ヴェスター第271話 「アスタリアの決意」
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ヴェスター(Vester) : Vol.271
発行日:2008/02/16
発行元:VesterProject
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◇第271話 アスタリアの決意◇
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この頃、皇帝の病状が悪化し、さらに皇帝には子供がいなかったため、
どこでも次期後継者の話題で、持ちきりだった。
複数の有力候補がいたが、その中でも最有力候補だったのがアーリアだった。
アーリアは元々上流階層の人間であり、同じ戦士でも平民出のヴェルガントと
違い、あっという間に将軍の地位まで登りつめていた。
また、第1次銀河侵略で、将としての器も評価され、人柄もよかったため、
アーリアが次期皇帝になることに反対する者は、ほとんどいなかった。
しかも、そのアーリアが結婚相手に指名したアスタリアも、強力な聖光気を
使える存在で、人々から女神のように敬われており、この2人の結婚によって、
超人類の未来は、さらに輝かしいものになる。
誰もがそう信じずにはいられないくらいの、素晴らしいカップルだった。
だけど、アスタリアの表情は暗い。
「どうして、よその星を侵略なんかしないといけないんだろう。」
突然、アスタリアがそう呟く。
「アスタリア様?」
「こんなこと、絶対に許されることじゃないよ。」
アスタリアはそう言うと、悲しそうな表情を浮かべる。
第1次銀河侵略計画は、魔法エネルギーの源となっているガイアナイトの
採掘のために計画されたものであった。
その作戦の最前線には、ヴェルガント、アーリア、アスタリアの3人が配備
されることになっていたが、アスタリアはこれに反対した。
皇帝の命令に逆らったアスタリアは、本来ならば処刑されるところであるが、
アスタリアが聖光気を持つ最後の女性だったことと、ヴェルガントとアーリアの
必死の説得で、アスタリアは戦争に参加せずに済んだ。
「でも、私のせいで、ヴェルガントとアーリアは、私の分まで戦わないと
いけなくなっちゃった。
その戦争の中で、アーリアは将軍まで登りつめたけど・・・
でも、この戦争で、アーリアは変わってしまった。
あんなに優しい人だったのに・・・
全部、私のせいだよね。」
アスタリアはそう言うと、今にも泣きそうな表情を浮かべる。
「アスタリア様・・・」
「ゴメン、こんなこと、ルードに話してゴメンね。
結婚式は、絶対に見に来てね。特等席を用意しておくからね。」
「ウ、ウン・・・」
ルードは元気よく頷くが、気持ちは晴れないままだった。
(本当は、アスタリア様、アーリア様と結婚したくないんじゃ?)
ルードは、心の中でずっとそのことばかりを考えていた。
そして、結婚式・・・
その日、式に参加した全ての人がアスタリアを見て驚いた。
なぜなら、アスタリアは長かった髪をバッサリと切っていたからだ。
それを除けば、とても豪華で、素晴らしい結婚式だった。
でも、ルードは、あの時のアスタリアの表情が頭をよぎり、どうしても素直に
結婚を祝福できなかった。
アスタリアが結婚してからしばらくして、皇帝が亡くなり、アーリアが
新しい皇帝に即位した。
そのため、アスタリアも、アーリアのいる中央帝都にいる時間が多くなり、
そのためルードがアスタリアと合う機会は、次第に減っていった。
そんなある日のこと・・・
ルードの住んでいる旧人類街で、次々と人が消える事件が発生した。
それは、アスタリアが決まって街にいない時に、決まって発生していたため、
この事件には、アスタリアが関与しているのではと考える人達まで現れた。
「アスタリア様が、そんなこと、するわけないだろ。」
そんな話を耳にするたびに、ルードは大声で反論していた。
だが、ある日、家に帰ると、いつもはいる両親の姿がどこにもなかった。
ルードの両親は、父親が旧人類で、母親が超人類だったのだが、2人とも
いなくなっていた。
最近、あちこちで消失事件が起こっているだけに、不安になったルードは、
小型の通信機を取り出す。
それは、昔、アスタリアがルードに渡した通信機だった。
「何かあったら、これでいつでも連絡してね。
どこにいても、必ず私とつながるから・・・」
アスタリアからそう言って渡された通信機だったが、いつまでもアスタリア様に
甘えているわけにはいかないと思い、使うのをやめていた。
だが、あちこちで消失事件が起こっている中、両親がいないという状況に、
耐え切れなくなったルードは、その通信機のスイッチを入れる。
通信機の電源を入れて、ルードは驚く。
なぜならば、本当にすぐにアスタリアが通信に出たからだ。
「やっと、これ使ってくれたんだ。
それで、どうしたの、ルード?」
「あのね、実は・・・」
とその時、突然背後から殴られ、ルードは気を失う。
「あそこには、何者かがいて、俺はそいつに殴り倒されたんだ。
多分、両親も奴らに拉致されたんだろう。」
ルードはそう言うと、表情を険しくする。
「あの、それで、どうなったんですか?」
ニーナが尋ねると、ルードは唇をかみ締める。
「気がつくと、俺はアスタリア様に助けられていた。
その時いた場所が、あの中央研究所前だったんだ。
中央研究所に運ばれる俺に気づいて、俺を助けてくれたらしいんだ。」
ルードは、そう言うと、力強く拳を握り締める。
「ルードさん?」
そんなルードの様子を不思議に思ったのか、ニーナが声をかける。
だが、ルードの表情は険しいままだった。
「あの時、俺が、アスタリア様に、何も話しさえしなけえば・・・」
ルードはそう言うと、話を続ける。
「アスタリア様、大変だ。街の人達が、次々と行方不明になってるんだ。
僕のパパもママも・・・」
ルードが泣きながらそう言うと、アスタリアの表情が変わる。
「そんな・・・まさか・・・」
アスタリアは、ルードの話を聞いて、しばらく呆然としていた。
だが、しばらくして何かを決心した表情を浮かべると、ルードに話しかける。
「ルード、街まで送ってあげるよ。」
アスタリアはそう言うと、ルードをワープポッド室へと連れて行く。
ここまで歩いている間、ルードは、アスタリアの何かを思いつめたような
表情が、気になって仕方がなかった。
「何だか、元気ないね、アスタリア様。」
「だって、ルードのご両親や街の皆が、いなくなってるんだもの。
でも、どうして今まで、気づかなかったんだろう?」
「仕方がないよ。だって、アスタリア様が、街にいないここ数日に、立て続けに
発生したんだから・・・」
ルードがそう言うと、再びアスタリアは強張った表情になる。
「どうしたの、アスタリア様?」
「ウウン、何でもない。
ルードのパパとママは、必ず私が連れ帰るから、ルードは知り合いの家の
ところにでも、かくまってもらうのよ。」
アスタリアはそう言うと、ルードの手に何かを持たせる。
手の中にある物を見て、ルードは驚く。
「これは、ペンダント!?」
「ルードに預かっていてほしいの。」
それを聞いて、ルードの心の中に不安が宿る。
何だか、もう2度と、アスタリアに会えないような、そんな気がしたからだ。
「こんなのいらない。だから、アスタリア様と一緒にいる。」
この時、ルードはかつてないくらいにだだをこねた。
だが、結局は、
「大丈夫、すぐに皆を連れて、そっちに戻るから・・・ね?」
ニコッと微笑むアスタリアの笑顔に負けて、ルードはガムールへと戻っていった。
だが、それから数時間後・・・
アスタリアに言われた通りに、知り合いの家でテレビを見ていたルードは、
突然、流れてきた映像を見て驚く。
ヴェスターから、宇宙船が1隻脱出し、しかもその船には、アスタリアが
救出した他の旧人類と一緒に乗っていたのだった。
とその時、テレビから声が聞こえてくる。
この声は、よく聞き慣れた声だったので、ルードにはすぐにわかった。
アスタリアとアーリアの声であった。
だが、その会話の内容は、とても衝撃的なものだった。
「旧人類を連れて、今すぐヴェスターに戻ってくるんだ、アスタリア。」
「ダメ、この人達は、全員コロニーに連れて行きます。
ウウン、私の街に住んでいる旧人類の皆も・・・
どうして、こんなひどいことをするの、アーリア?
兵器開発のための人体実験に、旧人類を使うなんて、酷すぎる。」
アスタリアは、涙を流しながら、アーリアに訴えていた。
「昔の優しかったアーリアは、一体どこに行ってしまったの?
私には、もうアーリアのことが、わからないよ。」
「これも超人類の栄光のため、いやアスタリア、何より君のためだ。
全銀河を征服して、2人で銀河系を収めようではないか。」
「私は、そんな征服者になんか、なりたくない。」
「どうしても、ヴェスターに戻らないと言うのか?」
「アーリア、お願い、わかって。」
アスタリアがそう答えると、アーリアはギロッとアスタリアの方を睨む。
「余に逆らう愚か者は、蟻一匹たりとて生かしておくわけにはいかん。」
アーリアはそう言うと、冷酷な表情で兵士に命令を下す。
「前方の宇宙船に、ヴェスター・ノヴァの照準を合わせろ。
ヴェスター・ノヴァ発射用意だ!!!」
アーリアのその命令を聴いた瞬間、アーリア以外の全ての人達が凍りつく。
(続く)
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◇登場人物◇
・ラルフ=ガートナー
ガイガードに住む17歳の少年。伝説の武器ヴェクト・ソードを使いこなす。
・ニーナ=ルクライエ
ガイガードに住む17歳の優しい女の子。不思議な能力を持っている。
・ガルック=ソート
キルアに住んでいた17歳の少年。魔法と覇王流という剣術を使う。
・エミリー=ガートナー
ラルフの妹で、15歳の女の子。子ども扱いされるのを、非常に嫌う。
なお、登場人物の紹介は、VesterProjectのHPで詳しく紹介しています。
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たまに不定期で番外編が出ることがあります。
(あまり期待はしないように。)
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