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国際結婚して17年。アラビア湾岸にあるアラブ首長国連邦に住んでいます。結婚前は自由奔放に世界を駆け巡っていたのに、ひょんなことから戒律の厳しいアラブの生活に。5人の子どもをアラブ流に育てながら、湾岸中東の風習・文化・生活をエッセイで紹介します。

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2009/10/03

アラブからこんにちは~Vol.179 ラマダーンについて考える(2)

◆━━☆アラブからこんにちは~中東アラブの未知なる主婦生活☆━━◆

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Vol.179 ラマダーンについて考える(2)

さて、今年は10歳になる一番下の娘(次女)も断食を始めました。
私は今までの経験上、体重の少ない(35キロ以下)子どもと、
年齢の低い子どもには、決して断食をやらせませんでした。
断食をする精神的かつ肉体的な準備が整わないと、反対に子どもを
病気にしてしまうからです。

例えば、あまりに小さいと、眠る時間と食事を消化する時間との
バランスがとれず、身体がうまく機能しません。
断食している日の夕方ともなれば、極度に疲労して、
もうご飯を食べる力さえないのです。また、食べられても
胃が縮小しているので、ほんの少しだけ。その後もうつらうつらして、
頭がはっきりしません。
さらにスフールにおいては、熟睡している夜明け前に無理やり起こして、
明日の断食に備えて食事を摂らせるのは、ほとんど成功しないのです。
となると、一日のうち、まともな食事が1食しか取れないことになります。
身体はやせ細り、抵抗力が弱くなって、そのうち病気にかかってしまいます。
(季節の変わり目で、冬になる時期は本当に病気になりやすい。)

ここまでくると、親としては断食の目的なんてどこかへ忘れてしまいます。
一人がかかれば次々病気になるし、看病に追われると自分の断食さえ
危うくなってくる。そこで、「対策こそ最大の治癒」という理論を持ち出して、
結局は、子どもたち全員、途中で断食を辞めさせてしまうのです。
そんな事を何年も繰り返したので、ある程度身体が成長するまでは、
誰にも断食をさせませんでした。

今年の夏、生まれて始めて断食する機会を、次女は心待ちにしていました。
夏の旅行から戻ると、毎日少しずつ、色とりどりの紙でランターン(灯篭)を作り、
家中を飾りつけていきます。またラマダーンの絵を描いて、
各部屋のドアに貼り付けます。
私と一緒に買い物に出ては、夜に食べるお菓子やスナックを買い込み、
お祈り用の新しいスカーフを買い、「その日、きちんと断食ができたら一枚食べる」
という約束のもとに、小さな板チョコをたくさん買いました。
そして8月20日、待ちに待った断食を始めたのです。

ところが、日中はお腹が空いてしょうがない。
ラマダーン中、我家では食べ物はすべて、目に付かない場所に移動しておきます。
クリスチャンのメイドにも、食べ物をそいらに放って置かないよう
厳しく注意しているので、家のどこを探してもお菓子の気配はありません。
これは子どものいる家庭にしたら、本当に殺風景です。
次女は、朝起きてまず、「あ~、朝食が食べられないんだっけ」と考えます。
空腹を紛らわすためにTVを観て(本を読むと空腹はさらにつのるらしい)、
午後になると、しょっちゅうキッチンをのぞきにきます。
そして心配そうに
「ねぇ、まだクッキングしないの? これでイフタールに間に合うの。」
私が料理を始めるのは夕方の4時過ぎですから、それまでは
キッチンはもぬけの空。料理の気配もありません。
次女は仕方なく、じーっと冷蔵庫の中をのぞきこんで、フルーツやジュースを
手にとって眺め、諦めて部屋に走り戻っていく。
その繰り返しです。

時には私の脇に来て、
「ママ、お腹すいた」
と耳元でささやきます。私は
「そう。ラマダーンだからしょうがないね。ママもお腹すいた」
とささやきます。
すると娘は仲間がいることで安心したのでしょう。私に擦り寄って、
しばらく黙って座っています。

この期間中、次女はとても涙もろくなりました。
もともと素直で感性豊かな人なのですが、ラマダーンの最中は
本当によく泣きました。
「ほらほら、体に残っている水分が流れちゃうよ。泣いたらもったいないわ」
と慰めても、小さなことに非常に感じやすくなって、TVマンガの
悲しい展開に涙を流したり、二人の兄の些細な意地悪にも目を潤ませている。
普段なら、
「こんなことはへっちゃらと思っていなきゃダメよ。放っておきなさい。」
と言えるのですが、ラマダーン中は無理でした。
お腹が空くと精神力もなくなってしまうのです。

空腹のせいで、小さな子どもの感覚や感性が、あっという間に
麻痺するというのは、次女を見て実感しました。
これは自分が断食をして、自分の感覚が弱くなると実感するのとまた違う。
無抵抗で無防備なものが弱っていく姿は、残酷です。
いつもなら、起きている間は歌ったり踊ったりおしゃべりしたりと、
とにかく活発な次女ですが、ラマダーン中は、肉体的にはすっかり鈍重に、
精神的には非常に悲観的になりました。

時間が来ればお腹いっぱい食べられるとわかっている次女でさえ
痛々しいと感じるのに、世界中のその日の食事に困っている
何百万人という子どもたちは、一体どうして生きているのだろう、と
思わないではいられませんでした。
彼らはご飯を口にしないまま、明日という日を夢見ることが出来るのだろうか。
世界のあらゆる地域で紛争があり、災害があり、飢餓があり、
それによって難民が溢れている。そこにいる人はただ救援物資を待っているだけで、
何の努力もしていないではないか、などと考えるのは、まったく高みの見物です。
ご飯を食べず水を飲まないでいる人間が、どれだけ鈍重になり、
正常な感覚を失い、未来や希望などを考える余裕もなく生きているか。
今日のご飯があり、今日が明日へと確実につながっている私たちには、
決してわからないのです。

9月に入り、ラマダーンも中盤を過ぎた頃から、次女はようやく
午後の1時過ぎに起きてくるようになりました。
早寝早起きの身体が断食のリズムに慣れてきて、自然と夜の3時頃まで
夜更かしが出来るようになったのです。
身体が慣れるのに比例して、おしゃべりも増え、涙も止まり、
ようやく次女らしい世話ばなしや鼻歌がきけるようになりました。


ラマダーンについて考える(3)に続く


ハムダなおこ


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