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ラルフ達主人公の友情と恋愛、そして戦いを描いた新しい形のSFファンタジー。エミリーを助けるべく、ヴェスターに乗り込んだラルフ達の前に、皇帝アーリアの罠が次々と立ちはだかる。果たしてラルフ達は、エミリーを無事に救出できるのか?全てを賭けた戦いが今始まる。

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2008/04/26

ヴェスター第279話 「炎の精霊」

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  ヴェスター(Vester) : Vol.279
  発行日:2008/04/26
  発行元:VesterProject
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◇第279話 炎の精霊◇
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 ルードの怒りは、限界に達しようとしていた。
 自分の攻撃をあっさりと防ぎ、しかもまともに攻撃してこようとしない。
(さっきの攻撃だって、俺にまともに当てようと思えば、当てられたはずだ。
 この俺様を、馬鹿にしているとしか思えん。)
 その時、ラルフが無表情でこちらを見ているのが視界に入ると、ルードの
怒りはついに爆発する。
「ヤバい、ルードの魔力が一気に膨れ上がった。」
 驚いたイリノアは、慌てて第1基地にプリミナンドに防衛バリアを張るように
命令する。
 だが、その前に、ルードの魔法が放たれる。
 上空に、巨大な暗黒のゲートが開く。
「消えてなくなれ。ブラックゲート!!」
 次の瞬間、すさまじい力で、ラルフはゲートの方へと引っ張られる。
 これにはさしものラルフも、必死に抵抗を試みるが、あまりの吸引力に、
ラルフの体は、今にもブラックゲートに吸い込まれそうになる。
「クッ!!」
 この戦いで、初めてラルフの表情が歪む。
 それを見て、ルードはニヤリと笑う。
「無駄だ。このブラックゲートは、貴様を吸い込むまで、消えることはない。
 そして、吸い込まれたら最後、貴様は二度とそこから出ることはできん。」
「そうかい。じゃあ、貴様と一緒に行くか。」
 ラルフはそう言うと、建物に捕まっていた手を離すと、ルード目がけて
突進する。
「き、貴様、ま、まさか・・・」
「その、まさかだ!!」
 ルードが気づくより少し前に、ラルフはすさまじい速度でルードに接近すると、
ルードにがっちりとしがみつく。
 次の瞬間、ルードまで一緒に、ブラックゲートへと引きづり込まれ始める。
 ルードはラルフを引き離そうとするが、ラルフの力はすさまじく、がっちりと
掴まれており、至近距離なので魔法も使えず、どうすることもできなかった。
「男2人で、むさ苦しい無限地獄の旅ってのはどうだ?」
 ラルフがそう言うと、ルードは思い切り首を横に振る。
「ええい、それだけは絶対に嫌だ。」
 ルードはそう言うと、ブラックゲートを閉じる。

「よかった。」
 それを見ていたニーナが、ホッと安堵のため息をつく。
「フーン、やっぱりニーナちゃんは、ラルフちゃんを応援してるんだ。」
 ティアナがそう尋ねると、ニーナはホッとした表情で答える。。
「私は、ラルフもルードさんも、どちらも無事でいてほしいんです。
 どちらも、私にとっては、大切な人だから・・・」
「フーン、どちらも、ニーナちゃんにとって、大切な人なんだ。」
 ティアナは、ニッコリと、しかしどこか意味深な笑みを浮かべる。
「実は、私ね、ラルフちゃんが捕虜だった間ね、ずっと、ラルフちゃんの
身の回りのお世話をしてたんだよ。」
「そ、そうなんですか?」
「それでね、実はね・・・
 私、ラルフちゃんのことが、好きになっちゃったみたいなの。」
 ティアナがそう言った瞬間、ニーナの表情が強張る。
「だから、ラルフちゃんには悪いけど、私、この戦いには、絶対にルード様に、
絶対に勝ってほしいと思ってるんだ。
 そうしたら、ニーナちゃんは、ルード様と結婚することになるから、残った
ラルフちゃんを、私がゲットするチャンスが出てくるでしょ。」
「そ、そんなのヤダ。」
 ティアナの言葉を聞いて、ニーナは思わず首を左右に振る。
「どうして嫌なの?ニーナちゃんにとっては、ラルフちゃんも、ルード様も
どちらも同じ程度に好きなんでしょ。
 だったら、ラルフちゃんを、私に譲ってくれてもいいじゃない。」
 ティアナがそう言うと、ニーナは首を横に振る。

「確かに、2人とも、私にとって、とても大切な人だけど・・・
 でも、多分、ウウン、私は、ラルフのことが、す、好きだから・・・
 そ、それに、ラルフと新しい思い出を一緒に作るって約束したから・・・」
 ニーナは、今にも泣きそうな表情で、そう言った後、今度は申し訳なさそうな
表情で、ティアナの方を見つめる。
 きっと、自分のことを、気遣ってくれているのだろう。
 そんなニーナの表情を見て、ティアナは思わず吹き出す。
「あっはははは・・・冗談だよ、冗談。
 やっぱり、ニーナちゃんには、かなわないな。」
(ここで、迷ってくれたら、私もチャンスがあったんだけどなあ。
 記憶がなくても、ニーナちゃんは、ラルフちゃん一筋なんだね。
 やっぱり、この2人の間には、誰も入り込めないか。
 あーあ、何だか、ルード様が、かわいそうになってきたよ。)
 ティアナは、頭の中でそんなことを考えると、突然、大声で笑い出す。
 何がおかしくて、そんなに笑っているのか、ニーナにはよくわからなかったが、
ティアナの気持ちが、冗談ではないことだけは、うっすらと感じ取っていた。

 しばらくして、ようやく笑いが収まると、ティアナは、今度は真剣な表情で、
ニーナの方を見る。
「な、何ですか、ティアナさん?」
「ねえ、ラルフちゃんとの昔の記憶を、取り戻したい?」
 ティアナがそう言った瞬間、ニーナは驚きの表情を浮べる。
「記憶を戻す方法があるんですか!!?」
 ニーナは驚いた表情で、ティアナに尋ねる。
 その2人の会話が、上空にいたラルフの耳にも届く。
(ニーナの記憶を、戻せるのか!!?)
 だが、地上の2人の会話に気を取られた瞬間を狙って、ルードの攻撃が
襲いかかる。
「死ね、デスタフィール!!!」
 次の瞬間、ルードから、炎の精霊が現れる。
「あれは、イフリート!!まさか、精霊を呼び出すとは!?」
 それを見たリグアーが、驚きの声をあげる。
「行け、イフリート!!!ラルフを灼熱の炎で焼き尽くせ!!」
 ルードが命じると、イフリートは、ラルフ目がけて炎の玉を吐き出す。
 慌てて、ラルフはそれをかわすが、ラルフの動きを読んでいたかのように、
ラルフの背後に、イフリートが素早く回りこむ。
「これで終わりだ。」
 ルードがそう言うと同時に、巨大な炎の渦が、ラルフを飲み込む。

「いやああああああ!!!」
 それを見たニーナが、思わず悲鳴を上げる。
 だが、さらに巨大な炎の渦が、ラルフの周りに現れると、イフリートの
炎の渦を勢いよく弾き飛ばす。
「ど、どうしてラルフが、魔法を!!?」
 魔法を使えないはずのラルフが、火炎魔法を使ったのを見て、ガルックが、
思わず驚きの声をあげる。
 だが、リグアーは少しも驚かずに、ガルックに向かって説明する。
「さっき、ラルフが、ルードの魔法を、吸収したのを忘れたのか?」
「そ、そうだった・・・って、ラルフがいない。」
 ほんのわずか、目を離した隙に、ラルフは忽然と姿を消していた。
「姿を消しても、気配でわかるわ。そこだ!!!」
 ルードの合図と同時に、イフリートが炎の玉を吐き出す。
 だが、そこにいたのはラルフではなかった。
「し、しまった。奴の闘気か?」
 そこにあったのは、ラルフの闘気が作り出した幻影だった。
 幻影だとわかると、ルードは再びラルフの気配を探り始める。
 だが、いつもと違うのは、幻影がそのまま消えることなく、巨大な槍へと
姿を変えると、イフリート目がけて突進していく。
「ファントムランス!!」
「し、しまっ!?」
 ルードが気づく前に、巨大な闘気の槍が、イフリートの体を貫く。
 イフリートはその場に崩れるように倒れると、そのまま姿を消す。

「なんと・・・あのイフリートを、たったの一撃で・・・」
 それを見たリグアーが、今度は驚きの声をあげる。
 そして、リグアーは確信する。
(やはり、あれは闘気ではない。じゃが、だとすればあれは一体?)
 だが、さしものリグアーも、こんな気配を感じ取るのは初めてだった。

 ラルフは、イフリートを倒すと、再び、ティアナに尋ねる。
「なあ、ニーナの記憶を取り戻す方法って?」
「いいから、ラルフちゃんは、戦いに集中して。
 こっちに気を取られてると、ルード様にやられちゃうぞ。
 ニーナちゃんのためにも、頑張って、勝つんだよ。」
 ティアナはそう言うと、一瞬だけ、悲しそうな表情を浮かべるが、すぐに
いつもの笑顔に戻ると、ラルフに向かってそう言う。
 だが、ラルフには、ニーナのことで頭が一杯で、ティアナの表情の変化に
までは、気がつかなかった。
「わ、わかった。じゃあ、ニーナのことは、ティアナに任せたぞ。」
 ラルフがそう言うと、ティアナはニッコリと微笑んで頷く。
 その光景を、イリノアは、信じられないと言った様子で見ていた。
(ティアナ、ルードが勝てば、ティアナにもチャンスができるんだぞ。
 それなのに、どうして?)
 イリノアは、ティアナの感情を読もうとするが、ティアナの感情を隠そうと
する意志が強いため、ティアナの感情を読み取ることができなかった。


(続く)
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◇登場人物◇
・ラルフ=ガートナー
ガイガードに住む17歳の少年。伝説の武器ヴェクト・ソードを使いこなす。
・ニーナ=ルクライエ
ガイガードに住む17歳の優しい女の子。不思議な能力を持っている。
・ガルック=ソート
キルアに住んでいた17歳の少年。魔法と覇王流という剣術を使う。
・エミリー=ガートナー
ラルフの妹で、15歳の女の子。子ども扱いされるのを、非常に嫌う。

なお、登場人物の紹介は、VesterProjectのHPで詳しく紹介しています。
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