武侠伝奇 dead or alive ~活死剣譜~   RSSを登録する

古代中国、項羽と劉邦の時代。楚漢の戦いの水面下で繰り広げられる、人と人ならぬものと、覇王との戦いを描く中華伝奇ストーリーのメルマガ小説。

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2008/10/12

dead or alive ~活死剣譜~ scene8 死闘・3

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dead or alive 〜活死剣譜〜
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戦乱の大陸、天下に覇を唱えんとする項羽と劉邦の戦い。
あるいは、求道の剣士と、屍魔として蘇った死美人と、覇王との戦い。
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scene8 死闘・3
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 皮肉なことに、もともとが真面目で謙譲な性格の貴志であるからこそ、い
ざというときにおのずと気が引き締まっているようだったが。それに反し源
龍はなまじおのれに自信があるため、おのれを超える者が現れたときに自信
が揺らぎ動揺を禁じえなかった。
 アスラに押されっぱなしの源龍を見て舌打ちすると、
「彩姉さん、麻離夷を頼む!」
 と麻離夷を羅彩女に託してアスラに突っ込んでゆく。屍魔いっぴきいっぴ
きはたいしたことはない、となればわざわざ相手せずに大将格を狙った方が
よさそうだとの判断だった。
「あ、こら。勝手に押し付けるな!」
 いきなり貴志から突き放され狼狽する麻離夷をかばいながら、羅彩女はそ
の背中に叫ぶ。しかし声は届かず、そうこうするうちに源龍とふたりでアス
ラの六本腕と渡り合っていた。
「はっははは! 来いよ来いよ。お前ら人間どもが何匹来ようとも、この俺
様に勝てるものか!」
 火でも吹くようにアスラは吼えた。さすが秘術で蘇ったのみならず人外の
化け物としての力もあるだけに、言葉に偽りなく、源龍はもとより加勢した
貴志すら翻弄する。
 ふたりとて無論されるがままであるわけもない。もとより加勢など求めぬ
源龍であったが、ここはそんなこと言いどころではなく、咄嗟に互いにふた
り目を合わせて、右から左、前から後ろとどうにか隙を見て剣を繰り出す。
 が、しかし。六本の腕はうねうねと動きふたりの剣を阻んで攻めを封じる
ことキリがなく。どうにも源龍、貴志は攻めあぐねた。
 空ではヤクシャが月を背にして、下界の様子を楽しげに眺めている。
「やはり、人間というものは愚かなものだ」
 口元をゆがめ、にやりと笑うと。槍を握りしめ、大きく振りかぶって地上
へと投げ落とした。その先には、麻離夷がいた。
 雑魚どもを軟鞭で打ち払う羅彩女は、はっとして上を見上げて、
「危ない!」
 と軟鞭を振るった、しかし。
「ああっ!」
 耳をさすような悲鳴。
 なんたることか、羅彩女の軟鞭間に合わず。ヤクシャの投げた槍は惨くも
麻離夷の胸を刺し貫いていた。
 迂闊であった。貴志は目の前のことにいっぱいいっぱいになって、空のヤ
クシャを忘れていたのであった。羅彩女は雑魚を打ち払うのに夢中になり、
水朝優は馬のお守りと雑魚の始末でこれもいっぱいいっぱい。無論源龍はア
スラと渡り合ってよそ事に気を回す余裕もなかった。
 刺し貫かれた胸は朱に染まり。口からも次々に血が溢れ、とどまることを
知らなかった。
「麻離夷!」
 貴志は血を吐くように叫んだ。それと同時に襟首をつかまれ、後ろへ引き
摺られるとともに目の前をアスラの振るう剣の一閃が飛んだ。
「馬鹿野郎! 余所見をするな!」
 襟首をつかんで引き摺ったのは源龍であった。歯を食いしばり、アスラを
ひとりで引き受ける。貴志は源龍の言葉など知らず、弾かれるように麻離夷
のもとまで駆け寄ろうとした。
 麻離夷は何が起こったのか咄嗟にさとる事ができないようで、うつろな目
で貴志を見つめると朱に染まった口でなにやらつぶやいている。
「貴志、貴志。長城が見えるわ。長城を越えたらわたしたち……」 
 力なく手を差し伸べたかと思うと、ぶるっと震え、そのまま目を閉じて崩
れ落ちるように倒れた。
 息絶えていた。
 羅彩女も水朝優も痛恨の思いで、なきがらとなった麻離夷を見つめる。そ
れへ貴志が崩れるように駆け寄って覆い被さり。
「麻離夷、麻離夷」
 と何度も繰り返し泣き叫んだ。ふたりは、密かにこのことが済んだら長城
の向こうに旅立とうと約束をし合っていたが。それは果たされることはなか
った。
「おのれ、おのれ!」
 血の涙を滂沱(ぼうだ)と溢れさせ、貴志は狂ったように剣を振るい屍魔
どもを打ち砕いてゆき。
「降りろ、降りろ!」
 と空のヤクシャに叫んだ。ふん、と嘲笑をうかべヤクシャはその挑発に素
直に乗って地上向かって急降下。
 槍はなく、無手で貴志に空から挑んで。貴志は力いっぱい跳躍し、剣を突
き出しヤクシャを刺し殺そうとする。が、その跳躍した足にかぶりつく屍魔。
「うわっ!」
 どん、と地に叩きつけられ、強い衝撃とともに襲う激しい痛み。右足のふ
くらはぎの肉は、ぶちりと屍魔に噛み千切られ。赤い血潮が、どっと溢れ右
足を朱に染め。痛みはさらに激しくなる。そのうちに、ヤクシャは高笑いし
ながら、空に昇った。
 羅彩女は咄嗟に軟鞭を振るい、貴志の足に噛みついた屍魔の頭を打ち砕い
くも。貴志は立つことままならず、よろよろとようやく起き上がれるという
始末。それでも、空のヤクシャを睨みつけ、
「お前、殺してやる!」
 と喚きたてる。
 水朝優はぎりっと歯を食いしばり、その屍魔の強さや狡猾さを憎んでいた
が、憎めどもそれだけでは相手は倒せない。いやそれよりも、貴志の、血走
った目。憎悪と殺気に満ちた目。それは正気を失い、狂気に支配された目で
あった。
(いかん)
 と思ったものの、愛する者を目の前で殺された者に、どうやってその心を
鎮めよと言うのか。さすがに水朝優でも、男女の色恋についてはとんと素人
だったので、わからなかった。だが、貴志がすべて望みを捨て去っているの
は、わかった。
「貴志!」
 水朝優は叫んだ。しかし貴志には聞こえず、きっとアスラを睨みつけたか
と思うと、右足を引き摺りながらも、だっとその方へ駆けてゆく。アスラは
笑って、
「わっぱ、死にに来たか!」
 と剣を突き出す。すると、貴志はよけもせず、アスラの右上腕と右中腕の
突き出した二本の剣が身体を貫くにまかせて、さらにアスラに迫った。
 これは源龍も止められなかった、まさかそんな自殺行為をしようなど予想
も出来なかったから。一瞬唖然と、二本の剣の貫く貴志をながめていると。
貴志はすかさず己の剣を振り上げ、アスラの右上腕と右中腕に斬りかかり、
斬り落とした。
 その目は怒りと憎しみと、血涙のため真っ赤に染まって。さらに口元から
血は溢れ、胸と腹には剣が貫きやはり血にまみれて、そこから剣を握るアス
ラの腕がぶら下がり、壮絶と言うか、あまりのことに言葉もない。
「おのれ、人間め!」
 まさかそんな風に来るとは思わなかったアスラは仰天し、剣を落として左
三本の腕で斬られた右上腕と右中腕の切り口をかばいながら後ずさりし。ヤ
クシャもまさかという思いに駆られてか、我知らず急降下し、貴志に迫る。
 すると「待ってました」とばかりに、貴志はにやりと笑って。またアスラ
に向かってだっと駆け出す。駆け出せば、剣を握るアスラの腕が落ち。それ
を踏み越え、貴志は負傷しているのがうそのように走った。

続く

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発行者:赤城康彦
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当作品は配信者が以前執筆した
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またこのストーリーはフィクションです。史実と違う場面もあります
ので、ご注意及びご了承ください。
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