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国際結婚して17年。アラビア湾岸にあるアラブ首長国連邦に住んでいます。結婚前は自由奔放に世界を駆け巡っていたのに、ひょんなことから戒律の厳しいアラブの生活に。5人の子どもをアラブ流に育てながら、湾岸中東の風習・文化・生活をエッセイで紹介します。

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2009/10/07

アラブからこんにちは~Vol.180 ラマダーンについて考える(3)

◆━━☆アラブからこんにちは~中東アラブの未知なる主婦生活☆━━◆

マガジンID     0000158411
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Vol.180 ラマダーンについて考える(3)

知恵者の3男にとって、今年のラマダーンほど楽なものはありません。
どんなに食べてもガリガリに痩せている3男は、去年までは、
週末しか断食をさせませんでした。
ふつう学校では10歳くらいから断食を奨励するけれども、
身体の大きさに違いがあって、一概にみんなが出来るとは限りません。
例えば、彼のクラスメートのシリア人は、小学生のくせに
体重が85キロもある。85キロなら断食は楽です。
けれども同じクラスメートのスーダン人は28キロしかない。
28キロなら、さすがに親は断食させません。
また、糖尿病の生徒がいたり、腕を折ったばかりの生徒は
最初から断食しません。同じクラスの中で、ランチを食べいてる子と
食べていない子がいたら、断食は本当に苦しいものになります。
また、いたずら小僧ばかりだから、断食しない大義名分のある子は、
わざと断食している子の目の前で、チップスをボリボリ食べたり、
ジュースを音をたてて飲んだりと、悪知恵を絞る。
そこで喧嘩が起きそうなものだけれど、ラマダーン中は
喧嘩をしたらその日の断食が無効となってしまうので、
断食している子は手が出せません。
つまり、断食している子はまったく無防備・無抵抗となってしまうのです。

それは、喧嘩には決して負けたくない3男には、本当に苦しい立場です。
断食することで、本来の「貧しい人々の立場を慮る」という目的には
少しも近づけず、毎日ギリギリ神経を尖らせ、友だちへの
復讐計画を企てて帰ってくるばかりなので、これ以上
過激になってはいけないと、学校のある週日は断食させませんでした。

それが、今年は学校もないし、体重も増えたし、健康だし、12歳だし、
断食しない大義名分はどこにもありません。
今年は30日間ずっと行うことを目標にして、3男は3男なりに
アイデアを絞りました。

それは、昼と夜をまったく逆転させることです。
夕方まで眠っていて、6時半にイフタール(断食明けの食事)とともに、
3男は起きてきます。それからひと晩ずーっと起きていて、
朝は5時前にスフール(断食前の食事)を摂ります。
7時に学校のバスに乗る兄を見送って、ようやく眠る。
つまり日中はずーっと眠っていて、断食しているのは、
ほんの2~3時間なのです。
それでも決められた義務を果たしているのだから、本人は大いばりです。
夫も「起きているとうるさいから、寝かせておけ」と言う始末。

時には、さすがに午後の2時くらいに、
「もういい加減に起きたら」
と、ふとんをはがすことがあります。
すると彼なりの理論を持ち出して、反駁する。
「起きていると腹が減る。腹が減るとくたびれるし、何も出来ない。
 実験も失敗ばかりする。だから寝ている方がずっといい。
 夜は自分で何でもするし、うるさくしないから、
 僕のことは放っておいて。ママたちは勝手に寝てよ。
 それがいちばん、ママにも僕にも無駄がないでしょう。」
そう言われると、返す言葉がありません。

彼は毎日、夜中にごそごそと実験をして、気が向くとキッチンで
自分だけのためにアラビックパンを焼き、缶入り豆を煮て、
コーンを蒸して味付けし、特別なヤンスーン茶を淹れて、
ご機嫌です。
好きなマンガやプロレスを夜通し観て、コンピュータの軍事ゲームで
マシンガンを撃ちまくり、文句を言うママも寝ているから
最高にシアワセ。
朝には鍋と皿がキッチンに山のように積み上げられていますが、
火の元の安全と消火器の使い方を嫌というほど教えたので、
あまり心配はありません。

3男の行動パターンを見ていて、文句を言うべきかどうか、
私は迷いました。
確かに断食はしているけれど、腹が空くという経験はまったくありません。
これでは果たして断食の目的に沿っているのだろうか。
かといって、「断食を完遂する」という大きな目標を考えれば、
この行動パターンは、3男にとって最も確実な近道であることは
言うまでもありません。
日中すきっ腹のまま起きて、イライラして物を壊し怒っているのと、
夜中に起きだし、腹を満たして平和に過ごしているのを比べたら、
家族全員が安泰に断食を続けるためには、やはり後者です。
そこで結局、文句を呑み込みました。

その代わりに、この機会を捉えて、さまざまなことを教えました。
ガスコンロの使い方、消火器の使い方、小麦粉の練り方、
パンの焼き方、調理の味付け、さらにキッチンを安全に使うための決りごと。
火の元が危険になった場合の行動。

もともと3男は細かい手作業が大好きだし、クリエイティブで、
さらに危険をすばやく察知する能力に長けているので、
あっという間にいろいろな物事を覚えました。

毎晩、火加減を見ながら薄くおいしいパンを焼き、その中に
卵やジャムやザータを加えて独自の味付けをします。(失敗もたくさん有り。)
また蒸したコーンに酢を入れたり、バターや辛子を入れると
どんな隠し味になるかも覚えました。

極めつけは、ミシンの使い方を覚えたことです。
もともと縫い物は上手で、針と糸を使って、小さな袋や皮の財布などを
縫ってはいたのですが、ある日、
「パジャマのポケットを特大にしてくれ」
と私に頼みました。
それが夜中の2時過ぎだったので、
「ママはもう体力の限界を超えているから、細かい作業は出来ません。
 自分でやんなさい。」
と言ったら、本当にミシンを出してきました。
あまり期待せず、糸のつけ方と布の運びを教えたら、
もうおもしろくてしょうがない。
あっという間に特大ポケットを縫い、パジャマの破れを縫ったのには
驚きました。
それからは気を良くして、毎晩ミシンを踏んでいます。
家の中で着る自分の服を全部改造したら、
「誰か縫って欲しいものはありませんか」と家族中に訊きまくり、
誰からも断られると、不在の長男のパジャマも繕ってしまいました。

それを見て、私は考えをつくづく改めました。
「断食の目的は何たらと下手な説教をするよりも、
 こっちの方がずっと教育的だった。まったく何が功を奏するか、
 世の中わかったものじゃない。来年もこうやって教育しよう。」

本当に、これもラマダーンの効用でした。


ラマダーンについて考える(4)に続く


ハムダなおこ

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