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ラルフ達主人公の友情と恋愛、そして戦いを描いた新しい形のSFファンタジー。エミリーを助けるべく、ヴェスターに乗り込んだラルフ達の前に、皇帝アーリアの罠が次々と立ちはだかる。果たしてラルフ達は、エミリーを無事に救出できるのか?全てを賭けた戦いが今始まる。

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2008/03/29

ヴェスター第276話 「愛情と憎悪」

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  ヴェスター(Vester) : Vol.276
  発行日:2008/03/29
  発行元:VesterProject
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◇第276話 愛情と憎悪◇
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「ニーナ、大丈夫か?」
 ラルフは、ニーナの方を見る。
 その時、ニーナの顔が真っ赤で、そこで初めてラルフは、自分がニーナを
抱き寄せていることに気づく。
「ゴメン・・・ニーナ。」
 そう言って、ラルフが体を離そうとした時、ニーナの頭の中に、またかすかに
何かの記憶がよぎる。
 はっきりと見えないが、それはラルフとの記憶だと確信できる。
 でも、その記憶は、すぐにまた、記憶の彼方へと消え去ってしまう。
 せっかく見えた記憶の断片が消えてしまい、ニーナは思わず涙をこぼす。

 突然のニーナの涙に、ラルフも、ルードも驚く。
「どうした、ニーナ?どこか、打ちつけたところでも・・・」
 ラルフが言い終える前に、今度はニーナが、ラルフに抱きつく。
「ニーナ!?」
「お願い・・・しばらく、こうさせてください。」
 ニーナはそう言うと、ラルフにギュッと抱きつく。
 ニーナは、自分でも、驚いていた。
 自分が、こんな大胆なことをするなんて・・・
 でも、今離したら、この人とまた、会えなくなってしまうような気がする。
 さっき、消えてしまった記憶のように・・・
 なぜか、ニーナは、そんな不安にかられていた。
 でも、こうしたかったのは、それだけの理由ではない。
 こうしていると、なぜかとても安心できる。
 ニーナは、ラルフに抱きついたまま、ラルフに話しかける。

「ゴメンなさい。私、ラルフさんのこと、何も思い出せなくて・・・
 でも、私、ラルフさんを見た時から、わけもわからなく、ラルフさんのこと
ばかり、考えるようになっちゃって・・・
 きっと、以前の私は、ラルフさんのことが、大好きだったんですね。
 だって、こうしていると、なぜだか、とても安心できるから・・・」
 ニーナはそう言うと、ようやくラルフから体を離す。
「ありがとう、ラルフさん。もう大丈夫です。」
 ニーナは立ち上がると、ラルフの方を見てニコッと笑みを浮かべる。
 その笑顔を見た瞬間、ラルフは、何だか今までの自分が滑稽に思えてきて、
思わず吹き出す。
 それを見て、ニーナは不思議そうな表情でラルフの方を見る。

「どうしたんですか?」
「いや・・・こっちのこと・・・」
 ラルフはそう言うと、ニーナに向かって笑みを浮かべる。
(俺は、どうして、今まで、くだらないことばかり考えてたんだろう?
 記憶がなくなっても、ニーナはニーナなのに・・・)
 ここしばらく、ニーナのことで、神経を尖らせ過ぎていたのかもしれない。
 記憶喪失というだけで心配だったのに、そこにルードという恋敵が現れて、
ニーナの反応に対して、敏感になりすぎていたのかもしれない。
 でも、今のニーナの笑顔で、ラルフは確信する。
 記憶をなくしていても、ニーナは、自分の大好きなニーナのままだった。
 そして、ニーナは、今でもどこかで、自分のことを、覚えてくれている。
 だったら、簡単なことだ
 記憶がなくなってしまったのなら、また作ればいい。
 思い出が消えてしまっても、また作ればいい。
 今まで、心の中にあったもやもやが、全部吹き飛んだ感じがした。
 ラルフは、吹っ切れた表情で、ニーナの方を見つめる。
 そのラルフの表情に、ニーナは思わずドキッとなる。

「ニーナ、無理に記憶を思い出そうとする必要なんてないんだ。
 思い出は、また作ればいいんだ。」
「ラルフさん・・・」
「これから、一緒に楽しい思い出を作ろう。
 今まで以上に、楽しい思い出を、一緒に。ね?」
 ラルフが笑顔でそう言うのを聞いて、ニーナの目から再び涙がこぼれる。
「ありがとう、ラルフさん。」
「ラルフでいいよ。ニーナ。」
「ラルフ・・・」
 その呼び方に、なぜか懐かしさがこみあげてくる。
「ウン、ありがとう、ラルフ。」
 ニーナは涙をぬぐうと、ラルフに向かって、ニコッと微笑む。

「第1基地は、さっきの地震でやられたのは、通信設備だけのようだ。」
 そこに、基地に戻っていたイリノアが、再び戻ってくる。
「第2基地も、それほど被害はありませんよ。」
 さらに、そこにドクターヘンゲルが現れる。
「ドクターヘンゲル、どうしてここに?」
 イリノアがヘンゲルに尋ねると、ヘンゲルは豪快に笑いながら答える。
「いや、中央帝都に送り出したニーナが、いつまでたっても戻ってこないので、
ワープポッドでトレースさせてみたら、いつの間にかプリミナンドに戻って
来ていたようなので、迎えに来たんですけど・・・」
 そこで、イリノアもヘンゲルも、恐ろしい殺気を感じ取る。
「どうやら、このまま、すんなりと帰れそうにはないようですな。」
 ヘンゲルはそう言うと、ルードの方を見つめる。
 イリノアも、思わずルードの方を見つめる。
(何という殺気だ。ルードの心が、ここまで憎しみに染まるなんて・・・)
 ルードのあまりにも歪んだ表情を見て、イリノアは思わず息を呑む。

「そうはさせるか。ニーナと思い出を作るのは、この俺だ。
 貴様が思い出を作るのは、ここまでだ。」
 ルードはそう言うと、ラルフの方を睨みつける。
(やはり、この男だけは、生かしておくのは危険だ。)
 そのあまりの憎しみの表情に、ニーナは思わずゾッとなる。
「ルードさん、お願い、やめて。」
 ニーナがそう言って、ラルフをかばうように立ちはだかると、ルードの
表情がまた変わる。
「止めないでくれ、ニーナ。これは、俺と奴の問題だ。」
 ルードはニーナにそう言った後、ラルフに向かって叫ぶ。
「決闘だ、ラルフ=ガートナー!!
 ニーナをかけて、この俺様と勝負しろ!!!」
 ルードはそう言うと、ラルフもルードをにらみ返す。
 だが、ラルフが言い返そうとする前に、ニーナが止める。
「ダメ、私なんかのために、決闘なんてバカなことしないで。
 それにね、ラルフ、ルードさんは、ものすごい強いんだよ。」
 だが、ラルフはニコリと微笑むと、ニーナに向かって優しく微笑む。
「ニーナ、今から言うことが、俺に関する1つ目の情報だ。
 実は、俺って、めちゃくちゃ強いんだ。
 特に、ニーナがかかっているとなれば、なおさらだ。」
 ラルフはそう言うと、悪戯っぽく笑う。
 そのラルフの笑みにつられて、ニーナの心の中から、不安感が消えていく。

「これって、もう、事実上勝負ありですよね?」
 この光景を見ていたティアナが、イリノアにそう呟く。
「ああ、でも、ルードとて、このまま引くわけにはいかないのだろう。」
 イリノアはそう言うと、少し暗いティアナの表情を見つめる。
(お前だって、このままでいいのか?お前だって、ラルフのことを・・・)

 その時、ラルフが大声で、ルードに向かって叫ぶ。
「いいだろう、ルード。勝負だ!!!」
 ラルフがそう言うと、ルードはニヤリと笑みを浮かべる。
「マズイな。」
 それを見たイリノアが、思わずつぶやく。
「同感です。」
 すぐ傍にいたヘンゲルも頷く。
「何が、マズいんですか?」
 不思議に思ったティアナが、2人に尋ねると、イリノアが答える。
「あのルードの表情・・・あれは本気でラルフを殺そうとしている。
 そのためだったら、あらゆる魔法を使って、ラルフを攻撃するだろう。
 そうなったら、プリミナンドの人達が危ない。」
「前に、若の魔法で、酸素濃度が低下したことがありましたからね。
 ああならないように、プリミナンドには、ニーナもいることを強調して
おいた方がいいでしょうね。」
 ヘンゲルはそう言うと、ニーナのそばへと向かう。
「ドクターヘンゲル。」
 視界に入ってきたヘンゲルを見て、ルードの表情が、一瞬元に戻る。
「若、お2人の戦いを、地上で、ニーナと一緒に見届けてますからね。」
 ヘンゲルがそう言うと、ルードはニヤリと笑う。
「わかってるって、コイツ1人葬るのに、本気を出すまでもない。」
「そうですか。それならば、いいのですけどね。
 でも、地上には、ニーナがいることだけは、覚えておいてくださいね。」
「わかってるって。」
 ルードはそう言うと、ラルフの方を見る。
「そういうわけで、お前ごとき、数分であっさりと消し去ってやる。」
 だが、ラルフは何も言い返さない。
「どうして、ラルフは何も言い返さないんだ?」
 さっきから言われっぱなしのラルフに、ガルックは少し苛立ちを覚えていた。
 だが、ラルフの表情を見て、ガルックもすぐに悟る。
「なるほど、ラルフの方も、準備は万全ってわけだ。」

「何だ、このラルフの闘気は!?」
 その時、イリノアが、思わず大声をあげる。
「ラルフが、一体どうしたって言うんだ?」
「お前も、覇王流の戦士なら、気づくだろう。この闘気の変化に?」
 だが、ガルックには、イリノアの言ってることが、さっぱりわからないでいた。
「ああ、こ奴はまだ未熟じゃから、お前の言ってることには気づかんよ。」
 リグアーがそう言うと、ガルックは少しムカッとなる。
「ラルフの闘気が、一体どうしたと言うんですか?
 もったいぶらずに教えてくださいよ。」
 ガルックが少し苛立った表情で、リグアーに尋ねる。
「それは、これからのこの戦いを見れば、わかるぞい。
 ガルック、よーく、2人の戦いを見ておくんじゃぞ。」
 リグアーはそう言うと、ラルフの方を見つめる。

(続く)
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◇登場人物◇
・ラルフ=ガートナー
ガイガードに住む17歳の少年。伝説の武器ヴェクト・ソードを使いこなす。
・ニーナ=ルクライエ
ガイガードに住む17歳の優しい女の子。不思議な能力を持っている。
・ガルック=ソート
キルアに住んでいた17歳の少年。魔法と覇王流という剣術を使う。
・エミリー=ガートナー
ラルフの妹で、15歳の女の子。子ども扱いされるのを、非常に嫌う。

なお、登場人物の紹介は、VesterProjectのHPで詳しく紹介しています。
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