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科学の楽しさはふとした疑問から。発行・編集の責任者は、藤田です。科学翻訳者・科学ジャーナリストです。他にも多くのライターが、それぞれの持ち味で執筆します。このメルマガは、「科学をもっとおもしろくする委員会」の提供でお送りします。

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2009/12/16

【科学】パンダのフンからイノベーション!

─────────────────────────  2009  ──

【科学をちょいびき!】
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ご存知のように、今年のノーベル賞では、残念ながら日本人の受賞者はなし。昨年の3人の同時受賞に
比べると、やや寂しいものがありました。しかし、“あのノーベル賞”のほうでは、今年もしっかり日本
人の研究者が受賞していたのをご存知でしょうか。

今回は、松田美恵子さんが、今年“あのノーベル賞”を受賞した日本人研究者ご本人から得た話を紹介し
ます。

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【パンダのフンからイノベーション!】
本号執筆: 松田 美恵子
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事業仕分けが議論を呼びました。予算配分からみた科学技術への評価と言えますが、全く別の評価軸
もあります。毎年、ユーモアのある研究におくられる「イグ・ノーベル賞」。

2009年は、パンダのフンから効率よく生ゴミを処理する菌を発見した、田口文章教授らに生物学賞が
贈られました。この度、田口教授のお話を聞く機会がありましたので、紹介します。 

科学技術振興機構のHPには、田口教授の受賞のニュースが出ています。

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Science Links Japanの“Researchers win "Ig Nobel" prize for cutting waste with panda 
feces”です。
http://sciencelinks.jp/content/view/973/286/
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イグ・ノーベル賞主催者によれば、この賞は、人々を笑わせそして考えさせる研究に対して贈られる
もの。イグ・ノーベル賞の解説が、同賞を主催する団体“Improbable Research”にあります。

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Improbable Research の“The Ig Nobel Prizes”です。
http://improbable.com/ig/
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受賞の知らせを受け取ったとき田口教授はこの賞のことを御存知なく、最初は間違いメールかと思っ
て削除していたそうです! 

授賞式の受賞者のスピーチは60秒。その中で始めはおもしろおかしく、後半考えさせる内容を求めら
れます。田口教授は、たまたま持っていたパンダの人形を見せて、観客の笑いをとったとのこと。 

2日後の一般向け講演会では、講演時間はなんと5分。最初書いた草稿は3倍くらいの量になったの
で、削りに削ってプレゼンテーションを行ったそうです。そのタイトルが”feces innovation”(「フ
ンからの技術革新」)です。実はこの研究、廃棄物を処理しつつ、新たなエネルギーを生み出すユ
ニークなシステムの開発研究だったのです。 

田口教授は、当初、水素発生の研究を進めており、シロアリから水素を発生させる菌を分離すること
に成功しました。しかし、シロアリの菌でゴミを分解すると、水素が発生するとともに残滓が残って
しまいます。 

これを分解する菌を求めて、思い至ったのがパンダです。パンダは40キロのササを食べて40キロの排
泄物を出します。一見、吸収されていないようですが、あれだけの体を維持しているのだから、何か
あるに違いないと考え、フンを相手に数多くの実験を重ね、複数のゴミを分解する処理速度の速い菌
を選び出していきました。 

科学技術振興機構のホームページにある、受賞対象となった論文の要約をご覧下さい。

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Science Links Japanの“Microbial Treatment of Food-Production Waste with Thermopile 
Enzyme-Producing Bacterial Flora from a Giant Panda”です。

http://sciencelinks.jp/j-east/article/200310/000020031003A0267180.php
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田口教授によると日本国内で出る植物性廃棄物は年間約1兆ポンド(約5億トン)。ここから、現在な
ら約1.3兆立方フィート(約200億立方メートル)の水素が得られます。これは、水素燃料電池自動車
100万台を150日走らせられるエネルギーに値するとのこと。そして、廃棄物は70%が微生物で分解
可能です。 

シロアリとパンダのおかげで、水素エネルギーを得ながらゴミを減らせるという、まさに画期的なシ
ステムです。 

田口教授の専門はもともとウイルスの研究ですが、“英知と実践”という北里柴三郎教授の言葉に感銘を
受け、病院のマットレスの清潔度を調べるなど、生活に密着したいろいろな研究も続けてきたそうで
す。今回の受賞もその延長上にあります。 

田口教授が監修する「理科好き子供の広場」のページには興味深い話題がたくさん載っています。教
授が理事長を務める微生物管理機構のホームページをご覧下さい。 

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「理科好き子供の広場」です(日本語)。第67話には「イグ・ノーベル賞とはなんだろう」という話
もあります。
http://www.microbes.jp/rika/rikamenu.htm
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<科学をもっとおもしろくする委員会>より

田口教授の研究はまさに“フン闘”といった感じですね。松田さんが伝えているように、田口教授はイ
グ・ノーベル賞のことをご存じなかったようですので、きっとはじめは何のことやら理解できなかっ
たことでしょう。しかし、上の「理科好き子供の広場」に書かれてあるように、田口先生は、5000件
もの受賞候補者うちから選ばれた10名と聞いて、「ありがたく頂きます」と事務局に答えたそうで
す。そして、イグ・ノーベル賞について、「ふざけているように見える部分もありますが、科学的で
あり真面目なものであるとの印象をもちました」という感想を述べています。

これだけあたたかい話題を私たちに提供してくれたのですから、それだけでも十分、社会のために
なった研究成果といえるのかもしれません。

次回の「科学をちょいびき!」もどうぞご覧ください。
(う)
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                   (発行ID:0000169799)
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 発行人:科学をもっとおもしろくする委員会
                            choibiki@googlegroups.com
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