2008/10/31
映画保存協会『メルマガFPS』Vol.40
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ │映│画│保│存│協│会│Film Preservation Society (FPS)│ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 映画保存協会メールマガジン『メルマガFPS』 Vol.40 (2008.10.31) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ □■─────────────【I N D E X】───────────■□ §1 【けんこう蔵部通信・その11】「芸工展2008」に参加しました §2.第3回映画の復元と保存に関するワークショップ2008 参加報告 (後編) §3.【小型映画部通信:7】フィルム置き場の改善 湿度対策(1) §4.【ショートショート書評】第6回『聞書き キネマの青春』 §5.FPSからのお知らせ §6.編集後記 ■□──────────────────────────────□■ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ §1.【けんこう蔵部通信・その11】「芸工展2008」に参加しました ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ D坂シネマ2008にご来場くださった皆さま、ありがとうございました。 アンケートに寄せられたご意見・ご感想の中から、許可を得たものを以下に 転載いたします。 <初日:[大正時代の日本]> 「Beautiful Japan」の2時間を越える量にまず圧倒されました。作品として みた場合、完成度は高くないし、公開されたかどうかも良くわからないもの ですが、大正時代の日本人の素顔が生き生きと映し出され、新鮮でした。 岡田正子さんの解説が付き、制作の背景など情報も参考になりました。 (協和会の蔵は)不思議な場所ですね!暗くなってからしか訪ねたことはな いのですが、「何が出てくるか?」そのたたずまいが怪しく、わくわくする 空間です。腰が悪いのでイスを用意していただいているのが助かります。 (横浜市 米島慎一様 会社員) <2日目:[日本の風土・産業]ちいさな上映会傑作選> 手元のチラシを拝見すれば、何年制作というのは書いてあるのですが、上映 前にひとことアナウンスがあると、より時の積み重ねの厚さを感じながらみ ることがで居るかな、と思いました。日頃映画をみた後に拍手などしない私 たちですが、誰からともなく自然に心のこもった拍手が起こってステキな夜 でした。 愛らしい作品をあたたかな雰囲気の上映会で拝見して、会場を出ると公園の 草むらからは虫の声。お蔵を振り返ると灯りが何だかゆらゆらしているよう に見えて、狸御殿のようでした。公園をつくる仕事等をしているものですか ら、街の小さな公園の奥にこんな場所があって、こんなに楽しいことをして いる人たちが集って…大事に楽しくおつきあいできる建物であってほしい、 と思いました。(文京区 匿名希望 大学非常勤職員) <3日目:[地域の風習とくらし]> この日は「オオカミの護符」の由井英監督がお持ちになったオリジナルのア ンケートを使用しました。雨天にも関わらず蔵は満席に。私も御岳山でお札 をいただいて、そしてそのお札を蔵の観音扉にはりたいと思っていますが、 今のところは、この作品の大きなポスターが蔵を守ってくれています。(主 催者) 『オオカミの護符』 http://www.sasala-pro.com/ <4日目:[民族の記録]シシリムカのほとりで> アイヌの文化について研究中なのでとても参考になりました。(蔵は)素敵 な空間でした。こういう場所で上映会を開きたいです。 (墨田区 松岡治子様 ライター/翻訳家) ≪協和会の蔵についてはこちらから≫ http://www.homemovieday.jp/kura/ -------------------------------------------------------------------- 11月15日(土)には、ちいさな上映会 Vol. 20を開催します。 2008年さいごのちいさな上映会になります。ぜひお越しください。 午後6時開始(会場は15分前) ≪上映作品≫ 1 自然のしくみ 1960年 20分 2 船 1960年 20分 3 パナマ運河 1964年 12分(?) 休憩 4 三等賞の山羊 1958年 50分 ≪ちいさな上映会 備忘録≫ http://www.homemovieday.jp/smallgauge/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ §2.第3回映画の復元と保存に関するワークショップ2008 参加報告 (後編) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ (前半から続く) ワークショップ最終日の3日目は京都から大阪に移動し、IMGICAウェ ストにて実習が行われました。 IMGICAウェストは大阪市内にある現像所で、フィルムやビデオ編集の ポストプロダクションとして有名ですが、9.5ミリから35ミリへのブロ ーアップなど映画の修復ラボとしても機能しています。 実習は初参加者を対象とした基礎編と、2回目以上の参加者を対象とした応 用編に分かれて行われ、実習は5名ごとの班で、現像所の方を講師として各 セクションを見学するかたちで進められました。 基礎編では映画の修復の際に必要とされる作業を中心に、現像・音響・プリ ント・テレシネといった各作業の説明がありました。 まず、現像ですが、ご存知のようにIMGICAウェストでは、他の現像所 と同様に、多数のネガ現像、そして上映用のプリントの現像を受注していま す。 このため、現像機の見学は実際に稼働している機械もある中で行われました。 映画フィルム用の高速現像機がどのような経路でフィルムを処理してゆくか、 実物の機械を前にしての説明は、非常にわかりやすいものでした。 なお、最近、流行している「銀残し」ができるのは日本ではIMGICAウ ェストだけだそうです。 現像に先立って、フィルムでの修復作業ではタイミングとプリントの作業が あるわけですが、今回の見学では、そのタイミングとプリントのセクション も実作業と作業場の見学がありました。 プリントはウェットゲートを持つ光学プリンター(ステッププリンター)を 中心に、一般的な密着焼き付けに使用する連続プリンター、オプチカルプリ ンターなどの種類や特徴を具体的な説明と実物の見学がありました。 特に、ウェットゲートつきの光学プリンターは修復目的の16ミリから35 ミリへのブローアップ作業にも使われるため、劣化したフィルムを走行させ るために改造したフィルムゲートやスプロケットを装備しており、それらの 説明も復元に興味をも持つ者にとっては興味深いものではなかったでしょう か。 タイミングは大雑把にいえば映画での色彩の管理で、撮影済みのオリジナル ネガ等で起きる色のばらつきをコントロールして、正しい色合いのプリント を得るために必要な作業です。 IMGICAウェストではカラーアナライザによるタイミング作業を行って おり、各カットのフィートを検尺した後、カットごとにカラーアナライザで 色合いの調整を行い、その数値でプリントの照度をコントロールすることで、 最適なプリントを作っています。 映画では少ないもので200カット、多いものでは800カットものタイミ ング作業を1カットごとに行うそうです。 実習ではプリントをカラーアナライザにかけ、正しい色合いになるように調 整する実作業も行いました。 修復では画だけでなく、音響の修復作業も重要な作業ですが、今回の実習で は音響の修復作業(リプロダクション)の見学もありました。 プリントのサウンドトラックから音を抜きだし(音抜き)、そこからデジタ ルでノイズリダクションを行い、光学リレコ(光学録音)するまでの説明が あり、特に最後の光学リレコの見学では、ウェストレックス製のサウンドカ メラのスリット部分を覗き、実際にサウンドトラックがどう記録されるかと いうことを見ることができました。 修復では画だけでなく、音響の修復作業も重要な作業ですが、今回の実習で は音響の修復作業(リプロダクション)の見学もありました。プリントのサ ウンドトラックから音を抜きだし(音抜き)、そこからデジタルでノイズリ ダクションを行います。 また、光学リレコ(光学録音)するまでの説明があり、最後の光学リレコの 見学ではウェストレックス製のサウンドカメラのスリット部分を覗き、実際 にサウンドトラックがどう記録されるかということを見ることができました。 テレシネは多くの人が知っているポストプロダクション工程のひとつですが、 今回の見学ではURSA DIAMOND(アーサーダイヤモンド)と、ムービートーン のそれぞれ特徴の異なるテレシネを見学しました。 URSA DIAMONDはイギリス・シンテル社(旧ランク・シンテル)のテレシネマ シンで、連続走行であるため、フィルムが傷つくことが少ないことが特徴で す。 古いフィルムをテレシネする際には、その連続走行のおかげで、ある程度劣 化したものでもテレシネできるそうです。 カラーコレクタとしてダビンチが導入されており、実習では、そのカラーコ レクタを操作して、カラーバランスの崩れた16ミリプリントの色調を補正 する実作業を行いました。 また、ムービートーンはIMGICAウェスト独自のシステムで、ウェット ゲートを持っていることが特徴です。 キズのあるフィルムからのテレシネの場合は、ウェトゲートでテレシネし、 デジタルでのキズ消し作業となるそうです。 フィルム修復において、もっとも重要な分野はおそらくフィルムそれ自体の キズや破損部分の修復ではないかと思います。 今回の実習では、フィルム修復に実習としてアセテートベースフィルムのセ メントスプライスと、フィルムクリーニングを体験しました。 私個人としては16ミリの編集自体は比較的慣れていたのですが、35ミリ でスプライサーを使わず、手つなぎでのスプライシングは少し戸惑いました。 電動リワインダーを使用したフィルムのハンドクリーニングでは、フィルム クリーナーをつけるために独特の器具を使っており、参考になりました。 実習の最後に9.5ミリからブローアップされたフィルムの参考上映があり、 全日程が終了しました。(S) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ §3.【小型映画部通信:7】フィルム置き場の改善 湿度対策(1) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ FPSではフィルムを保管することはありませんが、小型映画部のフィルム 調査やテレシネ業務でフィルムを一時お預かりすることがあります(収集保 存することはありません)。 2007年4月に事務所を移転して以来、そのフィルムは「協和会の蔵」の 2階に置いてきました。 しかし、夏になると湿気と温度がほとんど下がらず、冷房の効果も少ない、 ということで、2008年から蔵の1階に戸棚を一つもらい、フィルムを移 動しました。 週に一回、お昼過ぎに温湿度計で計測したところ、温度は気象庁発表よりも 大体3度ほど低くなっています。 冬の間はそれでもいいのですが、夏になってくると特に湿度の面で気候の変 動の影響をもろに受けています。 木造の戸棚の中で温度を下げるのはなかなか困難なので、IPI(米の研究 機関)の資料やJIS規格などを頼りに戸棚の中の湿度を低く安定させよう という目標をひとまずかかげ、いろんなものを戸棚に取り付けてみました。 ・備長炭シート もともと機材置き場に敷いてあったのを取り入れました。炭は湿度を55% RHぐらいに保つ調湿効果があるそうです。 ・すのこ 本当は床や壁全体に貼るといいらしいのですが、予算の関係で床だけ設置。 錆を気にして釘を使わない製法のものを購入しました。 ・市販の押入れ除湿剤 三角形のものは使い回しが利かないので、長方形の詰め替え可能なものを購 入。除湿剤の中身は塩化カルシウムで、湿気を吸収すると水分になります。 ・新聞紙 新聞紙を丸めて数本押入れの天井から吊り下げました。 ・冷房と扇風機 事務所にいる時間は蔵の冷房をドライに、さらに扇風機を戸棚の前に持って いって、空気の入れ替えを心がけました。 ・充電式除湿機 除湿庫を自作するサイトを読んで購入を思い立ちました。除湿剤は市販の押 入れ用と同じ塩化カルシウムで、そこにファンで空気をあてて庫内の湿度を 下げる構造です。 ここまでは一般の押入れ除湿法です。しかし思ったほどには湿度が下がりま せんでした。今年の夏は暑く、ゲリラとまで言われるまとまった大雨が続い たせいもあるでしょう。 これらを続けながら、湿度を下げる効果的な別の方法を、また新たに探す必 要に迫られました。(続く) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ §4.【ショートショート書評】第6回『聞書き キネマの青春』 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 戦前から戦後にかけて、日本最初の映画黄金期に活躍した監督や俳優らへの ロング・インタビューをまとめた一冊。 映画の世界に住む人達だけあって、本となっても映画を観るように視覚的な 表現がたくさん盛り込まれ、大変面白い。 また、取材する側(岩本憲児氏と佐伯知紀氏)がワクワクしながら話を聞く 様子も読んでいて楽しい。 特に、某大物監督の口から漏れた当時の秘密や裏話に「えーっ!」と驚く件 などは、読者もその場で話を聞いているような錯覚に陥る。 映画保存活動の中で、保存すべき対象はフィルムから映写機、極端にいえば 映画館まで多岐に渡る。 が、そうしたマテリアル以外に忘れがちなのが、当時を生きた人々の「生の 声」なのだ。 有名監督クラスになると自伝や評論が世に出ることはあるが、インタビュー という形式は少ない。欧米では映画人のインタビュー集が多いが、日本で少 ないのはなぜだろうか。 映画保存に関心をもつ者としては、「こうした生声も映画保存の一つだなぁ」 と改めて思った一冊だ。 見た目は分厚い本だが、日本映画の礎を築いた人々の熱い息遣いが伝わる好 著である。この本を読めば、きっと昔の日本映画を見に行きたくなるだろう。 蛇足だが、ある有名脚本家の写真が雑誌に出ていた時、後ろの書棚にこの本 があった。脚本や小説よりも面白い話が盛りだくさんの1冊、古本屋やネッ トでも購入できる。ぜひご一読を。(A) 『聞書き キネマの青春』単行本: 437ページ/出版社:リブロポート(1988/12) ※FPS資料室への所蔵はありません。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ §5.FPSからのお知らせ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ □■第4回映写機講習会のお知らせ■□ 今年2回目の映写機操作講習会です! 地元で上映会を開催したい方、フィルムや映写機に触れてみたい方など、ぜ ひこの機会にご参加ください。 チラシ(PDF)のダウンロードはこちら↓です。※会場の地図もこちらです※ http://www.filmpres.org/japanese/wp-content/uploads/2008/09/4thprojectionws.pdf 【とき】2008年11月9日(日)午前10時〜午後5時 【ところ】協和会の蔵(東京都文京区千駄木) 【講師】武田正氏(元日比谷図書館視聴覚担当) 【参加費(テキスト代を含む)】一般 2000円(FPS会員は1500円) 参加ご希望の方は、 「お名前(フリガナ)」「ご住所」「メールアドレス」を明記の上、下記メ ールまたはFAXでご連絡ください。 ※締め切りは11月2日(日)です※ ただし定員(16名)に達した時点で締め切りとさせていただきます。 ≪お申し込み・お問い合わせ先≫ smallgauge@filmpres.org FAX:03-3823-7633(担当:中川) □■第9回宝塚映画祭 クロージングで「映画の里親」作品を上映□■ 宝塚映画祭のクロージング・イベントとして、FPS発掘の「映画の里親」 作品『学生三代記』(宝塚球場ロケ)の上映と、冨田美香・立命館大学准 教授と地元出身の片岡昌明氏によるトークがおこなわれます。 ≪宝塚映画祭≫ 11月1日〜7日 http://www.takarazukaeiga.com/ 【続報!】 会期中、シネ・ピピア会場ロビーにて、戦前の阪神間を撮影したと思われる 9.5ミリフィルムコレクションの展示を行います。 映像のスライドショーも予定しております。 現在、FPS小型映画部ではこのコレクションの調査を行っています。会 場にて情報提供を呼びかけておりますので、ぜひご協力ください。 http://www.filmpres.org/archives/371 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ §6.編集後記 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 先日、テレビでアニメのトリビアを紹介する番組を見ていたところ、現存す る日本最古のアニメとして『なまくら刀』(1917年)が放送されました。 出演者の芸能人も「短いのによく出来ている」「動きが面白い」とコメント。 今や日本発の重要コンテンツとなったアニメの原点となる作品が、今見ても 一定のレベルを保っていたと思われたようです。 最近、ITの世界では過去の写真や動画をどのように復活させるか、という テーマが頻繁に議論されています。 デジタルアーカイヴに関する技術の躍進で、過去の財産を再利用する動きが 広がっているそうです。 ただ、著作権の問題もあり、なかなかうまくはいかないようですが、映像財 産の利用についてより一層関心が高まってくれればいいなと思います。 (天野) [お知らせ] 「SEAPAVAA報告」は次回に掲載します。 また、都合により【FIAFサマースクール報告】はお休みします。 ┌─────────────────────────────────┐ ------------------------------------------------------------------- 映画保存協会(FPS) 発行元 :映画保存協会 Film Preservation Society 編集担当:天野園子 Web : http://www.filmpres.org/ e-mail : info@filmpres.org ------------------------------------------------------------------- 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