2008/10/19
dead or alive ~活死剣譜~ scene8 死闘・5
/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ /_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ dead or alive 〜活死剣譜〜 /_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ /_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ 戦乱の大陸、天下に覇を唱えんとする項羽と劉邦の戦い。 あるいは、求道の剣士と、屍魔として蘇った死美人と、覇王との戦い。 /_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ /_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ scene8 死闘・6 /_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ /_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ 掌上の舞か、その掌の上でひらりとひとつ舞うようにまわって、跳躍から 着地しこちらへ迫る刑天向けて七星剣を突き出し。その下で同じく源龍が股 夫剣を咄嗟に突き出す。 まるで人間の塔が出来上がったようだった。 上半分を失った大斧を振り回し、刑天は遮二無二に人間の塔へ突進する。 香澄は距離を見計らうと、源龍の掌のうえから跳躍し、それに合わせ源龍も 刑天向かって突進した。 水朝優はそれをじっと見守っていたが、はっと何ぞ思い至ったか、預かっ ていた手綱を放し趙高向かって駆け出した。 「や、やや。おのれ水朝優、反逆の徒、自ら命を捨てるか」 趙高は鉄甲兵に命じて水朝優に向かわせた。これを見た羅彩女、助太刀と 軟鞭振るって趙高に突進した。 「うおおーー!」 水朝優はこれでもかと叫び、得物を打ち振るう鉄甲兵などかまわず、趙高、 そして反魂玉向かって駆けた。相手の得物をよけるのも面倒か、斬られるも 突かれるもお構いなしで鉄甲兵を突き飛ばす。羅彩女、水朝優を襲う鉄甲兵 を打ち倒してゆくものの、その水朝優自身が敵の攻めをかわさないのでは、 どうしようもなく。 こんな出鱈目な闘い方などない。彼は正気を失っていた。ただ、趙高の持 つ反魂玉を破壊することだけがあった。 その一方で、刑天の頭上で、北斗が光った。 その光りに目を射抜かれて、趙高はよろめく。水朝優は全身を血まみれに し、趙高に迫り、かぶりつくように飛び掛った。 それと同時に、北斗閃くと下半分のみの大斧を握る両腕が飛び。左胸の目 には、股夫剣が突き刺さった。北斗に目を射抜かれたは刑天も同じで、その 隙に両腕を七星剣で断たれ、股夫剣に目を刺された。 飛び掛られた趙高は輿から水朝優ごと転げ落ち、声にならぬ声でうめきな がら両腕で反魂玉を必死にかばっている。それを強奪せんと、水朝優は趙高 にかじりつき揉み合いとなるが。 水朝優の背に、さらに鉄甲兵の剣が突き刺さった。が、水朝優、びくとも しない。目を爛々と光らせ、血まみれの顔を趙高に近づけ、反魂玉を奪おう とするその様こそ、人というよりも屍魔そのもののおぞましさであった。 これには趙高も胆を冷やし、思わず力が抜ける。そこへ、刑天が傷つけら れて叫びを上げるのを聞いて恐慌をきたし。反魂玉はするりとその手から落 ちた。 「しまった」 と思うも遅く、水朝優は素早く拾い上げ、 「羅彩女!」 と叫び、反魂玉を放り投げた。 心得たりと、羅彩女は軟鞭を振るい、宙に舞う反魂玉を打ち砕いた。 破片が、ぱっと夜闇の中散った。 唖然とする趙高の喉元へ、水朝優は剣を力いっぱい突き刺した。 首を剣で地面に縫い付けられて、趙高は血の泡を口角に溢れさせながら、 首を切られた鶏のようにばたばたと足掻き。 やがて、息絶えた。 水朝優は趙高が死んだのを確かめると、忌々しそうに離れ、月を仰ぐよう に仰向けにたおれた。 両腕と左目を失った刑天は、己の「生」をつなげる反魂玉が砕かれたのを 見て、絶望に溢れた叫びを上げ、どこぞへと逃げ出し、夜闇の中へと消えて いった。 源龍それを追おうとするが。 「かまうもんか。しばらくすりゃ、屍にもどる」 と水朝優が止めた。 「ほらほらあ! お前らもさっさと失せなよっ!」 趙高は死に反魂玉は砕け、刑天はどこかへと逃げ、香澄はなぜか刃向かっ て。 生き残ってしまった鉄甲兵は、秦復興の淡い望みがこれでなくなったとい やでもさとって、もう闘う理由もなし、羅彩女の軟鞭に打ち払われるように して、我先にと夜闇の中へと消えていった。 「水朝優! あんたなんでこんな無茶を!」 羅彩女が水朝優に駆け寄り、しゃがみこんで傷の手当をしようとするが、 あまりにも深く助かる見込みはなさそうだ。 水朝優はぽつりとつぶやく。 「俺の出番は終わりだ」 気がつけば、香澄と源龍もそばにいた。源龍は目を見開き、水朝優のした ことにひどく心打たれているようで。香澄は、澄んだ瞳で、じっと水朝優の 最期を看取ろうとしていた。 「水朝優」 「香澄か。よく来てくれたな」 「笛が……、麻離夷と貴志の笛の音が、私を呼んだわ」 水朝優は力の失せた半開きの目を、香澄に向け、ふっと笑う。 「麻離夷は逝っちまった。貴志も逝っちまった。で、俺も先に逝って待って るぜ」 「やっぱり、私、屍にかえるの?」 「ああ、反魂玉ぶっこわしちまったからな。やっぱりよ、死人は死人らしく、 土にかえるべきさ。無理にたたき起こすもんじゃあねえ」 「……」 香澄沈黙。自分は、屍にかえり、土にかえるのだ。あとどのくらい、「生 きて」いられるのだろう。項羽とまた会えるまで、「生きて」いられるのだ ろうか。 それを察して、水朝優は、言った。 「香澄よ、いや、虞姫よ、早く行け」 それから、半開きの目が閉じられると、再び開くことはなかった。 水朝優も、これで息絶えた。 衣の袖がひらめき、香澄は身をひるがえして項羽のもとへゆこうとしたと き。 源龍が股夫剣を握りしめ、前に立ちはだかる。 香澄を見つめるその瞳の中に、どす黒い炎がうずまいていた。 「源龍」 闘いは終わったというのに、源龍のとる不可解な行動のために羅彩女は仲 間たちの死を悲しむ暇もなく、背に冷たさが走るのを禁じえなかった。 「私が憎い?」 何も言っていないのに、香澄はそう言った。源龍の目から、溢れる憎悪。 言葉など必要なかった。 (俺は一体、なんのために剣士として生きてきた) 今夜は、どうにか屍魔どもを始末したものの、剣士としての今までが、す べて否定されたようだった。そこに、仲間の死を悲しんだりとか、助かった というお気楽な感情はない。 股夫剣もやけに重い、と感じていたのが、香澄が立ち去ろうとすると、突 然軽くなった。 羅彩女は、物言わず成り行きを見守るしかなかった。馬たちは、水朝優の 手から開放されて、思い思いに散っていっていたが、那二零だけは残ってい た。 那二零も、事の成り行きを見守っている。 「俺には、これしかないんだ」 源龍から剣気ほとばしるや、股夫剣ひらめき風を切って香澄に突き出され る。 切っ先が顔面まで迫ったとき、すぅ、と闇夜の中に溶け込むように、香澄 の姿が霞んで消えた。 (!!) 驚く間もない刹那であった、消えたと思った香澄は源龍の左脇に忍び寄り。 北斗が閃くとともに、血煙が舞った。 「うおおおぉーー!」 破裂するような源龍の悲痛な叫び。 宙を舞う、その左腕。 からん、と股夫剣は地に落ち。それにあわせるように、左腕も落ちた。 源龍は右手で肩口の傷をかばいながら、身を焼かれるような激痛にのたう ちまわり、喉も潰れんばかりの悲痛な叫び声を上げる。 さすがの源龍も、腕一本斬り落されるのは苦痛であった。 羅彩女は源龍に駆け寄り、のたうちまわる源龍をどうにか鎮めようと手を 差し伸べる。早く止血をしないと、命に関わる。 いや、一撃で斬り殺そうと思えばできたのではないか。が、香澄は腕一本 で済ませた。これはどうしてだろう。 香澄は苦痛にあえぐ源龍を見つめ、ぽそっとつぶやいた。 「また……」 それからは聞き取れなかった。香澄は、項羽を求め夜闇の中へ消えていっ た。 何が、「また」なのだろうか。源龍に復讐の機会を与えた、というのだろ うか。わからない。 ただ、後に残された闇夜の覆う死の町から、源龍のうめき声だけが寂しく 響いた。 scene8 死闘 了 scene9 覇王別姫 に続く ============================================================= 発行者:赤城康彦 http://fuentai.blog.shinobi.jp/Category/27/ △dead or alive 〜活死剣譜〜 本編展示URL。 メルマガ購読及び購読解除もこちらから出来ます。 購読及び購読解除の代理登録は出来かねますので、ご了承ください。 E-mail:akagiyasuhiko@hotmail.com ぜひご意見・ご感想をお寄せください。 小説の先輩、七瀬晶先生の本、只今好評発売中。 http://www.alphapolis.co.jp/book_author_profile.php?a_id=10034 上のURLで出版社での紹介ページに飛べます。 =============================================================== 当作品は配信者が以前執筆した metallic girl(http://fuentai.blog.shinobi.jp/Category/23/) という小説の中華伝奇風リメイクです。 またこのストーリーはフィクションです。史実と違う場面もあります ので、ご注意及びご了承ください。 Copyright(C)2008 yasuhiko-akagi 無断転載、引用等を固く禁じます。 ================================================================ /-----------------------------------------------------------/ http://archive.mag2.com/0000266092/index.html 戦国を描く和風FTのメルマガ小説も配信中です。 よかったら読んでやって下さい。 /-----------------------------------------------------------/


