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ラルフ達主人公の友情と恋愛、そして戦いを描いた新しい形のSFファンタジー。エミリーを助けるべく、ヴェスターに乗り込んだラルフ達の前に、皇帝アーリアの罠が次々と立ちはだかる。果たしてラルフ達は、エミリーを無事に救出できるのか?全てを賭けた戦いが今始まる。

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2008/05/10

ヴェスター第281話 「ほんの少しの勇気」

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  ヴェスター(Vester) : Vol.281
  発行日:2008/05/10
  発行元:VesterProject
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◇第281話 ほんの少しの勇気◇
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「い、嫌だ・・・ここから先は、見たくない。」
 ニーナは、おぼろげに見えただけの過去の映像に、異様なまでに怯えていた。
 そして、そのニーナの怯えが強くなるほど、ニーナの聖光気は強まっていき、
ティアナの聖光気はどんどん外へと押しやられていく。
 とその時だった。
 ルードと戦っているはずのラルフが、突然、ニーナ目がけて光の球を放つ。
「なっ!?あれは、まさか闘気弾!!?」
 それを見ていたガルックが、驚きの表情を浮かべる。
「貴様・・・まさか!?」
 ルードも、それを見て、驚いた表情を浮かべる。

 あまりにも突然の、しかも予想外の出来事に、誰もラルフの放った光球を
止めることはできなかった。
 だが、光球は、ニーナに命中すると、ニーナの全身を包み込み始める。
「あれは・・・攻撃じゃなかったのか?」
 ニーナが無事な様子を見て、ガルックはホッと胸を撫で下ろす。
「当り前じゃ。ラルフがそんなことをするわけなかろう。
 それに、さっきも言ったであろう。あれは闘気ではないと。」
 リグアーが、少し呆れた表情でそう言う。
「じゃあ、あれは、一体、何なんですか?」
「それは多分、ニーナを見ておれば、わかるはずじゃ。」
 その時だった。
「ど、どうしたの?ニーナちゃん。なぜ、泣いてるの?」
 ティアナは、必死に聖光気を放ちながら、ニーナが、突然涙を流し出したのに
気づき、声をかけるが、ニーナに声は届いていないようだった。

 さっきまで、ニーナの心の中は、正体不明の恐怖心で埋め尽くされていた。
(あの記憶を蘇らせたら・・・私・・・きっと・・・後悔する。)
 何の記憶かわからないのに、ニーナは直感でそう感じ取っていた。
 だが、その時だった。
(大丈夫だ、ニーナ。俺がついている。)
 ニーナの周りを覆っている光から、声が聞こえてくる。
 それは、まぎれもなくラルフの声だった。
「ラ、ラルフ・・・」
(ニーナが、一体、何に怯えてるのかわからないけど・・・)
 その時、ニーナを覆っていた光が、ニーナの中へと入ってくる。
(大丈夫・・・俺も一緒だから・・・一人で抱え込まないで、ニーナ。)
(でも、私、この先の記憶を見るのが、どうしても怖い。
 これを見たら、きっと、私は・・・私は・・・)
(大丈夫。ニーナの怖がる記憶には、俺も一緒について行く。
 どんなに怖くても、ニーナのそばに、俺がずっとそばにいるから・・・)
 とその時、ラルフの光で、ニーナの手が光る。
 それは、まるでラルフが、ニーナの手を握りしめているようだった。
 その光はとても暖かく、それまでニーナの心を支配していた恐怖心は、
徐々に薄れていき、逆に安心感が心の中に広がっていく。
 ニーナの目から、大粒の涙がこぼれだす。
(ありがとう・・・ラルフ。
 ラルフのおかげで、私、自分の記憶と向き合う勇気が出てきたよ。)
 ニーナの心に、さっきまでと違い、徐々に勇気が湧いてくる。
 それと同時に、ニーナの聖光気が、徐々に収まっていく。
 ラルフがニーナに向けて放ったもの・・・
 それは、ほんの少しの勇気だった。

「えっ、これは、一体!?」
 突然の聖光気の収束に驚くティアナだったが、ニーナの周りを包み込む光を
見て、ティアナも何となく気づく。
(そうか・・・ラルフちゃんのおかげか。)
 ティアナは、少しだけ寂しそうな表情を浮かべるが、すぐに気を取り直すと、
ニーナに向かって聖光気を放つ。
 すると今度は、何の抵抗もなく、ティアナの聖光気が、ニーナの頭の中へと
入っていく。
 しかも、さっきまでは、あれだけ苦痛に耐えていたはずのニーナの表情も、
今では全く穏やかなままだった。
(きっと、ラルフちゃんが守ってあげてるんだね。じゃあ、行くよ。)
 ティアナはそう言うと、ニーナに向かって、一気に聖光気を放つ。

「そうはさせるか!!」
 その時、ルードが、再びティアナ目がけて突進する。
「ヤバいぞ、ラルフ!!」
 ガルックが思わずラルフに向かって叫ぶが、今度はラルフは、ティアナを助けに
行こうとしない。
「何をやってるんだ、ラルフは!?」
 だが、その時、ガルックは、ラルフが何かをつぶやいているのに気づく。
「わかった・・・信じて・・・いるから・・・」
「何を信じるって言うんだよ!?今は、それどころじゃないだろ。」
 その時、ルードの魔力が増大する。
「アイツ、ニーナもろとも、消し去る気だ。」
 イリノアは、慌てて止めに入ろうとするが、そのイリノアの前に、ラルフが
立ちはだかる。
「ラルフ、お前、一体どういうつもりだ!?」
「大丈夫・・・」
 だが、ラルフはそれだけ呟くと、ニーナ達の方を見つめる。
 その時、ルードの両手に巨大な炎の玉が現れる。
「ルード、アイツ・・・泣いているのか!?」
 その時、ルードの表情に気づいたイリノアが、驚きの表情を浮かべる。
「さらばだ、ニーナ。フレアバスター!!!」
 次の瞬間、巨大な炎の玉が、ニーナに襲いかかる。
「マズイ!!!」

 炎の玉は、地上にいるニーナ達目がけて、超スピードで接近する。
 だが、その時、炎の玉が、巨大な魔法結界に覆われる。
「エルファディア!!!」
 次の瞬間、魔法結界内部が、瞬時に絶対零度近くまで温度が下がると、
急激に炎は収まっていく。
「こ、この魔力は・・・ま・・・まさか・・・まさか・・・」
 炎の玉を迎撃した魔法を見て、ガルックは驚く。
 その時、地上から、2機のヴェクト・アーマーが姿を現わす。
 1機は、ティアナのもので、そしてもう1機は・・・
「おかえり・・・ニーナ。」
 ラルフが上空から、もう一体のヴェクト・アーマーに声をかける。
 そう、もう一体のヴェクト・アーマーの正体は、ニーナだったのだ。
「ただいま・・・ラルフ。」
 ニーナは、ラルフの方を見て、ニコッと微笑む。
「記憶が・・・戻ったのか?」
 ガルックが驚いた様子で、ニーナに尋ねると、ニーナはウンと頷く。
「ゴメンね、ガルック。さんざん心配かけちゃって・・・
 でも、ラルフとティアナさんのおかげで、記憶を戻すことができたよ。」
 ニーナが笑顔でそう答えると、ガルックは思わずガッツポーズをする。
 そのガルックの隣に、ドクターヘンゲルの姿があるのに気づくと、ニーナは、
ドクターヘンゲルに声をかける。
「ドクターヘンゲル・・・会うのは、これが2度目だったんですね。」
 ニーナのその意味深な発言を聞いた瞬間、ドクターヘンゲルは驚いた表情で、
ニーナの方を見つめる。
「ニーナ・・・やはり、あの時、お前は既に・・・」
「何の話だ、一体?」
 ガルックがニーナに尋ねる。
「あとでね、ちゃんとガルックにも話すよ。」

「ニーナ!!」
 そのルードの声で、ニーナはルードの方を振り向く。
「ゴメンなさい、ルードさん。
 私が、ルードさんの心を、傷つけてしまったんですね。」
 ニーナはそう言うと、ルードに頭を下げる。
「ニーナ・・・俺は・・・俺は・・・」
「わかってます。ルードさんの気持ち、私、とても嬉しいです。
 でも、私は、ラルフのことが・・・大好きです。
 だから・・・ゴメンなさい。」
 ニーナはそう言うと、再びルードに向かって頭を下げる。
 ルードはニーナの謝罪を聞いて、拳を震わせる。
(ダメなのか?俺は、また、好きな人を失うのか?
 嫌だ・・・それだけは、絶対に嫌だ!!)
「失うくらいなら・・・失うくらいなら・・・」
 再び、ルードの魔力が、異常なまでに高まる。
「アイツ・・・やっぱり、自分の手でニーナを消すつもりなのか!!?」
 それを見たイリノアが、慌ててルードを止めようとするが、そのイリノアの
前に、ニーナが出る。
「ニーナ!?」
「イリノアさん、それにラルフも・・・ルードさんとは、私が戦います。」
 ニーナがそう言うと、ラルフも、イリノアも、そしてルードも驚く。
「でも、ニーナは、まだ記憶が戻ったばかりで・・・」
「大丈夫だよ。だって、ラルフが、いつもそばにいてくれるんでしょ?」
 ニーナはそう言うと、ラルフに向かってニコッと微笑む。
「ニーナ・・・」
「それにね・・・ルードさんをここまで追いつめたのは、私の責任だし、
何だか、私が戦わないといけないような気がするの。」
 ニーナはそう言うと、上空へ飛びあがる。

「ニーナちゃんの記憶が戻って、よかったね、ラルフちゃん。」
 ティアナはそう呟くと、イリノアのいる場所に戻っていく。
「ティアナ・・・これで、本当によかったのか?」
 イリノアが心配そうにティアナに声をかけると、ティアナは笑顔で頷く。
「だって、あの2人の間には・・・誰も入り込めないですよ。」
 とその時、ティアナが、突然イリノアに抱きつく。
「何だ、どうした、ティアナ!?」
 だが、イリノアはすぐに気づく。
 ティアナが、声を殺して、泣いていることに・・・
「頑張ったな。今は・・・思い切り泣いていいぞ。」
 イリノアはそう言うと、声を殺してひっそりと泣き続けているティアナの頭を、
そっと優しく撫でてあげた。


(続く)
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◇登場人物◇
・ラルフ=ガートナー
ガイガードに住む17歳の少年。伝説の武器ヴェクト・ソードを使いこなす。
・ニーナ=ルクライエ
ガイガードに住む17歳の優しい女の子。不思議な能力を持っている。
・ガルック=ソート
キルアに住んでいた17歳の少年。魔法と覇王流という剣術を使う。
・エミリー=ガートナー
ラルフの妹で、15歳の女の子。子ども扱いされるのを、非常に嫌う。

なお、登場人物の紹介は、VesterProjectのHPで詳しく紹介しています。
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