サッカーを読む第111号:浦和レッズに首ったけ!
━━━━━━━━━━━━━━━━◎第 111号━━2007/01/15━━
サッカーを読む(フットボール書評)review football books
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☆目次
○ 今日の本
『浦和レッズに首ったけ!』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4898090745/footballreview-22
【あいさつ】
【書評】
【編集後記】
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○ 今日の本
書籍名 :浦和レッズに首ったけ!
著者 :吉田マサ子
出版社名:ラインブックス
出版年月:2001年4月30日
【あいさつ】
元日の試合、凄かったですね。
何が凄いと感じたかというと、ああいう勝ち方ができるチー
ムが、日本にも現れたということについてなんです。
Jリーグで優勝した時、地元パレードの様子などを見て、あ
るテレビ解説者は、「日本にも、(欧州や中南米にあるような)
ビッグクラブが誕生した」と浦和レッズのことを評していたの
を、スポーツ番組で見ました。
正月元旦に大阪からあんなに多くのサポーターが駆けつけた
ガンバ大阪にも驚きましたが、それ以上に、何度見ても、あの
レッズのサポーターには、驚かされます。
書店に行っても、浦和レッズ関連の本はたくさんあるのです
が、私が最近、ちょっと驚いているのは、いろんな人が、レッ
ズについて書いているんですよね。
もちろん、サッカージャーナリストの方が書いていたりもす
るんですが、そうではない、一般にはあまり知られていない人
や、他に職業を持っている人の本なんかも、あるんですよね。
そんな本を眺めているうちに、手にとって読んでみたのが、
この本です。
【書評】
私がまず最初に驚かされたのが、著者は、レッズのサポーター
になってから、フットボールというものを、少しずつ理解し始め
たということである。
著者は、レッズの練習グラウンド近くのスーパーの駐車場の屋
台で、餃子を焼いていたそうである。
その当時、たまたま練習帰りに立ち寄った、レッズの某主力選
手との出会いが、すべての始まりだったそうである。
著者の、その時の無知・無関心ぶりは、読んでいて、ある意味、
驚愕というより呆然としてしまう。
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そんなある日の夕方、忙しく餃子を焼いていると、
「3人前、おいしく焼いてください」
そんな注文を受けた。
「おいしく焼いてくださいって……いつもそうしているわよ」
意外な注文の仕方に戸惑いながら、視線を声の主に向けると、
そこには真っ黒に日焼けした、背の高い男性が立っていた。がっ
しりとした大きな人、いや、大男と言ったほうがいい。いったい
何をやっている人だろうと興味をそそられた。
「何かスポーツしてるんですか? 野球の選手?」
餃子を焼く手を休めずに、矢継ぎ早に、そんな質問をした。
今から思えば、当時の、この質問はとても失礼というか、世間
知らずを絵に描いたようなものだった。思い出すたびに苦笑を禁
じえないほどである。
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著者は、浦和レッズの守護神であり中心選手として活躍してい
る人に対して、なんと『なんですか、そのゴールキーパーってい
うのは?』と質問しているのである。
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焼きあがった餃子を手渡すと、その男性が、
「これまで怪我してたんですが、今シーズンから復帰できそうな
んです。思い切り頑張りますんで応援してください。それと、こ
れ……もしよかったら応援に来てください」
と、それまでの力強く、真剣味に溢れた言葉とは一変して、小
さな声を出しながら1枚の紙を手渡してきた。それは94年のシー
ズンの浦和レッズの試合日程表だった。
「は、はい」
意味もわからず、その場は、とりあえず、そんな返事をしなが
ら、差し出された紙を受け取った。
自分の中に、妙に心動かされるものが、その瞬間に芽生えた。
さわやかな笑顔、瞳の輝き、スポーツマン特有の軽やかな身のこ
なし、時折見せる、はにかんだ表情。これがおばちゃんと『つっ
ちー』との最初の出会いだった。
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それから、著者は、職場のすぐそばにある、レッズの練習場に、
仕事の合間に通うようになり、やがてサテライトの試合会場に行
き、ついにはトップチームの公式戦(いわゆる、Jリーグ)を観
戦するようになる。
私は、じつは著者のことは、なんとなく知っていた。というよ
り、スポーツニュースなどで、レッズのゴールシーンが放映され
る時、満員の狂喜乱舞するサポーターの中に、一際目立つ女性が、
よく映し出されていたからである。
テレビのサッカー番組のゴール映像ですら、それだけ目立つの
だから、きっと会場では、ものすごい存在感があるのだろう、と
想像していたら、やはりそうであるらしい。
最初は、サポーターたちの暗黙のルールどころか、サッカーの
基本的知識すらまったくなかったので、著者はすべてが手探り、
暗中模索、試行錯誤の連続だったそうである。
他人の無知や奇行(著者の奇抜な応援スタイルは、最初は周囲
から奇異の目で見られていた)を笑うのは簡単である。しかし、
私は、本書で著者の試行錯誤ぶりを読むうちに、じつはこれは、
大変重要なことではないか、と痛感した。
まったくサッカーの予備知識のない人でも、あのJリーグブー
ムで沸き立った我が国の、大昔からサッカーどころで知られた街
で暮らしているにもかかわらず、まったくサッカーを知らなかっ
た人ですら、サッカーに詳しくなるだけでなく、やがて試合会場
やサポーター活動で知り合ったレッズサポーターや他クラブのサ
ポーターとともに、日本代表の応援をしたり、さまざまなボラン
ティア活動を展開するまでになるのである。
本書の副題に『おばちゃんサポーター奮闘記』とある。
本書に記されている、さまざまな活動や著者の生い立ちを読む
と、たしかにものすごい奮闘ぶりである、と思う。
しかし、そう思うと同時に、うらやましくも思うのである。自
分の好きなことに、全身全霊打ち込める著者の姿を見て。
本書の最後に、著者に寄せられたさまざまな言葉が記されてい
る。その中に、著者の人柄や雰囲気を偲ばせる、こんな一文がある。
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●浦和レッズ・背番号12 西野努
(筆者注:引退後、浦和レッズでスカウトを経て、MBA取得の
ために渡英。現在は複数の会社の取締役に就任するなどスポーツ
ビジネス界で活躍)
気がつけば「にしやん」と呼ばれるようになっていて、気がつ
けば自分の携帯電話におばちゃんの連絡先がメモリーしてあって、
気がつけばおばちゃんの店で餃子をほお張っている自分がいた。
いつのまにか蝕まれてしまったようだ。
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【編集後記】
この本の題名にあるように、メインテーマは浦和レッズと著者
との交流というか思い出などなのですが。
私にとって印象的なのは、レッズがどうのこうのという以前に、
サポーターとは何か、スポーツを通じて人間はどう成長していく
のか、ボランティアの意義とは、Jリーグの存在価値とは、など
いろんなことを考えさせてくれるところなんですよね。
この本では、著者の知られざる不幸な生い立ちとか、餃子との
出会いと苦しい修行とか、地道なボランティア活動などについて
もさらりと触れられているのですが、そういう様々な経験も、著
者の豊かな人間性に深く関わっているのだなと感じました。
齢50近い(本書が書かれた頃。今は50代)、サッカーの存在す
らロクに知らなかった『おばちゃん』が、あそこまでできるんだ
ったら、俺も何か一つでも……と思いたいんですが、ものすごい
活力に溢れた人なんでしょうね、きっと。
≪文中敬称略≫
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「こんな本を見つけました!」
「この文章は、こんな風に直した方がいい」
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