛追 を凌ぎ切った勝負根性だ。 経験豊富な古馬でさえ、中には抜け出すとソラを使ってしまう馬がいるというの に、2歳馬であれだけの勝負根性を発揮したイナズマアマリリスは賞賛に値する。 この最後の踏ん張りは、元来の類まれな勝負根性に加え、アマリリス自身が既に 競馬をしっかりと理解しているから成せたのだろう。 そんなイナズマアマリリスもここまでの過程には紆余曲折があった。 ダートを走っていた頃は、砂を被ると怯んでしまい力を出し切れないなど決して 最初から競馬が上手かったという訳ではない。 レース経験を積んでいく過程で競馬というものを学習し、理解していったのだろ う。 また、イナズマアマリリスの「センスの良さ」は、単に経験を積み重ねたから 身についていったという訳でなく、この馬に元来備わっている学習能力の高さが その礎になっている部分もあるのだろう。 中には、何十戦もレースを経験しながら、ほとんど競馬を理解していないような 走りしかできない馬もいるのだから。 こうして振り返ると、イナズマアマリリスの「経験」と「レースセンスの良さ」 が勝利の大きな要因となったことがよく分かる。 経験の浅い馬が多く出走する2歳戦では、「レース経験の差」も勝敗を決する大 きな要因となるのだ。 『ポイント2 瞬発力』 そして、このレースの結果を左右したもうひとつのポイントが「瞬発力」。 極端に遅い流れとなったこのレース。1000m通過タイムは何と「61.1秒」。 レースの上がり3Fが「34.8秒」。最後の2ハロンがともに「11.3秒」。 この数字だけを取り上げて単純に考えてしまうと、「先行有利の前残りの競馬」 と捉えてしまうだろう。 だが、当然のことながら数字だけでなく、各馬の動き、位置取り、馬群の形状、 コース形態、馬場状態など多角的な観点から分析しなければならない。 そうすると、このレースは「先行有利の前残りの競馬」ではなかったことが分か る。 では、これだけ極端に遅いペースでありながら、なぜこのレースが「先行有利 の前残りの競馬」ではなかったのか。 ここで特に目を向けなければならないのは、「ペース」だけでなく、「馬群の形 状」と「馬場状態」。 極端に遅い流れとなり、道中も馬群はギュッと詰まった団子状態(写真2)が続 いた。そして、直線を向いたときには全馬がほとんど横一線に並んだ形(写真3 &4)。 さらに、前日の開催から仮柵を設置したBコースの馬場は、その内外でほとんど 差のない絶好のコンディション。 つまり、各馬がほぼ横一線に並んだ状態では、その前後はもちろん、その内と外 でも有利差はないことになる。言ってみれば、よーいドンの100m競走みたい なものだ。 絶好の馬場状態に加え、京都の外回りコースは、直線では馬群がバラけやすく、 その長さも広さも勝敗を決するのに十分なもの。 つまり、能力差がそのまま出やすい条件と舞台ということになる。 このような状況下では、もう位置取りによる有利不利などはほとんど関係がなく、 純粋に「瞬発力」を競うガチンコ勝負となる。 実際、上位に入線した馬は道中に先行した馬ばかりという訳ではない。 例えば、2着に入ったワンカラットは4コーナーではまだ9番手。直線を向いた ところでイナズマアマリリスの直後につけていた。 レース後の騎手の談話を見ても、出遅れて中団からレースを進めた福永騎手をは じめ最後方に位置したルメール騎手まで“位置取りが後ろ過ぎ”ということを敗 因に挙げる騎手は皆無だった。 一概にスローペースと言っても、「馬群の形状」や「馬場状態」、「コース形態」 など様々な要因によって、レースの質と結果は大きく変わってくるのだ。 末脚を武器にする差し馬の好走パターンの代表例として、ハイペースによって 先行勢が崩れる展開がまず挙げられる。そして、その他にもスローペースで馬群 が一塊となった瞬発力勝負の展開がある。今回のレースなどまさにそれ。 つまり、今回のレースは、「レースの流れ」、「馬群の形状」、「馬場状態」、 「コース形態」を考えれば、「瞬発力」に秀でた馬には打ってつけの展開だった のだ。 直線を向いた時点では各馬がほぼ横一線、馬場状態も内外で差はなく、位置取 りに有利差はほとんどなかった。 しかしながら、そこに至るまでの過程においては、インコースを通った馬の方が 断然に有利だった。 馬場の内外で状態に差がなければ、当然距離損の少ないインコースを通った方が 有利であることは言うまでもないが、このレースではそれに加えて超スローペー スになったことで、馬群が凝縮し、横に大きく膨らんだ形状(写真2)になった ため、その外側に位置した馬はその分距離損が余計に大きくなったからだ。 従って、内枠のイナズマアマリリスに馬場状態と展開が味方したという側面があ ることは事実。 それでも、京都の外回り1400mのコースは、スタート後に400m弱の長い直線があ る。だから、外枠の馬でも先行力があれば、先行して内に入り込むことは可能だ。 また、馬群が直線でバラけやすいコース形態を考慮し、直線でインを突くことを 狙い、思い切って最後方で待機するという作戦を取れば、外枠からでもインコー スで距離損なく回ることができる。 しかしながら、今回のレースでそのような策を取った騎手がほとんどいなかった のは、このレースが2歳馬のレースだったからだろう。 まだそこまで器用に立ち回れる馬が少ないということだ。 外枠から後方に待機し、インコースを回ったルメールや岩田が直線でインを突か ず、敢えて大外に持ち出した。これは、インを突いても騎乗馬がはたして馬群を 縫うような器用な脚を使えるかという不安があり、そのリスクを回避したためで はないだろうか。 これがもし古馬のレースだったら、両者とも迷わずインを突いていたことだろう。 かなり稀な超スローペースとなったこのレース。そうなった要因に、純然たる 逃げ馬がいなかったということが考えられるが、それ以外に「騎乗馬に競馬を教 えたい」という騎手の意図が根底にあったことも考えられる。 例えば、ツルマルハローに騎乗したユタカ。 前走のデビュー戦で逃げ切ったツルマルハローである。 遅い流れを見越して、ハナに立った方がコースロスなく回れる分、有利になるは ず。 だが、ユタカは手綱を引き、敢えて馬群の中で折り合うことを選択した。 行こうと思えばハナを奪えたこの馬にそうさせなかったのは、今後の事を考えて 「レースの流れに乗って、馬群の中で折り合う」ということをこの馬に覚えさせ たかったからなのだろう。 そういった意図が各騎手にもあったのか、極端に遅い流れにも関わらず、この流 れに逆らって自分から動いていくような策は敢えて取らずに、各騎手とも淡々と レースの流れに乗ることを意識したような騎乗だった。 もし、これが古馬のレースだったら、こんな甘い騎乗はせずに、騎手同士の駆け 引きの中で自分から動いて、レースを自分有利に持ち込もうとする騎手もいたは ずだ。 これがレースを通じて競馬を覚える段階にいる2歳馬のレースと既にその段階を 卒業した古馬のレースとの違いの一端でもある。 レースでは瞬発力が求めらる傾向の強い昨今の日本競馬。 今回のような瞬発力勝負による結果も出走馬の能力を比較する上で重要な指標に なる。 そういった能力に秀で、瞬発力勝負で無類の強さを発揮し、時代を席巻してきた のがサンデーサイレンス産駒たちであることは周知の通り。 そのサンデーサイレンスの系統が日本競馬における現在の主流系統となった訳 だが、その中でイナズマアマリリスの配合はそれに属したものではない。 イナズマアマリリスの父スエヒロコマンダーは、現役時に重賞2勝という成績し か残せなかったマイナー種牡馬。その競走成績だけを見れば、種牡馬になれたこ と自体が幸運とも言える程。 母父のラムタラは、トレードマネー30億円超という大きな期待を掛けられ輸入 されたものの、その期待に応えることができず失敗に終わった種牡馬。 素軽さや瞬発力に欠けたことがその原因とされ、日本に輸入された欧州の一流種 牡馬の典型的な失敗例でもある。 このイナズマアマリリスの血統背景を見れば、軽い芝での瞬発力勝負を不安視さ れても仕方ないところ。 そのイナズマアマリリスが今回のような軽い芝での瞬発力勝負を物にした価値は 大きい。 血統的には、むしろ今回とは逆にハイペースでスタミナが要求されるレースで本 領を発揮できるタイプ。当然、距離延長もまったく問題ないだろう。 父スエヒロコマンダーは古馬になって本格化し、8歳まで現役を続けた馬。 成長力もあるはず。 特異なペースとなった今回のレースが次の阪神JF、そして来春の桜花賞に直 結するとは言い難い。 だが、今回イナズマアマリリスが見せてくれた「レースセンス」、「勝負根性」、 「瞬発力」がこの馬にとって今後の牝馬クラッシク路線を戦っていく上でも大き な武器になることは間違いない。 また、ワイドサファイアをはじめ今回はキャリア不足から能力を出し切れずに 終わった馬も、当然これからキャリアを積んで巻き返してくるだろう。 スローペースで直線の「よーいドン」というレースとなった今回は特に厳しいレ ース展開ではなく、池添の腕を要することもなく勝てたが、これから先に待ち受 ける厳しい戦いの中では、当然、「騎手の腕」も要求される場面があるだろう。 このレースの数日後、結婚を発表した池添。 お相手は7歳下のタレントというから、池添らしいか。 イナズマアマリリスの重賞制覇は、文字通り池添の結婚に花を添えた形。 アマリリスは南米の花。 オーバーな程に感情をストレートに表し、情熱的でラテン系とも言える池添には お似合いの花とも言える。 アマリリスの花言葉のひとつが「強い虚栄心」。 これも池添にピッタリか・・。 池添と牝馬と言えば、スイープトウショウ、トールポピー、シーイズトウショ ウ、ヤマカツスズラン、アローキャリーと続々と活躍馬の名が挙がり、「牝馬の 池添」と言える程、多くの輝かしい実績を残している。 イナズマアマリリスにもそういった先輩に近づけるような活躍を期待したい。 『転厩の効果』 ブービー人気という低評価を覆す劇的な今回の重賞制覇。 レース、そしてイナズマアマリリスの実力だけでなく、松元茂樹調教師の手腕に も目を向けなければならない。 道営所属だったイナズマアマリリスは、今回が転厩初戦。 転厩後は、坂路やプールなど中央の充実した施設で鍛え直された。 その成果が馬体にも表れた。前走より14キロも減りシェイプアップ。 細くなったというより、しっかり走れる体になったという印象。 これが直線の切れ味を生み出す原動力にもなった。 札幌では余裕残しの体ながら好走してきたと考えると、改めてこの馬の能力の高 さを思い知らされる。 この馬の芝適性と能力を評価し、本誌上でも中央への移籍を提言していたが、 これ以上ない程ふさわしい厩舎に移籍できて本当に良かったと思う。 移籍先の松元茂樹厩舎には、かつて父スエヒロコマンダーも所属。 さらに、スエヒロコマンダー産駒の稼ぎ頭メトロシュタインも同僚だ。 「スエヒロコマンダーの子はうちしか走らないから」と冗談半分に言う同師だが、 それも頷ける。 競走馬と人間の縁、これもまた競馬におけるロマンのひとつである。 スエヒロコマンダー以外にも、これまでにビリーヴ(スプリントGI2勝)、 ローブデコルテ(07年オークス)、ウインクリューガー(03年NHKマイル C)、ヤマカツリリー(02年阪神JF2着)、アルナスライン(菊花賞2着) などの活躍馬を育て上げてきた松元茂師が「いいスピードを持っている」と素質 を見込んだイナズマアマリリス。 過去には、プリモディーネ、スイープトウショウ、ラインクラフト、アストンマ ーチャンなど、後の活躍馬を多数輩出し、“出世レース”と称されるファンタジ ーSを制したことで、実績豊富な師の期待も大きく膨らんでいることだろう。 次走は、祖母スエヒロジョウオーが劇的な勝利を飾った阪神JFだ。 アマリリスの開花時期は5〜6月。ちょうどオークスの時期。 満開となるにはまだかなり早いが、次の阪神JFでイナズマアマリリスも大きな 花を咲かせることができるか。 ●夢とロマンに満ちた血統背景 私が競馬に魅力を感じるもの、求めるものは、馬券に当たったとか外れたとか という単純な快楽ではなく、1頭の競走馬の背景にある夢やロマン。 例え無名の未勝利馬であっても、その競走馬には誕生からレースに出走するまで に携わってきた様々な人間の夢や苦労や努力が込められている。 そして、サラブレッドの長い歴史は、まさにそういった夢やロマンを追い求めて きた人間の努力の歴史とも言えるだろう。 そんな夢やロマンに溢れた競馬の中で、私が特に応援したいと思うのは、血の 継承が困難なマイナー血統馬や規模は小さくても夢を追い求め日々額に汗を流し て懸命に頑張っている生産者たち。 そんな私が求めている夢やロマンをまさに凝縮しているのがこのイナズマアマ リリスという馬だ。 イナズマアマリリスが生まれた小泉牧場は、僅か4人で切り盛りしている小さ な牧場。 代表の小泉賢悟氏は2代目。小泉氏が先代から継いだとき、牧場の土地はかなり 痩せ細っていたという。 だが、「土の悪さを何とかしたいけど、土を改良するには金がかかる」と小泉氏 が自らの手で土地を耕し再生させると、牧場からはイナズマクロス、スエヒロジ ョウオー、スエヒロコマンダーという3頭の重賞勝ち馬が出た。 小泉牧場に初めて中央重賞制覇をもたらしたイナズマクロスは、小泉氏が「どう してもこの牝馬を牧場に残したくて、そのためには自分が馬主になるしかないと 思った」と、馬主資格をとって自身で所有した馬だった。 そして、時を経て、小泉牧場が大切にしてきたその3頭の重賞勝ち馬の血を継 ぐイナズマアマリリスが同牧場にとって久しぶりとなる重賞制覇を成し遂げた。 イナズマアマリリスは、まさに小泉牧場の長年の努力の結晶、そして生産者にと って夢のような配合と言える馬なのだ。 先日、西山牧場売却というとても残念なニュースが報じられた。 名門オーナーブリーダーでさえそのような状況に追い込まれてしまったように、 近年馬産界では中小の牧場を取り巻く状況が非常に厳しくなっている。 不況や地方競馬の相次ぐ廃止の影響で止む無く廃業を選択する小規模生産者が後 を絶たないというのが実情だ。 そんな中、小泉牧場のような小さな牧場が牧場ゆかりの血統を持つ自家生産馬同 士の配合で中央の重賞勝ち馬を出すのはとてつもない快挙と言える。 それを実現させたのが小泉氏の情熱、そして夢やロマンなのだろう。 「スエヒロコマンダーの名を後世に残してあげたかった」という一心で毎年牧場 の繁殖牝馬にスエヒロコマンダーを交配し続けてきた小泉氏。 現実的に考えれば、成功の確率は低いのだろう。そして、そんな“思い入れ”だ けで成功を手にするのは難しい商売だというのも現実だ。 それでも小泉氏は、「思い入れだけでは、この世界ではやって行けないことは分 っているけれど、何とかスエヒロコマンダーの産駒に走って貰いたかった。スエ ヒロコマンダーの仔は走るという信念を持ち続けていました」という強い信念か らスエヒロコマンダーに自分の夢を賭けた。 それは小規模生産者の意地あるいは執念とも言っていいだろう。 そんな小泉氏の情熱、夢やロマンの結晶がイナズマアマリリスなのだ。 イナズマアマリリスが見せた「絶対に負けるもんか!」というようなあの勝負根 性は、まるで小泉氏の執念が乗り移ったかのようにも思えた。 3世代目の産駒から中央重賞勝ち馬を輩出し、小泉氏の信念に見事応えて見せ たスエヒロコマンダー。 種牡馬としての高い資質を証明した訳だが、今年の種付けシーズン終了後にシン ジケートが解散となり、種牡馬を引退することが一度は決まっていた。 スエヒロコマンダーのその窮地を救ったのが、小泉氏ら関係者、そしてイナズマ アマリリスだ。 シンジケートが解散となり、種牡馬引退の断が下されたときも小泉氏は、決して スエヒロコマンダーの可能性を諦めようとはしなかった。 オーナーら関係者と話し合い、スエヒロコマンダーの種牡馬登録を残しておくこ とにしたのだ。 供用先の優駿SSを退厩し、現在は赤石久夫牧場分場でノンビリと過ごしてい るスエヒロコマンダーであるが、孝行娘イナズマアマリリスの活躍で来年以降も 種牡馬を続けられそうだ。 それを可能にしたのも、一度は種牡馬失格の烙印を押されたスエヒロコマンダー の可能性を信じ、その種牡馬登録を残しておいた小泉氏の強い信念があったから こそ。 「来年の種付けシーズンまでにスエヒロコマンダーの供用地を考えておかなけれ ばなりませんね」と語る小泉氏。 その胸の中は、自らが生産したスエヒロコマンダーに賭ける夢で一杯なのだろう。 孝行娘イナズマアマリリスの重賞制覇以降、小泉氏の元にはスエヒロコマンダー の種付けの申し込みや問い合わせが殺到しているという。 スエヒロコマンダーの仔たちが次はどんな夢を見させてくれ、そしてロマンを感 じさせてくれるか今から楽しみだ。 ●血統解説 <母系> 母系は、浦河・酒井牧場が輸入した英国産ウオーターミユージツク(5代母)を 日本での基礎繁殖としている。 この系統からは、ダートGIを4勝したアブクマポーロが出ている。 祖母イナズマクロスは、当時若手のホープだった横山典弘騎手と主にコンビを組 み、後方一気の鋭い末脚を武器に芝で活躍。91年クイーンSで重賞制覇を飾る と、続くエリザベス女王杯でも4着と健闘。産駒は中央で3勝したトーセンサン ダー(父パラダイスクリーク)が最高の成績。母イナズマラムは宇都宮で1勝のみ。 <父系> 父スエヒロコマンダーは、92年阪神3歳牝馬S覇者スエヒロジョウオーの初仔 で、コマンダーインチーフ産駒。一発屋に終わった母とは対照的な晩成型で古馬 になって本格化すると、芝の中距離重賞を2勝した。その後は、重賞で2着3回、 3着4回 と勝ち切れなかったが、中長距離重賞路線で4年に亘り活躍。8歳1月、通算6 0戦目の日経新春杯を最後に現役引退。 シンジケート(1株100万円×30口)が組まれ、03年に優駿SSで種牡馬入り。 種付け頭数は初年度の24頭が最多と伸び悩んだが、06年デビューの初年度産 駒から、中央4勝、オープン特別2着メトロシュタイン(牡4)を輩出。 さらに3世代目のイナズマアマリリス(牝2)が重賞・ファンタジーSを制覇。 コマンダーインチーフの後継として期待できたが、残念ながら今年シーズン後に シンジケートが解散。 現在は静内・赤石久夫牧場分場で繋養されている。 種牡馬引退の話も持ち上がっていたが、イナズマアマリリスの活躍で種牡馬を続 けられるとのこと。 <配合> 父スエヒロコマンダーがNorthern Dancer 4 x 5、母父ラムタラがNorthern Dancer 2 x 4と、ともにNorthern Dancerのクロスを持ち、この血を主体とした配合。 成長力に富み、距離の融通性も高い。 母系は、ラムタラ、シービークロス、セダン、ヒンドスタンとスタミナに富む種 牡馬が代々配されており、スタミナ色が濃い。 母方の祖母イナズマクロスも2000m〜2400mの距離を最も得意としていた。 この母系と現役時に長距離でも実績を残したスエヒロコマンダーとの配合からは スタミナへの不安はなし。 スタミナ色の強い配合のイナズマアマリリスが2歳時からスピード競馬に対応で きているのは、マイラーだったトウショウペガサスの産駒スエヒロジョウオーの 血とNorthern Dancerの血の良さの一つである距離の融通性の高さからか。 このNorthern Dancerの距離の融通性の高さという点では、Lyphard〜ダンシング ブレーヴ〜コマンダーインチーフと繋がる父系の良さが出ているのだろう。 Lyphardは自身がスピード型でありながら、直仔や孫は幅広い距離で活躍。 そのLyphardの代表産駒がダンシングブレーヴで、ダンシングブレーヴの系統は今 のところLyphard系の中で最も繁栄しており、この系統の産駒もスプリント戦から 長距離戦まで幅広い距離で活躍している。 また、このLyphard系の良さの一つが遺伝力の強さ。 これが父系を継続させている要因となっているだけでなく、母系に入っても多大 な影響を与え、ディープインパクト(母父父Lyphard)、メイショウサムソン、ス イープトウショウ(ともに母父ダンシングブレーヴ)など多くの名馬を輩出して いる要因となっている。スイープトウショウなどは、その距離適性からは父エン ドスウィープの産駒というより、ダンシングブレーヴの産駒と言ってもいい程だ。 さらに、イナズマアマリリスの配合で強調できるのがNijinsky 5 x 3のクロス。 Nijinskyの血は日本向きの素軽さに欠け、日本において父系は繁栄していないが、 母系に入るとこの血の良さである底力を伝えて、大一番に強い産駒を多数輩出し ている。 イナズマアマリリスの勝負強さもこのNijinskyの血の良さが出ているのかもしれ ない。 ●馬体診断 バランスが良く、すっきりとした好馬体。 筋骨隆々のパワー型ではないので、ダートより芝向き。 繋の角度からもそれが言える。 後ろ脚の繋が棒立ちではないので、バネの効いた推進力の大きい走りができる。 このバネと長い脚から生み出されるストライドの大きなフットワークは、距離が 延びてさらに威力を発揮しそう。 現時点で大人びた競馬ができる本馬であるが、筋肉の付き方などを見ると馬体は 成長の余地をまだかなり残しており、単なる早熟馬ではないはず。 順調に調教を積んでいけば、まだまだ強くなれる奥の深さを持っている。 ●生産牧場紹介 新冠町の(有)小泉牧場は1955年創業。社長の小泉賢悟氏は2代目。 先代から牧場を継いだ時、腰が弱い馬しか育たないことに危機感を覚え た小泉賢悟氏が、自分の手で土を掘り返し、土壌を改良した成果もあり、91年 クイーンSでイナズマクロスが生産馬として重賞初制覇を飾ると、翌年にはスエ ヒロジョウオーがGI阪神3歳牝馬Sを制覇。さらにそのスエヒロジョウオーか らスエヒロコマンダー(重賞2勝)という活躍馬が出た。 99年6月のスエヒロコマンダーの鳴尾記念(G2)制覇以降、長らく重賞に手が届 いていなかったが、前述3頭の血を引くイナズマアマリリス(牝2)が先日のファ ンタジーSで久しぶりの重賞制覇をもたらした。 ●調教師紹介 松元茂樹(60歳)。 京都府出身。日本大学卒業。栗東トレーニングセンター所属。 大学卒業後二十代のころは歌手をしていたという変り種。 十回近く調教師試験に落第し、四十代で開業したという苦労人でもある。 実兄の松元省一もJRAの元調教師で、トウカイテイオー、スティルインラブ、フラ ワーパークなどの名馬を育て上げた。 ●関係者のコメント (池添謙一騎手) 「返し馬から軽い芝にも対応できる感触はあったし、積極的に行こうと思ってい ました。スタートが良かったので、スッと逃げ馬の後ろにつけることができまし た。遅い流れでも逃げ馬の後ろでじっと我慢して脚をためることができたし、ス ムーズにレースを運ぶことができました。直線は内が塞がったので外に切り替え たんですが、それでもハミを取ってくれましたからね。競り合う形になっても良 い勝負根性を見せてくれました。京都の軽い芝にも対応できたし、すごく乗りや すい馬で距離は延びても大丈夫だと思います。結果が出たので次が楽しみです」 (松元茂樹調教師) 「芝が合うのは札幌での競馬で分かっていました。むしろ、芝でこその馬じゃな いかな。調子は良かったし、体重が減ったのは決してガレたものじゃありません。 予定通りの体重で出走できました。今回は凄いメンバーだったと思うし、先々ク ラシックに出てくる馬も何頭かいるでしょう。その中でいい勝ち方をしてくれた ので、これからが楽しみですよ。それにしても、スエヒロコマンダーの子はウチ でしか走らないみたいだね(笑)」 (生産者の小泉賢悟さん) 「馬が自分で道を切り開いてくれました。札幌で勝っていなかったら、ここで走 ることもなかったんですからね。何とかこのまま順調に行って、来年はチューリ ップ賞から桜花賞へと駒を進めて欲しいと願っています」 頑張れ!!マイナー種牡馬とその産駒たち ブログ版 exciteブログ→ http://masashige.exblog.jp/ DTIブログ→ http://massy.4.dtiblog.com ブログ版では、いち早い情報や地方競馬を中心に書いています。 〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓 ●発行者:石沢真重 ご意見・ご感想・ご要望はこちらにどうぞ ○e-mail : masa_ishizawa@nifty.com 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