ヴェスター第280話 「記憶喪失の原因」
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ヴェスター(Vester) : Vol.280
発行日:2008/05/03
発行元:VesterProject
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◇第280話 記憶喪失の原因◇
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ティアナは、再びニーナの方に視線を戻すと、ニーナに向かって話す。
「ニーナちゃんの記憶を、封印しているもの・・・
それは、ニーナちゃん自身の力によるものなんだよ。」
「えっ!?」
「今のニーナちゃんには、思い出せないかも知れないけど、ニーナちゃんは、
聖光気という不思議な力を持っているんだよ。」
ティアナはそう言うと、手のひらから光を出す。
その光を見て、ニーナは驚く。
「これが、聖光気だよ。
もっとも、私は、手の平からしか、出すことができないんだけどね。
でも、アスタリア様は、全身から聖光気を出すことができたんだ。
聞いたところだと、ニーナちゃんも、アスタリア様と同じで、全身から
聖光気を出せるらしいんだけど、聖光気の力を、まだ完全に使いこなせて
いなかったらしいね。」
ティアナの話を聞いて、ニーナも少しだけ聖光気のことを思い出す。
「どうやら、ニーナちゃんも、少しだけ、聖光気のことを思い出したみたいだね。
聖光気は、治癒の力としては、とても有名だけど、実はそれ以外にも、色々な
効果があってね、その中の一つに、封印の力ってのがあるんだよ。」
「封印の力?」
「ウン、例えば、相手の力を奪ったり、動きを封じたりするのも、封印の力の
一つなんだよ。
それらは、相手に対して作用する効果なんだけど、封印の力は、相手にかける
以外に、自分自身にかけることもできるんだよ。」
ティアナの話を聞いているうちに、ニーナは何となくティアナが言おうと
していることがわかってくる。
「それって・・・もしかして、記憶ですか?」
ニーナがそう言うと、ティアナはウンと頷く。
「人って、何か嫌なことがあったりした時に、その時の記憶を消したいって
思うことがあるでしょ。
もちろん、普通の人には、そう思っても、実際に自分の記憶を消すなんて、
無理だけど、聖光気を使える人は、自分の記憶ですら、思い通りに消すことが
できちゃうんだよ。」
「じゃ、じゃあ・・・ま、まさか、私の記憶喪失は!?」
「ウン、恐らく、聖光気の力によって、封印されたんだと思う。
多分、ニーナちゃんに、何かあって、思いだしたくない記憶ができて、それで、
聖光気の力が働いたんだと思う。
ただ、本来なら、聖光気は、術者が消したいと思う記憶だけ消すんだけど、
ニーナちゃんは、聖光気の力を、まだ自在に操れないから、それで・・・」
「全部・・・消してしまったんだ。
じゃあ、私の記憶は・・・もう、二度と・・・」
ニーナの表情が、一気に青ざめる。
だが、ティアナは首を横に振ると、ニーナの肩を叩く。
「それは大丈夫だよ。
多分、ニーナちゃんの場合、記憶は消えてなくて、記憶の彼方に、封印されて
いるだけだと思う。
だって、昔の記憶を思い出すことがあるんでしょ。
完全に消えてしまってたら、そんなことありえないもん。
それでね、記憶を取り戻す方法なんだけどね・・・」
ティアナはそう言うと、言うべきかどうか悩みだす。
ティアナの表情から察するに、どうやらそれは、かなり辛い方法らしい。
だが、ニーナは、どんなに辛くても、ラルフとの記憶を取り戻したかった。
「教えてください、ティアナさん。私、何でもやりますから。」
ニーナの覚悟を決めた表情を見て、ティアナは頷くと、続きを話し出す。
「記憶を消そうとしたきっかけとなった記憶を思い出すんだよ。
これを思い出すことができたら、必ず元の記憶も取り戻せるはず。
でも・・・それは多分、とても辛いことだと思う。
だって、聖光気が、記憶を封印しようとしたくらいなんだからね。」
ティアナはそう言うと、もう一度、ニーナの方を見る。
ティアナのその表情を見て、ニーナは悟る。
これは、相当の覚悟が必要だことだということに・・・
「ウン・・・でも、私、やるよ。」
ニーナはコクリと頷くと、ティアナの方を見る。
「わかった。」
ティアナはそう言うと、手に聖光気を溜め始める。
「今から、私の聖光気の力で、ニーナちゃんの記憶の彼方にある、記憶を失う
きっかけとなった記憶を、引っぱり出してみるね。」
ティアナはそう言うと、ニーナの頭に聖光気をかざす。
ティアナの聖光気を浴びた瞬間、ニーナは苦しみだす。
「うああっ・・・あ、頭が・・・痛い・・・」
「頑張って、ニーナちゃん・・・もう少しだから・・・」
ティアナはそう言うと、さらに聖光気の力を強める。
「ああああっ!!」
その強力な聖光気を受けて、ニーナは苦しさの余り、思わず膝をつく。
「頑張れ、ニーナ。」
ラルフは、その様子を上空から見つめていた。
ラルフの手にも、思わず力が入る。
そして、地上のニーナの様子を見て、ルードの動きも止まる。
「ニーナ・・・そこまでして、この男の記憶を・・・」
そんなニーナの姿を見て、ルードは拳を握り締める。
ニーナが、ラルフのことを好きだってことはわかっていた。
でも、それでも、ルードは、ニーナのことを諦めきれなかった。
アスタリアが死んでから、ずっとアスタリアの面影を探し続けていた。
そして、やっと、アスタリアの面影を持つニーナと出会えたのだ。
それなのに・・・
「嫌だ。絶対に、諦めてたまるか!!!」
次の瞬間、ルードの魔力が再び膨れ上がる。
それに気づいたラルフが、ルードの方を見る。
だが、ルードは、ラルフの方を見ていなかった。
「ティアナ、貴様、余計なことをするなーーー!!!」
ルードはそう言うと、ティアナ目がけて突進する。
だが、そのルードの前に、イリノアが立ちはだかる。
「イリノア!!」
「ルード、私の部下に手を出す者は、例えお前でも許さんぞ。」
イリノアはそう言うと、剣を抜く。
「イリノア・・・お前も・・・お前も、この俺を邪魔するのか!?」
「もう、お前も、うすうすは感づいているはずだ。
ニーナの心には、ラルフしかいないってことに。
どうして、現実を見ようとしない?」
「黙れ・・・黙れ、黙れ、黙れーーーーっ!!!
こうなったら、もう何もかも吹き飛ばしてやる!!!」
ルードは、半狂乱の状態で、魔力を一気に膨れ上げさせる。
「こ、これは、まさか・・・ルード、貴様、正気か!?」
「ニーナが、俺のものにならないのであれば、せめて俺の手でニーナを・・・」
ルードはそう言うと、巨大な魔法結界を、何と浮遊大陸プリミナンド全体に
張り巡らせる。
「な、何という魔法結界!!!これは、まさか・・・あの魔法か!!?」
イリノアの表情が強張る。
(今のルードに、何を言っても無駄だ。
こうなったら、私が、ルードを止めるしかない。)
イリノアはそう思いながら、さっき見たヴェルガントの映像を思い出す。
「イリノア、ルードが暴走しだしたら、お前の手で止めるのだ。」
(まさか、ヴェルガント様の言った通りになってしまうとは・・・)
とその時、ラルフの大声が聞こえてくる。
「ルード、相手は俺じゃなかったのか?
それとも、俺と戦うのが怖くなって、周りに八つ当たりか?」
ラルフはそう言うと、ニヤッと笑う。
そのラルフの笑みは、挑発的な笑みで、それを見たルードは激怒する。
「うるさい、貴様さえいなければ、全ては・・・うまくいってたんだ。」
「だったら、今からでも遅くないだろ。俺を倒しに来いよ。
まあ、八つ当たりなんかするお前に、殺られる気は全然しないけどな。」
ラルフはそう言うと、ニヤッと再び笑う。
「ぐぐっ・・・よかろう、貴様から先に灰にしてやる!!」
それを見たルードは、プリミナンドの結界を解くと、ラルフに向かって、
突進していく。
一方、ルードの脅威が去って、ティアナは再び、手に聖光気をため込む。
「私が・・・ルードさんを、あそこまで追いつめてしまったんだよね。」
ニーナはそう言うと、暗い表情で俯く。
「ほら、ニーナちゃん、そんな暗い顔しない。
だって、こればかりは、どうしようもないことじゃない。
それとも、ラルフちゃんのことを、あきらめる?」
ティアナがそう尋ねると、ニーナは慌てて首を振る。
「わかってるって。じゃあ、続きをはじめるよ。」
ティアナはそう言うと、ニーナの頭に聖光気を浴びせる。
再び、ニーナの表情が、苦痛に歪む。
「もう少しだから・・・頑張って、ニーナちゃん・・・」
ティアナはそう言うと、さらに聖光気の力を強める。
とその時、ニーナの頭の中に、古い映像がかすかに浮かび上がる。
(これは・・・どこかの・・・研究所?)
そして、次に頭に浮かんできた映像は、どこかの透明なカプセルの中から、
暗い室内を見渡しているらしき映像だった。
映像はノイズだらけで、内容はよくわからなかったが、その映像を見た瞬間、
ニーナの心の中に、なぜか恐怖心にも似た感情が芽生えだす。
(嫌だ・・・これ以上は、もう見たくない。)
その時、ニーナの体が、突然白く光りだす。
「こ、これは・・・聖光気!!?」
それと同時に、ニーナの聖光気が、ティアナの聖光気を押し返し始める。
「ダ、ダメ・・・ニーナちゃんの、聖光気の方が・・・強い・・・」
ティアナは必死に聖光気を放つが、ニーナの聖光気の方が桁外れに強く、
ティアナの聖光気は、ニーナからどんどん押し返されていく。
(続く)
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◇登場人物◇
・ラルフ=ガートナー
ガイガードに住む17歳の少年。伝説の武器ヴェクト・ソードを使いこなす。
・ニーナ=ルクライエ
ガイガードに住む17歳の優しい女の子。不思議な能力を持っている。
・ガルック=ソート
キルアに住んでいた17歳の少年。魔法と覇王流という剣術を使う。
・エミリー=ガートナー
ラルフの妹で、15歳の女の子。子ども扱いされるのを、非常に嫌う。
なお、登場人物の紹介は、VesterProjectのHPで詳しく紹介しています。
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たまに不定期で番外編が出ることがあります。
(あまり期待はしないように。)
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