アラブからこんにちは~中東アラブの未知なる主婦生活  RSSを登録する

国際結婚して17年。アラビア湾岸にあるアラブ首長国連邦に住んでいます。結婚前は自由奔放に世界を駆け巡っていたのに、ひょんなことから戒律の厳しいアラブの生活に。5人の子どもをアラブ流に育てながら、湾岸中東の風習・文化・生活をエッセイで紹介します。

最新号をメルマガでお届けします    
登録 解除

規約に同意して

登録した方には、まぐまぐの公式メルマガ(無料)をお届けします。
2009/04/04

アラブからこんにちは~Vol.163 吹雪の夜(2)

◆━━☆アラブからこんにちは〜中東アラブの未知なる主婦生活☆━━◆

マガジンID     0000158411
バックナンバー   http://backno.mag2.com/reader/Back?id=0000158411 
WebページのURL   http://www.geocities.jp/naokomai41/index.html


Vol.163 吹雪の夜(2)


「これはしまった」と思いました。
義父やその夫人にとっては、「子どもが近所にちょっと買い物に出た」
という私にとっての事実が、同じようには解釈されません。
世に恐いもの知らずの嫁が、天気の悪い宵闇に幼な子を外出させた、
と恐れおののいてしまうわけです。
嫁は外国人だからジンの恐さも知らないし、それへの対策も、
宗教的な心構えもなってない。そして彼らは恐怖の突き動かすままに、
言葉の通じる長女に向かって、耳が痛くなるほど説教するわけです。

私は災難にあったような長女を慰労して、義父の家に
電話をかけてひらに謝り、夫にも電話をかけて謝ります。
ちっとも悪いことをしたとは思っていないのだけれど、
迷信や風習や怯えといったものに、真っ向から立ち向かっては
いけないのです。だから「私が悪かった、考えが浅はかでした」
と言えば済む。

義父は70歳を過ぎており、60歳近い奥さんはここ20年も
ろくに外出などせず過ごしているし、同居する奥さんの母親は
とっくに80歳を過ぎているので、いろいろな超自然現象の一部を、
科学や合理とはまったく違った側面で認識しています。
UAEが1971年に連邦国として建国されるまでは、
まだ石器時代のような生活をしていた人たちですから、
あらゆる自然現象と、それを感謝あるいは畏怖する心で
生きていた世代なのです。
星を見て時間や場所を知り、月の近さで満潮干潮を知り、
駱駝とロバで物を運び、風の匂いで天気を推し量る。
ですから、今週ずっと続いている季節外れの雷雨と雹などは
「超自然現象」として、驚きの目で見つめています。
神の恵みの雨か、土砂で家や人に害をもたらす雨か。
私が気象庁の報告を読んで、
「あぁ、サウジからくる南の強風のおかげでね」とか、
「ふむふむ、イラン方面からくるシャマール風のせいか」
などといった説明は、ふんっという鼻息とともに却下される。
彼らには説明などいらないのです。
「神がそう望んだ」という信念と、超常現象に乗っかって
暗躍する魔人を回避することと、全能の神の仕業を恐れることが
最も大切なことなのです。


つい2週間ほど前のことです。
今学校で盛んに行なわれているオリンピックや競技会のなかで、
音楽のコンペティションに出ることになった次女が、
家に帰った途端、唇をわなわな震わせて言いました。
「今日、みんなの前でピアノを弾いたら、1年生の子が
 私をじーっと強い目で見ているの。あの人は絶対に
 <悪い目>を持っている人だよ。だから手が震えて失敗した。
 友達がその子に怒って「マシャラーって言いなよ」
 って言っても、あの人は最後まで言わなかった。
 もうダメだ。今度も失敗するよ。」

悪い目というのは、広くアラブ・ムスリム文化に伝わっている
「邪悪の目」のことです。その目に魅入られると、
きれいなものや美しいもの、あるいは上手なことなどが、
すべて台無しになってしまいます。
娘は邪悪の目に見られたと考えたことで、恐怖に陥り、
失敗してしまったのです。

ふうむ、と私は考えました。こういうときに自分の浅はかな
考えを押し付けてはいけません。
「ちゃんと練習したら弾けるはずよ」とか、
「注意散漫だったんじゃない」などと言うのはもってのほか。
そう信じる人にとっては、全身全霊を揺り動かす大事件であり、
もたらされた恐怖は簡単に消えるものではありません。
ですから、その恐怖心をやわらげるのが先決です。
「それは大変だったね。でもその子は家に帰ってから、
 マシャラーって言ったかもしれないよ。」
「その子が邪悪の目を持っていないかもしれないし、
 持っていても、まだ1年生なら強くないでしょう。
 次に弾くときは大丈夫、きっとうまく弾けるから。」

UAEの母親なら、ここでクルアーンの何章かを詠んで、
邪悪の目を追い払うようにするのでしょうが、残念ながら
私にはそういうことはできません。
次女の身体を抱いて、じっとしています。
あとで長女が帰宅したら、次女の頭に手を置きながら
クルアーンを詠んでもらおうと考えます。


吹雪の夜に(3)に続く


ハムダなおこ



☆『アラブからこんにちは』への感想は、以下のアドレスに送ってください☆
naokomai41@yahoo.co.jp
最新号をメルマガでお届け
登録 解除

規約に同意して

登録した方には、まぐまぐの公式メルマガ(無料)をお届けします。

最近の記事

上へ戻る