武侠伝奇 dead or alive ~活死剣譜~   RSSを登録する

古代中国、項羽と劉邦の時代。楚漢の戦いの水面下で繰り広げられる、人と人ならぬものと、覇王との戦いを描く中華伝奇ストーリーのメルマガ小説。

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2008/11/12

dead or alive ~活死剣譜~ last scene 虞美人草・1

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dead or alive 〜活死剣譜〜
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戦乱の大陸、天下に覇を唱えんとする項羽と劉邦の戦い。
あるいは、求道の剣士と、屍魔として蘇った死美人と、覇王との戦い。
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last scene 虞美人草・1
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 その寝顔は、優しい微笑みを浮かべていた。
 項羽は泣いた。涙のつぶが、香澄、虞の頬に落ちてはじけた。
「思えば、そなたは俺のために、虞でいてくれたのだな」
 項羽は己の佩く剣をかなぐり捨て、かわって七星剣を佩き。ついに本当の
名を知ることなく逝った香澄の身体を抱き上げ、部屋を出て。
 驚く配下を退け、自ら穴を掘り、墓碑を刻み。垓下の城の片隅に、質素な
墓を建てた。
 木でつくられた簡素な墓碑には、「虞美人墓」と刻まれ。
 質素なのは仕方ないにしても、目立たない城の片隅に墓を建てたのは、漢
兵の狼藉から墓を守るためであった。
 項羽は七星剣の柄を握りしめながら墓碑に向かい黙祷を捧げると、
「いざゆかん」
 と言って、愛馬騅(すい)に打ちまたがり、七星剣を抜きはなち。
 城門を開いて、わずかな手勢を率い地を埋め尽くす漢の大軍向かって駆け
出した。
 楚兵のほとんどは、楚のうたに心くじかれ打って出ることかなわず。付き
従うともがらはいずれも死を決した死兵となって、項羽に続いた。
「来たか」
 項羽出でたり! と韓信はすぐさまうたをやめさせ、軍を指揮し項羽を討
たんとした。
 心萎れて自害はせず、潔く討ち死にを選んだとはいかにも項羽らしいと、
心密かに感嘆するも。一気に力で押し潰せると踏んで、
「押せや、押せや」 
 韓信自らも剣を手にし、項王の首級を挙げよと叱咤する。
 まだ空は暗く、かがり火は一声に戦場を駆け抜ける項羽に怒涛のごとく押
し寄せた。
 そのまま、怒涛に飲み込まれると誰しもが思った。
 だが夜闇に北斗七星がきらめき、押し寄せる怒涛ことごとく押し返され。
騅打ち砕く風のあとの塵のように、血煙が舞った。
 にわかにきらめく北斗七星と、その強さにあらためて驚愕するも、それも
はじめのうちだけと、韓信はたかをくくってさらに追い込みをかけさせた。
 楚のうたととってかわって夜闇引き裂く怒号渦巻き、銅鑼、戦鼓響いて空
を揺るがし。地より湧き出た銀河の中、北斗強くきらめき。
 北斗きらめくとともに剣風巻き起こり、騅駆けるところ道は開かれていっ
た。
「漢よ、とくと知れ。我を殺すは漢にあらず、天にあり」
 項羽雷喝一声。かがり火灯る暗闇の戦場、たちまちのうちに風雲に覆い尽
くされる。
 誰も項羽を止められず。
 阻む者これことごとくきらめく北斗のもとに斃れゆく。
「なんという男だ!」
 この大軍を嘲笑うかのように、項羽は翼を得た虎のように自由自在に駆け
巡り。韓信驚愕のあまり、二の句も告げず。そのために指揮は遅れて、一時
は怒涛の勢いであった漢軍のまとまりにほつれが生じた。
 そのほつれをさらに引き裂くように、項羽は進む。
 いかに軍才豊かな韓信とて、力と力の勝負となれば項羽の足元にも及ばな
かった。ことに項羽らはすでに命を捨てている。死を決した「死兵」ほど、
やっかいなものはない。
 このことは、本営にも伝わり。劉邦はまさか逃げられるのではないかと、
胆を冷やした。
「討て、なんとしても項羽を討て。項羽を討てば、金千両に万戸侯の位を与
えるぞ!」
 そう左右に怒鳴って、また討てとばかり、このときの劉邦は漢王というよ
りも、かつてのやくざ者の親分のようになって繰り返しがなり立てた。
 それほどまでに、項羽は恐ろしい相手であった。軍師張良はそばにいなが
ら黙ってことの成り行きを見守り、奇跡の起こるのを期待するしかなく。
 また韓信とて、言われるまでもなく項羽を討つ気持ちはおおいにあった。
が、しかし、いかんせん項羽の強さは尋常ならざり、どうにも手の施しよう
がなかった。
(源龍、お前いまどこでなにをしているんだ!)
 またあのときのように、さっと現れて項羽に挑みかかってはくれないかと、
そんな期待を思わず胸に描いた。しかし、北斗七星きらめきはやまず、かが
り火とどかぬ闇の向こうへと駆け抜けてゆこうとする。
(それにしても)
 討ち漏らしそうになりながらも、ふと、思うこと。
(あの、北斗七星は、なんなのだ)
 大薙刀で血風巻き起こすのが常であった項羽が、この期に及んで得物をか
えている模様。しかもそれは北斗七星のきらめきをはなっている。
 どうして、項羽は北斗七星きらめく剣を得物に選んで最後の戦いに臨んだ
のだろうか。
 そのことが、韓信には不思議でしかたなかった。

続く

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発行者:赤城康彦
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当作品は配信者が以前執筆した
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という小説の中華伝奇風リメイクです。
またこのストーリーはフィクションです。史実と違う場面もあります
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