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映画フィルムを映像文化財として考える「映画保存協会」のメールマガジンです。当会の活動や催し情報などについてお伝えしていきます。映画は時代を映す貴重な文化財!観る/作る以外の映画の楽しみ方にご興味がある方はぜひ!

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2009/04/30

映画保存協会『メルマガFPS』Vol.46

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│映│画│保│存│協│会│Film Preservation Society (FPS)│
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映画保存協会メールマガジン『メルマガFPS』 Vol.46
                         (2009.4.30)   
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□■─────────────【I N D E X】───────────■□

§1.【フィルム救済プロジェクト】 
    地域のフィルムを地域で守ろう・その5(最終回)

§2.【小型映画部通信12:一年を振り返って】

§3.【特別連載】中国のフィルム事始め(上)

§4.【映画保存資料室】報告(2009年2〜3月)

§5.【FIAFサマースクール報告】その5 最終回 現像所での実習編

§6.【ショートショート書評】第11回 春風に背筋がのびる本

§7.FPSからのお知らせ

§8.編集後記

■□──────────────────────────────□■

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§1.【フィルム救済プロジェクト】 
    地域のフィルムを地域で守ろう・その5(最終回)
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ついにホームムービーの日「今年の一本」2008年度版のDVDが完成し、
発送作業を終えました。
このDVDは早速、4月26日の「D坂シネマアンコール上映会」にて無声
映画伴奏者・柳下美恵さんの生演奏付で上映されました(上映会での使用を
目的として制作したわけではないので、驚きました)。

さて、これでようやく2008年のホームムービーの日も一段落、と思った
らもう次回の開催を考えなくてならない時期に入っています。

先月、民放のバラエティ番組で、2007年のホームムービーの日(谷根千
会場)の「今年の一本」に選ばれたMさんのフィルムが一部放映されました。
Mさんは、4年ほど前に破格の家賃でFPSに事務所を貸してくださった元
大家さんでもあります。Mさんのお宅のある根津の路地は、小会の出発点で
もあります。

初心を忘れず、これからもコツコツと草の根活動を続けて行こうと思いを新
たにしました。

「救済プロジェクト」が年間通して主に扱うのは16ミリですが、8ミリだ
って私たちの重要な映像遺産です。

皆さんもぐるりと周囲を見渡してみてください。身近なところにフィルムが
眠ってはいませんか?
現在、全国各地でホームムービーの日を開催してくださる個人、団体を募集
中です。興味をお持ちの方は、ぜひご連絡ください。

この連載は終わりますが、奇数月第3土曜日の会合は続いていきますので、
お気軽にご参加ください。(おわり)

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§2.【小型映画部通信12:一年を振り返って】
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小型映画部は昨年度もたくさんの方に支えられて無事に事業年度の一年を終
えました。どんなことがあったのか、まとめる意味も込めて思い出してみま
す。

(1)フィルム調査・テレシネ
ともに07年度より件数が減っていますが、10月の≪ホームムービーの日
≫を終えてからは、各会場から調査・テレシネの発注をいただき、充実した
仕事をすることができました。
また、第5回≪映画の里親≫作品『黒手組助六[マーヴェルグラフ版]』の
復元にともなって、小会が新聞等で大きく取り上げていただいたのも大きか
ったと思います。

相変わらず作業のペースは遅く、効率を上げることが今年度の課題ですが、
内容は少しずつ向上してきていると思います。これにはフィルム置き場を改
善したことも大きく関わっています。
現在もあまりよい環境とは言えないですが、ちょっとでも気を遣うことがと
にかく大事なのだと身にしみて感じます。

それに加えて、08年度は16ミリ、9.5ミリといった、これまでにあま
り経験のなかった形状のフィルムの調査を行いました。
活動弁士・片岡一郎さんの9.5ミリコレクションを集中的に調査し、宝塚
映画祭で展示ができたのは大きな一歩だったと思います。
今年、小型映画部の一員が笹川科学研究助成を得ることになり、9.5ミリ
を初めとする小型映画の技術的・歴史的な調査をさらに進めていく予定です。

(2)機材の管理
振り返ると、映写機・ビュワーに関わらず、機材の不具合が多い一年でした。
簡単な故障であれば内部で解決できることもあるのですが、修理の専門家が
いるわけでもなく、慢性的な人手不足もあって、なかなかうまく手が回りま
せん。現在8ミリ映写機1台を宍映に修理依頼しています。
機材のメンテナンスに関して相談できるところを増やして、できるだけ長く
機材を使っていけるように整えていきたいです。

同時に、フィルム調査の件数が増えるにつれて、映写機やカメラなど、機材
の寄贈のお話をいただくことも多くなりました。
また、フィルム救済プロジェクトの協力を得て、16ミリ映写機の大量寄贈
も受けました。
上記のように修理・メンテナンスや消耗品の確保に課題を残していますが、
機材貸出や展示用などとして活用していける道を探っています。

(3)講習会の開催
映写機操作講習会は08年度から年に2回の開催となり、それぞれ定員いっ
ぱいまで参加者がありました。
5月10日(日)に開催する第5回も早々に定員となり、ありがたいかぎり
です。
また、≪ホームムービーの日≫世話人を対象にフィルム・インスペクション
講習会を開催しました。この二つの講習会は毎年定期的に開催していければ
と思います。

こうして書いてみると、課題ばかり頭に浮かんできますが、今年もさっそく
フィルム調査のご依頼を得て、作業に取り掛かっています。
今後とも温かいご支援をよろしくお願いいたします。(N)

≪笹川科学助成金≫
http://www.jss.or.jp/sasagawa/index.html

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§3.【特別連載】中国のフィルム事始め(上)
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本文は「中国電影専業史研究 電影技術巻」(中国電影出版社、2006年
3月)第3章第4節「電影膠片生産起歩」(映画フィルム生産の始まり)か
らの抄訳である。
アメリカやドイツなど、欧米諸国の影響を受けた日本と違い、中国は映画フ
ィルムについて独自の道を歩んできた。
今回は1949年の中国建国から1958年の中国初の映画フィルム工場、
「保定電影膠片廠」(保定映画フィルム工場)設立までを2回に分けて紹介
する。

なお、カッコ内は訳者(天野)による注釈である。
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フィルムは記録媒体の一種であり、カメラマンは“光”を使いその上に“作
画”する。それゆえフィルムは感光材料と呼ばれるのだが、この点が他の記
録媒体との大きな違いである。 
フィルム製造には、エマルジョンの塗布から工場出荷まで、さまざまな技術
と高精度の設備、厳しい管理、そして多くの専門スタッフや機械設計などが
必要となる。
もっとも重要なのは強大な国家経済の後ろ盾に必要とするために、そこに感
光材料工業を打ち立てる難しさがかいま見えることである。

その意味で、中国における映画フィルム生産開始は比較的遅かった。解放前
(1949年以前)、中国の沿岸都市には民間の小さなラボはあったが、写
真乾板と写真用フィルムしか生産しておらず、工業的規模ではなかった。
新中国建国後、オリジナルの感光材料工業を展開するため、まずカメラ及び
映画業界から強い要望があった。
しかし、当時は外国からの輸入に経済的制限があった。中国は建国したばか
りで、多大な財政的困難に直面していたが、中央政府は映画フィルムを輸入
に頼らず、まず国産からという観点を立てるため、映画フィルム生産を経済
計画の中に取り入れた。

1948年、東北地区(旧満州)が解放されて以降、現在の長春電影製作所
の前身である黒龍江省江興山にあった「東北電影製作所」がフィルムの研究
開発を行った。
当時の技術スタッフは日本軍が撤退後に残った3名の日本人、そして彼らに
トレーニングを受けた中国人スタッフである。

彼らはラボの中で、すでに使われたフィルムからエマルジョンを取り除き、
ベースだけを残した。そしてそのベースに白黒用のエマルジョンを塗り、白
黒フィルムを製造した。こうしたフィルムは「再生フィルム」と呼ばれるが、
試写用フィルムとしてしか使えず、デュープネガとしての品質は得られなか
った。

1950年、東北電影製作所の研究スタッフが中心となって「東影化学廠」
を設立し、1951年には「長春感光材料実験所」と名称を変えて、カメラ
の有機化合物や酢酸セルロースエステルベース、ゼラチン、塗布など5つの
分野で研究を始めた。

1953年に日本人技師が帰国後、中国人は独自で感光材料の研究開発に取
り組んだ。中国は建国初期、積極的にソ連及び東ヨーロッパからの経済援助
政策を取り入れ、映画フィルム工場もソ連の中国援助重点計画に入っていた。
 
1956年、現代化された映画フィルム工場を設立するため、長春感光材料
実験室を基礎として映画フィルム計画準備チームが作られた。
また、ソ連及び東ドイツのフィルム専門家が中国を訪れ、工場建設地と工場
設計の企画に携わった。中国側も国内の関係者をソ連と東ドイツに派遣し、
視察と研究を進めた。
 
1958年7月1日、中国初となる現代的映画フィルム工場が河北省保定市
に作られた。「保定電影膠片廠」(保定映画フィルム工場、後の楽凱フィル
ムグループ)である。
同年8月8日には、中国・ソ連両政府がモスクワで「ソ連による中国建設と
47工業企業への技術支援協定」を取り交わし、保定電影膠片廠のフィルム
ベース製作機や感光エマルジョン塗布機もこの中に含まれていた。
しかし、1960年に中ソ関係が決裂するとソ連の技術者は撤退し、中国は
自主的発展の道を歩まざるを得なくなる。(以下次号に続く)

≪参考サイト≫
「最初の映画フィルム工場―保定電影膠片廠」(CCTV、中国語)
 http://www.cctv.com/history/special/C13326/20070119/104929.shtml

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§4.【映画保存資料室】報告(2009年2〜3月)
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3月25日現在、所蔵資料件数:887 >>> 910

武蔵野美術大学イメージライブラリー様より「1999-2009 アニメーションを
テーマとした映像講座と作品研究の記録」をご寄贈いただきました。
小会の営業日と重なって参加は叶いませんでしたが、予想を上回る参加者を
集めて盛会だったようです。今後の企画も楽しみです。

また、『黒手組助六[マーヴェルグラフ版]』が読売新聞で取り上げられた
ことをきっかけに、長谷川一夫さんにゆかりのある映画人のご遺族から4冊
の貴重な文献をご寄贈いただきました。

「映画生活三十周年の記録 長谷川一夫画譜」
「舞台・銀幕六十年」
「林長二郎画譜 映画生活拾年の記録」
「東宝映画十年史抄 2602」

そのほか、戦前からずっと大切にしていらしたという映画のブロマイド5枚
をお贈りくださった女性もいらっしゃいました。
フレームに入れて集会室に飾らせていただいています。こうした方々からい
ただくお手紙は、小会にとって最も大切な宝物です。

さらに、ポルデノーネ無声映画祭やボローニャのチネマ・リトロヴァートに
参加した若い世代の方々に、カタログや関連書籍をご寄贈いただきました。

会員一同、寄贈者の皆さまに心より感謝いたします。

【映画保存資料室 所蔵データベース】http://d.hatena.ne.jp/filmpres/

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§5.【FIAFサマースクール報告】その5 最終回 現像所での実習編
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(前号から続く)

講義と映画祭の日々が終わり、次は実習である。チネテカの映画館のすぐ近
くにあるイマジネ・リトロバータで、5〜6名のグループに分かれて染調色
フィルムのアナログ復元と、デジタル復元の両方の過程を教わった。

まずはフィルムの補修とクリーニング。古いフィルムは大体パーフォレーシ
ョンが壊れていたり、経年劣化により縮んでしまっている。
これでは、新しいプリントを作るためにプリンターにかけることができない
ので、パーフォレーションの補修を中心に弱くなったつなぎ目も補強、大き
く欠けた部分は別のフィルムを切って補完する。
日本では裁縫用の大きい和バサミが使われるが、ここでは医療手術用のメス
を使い、器用にフィルムの手術が行われていた。

染調色のフィルムの復元には、実際に白黒のプリントを染料で染める方法と、
原版からまず白黒ネガを作り、プリンターのカラーを調整するフィルターと
ライトを使ってカラーのポジフィルムに焼き付けてプリントを作る「デスメ
ット・カラー」方式がある。
日本では最近、アニメーションの『なまくら刀』が当時の染色技術とデジタ
ル修復技術を使って復元されたことが記憶に新しいが、「デスメット・カラ
ー」方式はコスト面、保存面でのメリットがあることから、染調色フィルム
の復元にはこの方法が多く使われている。

大体の染色フィルムは褪色しているため、映写機の光を受けずに比較的色の
残っているフィルムの両脇部分の色などを参考に、カラーコレクション(色
補正)の機械を使ってプリンターで使用する色情報を作っていった。
そしてプリンターで焼付け、現像をして完成となる。

デジタル復元はまったく行程が異なる。まず、フィルムをフィルムスキャナ
ーにかけて1コマずつ静止画ファイルを取り込む。
1秒24コマの映画だったら1分で1440コマ分のファイルができること
になる。一本の映画にどれほど膨大なハードディスクが必要かここでも容易
に想像がつく。
取り込み終わったファイルは、パソコンで修復ソフトを使って傷・汚れを取
り除いてゆく。
ソフトが映画の映像の一部をキズや汚れと間違えて消してしまうこともある
ので、地道に1コマずつ見ながらの手作業になるため、とても時間がかかる。
その後、カラーコレクションの作業をパソコン上で行い、完成したデータを
フィルムレコーダーを使ってフィルムに焼きつけていく。

しかし、このレコーディングの作業では、1コマ焼き付けるのに4秒と、か
なりの時間がかかるので、実際にデジタル復元をして、プリントまで完成さ
せるには本数に限度があるそうだ。
もちろんアナログ・デジタル復元ともに新作映画同様にアンサープリント(
完成版)ができるまで、何度もテストフィルムの作成を繰り返す。
この復元作業の過程においても技術者とアーキヴィストの信頼関係は不可欠
だ。キズひとつとっても、それが撮影時のキズなのか、映写時についたキズ
なのか、残すか残さないかの判断を下さねばならないこともあるだろう。

細かいことだが、お互いが高い意識を持っていることが重要である。そうし
た長い過程を経て、フィルムは復元される。
正しくはそれが上映されたときに復元は完成といえるのだろう。

今回のサマースクールは様々な国から参加者が集まってきていたが、どこの
国でも満足に映画保存がなされているとは言えない。
前提となる予算・人員の確保はすべての場所で共通する課題である。保存庫
も設備も十分でないし、今回学んだことが実践できるのは遠い未来かもしれ
ないとため息をつく人もいれば、わりと国の理解もあるヨーロッパに住む学
生でもアーカイヴや現像所の雇用は少ないという人もいる。
しかし、こうしたサマースクールや復元映画祭に参加し、問題を話し合えた
ことはお互いにとって大きな刺激となったし、映画保存を進めるアーキヴィ
ストが何を学び、どんな技術・知識・意識が必要なのかを多角的に自覚させ
られた内容であった。

自分に残された課題はたくさんあったが、ふりかえってみると、改めて一本
のフィルムのもつ情報量というか記憶の大きさに驚嘆させられてしまう。
私が映画は映像イメージであると同時にフィルムという物質であるというこ
とをおぼろげに意識したのは、浅草の映画館で『乱れ雲』を観ていたときで、
真っ赤に褪色していた映像が、突然スクリーンの上で溶けた。
映写機の熱で劣化したフィルムが溶けたのかわからないが、映画の中の時間
とは違う速度で、じわーっと溶けていった画面は忘れられない。

いいことでは決してないのだが、それはとても美しかった。映画を文化財と
して保存しなければという正義感や危機感はもちろんあるが、映画の映像イ
メージとは別の次元で存在する、フィルムそのものの記憶を蘇らせていくと
いう過程の喜びも、映画保存・復元の仕事に惹かれるひとつの理由でないか
と感じた。(M)

※前回のサマースクール報告で言及した映画の邦題に誤りがありました。
 以下、訂正いたします。

『女ともだち』(Le Amiche 1955・伊 ミケランジェロ・アントニオーニ)
『恐喝〈ゆすり〉』(Blackmail 1929・英(サイレント版) アルフレッ
         ド・ヒッチコック )
『歴史は女で作られる』(Lola Montes 1955・仏 マックス・オフュルス)

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§6.【ショートショート書評】第11回 春風に背筋がのびる本
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春の夜の、ほんのり暖かい風の中を歩いていると、ある映画監督の映画が観
たくなる。
市川準。2008年9月、59歳の若さで急死された名CMディレクターで
あり、映画、ドラマ監督だ。

市川監督が手がけたCMを覚えている人は多いのではないだろうか。
「恋は遠い日の花火ではない」(サントリーオールド)といったシックな大
人のCMから、「つまらん…お前の話はつまらん!」(キンチョール)と大
滝秀治が岸部一徳を一喝するユーモラスなCMまで、幅広い味を出せる監督
だった。

初めて観た映画は『東京兄妹』(1995)。小津安二郎と同じ固定ショットが
が多く、静かな映像と共に、路面電車や夕方の商店街の音が心に強く残って
いる。
次は『東京マリーゴールド』(2001)。某食品会社のCMから派生したスポ
ンサー色の強い映画だったが、心の真ん中がぽっかり空いて、それでいて何
かが満たされたような感覚を覚えた。

そして、村上春樹の短編を映画化した『トニー滝谷』(2004)ですっかり市
川監督のファンになってしまった。横浜の高台に建てられたオープンセット
の家。セットの窓から入る風がスクリーンをもすり抜けて客席に届くような
映画だった。

本著はCM、ドラマ、映画などで市川監督の作品に携わった関係者やご家族
からの寄稿で構成されている。俳優からプロデューサー、CMプランナー、
映画制作スタッフらは一同に言う。
「穏やかだった。そして、作りたいものを最初からちゃんと決めていた人だ
った」。
フィルムをとにかく多く使う監督だったらしい。OKテイクが出ても「今の
すごくよかったよ。だから、もう一回やろう!」と言い、お金を管理するプ
ロデューサーはハラハラしていたらしいが……出来上がった作品を観ると、
「あぁ、やっぱりいいな」と思ったと述べている。

穏やかで、揺るぎない人。市川監督は自分の作る作品の温度、空気、風がど
う流れるのかまでわかっていたのだと思う。大声で叫ばなくても、ささやく
だけなのに届くメッセージ。これはそう並大抵の人ができることではない。

本著で市川監督を語る人々の声はそれぞれだが、同じような暖かいささやき
が滲み出ている。なお、巻末には手がけた映画と主要CMの一覧も載ってい
る。これを見れば「あぁ、あのCMもこの映画も市川監督の作品だったのか」
と気づくだろう。
俳優とスタッフと作品を愛し、愛された監督だったのだなと思う。
揺るぎない暖かさ。自分にとって本当に大切なものを追求した人が持つ力強
さ。読んだ後、背筋が伸びるような気持ちになれる本だ。(A)

『市川準』(単行本ソフトカバー)207ページ
出版社:河出書房新社 (2009/2/18) 

※FPS資料室に所蔵はありません。

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§7.FPSからのお知らせ
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□■5月の≪ちいさな上映会≫□■

引き続き、東京都文京区所蔵の16ミリを古いものから順に検査・上映して
いきます。ぜひお越しください。ちらしはこちらです(PDF)↓
http://www.homemovieday.jp/little.pdf

【とき】2009年5月16日(土)
    16時45分〜開場/17時〜会員リレートーク
    18時〜上映開始(終映予定20時30分)
【ところ】協和会の蔵(東京都文京区千駄木5−17−3)

【会員リレートーク その3】
記録映画保存センターってどんなところ? 山内隆治

【文京区ライブラリー所蔵作品から以下を上映します】
1 湖のできるまで 1959年(20分)モノクロ
2 中禅寺 1959年(20分)モノクロ
3 海辺の村、山の村 1969年(20分)カラー
(休憩)
4 わかもの 1964年(50分)モノクロ

※参加費は無料です
※入場の際に、蔵再生カンパ(500円)にご協力ください。
※売店にてパリットフワットのパン、ホットコーヒーなど販売します。

主催:谷根千工房+映画保存協会
会場協力:けんこう蔵部

これまでの《ちいさな上映会》の記録はこちらです↓
http://www.homemovieday.jp/smallgauge/

□■外部イベントのお知らせ その1□■
ヤマヴィカスコープ座 映像の詩学シリーズ序説
「光の綺術」―山田勇男のプライベートフィルム

光と影を幻想的な映像美に昇華させる山田勇男監督の短篇映画がイルバ・
サロンに登場。
スウェーデンで撮影された『郷愁』他を特別上映!北欧神話に通じるよう
な、夢の気配を贈ります。

【とき】5月9日(土) 19時開映
【ところ】YHIギャラリー 
【入場料≫2,000円 1ドリンク付 ★要予約
※上映後、作家トークがあります。
※詳しくは下記URLをご参照ください↓
 http://yhi1971.com/isao_yamada.html

ヤマヴィカフィルム 映画スチル展 
遠藤彰氏による映画スチル写真展の開催と同時に、山田勇男監督の短編映
画を連日上映し、新しいアートの境地を創造します。
儚く懐かしげな映像世界を紡ぎだす山田監督の作品と、淡くも鋭い存在感
を放つ遠藤氏の写真美術がいったいどんな化学反応を起こすのか…御高覧
を!

写真:遠藤彰
会場:ミモザ・ギャラリー
会期:5月19日(火)〜23日(土) 11:00〜18:00
《同時開催》ヤマヴィカスコープ座 映像の詩学Vol.2「少女オルフェ」
http://yhi1971.com/isao_yamada.html

※YHIギャラリー とミモザ・ギャラリーの場所はこちらです↓
 http://yhi1971.com/shop/shop.html

□■外部イベントのお知らせ その2□■

国文学研究資料館が平成21年度アーカイブズ・カレッジを開催します。
詳しくは、同館のサイトをご覧ください↓

大学共同利用機関法人 人間文化研究機構国文学研究資料館
http://www.nijl.ac.jp/contents/events/index.html

また、記録管理学会設立20周年記念研究大会2009が開催されます。
詳しくは、同会のサイトをご覧ください↓
http://wwwsoc.nii.ac.jp/rmsj/katsudo/event/taikai/2009taikai.html

□■ボランティア募集中!□■

1.奇数月第3土曜日の「会員リレートーク/ちいさな上映会」では、ボラ
ンティア・スタッフを募集しています。
午後3時頃から上映終了まで約6時間ほど、半年(3回)以上続けられる方
を希望します。

2.映画保存資料室でもボランティア・スタッフを募集しています。月に1
回(3時間程度)の簡単なデータ入力やファイリング作業が主なお仕事です。
本好きな方、歓迎いたします。

3.蔵部では、蔵の再生を長期的にお手伝いいただける個人・団体を募集し
ています。DIYが得意な方歓迎いたします。事務所シェアにつきましても
お気軽にご相談ください。

以上、詳しくはinfo@filmpres.orgまでお問合せください(FPSにご入会の
必要はありません)。
どうぞよろしくお願い申し上げます。

□■お詫びと訂正□■

2009年4月26日に開催した「D坂シネマ・アンコール上映会」には7
0名のお客さまがお越しくださいました。ご来場ありがとうございました。
このイベントの告知と当日の配布資料の中に間違いが多数見つかりましたの
で、ここに訂正いたします。

1)ベスト・オブHMD2008の上映時間は80分となっていましたが、
正しくは64分でした。

2)ベスト・オブHMD2008の「暮らしのメモ」の解説に「今は亡き」
とある撮影者の只野義明さんはご健在です。

3)「谷中の住まいと生活」は「谷中のすまいとくらし」(「すまいとくら
し」はひらがな)の間違いでした。この作品は褪色が進行していました。

4)「てんまのとらやん」に記載の年代は文京区ライブラリーへの所蔵年で
した。「制作年は1971年」です。
また、唄はダークダックスではなく「フォーコインズ」でした。この作品は
褪色が進行していました。

5)「やさしいライオン」に記載の年代は文京区ライブラリーへの所蔵年で
した。「制作年は1970年」です。この作品は褪色が進行していました。

ご迷惑をおかけした関係者の皆さま及び参加者の皆さまに、心よりお詫び申
し上げます。―主催者

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§8.編集後記
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先日、小会ゲストレクチャー「NON-FILM(ノンフィルム)フランスの映画資
料保存」に参加しました。

NON-FILMとは「フィルム以外の映画関連資料」。例えばポスター、プレスシ
ート、スチル写真、美術設計図、果ては映画関係者の日記やメモまで……そ
の範囲は限りありません。
講師の岡田秀則氏(東京国立近代美術館フィルムセンター主任研究員)の話
をうかがうと、映画保存先進国であるフランスもNON-FILMの整理では資料の
多さに追いついていないようでした。

しかし、印象に残ったのは中央が音頭を取らずとも、地域や地方が資料を残
すことに努力している点でした。
映画を残すことを考える時、今後「地域」「地方」という視点は決して外せ
ないことだと思います。

「映画を残す」と言うと何だか難しそうですが、「私が暮らしている地域の
歴史を残すこと」ととらえる範囲を広げれば、少しずつでもマテリアルの保
存は続けられます。
実際、小会も事務所がある千駄木、根津界隈の方々に(また地域以外の方々
にも)多くを助けられています。本当にありがたいことです。

ちなみにゲストレクチャーは本格的な雨が降る中も満員御礼、レクチャー後
の質疑も活発に行われました。
雨の中いらしてくれたみなさま、そして今後の映画保存活動に関し示唆に富
む話をしてくださった岡田様、本当にありがとうございました。(天野)

≪お知らせ≫
【映画保存見聞録】はお休みします。
「記録映画保存センター&日比谷図書館の巻」は6月末日発行予定のメルマ
ガVol.48に掲載いたします。
次回第6回は「富士フイルム」ほかを掲載予定です。

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 -------------------------------------------------------------------
  映画保存協会(FPS)
  発行元 :映画保存協会 Film Preservation Society 
  編集担当:天野園子
  Web    : http://www.filmpres.org/
  e-mail : info@filmpres.org
 -------------------------------------------------------------------
 ■ご意見・ご感想はinfo@filmpres.orgまでお願いいたします。

 ■このメルマガは「まぐまぐ」「melma!」を利用し配信しています。
  登録/解除は http://www.filmpres.org/info/ml.html から
  お願いいたします。

 ■原則として無断転載を禁じますが、内容を一切改変せず全文転載する
  場合は上記メールアドレスまでご連絡ください。
  Copyright (C) Film Preservation Society All right reserved. 

└─────────────────────────────────┘
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