2008/10/07
dead or alive ~活死剣譜~ scene8 死闘・1
/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ /_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ dead or alive 〜活死剣譜〜 /_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ /_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ 戦乱の大陸、天下に覇を唱えんとする項羽と劉邦の戦い。 あるいは、求道の剣士と、屍魔として蘇った死美人と、覇王との戦い。 /_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ /_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ scene8 死闘・1 /_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ /_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ が、先が思いやられようがどうしようが、歩を進めれば嫌でも目的地には 着くもので。 一行は、華山のふもとにある典余(てんよ)という町の近くまで来た。 水朝優と麻離夷は華山にいただけに、この辺の地理に詳しいもので。 「もうすぐ町だ。今夜はそこで休んで、明日華山にのぼろう」 と言おうとしたが。 「いや待て、ひどく疲れた。町に入る前に、ひと休みしよう」 と言うと、下馬してどっかと道端に座り込み腰兵糧を口に放り込みもぐも ぐと食いだす。それを見て、どうしたんだと思いつつも、ひとりが疲れたと いうと他の者まで疲れをが溢れてくるようで、皆水朝優にならって、ひと休 みして腰兵糧で腹ごしらえをすることにした。 「どうしたんです、水朝優さんらしくもない」 と貴志が言う。 「俺だって人間だぜ、そんなときもあらあな」 「はあ、そうですか」 少しくらいのことでへたばることのないこの男が、どういうわけか町を目 前にして休もうと言い出すなど、珍しいことだったので、貴志は話を聞きつ つもちょっと意外な思いに打たれていた。 休み始めたときには、陽は中天にあったものの。気がつけば陽は山に没し ようとして、宵に差し掛かる時刻。 休んで疲れを癒し、腰兵糧で空腹もまあ満たし、さてゆくかとそれぞれ騎 乗して馬を歩かせ始め、しばらくしたときに、何やら異変があった。 人が道端で死んでいた。 このご時勢、道端に死人など珍しくもないし、道中やはり何度か死人には 遭遇し。また山賊の類にも遭い、これはやすやすと退けたのはいうまでもな い。 だがしかし、どうも、その死人は様子がおかしかった。というのも、刃で 斬られたのでもなく、槍や矛で突かれたのでもない。まるで獣に食い荒らさ れたかのように、あちこちにちぎれた肉片と血を撒き散らし、ぼろぼろに全 身を食い散らかされたように死んでいたのであった。 それを見た一行、特に水朝優と麻離夷は、身を硬くすること尋常でない。 源龍と貴志、羅彩女も異変をさとって、獲物を構え警戒する。 「獣?」 羅彩女はぽそっとつぶやいた。野犬か狼、はたまた虎にでも食い殺された のだと思った。 いやその方がどれだけましであったか。 水朝優は汗が頬から顎にかけてしたたり落ちるのを禁じえなかった。 (まさか華山から下りたのか) ということは……。 (刑天が出来たのか!) 趙高は、華山で屍魔の軍団をつくりあげようとしていたわけだが、その仕 上げが、刑天であった。刑天が出来れば、屍魔の軍団は下山し天下を蹂躙す るという段取りであったが。 「刑天などつくることは出来ぬ、とたかをくくっていたが、出来たのか」 そのつぶやきに、源龍と貴志、羅彩女は耳を疑った。刑天は神話上の鬼神 なのだが、それが出来たとはどういうことだ、と。 その時、 「ぎゃあ」 「ぐえ」 という、人が潰れたひき蛙のような声を上げるのが聞こえ。すわっと、そ の方を見れば。 あろうことか、人が人にかみつき、食い殺そうとしているではないか。食 う方は、死人そのものの真っ青な顔をしていやに無表情でありながら、相手 の腕に力いっぱいかみついて、その肉を、ばりっと食いちぎった。食われる 方は、貴志の見知った顔だった。 それは張良の密偵で、かつての貴志の同僚だった。 どうやら、密命を遂行するかどうか密かに見張っていたようだ。が、それ を遺憾に思うどころではない。 「な、なんだこれは!」 屍魔を知っているとはいえ、それが人を食い殺そうとするところを見るの は初めてのことだったので、さすがに源龍も貴志も、胆を吹き飛ばされるよ うな思いだった。何も知らなかった羅彩女は、この異常な光景に魂を奪われ たように、呆然と軟鞭をたれ下げ。馬も人の驚きを察し、けたたましくいな なき、脚をばたつかせる。 「た、助けてくれ、助けてくれ!」 密偵はまさに阿鼻叫喚し。餓えた屍魔は数匹の群れで二人の密偵にまとわ りつき、身体のところどころに噛み付いては、噛み千切り。その食いっぷり すさまじく、あっという間に骨が出、臓物も腹からぶら下がって、それにま で屍魔は歯を立て噛み千切っては、己の胃袋におさめてゆき。 ついには、密偵は人間から肉片と成り果てた。 あわれ密偵はどこぞにひそんでいるのを嗅ぎ付けられて、餌食にされてし まった。そして次は、言うまでもない。屍魔のくせに生意気にも血で赤く染 まった口でげっぷをして、源龍たちに襲い掛かってきた。 さすがに腑抜けていたのも、これで目が覚めたか源龍は股夫剣を構え、那 二零を落ち着かせると、だっと駆けさせて屍魔に斬りかかって、あっという まにそれらの首を刎ね、屍に戻す。 ぜえぜえと、源龍は怒りとも狂喜ともつかぬ光りを目から発して大きく息 をする。すると、 「うああ……」 といううめき声がした。まだ誰かいるのか、と思ったら。木の陰草葉の陰 から、たくさんの屍魔が群がり出て、一行を餌食にしようとする。 その数ゆうに百は下らない。どうやら、典余の町周辺は屍魔どもに襲われ て、死地とされてしまったようだ。 これにはさすがに衆寡敵せずと、 「逃げろ!」 と水朝優が叫ぶと、皆一斉に馬を駆けさせた。しかし、どこへ逃げればよ いのであろう。今来た道は、どこから這い出したか屍魔でいっぱいにうまっ て、とても切り抜けられそうにない。だが逆に町への道は、比較的空いてい て切り抜けられそうだ。 やむをえん、と町へ向かってにげようとして、水朝優ははっとして、 「上!」 と叫びながら、顔を上げて上空を指差せば。案の定で、空には背中に翼を 生やした人間が鳥そのもののように飛んでいた。ヤクシャであった。 手には槍を持ち、口には笛をくわえて、屍魔を操りながら地上の様子を面 白おかしく眺めていた。 またも胆を飛ばされる源龍に貴志、羅彩女。これも屍魔なのか。 「張良が言っていた、背中に羽のあるやつがいるって。こいつがそうなのか」 「そうだ、こいつも屍魔だ」 町へ駆けながら、一行は問答を繰り広げる。 「ってことは、六本腕の屍魔もいるってのか」 「ああ、そうだ」 「お前の言ってた刑天も、屍魔か」 「そうだ」 「香澄も、同じようにつくったのか」 「そうだ」 「……」 それから無言になって、迫る屍魔を獲物で打ち払いながら、町へ駆けた。 で、町に着けば着いたで、一行は立ちすくんだ。 そこは、死の町と変わり果てていた。 陽は山に完全に没し、かわって夜が満月をともなって訪れた。 やけに月は丸く、憎たらしいくらいに明るく地上を照らしていた。月光照 らすこの地上、源龍らが駆け込んだ典余の町に生ける人なく。かわって死よ り蘇った屍魔が跳梁跋扈し、死肉をむさぼっている。その中には、六本腕の 巨漢の姿も見受けられた。アスラであった。 つづく ============================================================= 発行者:赤城康彦 http://fuentai.blog.shinobi.jp/Category/27/ △dead or alive 〜活死剣譜〜 本編展示URL。 メルマガ購読及び購読解除もこちらから出来ます。 購読及び購読解除の代理登録は出来かねますので、ご了承ください。 E-mail:akagiyasuhiko@hotmail.com ぜひご意見・ご感想をお寄せください。 小説の先輩、七瀬晶先生の本、只今好評発売中。 http://www.alphapolis.co.jp/book_author_profile.php?a_id=10034 上のURLで出版社での紹介ページに飛べます。 =============================================================== 当作品は配信者が以前執筆した metallic girl(http://fuentai.blog.shinobi.jp/Category/23/) という小説の中華伝奇風リメイクです。 またこのストーリーはフィクションです。史実と違う場面もあります ので、ご注意及びご了承ください。 Copyright(C)2008 yasuhiko-akagi 無断転載、引用等を固く禁じます。 ================================================================ /-----------------------------------------------------------/ http://archive.mag2.com/0000266092/index.html 戦国を描く和風FTのメルマガ小説も配信中です。 よかったら読んでやって下さい。 /-----------------------------------------------------------/


