2009/12/23
アラブからこんにちは~Vol.187 娘の肖像(5)
◆━━☆アラブからこんにちは~中東アラブの未知なる主婦生活☆━━◆ マガジンID 0000158411 バックナンバー http://backno.mag2.com/reader/Back?id=0000158411 WebページのURL http://www.geocities.jp/naokomai41/index.html Vol.187 娘の肖像(5) それにしても、私のこの2ヶ月は、神経を使って書類を作成 することばかり。 9月には、長男の奨学金の問題で、英語や日本語で何通も書類を作りました。 おまけにその書類を抱えて、いろいろな方面へ面接に行ったものだから、 神経を使うことしきり。 10月になると、UAEの教育省が日本の大学を査定する仕事を手伝いました。 11月になったら、今度は長女の大学の問題です。願書提出の謎解きや、 模範解答を予測できないエッセイを決められた単語数で書く――― なんてことを毎日やっていたら、もうほとほと神経がくたびれて、 他のことに使える脳みそが残っていない状態でした。 おまけに、脳みそと同じくらい酷使したコンピュータが故障して、 いまだ修理屋に出したままです。 本当だったら、娘の願書に親が手を貸すなんて、やるべきことではない と思うのですが、今年の娘の様子をみて気持ちが動きました。 それには外的な理由も内的な理由もあります。 今年は、ラマダーン後に学校が始まったせいで(つまり1ヶ月も新学期が 遅れたせいで)、公立校も私立校も猛烈な時間割をくんで、 授業を行っています。 朝礼は短縮され、毎日の授業が1時間ずつ増え、おまけに50分であった 授業時間が60分になりました。休み時間は15分と10分の2回ありますが、 1回目は先生の用事でつぶれ、2回目もお祈りの時間で、 のんびり休むことは出来ません。学校にカフェテリアがないので、 朝の7時にバスに乗ってから、午後の3時まではまったく食事なし。 家から持っていくサンドイッチとジュースで力をつないで、 3時過ぎにようやく帰宅します。 昼食のあと、長女は30分だけ昼寝をします。 しかし4時にはもう机に向かっている。それから夜中の2時過ぎまで、 ずっと勉強しつづけです。あまり座り続けるので、 途中からは立って勉強しています。それでも宿題や試験の勉強が 終わらない日もある。すると翌朝、次男が起きる5時半に起き出して、 登校するまで勉強しています。 「そんなに勉強したら身体を壊すんじゃない」という言葉を飲みこんで、 私たち夫婦はまず、娘の椅子を高価で座りやすいものに買い替え、 机上のライトを変え、メガネを買いました。 さらに、今年になって客間を改造して、長女だけの勉強部屋に変えました。 今まで次女と一緒の部屋で勉強していたのですが、 6年生の次女が眠る時間には、長女はまだ勉強中なのです。 加えて、週末に休めると思ったら、前期試験までに教科書が 終わらないからと、12月中の土曜の午前中はずっと、補習のために 学校に通うことになりました。 3時に終わるはずの木曜日の午後でさえ、補習で5時まで延長です。 「こんな無理を押し付けるなんて、ひどすぎる」 と憤慨するのは私だけで、娘は、 「今までみたいに、『自分で勉強して』と言われるより よっぽど親切だと思う。新学期が遅く始まったくせに、 前期試験の日程も内容も変えないんだから、やるしかないよね。 そうじゃないと点が下がってしまうもの。」 アラブの国では、12年生の卒業成績が人生を左右する数字になります。 何点をとって卒業するかで、大学も学部も奨学金も決まります。 長女は兄に続いてUAE主席で卒業するのが目標で、それに付随して 大学も学部も選ぶつもりでいる。私のような凡人なら すぐにも諦めそうな目標に向かって、極限まで努力をしているのです。 それが外的な理由。 内的な理由は、彼女の希望です。 まったく違った世界で、環境も友人も文化もゼロからのスタートを 切ってみたい。そこで自分を試してみたい。 そんな希望を抱いて、娘は努力しています。 この田舎町から米国の大学に行くことが、どれほどのチャレンジであるか。 けれど、人は誰でも、ほんの少し背中を押してくれる人がいるだけで、 頑張れることがあるものです。私は困難だらけの娘の状況で、 ほんの少しだけ手を貸そうと決めています。 反対に、夫は決して手を貸しません。 一番大きな理由は、外国の大学に行って欲しくないから。 17歳でたった独りで遠い外国に住む必要はない。アラブ人には 簡単にビザを出さない米国は、心理的にも距離的にも遠すぎる。 自分がすぐに駆けつけることも出来ない。大学はUAE国内で卒業すればいいし、 外国に行くなら大学院からでも遅くない。そう考えています。 ですから、願書も絶対に手を貸さないし、質問にも答えない。 その代わり、娘がTOEFLもSATも自分で勉強し、奨学金もとって、 UAE国内よりはるかにレベルの高い米国の大学にも合格し、 すべての準備が整えば、あえて反対はしないと宣言しています。 私は、このように真剣勝負で生きている娘を美しいと思います。 そして、娘の前に幸福な運命のドアが開かれることを望んでいます。 さて、話を戻しましょう。 娘が願書をすべて出し終えるまでに、娘の肖像画を描き終えるのが、 私の目標です。 極限まで自分を追い詰めている勝気な表情を、 睡眠不足で不機嫌なまま、眉をきりりと絞っている緊張の瞬間を、 未来を畏れ待ち望む、16歳の美しい娘を、 カンバスに捉えられたら、私の夢も叶います。 来年の今頃は自分の手元から離れて、いないかもしれない娘のことを 想いながら、いまも私は筆を握っています。 娘の肖像(了) ハムダなおこ ☆『アラブからこんにちは』への感想は、以下のアドレスに送ってください☆ naokomai41@yahoo.co.jp


