ヴェスター第288話 「闘神」
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ヴェスター(Vester) : Vol.288
発行日:2008/07/12
発行元:VesterProject
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◇第288話 闘神◇
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その頃、ラルフはガルックに、ニーナの見た夢について話していた。
「そ、それは、本当のことなのか?」
ラルフから話を聞かされたガルックは、ショックを受けていた。
「ああ・・・最初見た時は、俺も信じられなかった。
ニーナが怯えていた理由も、よくわかるよ。」
「まったくだ。俺達が、ヴェスターの中央研究所で生まれてたなんて・・・
しかも、俺達は何らかの実験を受けていて、その実験を行っていたのが、
俺達の両親って、もうわけわかんないよ。
親父もおふくろも、大の機械音痴だったのに、一体どういうことだ?」
「これには、きっと何かあるはずだ。
俺は、この夢の裏に隠されている真実を知りたい。
幸いにも、この実験に関わっていた人間は、すぐ傍にいるわけだし・・・」
「ドクターヘンゲルか?」
ガルックがそう言うと、ラルフは首を横にふる。
「ドクターヘンゲルには、今頃、ニーナが話を聞いてるはずだ。
でも、きっと話してはくれないだろう。」
「どうして?」
「ドクターヘンゲルが、ヴェルガントの部下だから。
ヴェルガントが隠蔽させている以上、部下であるドクターヘンゲルが、簡単に
話してくれるとは思えない。」
「そうか・・・そうだよな。」
ガルックはそう言うと、大きなため息をつく。
「お前達・・・一体何者なんだ?」
そばで、2人の話を聞いていたイリノアも、驚きを隠せなかった。
イリノアにとっては、ラルフ達は、ヴェルガントにさらわれた人質を取り戻しに
来た、勇敢な旧人類という認識でしかなかった。
それが、実は中央研究所で生み出され、しかもそのプロジェクトには、あの
ヴェルガントまでが関わっていたと言うのだから、驚くのも無理はなかった。
(ヴェルガント様は、一体どうして、このようなことを・・・)
そんなことを考えていたら、ラルフが声をかけてきた。
「さあ、何者かなんて、俺達の方が知りたいくらいだ。
ガイガードにいた頃は、ごくごく普通の学生だと思ってたのに・・・
ところで、イリノアは、俺達のこと、何も知らなかったのか?」
「知ってたら、こんなに驚くと思うか?」
イリノアがそう言うと、ラルフは考えだす。
「どうした、ラルフ?」
何か考えているラルフに、ガルックが声をかける。
「イリノアが知らないということは、もしかしてルードも知らないのか?」
ラルフがイリノアに尋ねる。
「多分な・・・アイツは女を追い求めて、あちこち行ってたから、その時に
どこかで事実を知ったって可能性も否定はできんけどな。」
イリノアがそう言うと、ラルフは首を横に振る。
「いや、多分、それはないだろう。
あの皇帝アーリアですら、俺達の正体を知りたがっていたくらいだしな。
この実験は、恐らくヴェルガントが独断で行ったことだと思う。
だから、真実を知る人間は、少ない方がいいということになるんだけど・・・
しかし、四天王にすら話していないとは、よほどの機密事項らしい。」
「なるほど、ということは、この事実を知っているのは、ドクターヘンゲルと
ヴェルガントの2人だけと思った方がよさそうだな。」
ガルックがそう言うと、ラルフはコクリと頷く。
イリノアは、信じられないといった表情で、ラルフの方を見ていた。
「だったら、話は早いな。
ヴェルガントの所に行って、話を聞かせてもらおうぜ。」
ガルックがそう言うと、ラルフも頷く。
「ああ、どのみち、エミリーを助けに行かないといけないんだ。
だったら、その時にでも、ヴェルガントに・・・」
「そんなに簡単に、話を聞けるとでも、思うのか?」
突然、ラルフの目の前に、黒い影が現れる。
「ダークソリア!!」
「今、お前達が行っても、ヴェルガントは、フィールにはいない。」
ダークソリアがそう言うと、そこでラルフ達は、ようやくヴェスターが
謎の大艦隊の攻撃を受けて、戦争中であったことを思い出す。
「そう言えば、今、ヴェルガントは出撃してたんだよな。」
「それにしても、戦争しているとは思えない静けさだよな。
少し前まで、あれほど爆撃を受けていたはずなのに・・・」
ガルックがそう言うと、ラルフもそのことに気づく。
とその時、ダークソリアが手に持っていたモニターを、ラルフに渡す。
「何だ、これは?」
「お前達は、見ておいた方がいいと思ってな。」
ダークソリアがそう言うと、途端にラルフの表情が険しくなる。
何となく、それが、ヴェルガントと関係のある映像だと思えたからだ。
ラルフは、ダークソリアから受け取ったモニターの電源を入れる。
ガルックは、ラルフの持つモニターを覗き込んでいた。
そして、モニターに映像が映し出された瞬間、ラルフもガルックも絶句する。
「な、何だ・・・これは・・・」
ガルックが驚きの声をあげる。
「見ればわかるだろう。ヴェスターを攻撃してきた艦隊の映像だ。」
ダークソリアが無表情で答える。
ラルフもガルックも、モニターの映像に引き込まれていた。
1000隻以上のウィクスの大艦隊が、ヴェスター目がけて進撃していた。
だが、その前に立ちはだかったのは、一機の真紅のヴェクト・アーマー。
そのヴェクト・アーマーは、艦隊が張り巡らしたバリアを突き破ると、単身で
敵艦隊に向かって突進していった。
そのヴェクト・アーマーの破壊力は凄まじい速度で、敵艦隊に近づくと、
凄まじい破壊力で、次々と戦艦を破壊していく。
ヴェクト・アーマーが通り過ぎるだけで、宇宙空間に無数の爆発の光が
輝きだす。
約1000隻の大艦隊は、必死に攻撃するが、真紅のヴェクト・アーマーの
前に、次々と破壊されて、その数を減らしていった。
「な、な、なんて・・・スピードと、破壊力だ・・・
まるで、紙細工のように、敵の大型戦艦を・・・」
ラルフの体から、嫌な汗がどっと噴き出す。
ヴェルガントは、銀河系最強と言われるほどの戦士だってことは知っていた。
だが、よもや、ここまでの破壊力とは思わなかったのだ。
ラルフの体が、ガタガタ震え出す。
ガルックも同じだった。
あまりにも圧倒的なヴェルガントの破壊力の前に、2人とも、金縛りに
あったかのように、身動き一つ取れずにいた。
敵艦隊が、全く何もしなかったわけではない。
いや、敵艦隊は、むしろ、ありとあらゆる攻撃を、ヴェルガントに仕掛けて
おり、その多彩な攻撃から、敵の将がいかに優れているかがうかがえた。
だが、それでも、ヴェルガントには通じない。
ミサイルを撃とうが、レーザーを撃とうが、ヴェルガントには通じない。
ヴェルガントの素早さをとらえるのは、至難の業であり、例え命中しても、
ヴェルガントの周りを取り囲んでいる巨大なエネルギー障壁が、全てはじき
返してしまう。
そして、たった一撃の攻撃で、大型戦艦ですら、簡単に破壊してしまう
ヴェルガントの驚異的な破壊力。
これらの前には、いかなる作戦も、無力と化してしまうだろう。
その時、敵艦隊から、巨大なミサイルが発射される。
フェムト・ミサイル。
ヴェスターに致命的なダメージを与えた惑星破壊ミサイルが、再びヴェスター
目がけて、突き進んでいた。
フェムト・ミサイルが、ヴェスターに向かっていることに気づいたら、きっと
ヴェルガントはフェムト・ミサイルの方に向かうだろう。
実際、ウィクスの艦隊司令ジェルギーガは、それを狙っていた。
ヴェルガントが、フェムト・ミサイルに接近したところで、リモートで
フェムト・ミサイルを爆発させて、ヴェルガントもろとも吹き飛ばそうと
考えたのだ。
だが、ヴェルガントは、フェムト・ミサイルをチラッと見ると、自らが行く
代わりに、巨大な闘気をフェムト・ミサイル目がけて放った。
その巨大な闘気は、フェムト・ミサイルを覆うと、凄まじい力で進行方向を
捻じ曲げ、なんと敵艦隊の旗艦の方へと進行方向を変えさせた。
そして、敵艦隊目がけて、凄まじい勢いでミサイルを放つ。
闘気によって、さらに加速がついたミサイルを、敵艦隊はかわすことができず、
フェムト・ミサイルが、敵艦隊に命中すると、大爆発を起こし、その爆発に
周囲にいた数百の艦隊も巻き込まれ、一瞬で消滅した。
モニターの映像は、ここで終わっていた。
「・・・・・・」「・・・・・・」
ラルフもガルックも、言葉すら出てこなかった。
ヴェルガントの凄まじさに、圧倒されてしまっていた。
「ラルフ・・・」
とその時、基地の方から、ニーナがやってくる。
だが、ラルフには、ニーナの声すら届いていなかった。
「そっか、ラルフとガルックも、あの映像を見たんだね。」
ニーナがそう言うと、ようやくラルフが反応を見せる。
「ま、まさか、ニーナも見たのか?」
「ウ、ウン・・・さっき、ドクターヘンゲルに見せられて・・・
ど、どうしよう、ラルフ?」
ニーナは、不安な表情を覗かせていた。
「や、奴は・・・本当に、人間なのか?」
ガルックが、かすれた声で、そう呟く。
ガルックがそう言うのも、無理はなかった。
たった1機で、1000隻の敵艦隊を壊滅させた戦いぶりは、とても人間の
ものとは思えなかった。
あれは、まさに闘神だった。
「ヴェルガントとまともに戦っても、俺達には、万が一の勝ち目はない。
だったら、ヴェルガントがまだいない今を狙って、エミリーを助けに行くしか
他に手はない。」
ラルフがそう言うと、ニーナもガルックも頷く。
「そう簡単に、うまくいくとは思えんがな。」
ラルフ達に向かってそう言ったのは、ダークソリアだった。
「何だと、それは一体・・・」
ラルフはそう言いかけて、背後から、凄まじい気配を感じ、振り向く。
そこには、剣を抜いたイリノアの姿があった。
「イリノア・・・」
「お前達が、どこに行こうと勝手だが、ヴェルガント神殿に向かうのだけは、
見過ごすわけにはいかん。」
イリノアはそう言うと、ヴェクト・アーマーを装備し、剣を構える。
(続く)
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◇登場人物◇
・ラルフ=ガートナー
ガイガードに住む17歳の少年。伝説の武器ヴェクト・ソードを使いこなす。
・ニーナ=ルクライエ
ガイガードに住む17歳の優しい女の子。不思議な能力を持っている。
・ガルック=ソート
キルアに住んでいた17歳の少年。魔法と覇王流という剣術を使う。
・エミリー=ガートナー
ラルフの妹で、15歳の女の子。子ども扱いされるのを、非常に嫌う。
なお、登場人物の紹介は、VesterProjectのHPで詳しく紹介しています。
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たまに不定期で番外編が出ることがあります。
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