映画保存協会メールマガジン「メルマガFPS」  RSSを登録する

映画フィルムを映像文化財として考える「映画保存協会」のメールマガジンです。当会の活動や催し情報などについてお伝えしていきます。映画は時代を映す貴重な文化財!観る/作る以外の映画の楽しみ方にご興味がある方はぜひ!

最新号をメルマガでお届けします    
登録 解除

規約に同意して

登録した方には、まぐまぐの公式メルマガ(無料)をお届けします。
2008/09/30

映画保存協会『メルマガFPS』Vol.39

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
│映│画│保│存│協│会│Film Preservation Society (FPS)│
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 
映画保存協会メールマガジン『メルマガFPS』 Vol.39
                         (2008.9.30)   
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
          
□■─────────────【I N D E X】───────────■□

§1 【お知らせ】FPSのメーリングリストにご参加ください!

§2.【けんこう蔵部通信・その10】「芸工展」のイベント案内

§3.【ホームムービーの日に向けて・いよいよ最終回】

§4.【小型映画部通信:6】インスペクション研修

§5.第3回映画の復元と保存に関するワークショップ2008 参加報告
  (前篇)

§6.【FIAFサマースクール報告】その1
   イタリアのホームムービーアーカイヴ

§7.SEAPAVAA報告その2 「ちょうっとうらやましい話」篇

§8.「映画保存資料室」報告(2008年6〜9月)

§9.【コラム】UCLAで映画保存を学ぶ!最終回

§10.【ショートショート書評】『映画館と観客の文化史』

§11.編集後記

■□──────────────────────────────□■

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
§1.【お知らせ】FPSのメーリングリストにご参加ください!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
映画保存に関する疑問・質問、関連イベント情報などをご投稿いただけます。
FPSに入会することなく、どなたもご参加いただけるメーリングリストで
す(もちろん無料)。

参加ご希望の方は、こちらをご覧ください。

http://www.filmpres.org/archives/376

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
§2.【けんこう蔵部通信・その10】「芸工展」のイベント案内
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
FPSの地元・谷根千地区の10月は、「芸工展」という文化イベントで賑
わいます。

協和会の蔵では芸工展参加イベントとして《三十日鳥》(ミソヒドリ)さん
の3日連続公演『踊り日和・寝ざめ月』と、毎年恒例の《D坂シネマ》を催
します。

今年の《D坂》は「日本の民族・暮しを探る映画祭」と題し、『オオカミの
護符』16ミリ版上映や、大正時代の日本を撮影した『美しき日本』(19
18年)を岡田正子さんの解説付きで鑑賞する企画など、盛りだくさんの内
容です。どうぞお楽しみに。

『オオカミの護符』
http://www.sasala-pro.com/

この夏、蔵の設備はずいぶん改善されました。スクリーンを新調し、念願の
16ミリ映写機用ズームレンズも入手。

さらに《三十日鳥》さんのご厚意で、内部の危険箇所も修繕していただきま
した(!)。

思えばゴールデンウィーク中の一箱古本市、悪天候の中を古本めがけてお客
さまが蔵に押し寄せ、その最中に蔵の2階の天井が抜ける事故が起こったの
は、蔵の発した悲鳴だったのかもしれません。

初の古本市参加は光栄なことでしたが、開催後ドロドロになった床を拭きつ
つ、あちらこちらの傷が悪化していることに気付きました。
頑丈なつくりとはいえ、大勢が入れ替わり立ち代わり忙しなく出入りするの
は、築100年の蔵にはちょっとした試練だったようです。
修繕しながら蔵を活用してくださるという三十日鳥さんを、蔵は自分の力で
引き寄せたのでしょうか。(K)

《芸工展2008》
2008年10月11日(土)〜26日(日)
http://www.geikoten.net/

※芸工展期間中の蔵イベントについては、こちらをどうぞ。
http://www.filmpres.org/archives/364

※蔵のあらましについては、こちらをどうぞ。
http://www.homemovieday.jp/kura/

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
§3.【ホームムービーの日に向けて・いよいよ最終回】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
第6回ホームムービーの日
http://www.homemovieday.jp/

2008年10月18日(土)
世界11カ国、国内13会場で同時開催!
--------------------------------------------------------------------

アルゼンチンで発見された『メトロポリス』の16ミリ最長版については、
国内でも話題になりました。
このニュースを伝える『サイト&サウンド』誌上、復元専門家勢揃いの集合
写真の中のマルティン・ケルバーさんは、さすがの貫禄を見せています。
この記事を読んで発見の経緯をようやく詳しく知ることができました。
なぜこのようなニュースを話題にするかといいますと、数々のドイツ無声映
画の復元を主導するマルティンさんも、実は「ホームムービーの日」世話人
の一人だからなのです。

名の知れたNYのアンソロジー・フィルム・アーカイヴズや、ボストンのハ
ーバード・フィルム・アーカイヴ、テキサスやシカゴの地域映像アーカイヴ、
イタリアの国立ホームムービー・アーカイヴに日本のシネマ・カフェまで、
世話人も会場も一見てんでばらばらなところが、この草の根イベントの魅力
の1つです。もちろん、アルゼンチンのブエノスアイレスでも開催されます。

思わぬ映像の発見と、持主の何気ない一言からじんわり感動が広がるあの奇
跡のような瞬間……。

8ミリ映写こそ緊張の連続ですが、しかし、現物を上映しない限りフィルム
をとりまく文化を残すことはできません。
お友達やご家族お誘い合わせの上、どうかお近くの会場で、この記念日を楽
しんでください。今年は国内13会場(都内8会場)で開催されます。(K)

≪ご参考:増幅する『メトロポリス』に関するノート(翻訳・矢田聡)≫
http://www.filmpres.org/archives/10

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
§4.【小型映画部通信:6】インスペクション研修
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
もうすぐ毎年恒例の≪ホームムービーの日(HMD)≫がやってきます。H
MDには世話人が意見を交換するメーリングリストがあります。
そこに、今年初開催の杉並と北千住会場から「HMDの前に8ミリのチェッ
ク方法を教えて欲しい」という声があがりました。
そこで今年も小川芳正さんに講師をお願いして、9月21日にインスペクシ
ョン研修を行いました。

しかし、いざ調査を始めよう、という段階になって、機材をはじめ8ミリの
周辺機器を手に入れるのが、現在かなり難しくなっていることに気づきます。
その関連で今回の研修で話題になったことを2つご紹介します。

(1)8ミリリーダー
リーダー(本編の前後につけて、フィルムを保護する無地の部分)は、すで
に国内で生産している業者はなく、FPSでもお世話になっている業者さん
から以前のストックを購入している状態です。

特にレギュラー8のリーダーを手に入れることは難しく、FPSの在庫も底
をついてきました。

そこで、今年はリーダーをHMD世話人の有志4人で共同購入という方法に
踏み切りました。レギュラー8のリーダーはサイト「LITTLE FILM」を参考
に、アメリカのコダックに電話をして、50フィートのアセテート白リーダ
ーを取り寄せました。
最終的にはHMD本部のスポンサーでもあるPro8から購入することにな
りました。原油高の影響なのか、商品そのものよりも輸送費の方が高くつい
てしまい、もうちょっと安く購入する方法もあったのでは、と反省していま
す。

≪LITTLE FILM≫ http://www.littlefilm.org/

≪Pro8≫ http://www.pro8mm.com/

今回の研修には、杉並会場からレギュラー8のフィルムが提供され、前リー
ダーを交換することになりました。
そこで問題になるのがスプライサーです。

FPSではパーフォレーションの大きさが同じ16ミリのスプライサーを使
っていますが、事務所に1台しかありません。
会員から提供してもらったレギュラー8専用のテープスプライサーも2台だ
けで、刃が鈍っているものもあります。
フィルムセメントを使うスプライサーはありますが、一度はがれたセメント
の上に再度セメントを塗っても十分に接着しないようです。
リーダーは何とか手に入れたものの、それを付けるにはどうしたらよいのか
という課題はまだ残されたままです。

(2)フィルムクリーナー
フィルムクリーナーは現在ベンジンあるいはHCFC−161b(ハイドロ
クロロフルオロカーボン、液体フロン)という名の溶剤を使っています。

この後者は普通は機械類の洗浄などに使われている代替フロン剤です。揮発
性が高く、汚れ落ちもよいのですが、オゾン層破壊の恐れがあるとして、世
界的に規制が始まっており、日本でも2020年までの生産全廃が決まって
います。そのため現在でも一般には出回っておらず、石油缶で数万円が最小
単位のようです。

そこで、「何か代わりのものを見つけなくてはいけない」となり、今回小川
さんに教えてもらったのが無水エタノールです。
無水エタノールはベンジンより揮発性では劣るものの、効力は高いとのこと。
町の薬局で1000〜1500円前後で購入できるのも強みです。

揮発が遅いので、巻き取りながらのクリーニングはゆっくりめになりますが、
その効果を確かめることができました。
ただ、はがれたスプライス部分の接着剤の残りをきれいにふき取ろうとした
ときに、フィルムに白いシミが出る現象が見られました。
これが後々どのような影響を及ぼすのか、まだ分からないところがあります。

毎年インスペクション研修に参加すると、さまざまな課題が浮かび上がって
くるとともに、HMDに向けて気持ちが新たになります。
実は今年は開催できるかどうか微妙なところだったのですが、講師の小川さ
んと杉並・北千住両会場の世話人の皆さんの協力により、何とかここまでこ
ぎつけることができました。本当にありがとうございました。(N)

※インスペクションの流れはこちらをご覧ください。
http://www.filmpres.org/archives/36

※映画保存七つ道具も参考になります。
http://www.filmpres.org/archives/126

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
§5.第3回映画の復元と保存に関するワークショップ2008 参加報告
  (前篇) 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
第3回となる「映画の復元と保存に関するワークショップ2008」が8月
30日から9月1日の3日間、京都・大阪で開催されました。

まず、1日目は京都文化博物館の別館で、築100年を超える旧日本銀行京
都支店内でスタートし、大阪芸術大学の太田米男氏によるワークショップに
ついての全体説明、そして映画保存についての問題提起として、フィルム復
元と著作権の関係など映画保存をとりまく問題、大阪芸術大学・玩具映画の
研究プロジェクトでのフィルム劣化の事例が報告されました。

この事例では可燃性フィルムの劣化の経過を観察し、加水分解が進行してゆ
くとどうなるか、という興味深いものでした。

東京国立近代美術館フィルムセンターの板倉史明氏からは「日本における映
画保存」としてフィルムセンターでの収集や復元の方針を中心に、フィルム
アーカイヴの意義や役割が話され、同じくフィルムアーカイヴとして機能し
ている京都文化博物館の森脇清隆氏からは、「地域のアーカイヴによる映画
の保存と復元」として、日本のフィルムアーカイヴでの映画の復元の歴史と
復元の際の方針という問題が語られました。

この後、復元された映画として『祇園小唄絵日傘 狸大尽』(1930年)、 
『僕らの弟』(1933年)の上映を観て1日目は終了しました。

2日目は実際の事例を中心に修復の現場からの報告が行われ、FPSからは
『路地裏の映画保存活動[海外篇]』と題し、映画の里親をはじめとするF
PSの活動や各地のホームムービーの日(HMD)の紹介、海外での視聴覚
アーカイヴ団体・アーキビストの組織についての解説を行いました。

あわせてイタリア・ボローニャで行われたFIAF主催のサマースクール2
008へ参加したFPSの会員により、サマースクールでの実習、そして現
地・イタリアでの地域アーカイヴの現状が報告されました。

実際の映画の復元の事例では、「『なまくら刀』と『浦島太郎』デジタル復
元について」として、先ごろフィルムセンターでも上映されたアニメーショ
ン作品のイマジカでの復元プロセスが報告されました。

この2作品は可燃性というだけでなく、染色フィルムであるため、色の再現
など技術的課題をともなう作品であり、今回の復元では染色という現在のカ
ラーフィルムとは異なる技術で作られた作品を復元するにあたって、デジタ
ルによる復元方法とアナログによる復元方法それぞれの利点を比較し、それ
らを組みわせて復元を行ったそうです。

非常に興味のある分野である9.5ミリについても映画の里親第4回作品、
『霧隠才蔵』の復元作業での事例が紹介され、9.5ミリ用のムーヴメント
を組込んだオプチカルプリンターでの作業など、35ミリへのブローアップ
にともなう作業だけでなく、9.5ミリ特有のコマ止めのインタータイトル
をどのように処理するか、その際のタイトルの濃度を本編とどのように合わ
せるかなど、課題点・問題点もあわせて報告されました。

2日目の映画上映は『海軍爆撃隊』(1940年)。
円谷英二が特殊撮影として参加した東宝製作・海軍省後援の戦争映画で、1
6ミリ短縮版からの復元作品でしたが、海軍省の当時の意図はともかくとし
て、非常に力のある作品であり、すでに発見の時点で劣化が進んでいたとい
うこのフィルムが復元されたことは、とても意義のあることではないでしょ
うか。(S)※後編につづく

≪参考URL≫
路地裏の映画保存活動[海外篇]
http://www.filmpres.org/archives/374

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
§6.【FIAFサマースクール報告】その1
   イタリアのホームムービーアーカイヴ
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
FPS会員が今年、イタリアで行われたFIAF(国際フィルム・アーカイ
ブ連盟)のサマースクールに参加しました。
今回からそのレポートをお送りします。
--------------------------------------------------------------------
今年もホームムービーの日(HMD)が近づいてきました。
 
この夏、FIAFのサマースクールのために訪れたイタリアのボローニャで、
ホームムービー専門のアーカイヴに行ってきました。
アーカイヴの名前は「Homemovies」。イタリアのHMD開催機関の一つでも
あります。
 
Homemoviesは歴史資料図書館のある建物の中にあり、図書室と同じフロアに
事務所や作業場、地下に保存庫があります。
地下の保存庫には、イタリア中から寄贈されたホームムービーが7000本
あり、専門家と相談して作ったという保存庫は温度・湿度管理が設備されて
いました。

ラベルを貼ったホームムービーが棚にずらりと並び、8ミリ、9・5ミリ、
16ミリと形は様々ですが、古くなったリールや缶などは新しくしているそ
うです。
寄贈したフィルムの持ち主には、テレシネしたDVDを渡しているそうで、
テレシネの作業もこちらで行っています。
手作りのリワインダーつきの作業台がとても使いやすそうでした。

もちろん保存だけしているわけではありません。それらが活用されるように
カタログ化作業も進めており、閲覧スペースのPCからは、一部リストや映
像を見ることもできました。
また、上映や修復ワークショップなどのイベントも行っています。

この団体は、国・地域からの支援、フィルム所有者の寄付などで運営してい
るそうです。
もちろんイタリアすべてのホームムービーを集約することはできませんが、
個人のものであったホームムービーが、新たな活用の場を待ちながら、きち
んと保存される施設があるというのはとてもうらやましいことです。

私は仕事で毎日、8ミリのホームムービーをみていますが、どんなフィルム
にもそれを撮った誰かの記憶が、もう失われた時間と場所が、映っています。

それらをそっと家族だけで大切に保存しておくのも、フィルムにとって幸せ
な選択だと思います。
しかし悲しいことに、テレシネしたら捨てられてしまう運命にあるフィルム
がとても多いことも事実です。

個人の持ち物にとやかく口出しはできませんが、例えば地域にこうしたホー
ムムービーを受け止める施設があって認知され、少しづつでも数が増えてい
けば、いつか新たな歴史や風俗史がそこから発見されるかもしれませんし、
新たな魅力で人をひきつけるかもしれません。

日本では東京・台東区がこうした家庭の8ミリを保存するアーカイヴを始め
ると聞きました。
今後こうしたアーカイヴが増えてゆくことを願いつつ、来月のホームムービ
ーの日を楽しみに待ちたいと思います。(M)
 
≪参考サイト≫
Homemovies ホームページ
http://www.homemovies.it/index.html
 
ARCHIVI NASCOSTI
(Homemoviesが最近修復して保存したコレクションを閲覧できます)
http://www.memoriadelleimmagini.it/archivio/filmati.php〉

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
§7.SEAPAVAA報告その2 「ちょうっとうらやましい話」篇
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
2008年6月23日〜27日の5日間、第12回目となる東南アジア太平
洋地域視聴覚アーカイヴ連合(SEAPAVAA)会議がフィリピンで開催
されました。3回に分けてその内容を報告する今回は2回目です。

一日がかりのワークショップを終えると、一同は復元上映会に参加するため
「フィリピン文化センター」内の劇場に向かいました。
上映前のロビーでローカル・フードのおもてなしを受けるうちに、香港電影
資料館(HFA)の司書さんとお話することができました。

HFAからは順繰りで毎年2名がSEAPAVAA会議に参加します。約5
0名の職員さん全員が参加するまでには25年かかってしまうわけですが、
出張費など一切出ないFPSにしてみれば、夢のような話です。
お二人は帰国後の参加報告会のために、会議の様子をビデオカメラで熱心に
撮影されていました。

上映作品に選ばれたのは、地元アーキヴィスト一押しの1959年に制作さ
れた『BIYAYA NGLUPA』(邦題は「大地の恵み」)。
前説によると、主演の二人は普段は決って悪役、ところがこの作品では例外
的に良き父、良き母を演じ、勧善懲悪がお決まりの当時のフィリピン映画に
は珍しく、設定に深みがあるそうです。
当時の海外の映画祭で絶賛されたとことにもうなずける、女は強し、の映画
でした。

翌日は朝からお楽しみの見学会。テレビ局のABSーCBNフィルム・アー
カイヴとモウェルファンド・フィルム・インスティチュートを同じ日に回る
コースに参加しました。
最新鋭の機材が揃うテレビ・アーカイヴをさらりと流した後、ついに憧れの
モウェルファンドへ!

映画保存への取り組みが盛んな国として古くから知られるフィリピンには、
SEAPAVAAの本部が置かれています。
モウェルファンドはそんな彼らの「本拠地」でもあるはず。しかしテレビ局
と比較すると、フィルム置場に空調すらない現状は予想以上に厳しいもので
した。

博物館の中では、日本統治下のプロパガンダ映画『あの旗を撃て』(194
4年、Dawn of Freedom)の展示が気になり、色褪せたポスターに添えられた
キャプションの文字を暗い照明の下で読んでいる間に団体から置いていかれ
ました。

窓の外を覗くと、皆は屋外展示の「映画スターの庭」に到達しているようで
す。
残っていたスタッフのリッキー・オレラーナさんが、遅れたついでに、と上
階の作業場を見せてくださいました(ちなみにリッキーさんはアニメーター
でもあり、今回の会議プログラムの表紙イラストも手掛けています)。

たった1台の縦型の手動リワインダーが主役の座を占める作業場では、ヤシ
の葉の鮮やかな緑が手の届く距離で風に揺れ、その隣のガジュマルの木の枝
の上では野良猫が、漂ってくるビネガー臭もなんのその、すやすやとお昼寝
中でした。
奥の物品棚に積まれたフィルム缶に向けて首を振っている何台もの扇風機と、
木炭の山(ビネガー対策!)。
この作業場のことは、限られた予算の中で最善を尽くすモウェルファンドの
意気込みとともに、帰国から3ヶ月が過ぎた今も時々思い出されます。

見学を終え、夜のパーティーがはじまるまでの小一時間を使ってようやく街
に出ました。
曇天ながら、やはり熱帯。少しの散歩でもじっとり汗ばんできます。こんな
気候の中ではフィルムの劣化も止めようがありません。どうすれば良いので
しょう。

明るくにぎやかな市場を抜けてイントラムロスの壮麗なサン・アグスチン教
会(世界遺産)のあたりを歩いていると、かつて日本軍が10万ものマニラ
市民を殺戮し、歴史的な建造物を破壊し尽くしたという事実に、否応もなく
胸が苦しくなってきます。

冷房の効いた乗合タクシーに拾われて会場に戻ると、既にパーティーが始ま
っていました。
チャリダー・ウアバムルンジットさんはじめ、パワフルなタイの関係者のお
しゃべりに混ぜていただき、民族舞踊に豪勢なお食事と、至れり尽くせりの
一夜を楽しみました。(K)※次号につづく

≪東南アジア太平洋地域視聴覚アーカイヴ連合(SEAPAVAA)≫
http://www.seapavaa.org/

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
§8.「映画保存資料室」報告(2008年6〜9月)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
2008年9月20日現在、所蔵資料件数:817 >>> 850

映画保存資料室では、ようやく蔵書印を押しはじめました。
まだ整理できていない資料も多いものの、徐々に体制を整えています。

久々に公開日も設けました。次回は10月23日です(要予約)。この3ヶ
月の新着資料には、SEAPAVAA会議報告にもあるマニラのモウェルフ
ァンド・フィルム・インスティチュートでいただいた、「FILM AND FREEDOM
MOVIE CENSORSHIP IN THE PHILIPPINES」、早稲田大学演劇博物館で開催さ
れた企画展の図録「ニッポンの映像展−写し絵・活動写真・弁士−」、富士
フイルムの社史「富士フイルム50年のあゆみ」などがあります。

【映画保存資料室 所蔵データベース】
http://d.hatena.ne.jp/filmpres/

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
§9.【コラム】UCLAで映画保存を学ぶ!最終回
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
映画保存では先端を行くアメリカでの様子をリアルに伝えてくださった宮野
起さんのコラム、今回が最終回となります。
さて、卒業を控えた宮野さんが最後に受けたトレーニングとは…?
--------------------------------------------------------------------

(前号から続く)

実際のフィルムを手にするまでは、ジャンク・フィルムを使って補修訓練で
す。
週2日のインターンシップでしたが、これが3週間ほど続きました。次にセ
メント・スプライサーの使い方を学び、一応の作業ができるようになって、
ついに本番作業に入ります。

まずパーフォレーションを修復し、弱くなったつなぎ目をばらしてスプライ
シングし直します。幸いつなぎ目は挿入字幕の部分に集中していたので、画
の部分を捨てずに済みました。

しかし後になって初歩的なミスからど真ん中で画を数コマ切ることになり、
自動車が走っている最中にジャンプカットになってしまいました。

楽しかったのはフィルムを触るよりもジェリ・ガルディンとの会話でした。
UCLAアーカイブに来て30年近くになるジェリは、ゴシップも含めてア
ーカイブの非公式な歴史をたくさん教えてくれました。

ジェリは日本映画のファンでもあり、次第に話題はアーカイブの所有する日
本映画のプリントに及びました。
驚くことにUCLAには戦前の松竹作品の35ミリのナイトレート・プリン
トがかなり良い状態で保存されていることが分かりました。
戦前ロサンゼルズで日本映画を配給しようとしていた人が、今から20年位
前に寄贈したそうです。

早速、東京国立近代美術館フィルムセンターに問合わせてみると、松竹にも
16ミリプリントしかないのではないかというお返事をいただきました。

去年ニュース映画を分類していた時には、東宝で円谷英二を撮影したフィル
ムを発見しました。円谷が東宝で『宇宙大戦争』という映画を撮影している
際の記録フィルム(白黒サイレント)で、本田猪四郎監督や池辺良の姿も記
録されています。
さすが35万本のフィルムを擁するフィルム・アーカイブ、まだまだお宝が
眠っているかも知れません。

話がそれましたが、修復が終わって繋ぎ直したフィルムからはUCLAが所
有するラボでデュープネガが作られました。
プリントは丈夫だったため通常のコンタクト・プリンターが使用されました。

ところがネガ編集の段階になってびっくり。なんと化学薬品がきちんとふき
取られずに表面に付着しています。
結局、新たに作られたプリントに影響はありませんでしたが、限られた量し
か仕事のない自前のラボでは、質の面で営利目的の外部ラボには敵わないの
かもしれません。

余談ですが、UCLAのラボにはプリンターしかなく、現像はバーバンクに
ある「YCM」というラボで行われました。
YCMは映画修復専門のラボで、責任者はUCLA出身のエリック・アジャ
ラです。
エリックとは私もソニーのインターンシップを通じて知り合いになりました
が、誰もが認める優秀なテクニシャンです。

染色は残念ながら間に合いませんでしたが、生徒が修復した作品は私の分も
含めてUCLA構内のメルリッツ劇場で上映されました。
ディレクターのクリス・ホラック他、関係者が一堂に会した楽しい集まりと
なり、卒業前の素晴らしい思い出となりました。(了)

◇宮野 起(ミヤノ オキ)
日本大学芸術学部映画科卒業、2000年渡米。LAでアメリカンシネマテー
クなどの日本映画上映会にスタッフとして参加する傍ら日本特撮映画の海外
での再評価に尽力する。現在、UCLAのMoving Image Archive Studies Pro-
gram(MIAS)に在籍。

◇宮野さんにいただいたハンドアウトなどは映画保存資料室にファイルして
いく予定です。興味をお持ちの方はぜひお問合せください。

◇MOVING IMAGE ARCHIVE STUDIES, UCLA
http://www.mias.ucla.edu/

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
§8.【イベントのお知らせ】幻の映画『新版大岡政談』、よみがえる!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
FPS会員の澤登翠さんと柳下美恵さんによる“ロスト・フィルム・プロジ
ェクト”が、10月27日の「世界視聴覚遺産の日(World Day for Audio-
visual Heritage)」の前日に行われます。
「世界視聴覚遺産の日」の記念イベントとして『新版大岡政談』(1928
年)を澤登さんの活弁と、柳下さんの演奏でお楽しみください!

--------------------------------------------------------------------
フィルムが失われ〈幻の映画〉となっている大河内傳次郎=伊藤大輔コンビ
の代表作『新版大岡政談』(1928年/日活太秦)を、大河内研究の第一
人者で、数え80歳になる映画史家、梶田章氏の萬集によるスチル写真のス
ライド上映と澤登翠の弁士、柳下美恵の音楽伴奏で再構築します。
また、梶田氏の講演もあります。

□日時:2008年10月26日(日) 午後3時開演(2時半開場)
□会場:東京国立近代美術館フィルムセンター大ホール
 地下鉄銀座線京橋駅、都営浅草線宝町より徒歩1分
□料金:一般500円 高校・大学生・シニア300円(証明できるものを
お持ちください)
□定員:301名 /開映後の入場不可
□お問い合わせ NTTハローダイヤル 03−5777−8600
http://www.momat.go.jp/FC/UNESCOevent/index.html

※なお、このイベントに先立ちまして10月23日に『忠次旅日記』、24
日に『御誂次郎吉格子』の活弁・音楽付き上映が19時からあります。
あわせてご来場ください。

http://www.momat.go.jp/FC/NFC_Calendar/2008-10-11/kaisetsu.html
http://www.momat.go.jp/FC/NFC_Calendar/2008-10-11/kaisetsu_57.html
http://www.momat.go.jp/FC/NFC_Calendar/2008-10-11/nittei.html

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
§9.FPSからのお知らせ
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
□■第4回映写機操作講習会を開催します□■

今年2回目の映写機操作講習会です!

地元で上映会を開催したい方、フィルムや映写機に触れてみたい方など、ぜ
ひこの機会にご参加ください。

【とき】2008年11月9日(日)午前10時〜午後5時
【ところ】協和会の蔵(東京・千駄木)
【講師】武田正氏(元日比谷図書館視聴覚担当)
【参加費(テキスト代を含む)】
 一般 2,000円(FPS会員は1,500円)

参加ご希望の方は、「お名前(フリガナ)」「ご住所」「メールアドレス」
を明記の上、下記メールまたはFAXでご連絡ください。
締め切りは11月2日(日)です。

※ただし定員(16名)に達した時点で締め切りとさせていただきます。

≪お申し込み・お問い合わせ先≫
smallgauge@filmpres.org
FAX:03-3823-7633(担当:中川)

□■第9回宝塚映画祭 クロージングで「映画の里親」作品を上映□■

宝塚映画祭のクロージング・イベントとして、FPS発掘の「映画の里親」
作品『学生三代記』(宝塚球場ロケ)の上映と、冨田美香・立命館大学准
教授と地元出身の片岡昌明氏によるトークがおこなわれます。

≪宝塚映画祭≫ 11月1日〜7日 http://www.takarazukaeiga.com/


□■『羅生門』角川映画と米アカデミーの共同デジタル復元□■

FPSの団体会員である角川映画 “原版保存プロジェクト”の取り組みの
一環として、黒澤明監督の『羅生門』(1950年)がデジタル復元され
ることになりました。詳しくは以下URLをご覧ください。

http://www.kadokawa-pictures.co.jp/whatsnew/1181.shtml

☆続報☆
復元されたフィルムの上映は、9月18日より米アカデミーで開催される
回顧展 “Akira Kurosawa: Film Artist” のオープニングに続き、日本で
は10月18日〜26日に開催される第21回東京国際映画祭での特別上
映が決定しました。10月25日 11:30〜です。 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
§10.【ショートショート書評】『映画館と観客の文化史』
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「うーん…ムズカシイ」

読後の感想。正直言ってスラスラと頭に入る文章ではありません。学術的用
語が多く(学術書なので仕方ありませんが)、「気軽に読んでね」とオスス
メできる本ではありません。
しかし、映画発祥から現代に至る歴史を映画館と観客という、ありそうでな
かった視点から取り上げた本書は大変意義のあるものだと思います。

特に、映画技術の発展が観客層へどのような影響を与えたのか、一方、社会
の変化が映画の観客の姿勢をどのように変えたのかについては意外に知られ
ていないのではないでしょうか。
欧米から日本までの映画館と観客、といっても巨大なドライブインシアター
から、家でこっそり楽しむ個人映画までさまざまなシーンがあります。膨大
な事象を新書の範囲で収めた本書、写真も豊富で資料としてぜひ手元に置き
たい一冊です。

ただ、難しい…もう少し簡単に読める映画館と観客についての本があれば、
ぜひ読んでみたいのですが。
映画そのものを分解する本はあっても、映画を観る人、映画を上映する建物
(映画館)についての論はどうも欠落しがちです。
映画というものは、観客と映画館があってやっと“映画”になると思うので
すが…。(A)

『映画館と観客の文化史』加藤幹郎著 中公新書(2006/07)
※FPS資料室に所蔵はありません。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
§11.編集後記
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
先月(8月)は諸事情によりメルマガを休刊しました。申し訳ありません。

今月号で宮野起さんのコラムが終了となります。
計17回にわたる長期連載となりました。アメリカでの勉強というお忙しい
中、貴重なレポートを届けてくださった宮野さんに心から感謝いたします。

彼岸を過ぎ急に涼しくなりました。芸術の秋です。FPS会員、澤登翠さん
と柳下美恵さんの「ロスト・フィルム・プロジェクト」や、東京国際映画祭
も開かれます。映画好きには忙しいシーズンです。

また、FPS事務所に隣接する「協和会の蔵」でもイベントが行われます。
蔵がある東京・千駄木界隈はおいしいものもたくさん、ステキなお店もたく
さん。最近は女性誌でも多く見かけるようになり、ちょっとした流行地にな
りました(FPSにも取材が来ないかな?)
決して派手な街ではありませんが、坂を上り下りしながら小さな秋を探す散
歩にはうってつけのエリアです。お散歩がてら、ぜひFPSのイベントにも
お越しください。お待ちしております。(天野)

┌─────────────────────────────────┐
 -------------------------------------------------------------------
  映画保存協会(FPS)
  発行元 :映画保存協会 Film Preservation Society 
  編集担当:天野園子
  Web    : http://www.filmpres.org/
  e-mail : info@filmpres.org
 -------------------------------------------------------------------
 ■ご意見・ご感想はinfo@filmpres.orgまでお願いいたします。

 ■このメルマガは「まぐまぐ」「melma!」を利用し配信しています。
  登録/解除は http://www.filmpres.org/info/ml.html から
  お願いいたします。

 ■原則として無断転載を禁じますが、内容を一切改変せず全文転載する
  場合は上記メールアドレスまでご連絡ください。
  Copyright (C) Film Preservation Society All right reserved. 

└─────────────────────────────────┘
最新号をメルマガでお届け
登録 解除

規約に同意して

登録した方には、まぐまぐの公式メルマガ(無料)をお届けします。

最近の記事

上へ戻る