2008/11/01
dead or alive ~活死剣譜~ scene9 覇王別姫・1
/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ /_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ dead or alive 〜活死剣譜〜 /_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ /_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ 戦乱の大陸、天下に覇を唱えんとする項羽と劉邦の戦い。 あるいは、求道の剣士と、屍魔として蘇った死美人と、覇王との戦い。 /_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ /_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ scene9 覇王別姫・1 /_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ /_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ 源龍ら一行が華山に赴いている間に、広武山でにらみ合っていた楚漢両陣 であったが。決着のつかない、泥沼化する長引く戦況に両軍ともに疲労は甚 だしく、和睦のやむなきにいたった。 項羽は香澄を、虞姫を待ち焦がれつつも、和睦がなったことで楚に、ふる さとに帰ろうとした。 劉邦の漢軍も、一旦は広武山を下り四川に帰ろうとした。 だが、途中で止まった。 「今こそ天のときでございます」 張良が劉邦に強く言った。 「やむなきことにて一旦は和睦をし、休養をとり力をふたたび蓄える事がで きるといえども、それは楚とて同じことでございます。楚が力を得れば、漢 に勝ち目は万に一つでもなく。思い出してくだされ漢王よ、あの項羽の鬼神 のごとき凄まじさを」 劉邦は負傷の身をおして、軍師の進言に強く頷き、項羽の苛烈さを思い起 こしていた。いままで、数十万という人間を殺し、戦場においてはまさに鬼 神のごとき強さをいかんなく発揮し戦場に血の雨を降らせた。 なにより、劉邦を目の上のたんこぶと、憎悪していた。 そんな男と、共存できるはずがない。 「この和睦で、最期に利するは、楚となりましょう」 最初こそしぶっていた劉邦だったが、張良がそう言い終えると、意を決し て、 「やれ」 と命じた。 和睦の約を破って、楚の背後を突くのだ。卑怯であろうがなんであろうが、 項羽という人間を相手に、そんなきれいごとなど、構っていられるものでは なかった。 それと同時に、韓信に斉王の位を与えるとともに出兵を要請し。韓信はこ れに応えた。 諸侯もこれぞ天のときと、漢に組し、一斉に打倒楚の旗を揚げた。 虚を突かれた楚軍は混乱をきたし、ただひたすらに追い立てられ、討ち取 られ。 項羽血路を開かんと大薙刀を振るうも、奮戦空しく、戦友とたのむ楚の兵 たちの数は減る一方であった。悲しいかな、項羽覇王といえどその少年の心、 己に慢心してか相手の和を信じすぎたか。 覇王として天下に君臨したのも、昔のこと、思い起こしたところで夢の如 し。 時とともに移ろいゆく、この己の変わりように、歯噛みする思いであった。 (なぜだ) 楚の伝説的将軍、項燕の孫として生まれ。倒秦の旗頭であり、秦に代わっ て天下に君臨し覇王となった。 (この俺が、どうして) そんな問いかけも空しく、今はただ、血路を開くより他はなかった。 とはいえ、さすが戦場においては鬼神のごとき項羽である。立ち塞がる者、 ことごとく大薙刀に打ち払われ、血風渦を巻く。 されど項羽の勇も無限ではない。討っても討っても、後から後から食らい つくように敵兵が迫りくることきりがない。 項羽は大薙刀も自身も朱に染まりつつ、恨めしげに天を睨んだ。空は憎た らしいほど澄んで、太陽は光り輝いている。 「そうか、天が俺を殺そうとしているのか」 覚悟を決めた。 しかし、名残り惜しさがある。 (虞よ、最後にひと目会いたかった) ふるさとに帰りたい、と言った虞は、今どこで何をしているのであろうか。 頭上で光り輝く太陽。虞も、今はふるさとでこの太陽を見上げているかど うか。 だが感傷にひたる暇などなく、ひたすらに大薙刀はうなりをあげる。 そのころ、左腕を香澄に断たれた源龍は羅彩女の手当ての甲斐あって、よ うやくにして落ち着きを取り戻していた。が、目には光と陰がしきりに交差 していた。 死屍累々たる死の町の中にありながら、腕一本を断たれてしまえば、すぐ に動けるわけもなく。家屋を一軒拝借し、そこで仮住まいをしながら静養に つとめていた。 羅彩女といえば、町の離れに穴を掘り。それに水朝優に麻離夷、貴志のな きがらを土葬して、木を掘った簡単な墓標を立てて弔った。 凄惨な夜であったが、過ぎてみればまるで夢のようだった。 屍魔は、反魂玉がなくなり、かつ共食いもあって、知らないうちに皆屍に 帰っていた。そんな屍魔の転がっている様を見ると、けったくその悪さと、 やりきれなさが募った。無論趙高ら秦の旧臣たちのなきがらは、放っておい て腐るに任せている。誰がこんな奴らを、弔ってやるかってんだと、死体に 鞭打つことも数度あった。 仲間たちを弔ってからは、かいがいしく源龍の世話を焼いた。源龍はつん つんとはにかみつつも、傷の癒えまだ浅く、羅彩女に世話されるに任せざる を得ず。数日が過ぎた。 そんな時に、貴志が韓信から賜った駿馬、回七が町に戻ってきた。水朝優 の手からはなれ、屍魔たちから命からがら逃げ出した回七であったが、主が 恋しくなって戻ってきたのかもしれない。 「こりゃあ丁度いいところに来たねえ」 と羅彩女は今度は逃がさずとしっかりつかまえ、自分の愛馬にすることに した。当初は、主と違う人間につかまって戸惑う回七であったが、さすが匈 奴の血を引く羅彩女、馬の扱いには長けたもので、すぐに乗りこなした。そ れから、 「あんたの主さまはねえ、死んじゃったんだよ……」 と貴志の墓につれてゆき、墓参りをさせた。馬も人の言葉が、心が伝わる のか、鼻先を貴志の墓にちかづけ、さらに盛った土にも鼻先を近づけ。その 中に眠る貴志に何かを伝えようとしているようだった。 さすが羅彩女もこの時は下馬して手綱を指先で優しくつかんで、もう片方 の手で回七の首筋を優しく撫でていた。 すると、回七は今度は隣にある麻離夷の墓にも同じことをした。 「ふたりは好き合っていたから、今ごろは、魂で結ばれて、仲良く旅をして いるんじゃないのかい?」 回七のとった行為に驚きつつ、胸打たれる思いだったとともに、久しぶり に、優しい気持ちになれた羅彩女は空を見上げた。 清々しい青空が広がり、太陽も恵みの光を降りそそぎ光り輝いて。心も同 じように清々しくなるようだった。 その清々しさと言ったら、嫉妬の入り込む余地などなかった。素直に、貴 志と麻離夷の魂が結ばれることを願い、祝福した。 (冥福を祈るとは、こういうことなんだろうね) と、しみじみと思った。 回七は知っていたのだろう。貴志と麻離夷のことを。 ほんとうなら、ふたりで回七に跨って長城の向こうへ旅をしていることだ ろうに。ひょっとしたら、回七もそれを楽しみにしていたのかもしれない。 もう貴志はこの世にないと回七はさとったか、以後は羅彩女の愛馬として 素直に従った。 それからまたしばらく町にいたが、やはり死屍累々たる死の町は、腐臭に 覆われそれを嗅ぎ付けた蝿の群れにたかられ、いい加減出てゆかざるを得な くなった。 源龍もだいぶ回復し、隻腕ながら股夫剣も振れるようになった。 羅彩女はそんな源龍に、何かを目で語りかける。その切れ長の目におさま る丸く黒い瞳は、じっと隻腕の源龍を映し出して、瞳の中の源龍に自分の気 持ちをつなげようとしている。 「行くか」 源龍はうなずき、そう言うと、那二零に跨って。隣には回七に跨る羅彩女 がつづき。ふたりと二頭は、項羽と香澄を求めて旅立った。 続く ============================================================= 発行者:赤城康彦 http://fuentai.blog.shinobi.jp/Category/27/ △dead or alive 〜活死剣譜〜 本編展示URL。 メルマガ購読及び購読解除もこちらから出来ます。 購読及び購読解除の代理登録は出来かねますので、ご了承ください。 E-mail:akagiyasuhiko@hotmail.com ぜひご意見・ご感想をお寄せください。 小説の先輩、七瀬晶先生の本、只今好評発売中。 http://www.alphapolis.co.jp/book_author_profile.php?a_id=10034 上のURLで出版社での紹介ページに飛べます。 =============================================================== 当作品は配信者が以前執筆した metallic girl(http://fuentai.blog.shinobi.jp/Category/23/) という小説の中華伝奇風リメイクです。 またこのストーリーはフィクションです。史実と違う場面もあります ので、ご注意及びご了承ください。 Copyright(C)2008 yasuhiko-akagi 無断転載、引用等を固く禁じます。 ================================================================ /-----------------------------------------------------------/ http://archive.mag2.com/0000266092/index.html 戦国を描く和風FTのメルマガ小説も配信中です。 よかったら読んでやって下さい。 /-----------------------------------------------------------/



