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ラルフ達主人公の友情と恋愛、そして戦いを描いた新しい形のSFファンタジー。エミリーを助けるべく、ヴェスターに乗り込んだラルフ達の前に、皇帝アーリアの罠が次々と立ちはだかる。果たしてラルフ達は、エミリーを無事に救出できるのか?全てを賭けた戦いが今始まる。

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2008/05/24

ヴェスター第283話 「限界を超えた戦い」

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  ヴェスター(Vester) : Vol.283
  発行日:2008/05/24
  発行元:VesterProject
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◇第283話 限界を超えた戦い◇
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 だが、ニーナはさらに魔力を増大させようとしている。
 これ以上、魔力を増大させたら・・・
(もういい・・・やめろ・・・やめるんだ・・・
 これ以上やったら、本当に死んでしまうぞ・・・)
 ルードはそう思い、ハッとなる。
(死んでしまうってなんだ?
 俺はニーナを殺そうとしてたんじゃないのか?)
 気がつくと、いつの間にか、ニーナのことを心配している。
 自分が殺そうとしている相手のことを心配するなんて・・・
 自分のあまりにも矛盾した考えに、思わずルードは自嘲する。
 その時、ニーナのトールハンマーがさらに大きくなる。
(ニーナは、この俺の魔法に、真っ向から挑んでくるつもりだ。)
 ルードは、さらに魔力を振り絞ると、ルフェランシアのエネルギーをさらに
増大させる。

 ニーナは、限界を超えた魔力を放出し続けていた。
 そのため、体中の毛細血管から血が吹き出し、全身に激痛が走っていた。
(体中が痛いよ・・・つらいよ・・・)
 でも、ニーナは魔力をトールハンマーに注入し続ける。
(でも、この戦いにだけは・・・絶対に負けたくないんだ・・・)
 それは、ニーナのラルフに対しての思いだけではなかった。
 自分がもっと早く、自分の気持ちに気づいていたら・・・
 それをもっと早く、ルードに伝えることができていれば・・・
 ルードの傷は、ここまで深くはならなかっただろう。
 だから、ルードの暴走は、自分が止めなければならない。
 それに、ルードには、いつまでも自分のことに、いや、アスタリアの幻影に
囚われていてほしくなかった。
(だから、私が、ルードさんをとらえている幻影を、断ち切ってあげたい。)
 気を許すと、すぐに気を失ってしまいそうだった。
 だけど、ニーナは力を振り絞って、魔力をさらに増大させる。

 そんなニーナの姿を見て、ルードは完全に狼狽していた。
「やめろ、これ以上やったら・・・本当に死んでしまうぞ。」
 だが、ニーナの性格を考えると、絶対にやめないだろう。
 だったら、止める手段は一つだ。
「俺の魔法で、すぐに楽にしてやるからな。ニーナ!!」
 ルードはそう言うと、魔力の注入をやめ、目の前の小さな太陽を動かし始める。
(来る・・・)
 それを見た、ニーナも、トールハンマーの制御を始める。

 そして、ニーナとルードは、一回深呼吸をした後、ほぼ同時に魔法を放つ。
「クレンシャル!!!」「ルフェランシア!!!」
 ニーナの放った複数のトールハンマーとルードの作り上げた小さな太陽が、
すごい速度で相手目がけて移動する。
 そして、ニーナとルードのいる位置の、ほぼ中間付近で、二つの魔法は、
激突する。

 ズドドドドオオオーーーン!!!

「きゃああああ!!!」「うわああああ!!!」
 その激突の衝撃で、ニーナもルードも、勢いよく吹き飛ばされる。
 太陽とトールハンマーは激突し、互いに押し合っている。
 ニーナとルードは、すぐに体勢を立て直すと、魔法を制御し始める。
 だが、ここに来て、ニーナは、うまく魔法制御ができなくなってきていた。
 巨大なエネルギーを操作するには、巨大な魔力が必要となる。
 皮肉なことに、限界以上の魔力をトールハンマーにつぎ込んだため、それらを
操るのにも、また巨大な魔力が必要となったのだ。
 しかも、ミストネルの魔力を絶えず消費し続けており、普通の人間であれば、
とっくに魔力の負担に耐え切れずに体が壊れてしまうところだ。
 でも、ニーナは、どうしても負けたくなかった。
 この戦いに負けたら、自分のラルフに対する思いも、ルードを救いたいと思う
気持ちも、うわべだけの嘘ものになってしまうような気がしたからだ。
(お、お願い・・・あと、もう少しだけ・・・)
 ニーナは、薄れそうになる意識を奮い立てながら、さらに魔力を増大させる。

「なぜだ・・・なぜ、ここまで戦えるんだ?」
 ルードは、驚きを隠せなかった。
 ニーナの強大すぎる魔力に対してではない。
 体中がボロボロになってでも、あくまで戦い続けようとするニーナの執念に
対してだった。
 今こそ、ラルフに助けてもらえばいいじゃないか?
 それなのに、どうして、ニーナはそうしようとしない?
 あくまで、自分1人だけの力で、自分と戦おうとしている。
 もう、体力も魔力も限界をとっくに超えているはずなのに・・・
(なぜだ・・・なぜなんだ・・・この力は、一体!?)
 その、底知れないニーナの力に、ルードは圧倒され始める。
 そして、それと同時に、少しずつ、ルフェランシアはクレンシャルに押され
始める。

「あと・・・もう少し・・・こ、これで・・・」
 それを見たニーナは、一気に魔力を送り込む。
 それは、ニーナの放てる、恐らく最後の大きな魔力だろう。
(こ、これで・・・ダメだったら・・・)
 一瞬、そんな考えが頭をよぎるが、ニーナは頭を振り、考えを振り払う。
 ニーナの魔力がトールハンマーに到達すると、トールハンマーはさらに強く
ルードの太陽を押し始める。
 その、凄まじい力に、そして、ニーナの執念に、ルードは圧倒される。
(クッ、こ、これが・・・限界か・・・)
 ルードがそう思った瞬間、太陽が崩壊し始める。
 そして、それと同時に、複数のトールハンマーが、太陽を貫き、ルードに
迫っていく。
(勝てなかったか・・・でも、これでいいのかも・・・)
 ルードは、そう思うと、目をつぶる。
(ニーナに勝てなかったけど・・・ニーナの魔法で死ねるのであれば・・・)
 だが、突然、ルードに向かっていたトールハンマーが、途中で急に軌道を
変えると、他のトールハンマーと激突し、大爆発を起こす。
「うわあああああああ!!!」
 その凄まじい爆発のため、ルードは吹き飛ばされる。
 直撃ではないにしろ、トールハンマーの爆発に巻き込まれたのだ。
 高い魔法障壁を持つルードといえど、ただで済むはずがない。
 ルードは、全身に大ダメージを負っていた。
 だが、ルードが、その痛みを気にすることはなかった。
「なぜだ!?どうして、トールハンマーの軌道がそれたんだ!?」
 でも、そんなこと、考えるだけ無駄だと、すぐにルードは気づく。
 今、この空間にいるのは、自分とニーナしかいない。
 つまり、ニーナ以外に、軌道を変えれる人間はいないのだ。
 しかし、あの時、トールハンマーは、かなりの加速度がついていたはず。
 あの加速度で、あの魔力のトールハンマーの軌道を変えようとしたら、
瞬間的に凄まじい魔力が必要となるはず。

「そ、そんな・・・ニーナ・・・なんてことを・・・」
 気がつくと、ルードは、涙を流していた。
(もういい・・・ニーナが、生きていてくれさえいたら・・・)
 ルードはそう思いながら、ニーナのいた方へと向かおうとするが、そこは
まだトールハンマーの爆発が続いており、これ以上先へは進めなかった。
 その時、ルードは、まだミストネルが解除されていないことに気づく。
「もういい、ニーナ・・・早く、ミストネルを解除するんだ。」
 ルードは、ニーナに向かって通信を送るが、爆発の影響で、ニーナに通信が
つながらない。
(クソッ、俺は、一体どうすればいいんだ!?)
 その時、ルードの目の前に、突然、アスタリアが姿を現す。
(アスタリア様、俺は、一体どうしたらいいんだ?
 彼女を・・・ニーナを助けるには・・・どうしたら?)
(ルード・・・どうして、ニーナが魔法を止めないと思う?
 私の知ってる、優しいルードなら、すぐに気づくはずだよ。)
 アスタリアは、そう言った後、ルードに向かって謝る。
(ルード、私のせいで、ずっとツライ思いをさせてゴメンね。)
(違う。アスタリア様は、何も悪くない。)
 だが、アスタリアは悲しそうに首を横に振る。
(ウウン、今のルードは、私の幻影に囚われてしまっている。
 本当のルードは、とても優しい人なのに、私のせいで・・・
 だから・・・もう私のことは忘れて、前を向いて歩いて。)
(アスタリア様・・・)
 だが、いくらアスタリアにそう言われても、この気持ちだけは、そう簡単に
断ち切れる思いではない。
(ルード・・・あなたの優しさを・・・大勢の人達に・・・)
 とその時、アスタリアの姿が、徐々に消えていく。
「アスタリア様!!!」
 ルードが大声をあげた時には、アスタリアの姿は完全になくなっていた。
「アスタリア様。すぐには無理かも知れないけど、俺、努力してみるよ。」
 ルードはそうつぶやくと、ニーナの気配を探る。
 幸い、ニーナはまだ無事のようだが、急激に魔力が低下しており、それを
必死に食い止めようとしているのか、たまに魔力が少し上昇している、そんな
状態だった。

「マズイ、ニーナはもう限界だ。何とかしないと・・・」
 ルードはそう思い、なぜニーナがミストネルを止めないのかを必死に考える。
 そして、それは、目の前の光景を見た瞬間、すぐに思いついた。
(今、ミストネルを解除したら、この大爆発が、プリミナンドを巻き込んで
しまうからか。だったら、爆発を沈めればいい。)
 ルードとて、魔力を使い果たしており、まともに魔法が使える状態では
なかったが、爆発を食い止めるには、魔法を使うしかない。
「ニーナのことを思えば、この程度の魔法・・・」
 ルードは、全魔力を振り絞って、魔法を放つ。
「エルファディア!!!」
 次の瞬間、辺り一帯が、絶対零度近くまで、急激に温度が低下する。
 だが、爆発の勢いは凄まじく、ルードの魔法はあっという間にかき消される。
 皮肉なことに、2人の魔力が生み出した魔法の爆発は、あまりにも凄まじく、
魔力の尽き果ててる2人では、どうすることもできなかった。


(続く)
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◇登場人物◇
・ラルフ=ガートナー
ガイガードに住む17歳の少年。伝説の武器ヴェクト・ソードを使いこなす。
・ニーナ=ルクライエ
ガイガードに住む17歳の優しい女の子。不思議な能力を持っている。
・ガルック=ソート
キルアに住んでいた17歳の少年。魔法と覇王流という剣術を使う。
・エミリー=ガートナー
ラルフの妹で、15歳の女の子。子ども扱いされるのを、非常に嫌う。

なお、登場人物の紹介は、VesterProjectのHPで詳しく紹介しています。
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