なんちゃってチャリダー自転車始末記  RSSを登録する

元公務員・元メッセンジャーという異色の経歴のチャリダーが語る、自転車旅行、自転車生活、メッセンジャー、GPSの話題です。自転車に乗れば、誰もがヒーローになれる!?

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2007/05/01

自転車便・バイク便会社に組合ができた【なんちゃってチャリダー自転車始末記096】

        ● 〜♪
     c/~∇----- なんちゃってチャリダー 
   〃~/ \<√"       自転車始末記
   ゝ_ノ 'ゝ_ノ ≡ = - - -季節は移ろい、組合ができた
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【第96号 自転車便・バイク便会社に組合ができた】


(メッセンジャー編)
 ■ 嗚呼、配送業…
 ■ つまりは偽装請負なわけでして(またまたお勉強)
 ■ 「経営者による搾取」とばかりもいえない


(メッセンジャー編)
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 ■ 嗚呼、配送業…
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昨年6月にメッセンジャーを辞めた後…
メーカーの個人客相手のネットショップ店長を引き継いで10か月が経ちました。
10か月で店の売り上げは倍以上に伸び(月商●百万円)、
私の給料も20%増えました(額面で約32万円)。
内勤スタッフはあいかわらず私一人ですが、
司令塔一人だけでも、あるところまで売上を伸ばせるのがネットショップ。

さて、店長とはいったい何をやっているのでしょうか?

1.メール・電話応対すべて
  ・店舗についての問い合わせ
  ・商品の仕様についての問い合わせ
  ・クレーム対応 
2.ネットショップのシステム操作・データ加工
3.請求書・領収書など、帳票類の発行管理
4.入金管理・未入金未発送者への督促
5.物流・倉庫業者への指示・連絡
6.配達未完了荷物の調査・追跡
7.売上を伸ばす業務(ノウハウはヒミツ)

いちばん面白いのはもちろん7の売上を伸ばす業務で、
これぞまさしくネットショップならではの仕事ですが、
今回はネットショップの話を書きたいわけではありません。

今回の話題は物流・運送の話です。

内勤スタッフは私一人といいましたが、
商品はすべて遠く離れた倉庫で管理しており、
商品の梱包・出荷・配達は、すべて物流業者に委託しています。

商品の価格や全額前払い制など、店の運営ポリシーへの不満は別として、
お客さんからの不満で割合としていちばん多いのが、
この配送がらみの不満なのでした。

・時間指定したのに午前中に届かず、12時15分に届いた(ぷんぷん)。
・今日どうしても必要だから今日中にうちに届けてほしい(いらいら)。
・もっと送料を安くしてほしい(送料なんか払いたくない)。

物体をA地点から物理的にB地点に運ばなければならない配送業者。

私の手元のPC操作は、売上が倍増してもかかる時間は倍増しませんが、
売上が倍増すれば仕事もほぼ倍増するのが配送業者です。

薄利多売。
効率化にも限度がある、人の手数がかかる労働集約型産業。
それでいながら早くしろ、この時間に届けろと際限のない要望。

しかも特約で定価の何割も割り引いて運んでもらっています。
それでもなおネットショップでの購入者は送料を重荷に感じるという。

仕事の手間と価格の安さのわりにクレームが発生しやすい。
それが配送業というもののようです。

ああこれ、メッセンジャーだったときにも思ったことだ…。


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 ■ つまりは偽装請負なわけでして(またまたお勉強)
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バイク便・自転車便会社に、最近組合ができたそうです。

多くのバイク便・自転車便会社では、会社員のような「雇用契約」ではなく、
収入は歩合制の「請負契約」という形をとっています。
私もかつて請負契約のメッセンジャーでした。

過去に幾度かこのメルマガでもとりあげてきましたが、
再びおさらいをしておきます。

●社会保険なし、したがって事故っても労災なしの個人事業主
 (自分で確定申告して国民健康保険・国民年金を払う)
 (事故が怖ければ自分で生命保険やフリーランス用の所得保障保険に入る)
 (無保険の場合、事故ったときの治療・入院費用はすべて自己負担、
  しかも稼働できないあいだは無収入)
 (対人対物賠償保険だけは、会社を通じて強制加入
  …掛け金は会社負担のところとライダー負担のところがある)
●報酬は歩合制(※固定給制の請負契約もあります)
 (繁忙期は稼げるが、閑散期は仕事が少ないので稼げない)
●仕事にかかる経費は自己負担
 (携帯電話代・自転車の備品や消耗品・釣り銭常備・地図・バッグ…)
●「労働者」ではなく「個人事業主」なのだから、労働基準法の適用はなし

ただし形式は「請負契約」でも、実態はアルバイトのように稼働予定を提出し、
仕事内容について細かい指示(「指揮命令」)を会社から受けるという、
本来なら「雇用契約」で保護されるべき「労働者」であるともいえます。

労働基準法や社会保険料の負担を会社が免れ、
使用者責任も負わなくていい「請負契約」は「偽装請負」と呼ばれ、
特にIT業界ではもはや常態化しているのだそうです。
(実態は派遣労働者なのに、契約だけ請負契約を結ぶというもの)

実態は「労働者」なのに、形式上は「請負契約」にしてしまい、
コストとリスクを会社が負わない。

かつて請負契約をめぐって裁判になったケースがあり、
すでにいくつもの判決が出ています。その要旨は・・・

●契約の形態が形式的に「請負契約」だからというだけでは
 請負契約がすべて有効であるとはいえない
●「請負契約」かどうかは、仕事の実態から判断される

つまり、裁判にまで発展すれば、請負契約書にハンコを押したからといって、
それがそのまま法的に通用するかどうかは一気にあやしくなるということです。

…とまあひたすら漢字が多いここまでの説明は脇においておくとして、
現実として、ライダーやメッセンジャーが結ぶ契約はやっぱり「請負契約」です。


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 ■ 「経営者による搾取」とばかりもいえない
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「ひでぇ、経営者によるサクシュだ、サクシュ」と言うのは簡単ですが、
経営者による搾取というステレオタイプな理解では不十分なのが泣けます。

バイク便や自転車便は、私たちがコストを負いたくないと常々思っている
「配送業」のひとつというのが不幸の始まりだったりして…。

自転車雑誌の「メッセンジャースタイル」「メッセンジャーの自転車拝見」
などという特集には「メッセンジャーは配送業」とは書かれていません。

メッセンジャーについては「ライフスタイル」「自分らしさ」といった
キーワードで語られます。

しかしなぜバイク便・自転車便会社が荷主から運賃をもらえるかというと、
お客さんがスタイルや自転車へのこだわりにお金を払ってくれるからではなく、
ライダーやメッセンジャーがA地点からB地点へ迅速確実にモノを運ぶからです。

仕事の中核はバイクも自転車もトラックもタクシーと同じで、
納期や荷物の種類や量がそれぞれちがうだけです。
(そこにさわやかな接客だとか、特定信書便といった付加価値が少し加わる)

そのトラックにせよタクシーにせよ、配送業界の置かれている状況は、
「ヒサン」というのは広くイメージされていることでしょう。

仕事の性質上、競合が乱立して値崩れしやすく、
人の手数がかかり、コストに占める人件費の割合が高く、利益を出すのも一苦労。
今やタクシードライバーの平均年収は300万円程度なのだとか。

ではバイク便や自転車便はどうでしょう。

メッセンジャーだった頃(2005年11月)、千駄ヶ谷のとある公園で待機中に、
やはり待機中だった他社のバイク便ライダーに話を聞いたことがあります。

かくげ太「バイク便って1日手取り1万円とか軽く超えられますか?」
バイク便氏「9時〜18時とかフツーの時間じゃムリだな。夜中まで走らないと」
      それにウチの会社、運賃やっすいからな〜あ、仕事が入った」
かくげ太「おお」
バイク便氏「…池尻大橋ピックで六本木届け!?ふっざけんなよなぁ〜」
かくげ太「千駄ヶ谷から池尻大橋までピックか〜(遠すぎる…)」
バイク便氏「いや、そーじゃなくてウチの配車がダメなんだよな。これ見てみ」
かくげ太「ゲッ、池尻大橋から六本木までで1680円!?やすすぎっ!
     メッセンジャーより安いんですけど…」

「バイク便に比べても自転車便が安すぎる」のではなく、
「バイク便自体もそもそも安すぎる」のでした。もはや。

1999年公開の日本映画「メッセンジャー」で、主人公が
「書類をオートバイで運んでいるのは日本だけだ」というシーンがありました。

日本の都会ではバイク便が先に普及し、やがてバイク便が値崩れしていった。

バイク便の普及→値崩れと並行して、自転車便が普及したものの、、
すでに値崩れしたバイク便の運賃の天井があるので、それを超えるのが難しい…
と私は推測します。

自転車便より先に、バイク便が普及していた。
これがきっと日本の特殊事情なのでしょう。


現場を離れて、経営する側の事情を見てみましょう。

といっても私は「その他大勢」の凡庸なメッセンジャーの一人に過ぎず、
営業も配車も経営も関わったことがありません。
したがって自分の報酬明細から推測してみます。

私が最も多く稼働し、最も多くの荷物を運び、最も報酬が高かったのは、
繁忙期の3月でした(2006年3月)。

■運んだ荷物の運賃合計:約56万円
■そのうち私自身の報酬:約33万円(1日10〜12時間×22日稼働)
■逆算される歩合の料率:約59%(33万÷56万×100(%))

月に約56万円の売上というのは、私がいたメッセンジャー会社での
売上査定基準で最高の査定をしてもらえるぐらいのハイスコアです。
3月は繁忙期のためメッセンジャー一人あたりの仕事が多く、
この売上査定で最高評価を得た同僚が続出しました。

…これが年中続けばいいのですが、そうもいきません。

冬が終わり、4月、5月と月が進むにつれどんどん仕事が減っていき
(夏までどんどん減り続ける)、
10時間以上稼働しても売上が2万円にも届かない日もあります。
月間の売上に換算すると40万円台前半ラインです。

また、誰もが週5で稼働するわけではなく、
週に3日や4日しか稼働しないスタッフの売上はもっと低くなります。

というわけで、年間を通じて見てみた場合、
メッセンジャーの一人あたり「平均年間売上」のざっくりした数字を、
「500万円」程度と仮定してみましょう。
これでもかなり楽観的な数字です。

あくまで「売上」です。「利益」ではありません。

つまり、経営者から見ると…

「配送スタッフ1名あたり、年間500万円しか売上がない商売」
「1名あたり売上500万円のうち、いきなり半分以上が配送スタッフへの
 報酬へと消えていく」
「残った4割強の費用で、内勤スタッフの人件費やその他の営業費用を
 やりくりしないといけない」

ということになります。

配送スタッフ1名あたり、売上が年間わずか500万円!

その売上のうちどれほどの額を配送スタッフに渡せるというのでしょうか?
(皆さんのお勤め先で、スタッフ1名あたりの売上と、
自分自身の控除前の額面での年収を算出してみて下さい)

会社が社会保険を負担せず、その他の経費(バイク便ならガソリン代など)を
ライダーに負担させてなお、この実態。

…実態は「労働者」なのに「請負契約」とはケシカラン。
…経営者は「搾取」をヤメロ。

このような「労使の対決」の構図だけでは先詰まりではないか…??
もともとパイの大きさが不当に小さすぎるのではないか…??


参考までに、私(派遣社員)が店長を務めているネットショップでは、
関係者の中では私が最も給料を得ており(正社員はほとんど関与しないため)、
かつフルタイムで運営に関わっているのは私一人です。

■売上:年間ウン千万円
■主たる人件費(会社が派遣会社に払う金額):年間600万円強(推定)
 →このうち約6割が私の取り分です。

ではメッセンジャー1人で稼ぎ出せる売上を見てみると…

■売上:年間500万円
■人件費:年間200万円台

労使の対立だなんだという以前に、
そもそも仕事としてのパンチ力がちがうのでした。

労使で分け合うパイの大きさが元々小さすぎるのです。

(この項、つづく)


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【発行人略歴】 

 2001 市役所入庁
 2004 市役所退職
 2005 メッセンジャー
 2006 ネットショップ店長

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