2010/08/15
「誠一言」「グローバルスタンダードは、欧米の大学院同窓会の結託」
残暑お見舞い申し上げます。 日頃はご指導ご支援を賜わり有難うございます。 6月に開催されたG8。菅首相の国際政治へのデビューでしたが、存在感を発揮できなかったのは残念でした。 G8がグローバルな問題を解決する力がなくなったためにG20ができました。 しかし、G20では焦点が定まらないところがあり、問題解決に大きな機能を果たすようにも思えません。 そのうちにG12、G13ができてくるかもしれません。 国民所得と人口の加重平均で大国の規準を定め、そうした当事者能力のある大国間で協議の枠組みを つくることは、今後も必要でしょう。 いずれにしても、今後の世界情勢はロシア、中国、アメリカ、EUの四極で動いていくのは間違いありません。 その場合に極というのは独立性と当事者能力を備えているということです。 その中には安全保障も含まれますから、日本はその極の従属変数として上手くやっていく以外にありません。 いたずらに肩に力を入れて、一つの極たり得ようとするには、無理があります。 日米同盟という枠組みの中で、いかにしてアメリカから安全保障面で必要とされる国であり続けるかが課題です。 東アジアの安全保障について役割分担をはっきりさせ、日米一体となれば、いずれの国に対しても 強い抑止力を持つことになります。 役割分担をはっきりさせるためには、本来は憲法も変えなければいけません。しかし、憲法を改正した場合には 「普通の国」として世界の安全保障に貢献するよう求められるでしょう。 平和憲法という弁解の根拠を失えば、そのうえで何もしなければ、ただの腰抜けという位置づけになります。 憲法改正の前に必要なことは自分の身を自分で守るという気概を国民が共有することです。 そこを固めた上で憲法改正し、日米が補完的に役割分担する東アジアの安全保障体制を確立するべきです。 ただし、経済については四極に対して独立の気概を持つべきです。 安全保障と、経済のルールを分離すべきなのです。 米欧経済界の人脈は一体化しています。その濃密さは、 リーマンショックでアメリカより先にヨーロッパの金融機関に危機が訪れたことからも分かります。 ゴールドマンサックスが、ギリシャ政府の財政赤字を隠すノウハウを教えていたというではありませんか。 市場原理主義が、極端な方向に振れ過ぎた結果です。 欧米の一体化した関係は、世界に市場原理主義を押しつけることになりました。 たとえば、欧米で資金調達しようとすれば、国際会計基準に依らなければならなくなります。 じつはこの基準は、アメリカではなくヨーロッパの会計専門家が合意したものです。 アメリカは導入に難色を示しましたが、結局ヨーロッパに合わせました。しかし、実はヨーロッパの会計専門家に これを教えたのは、米連銀の議長だったボルカーだというではありませんか。 WTOに出てくる各国代表は、実際にはずっとジュネーブにいりびたりです。 彼ら(米、欧)は、元々親密な間柄で常に飲んだり食べたりしているので、意思疎通は完璧です。 しかし、本当に本国の国益がなんであるかを考えているのではなく、 どうやって本国を彼らの合意に従わせるかを考えているのです。 つまり、市場原理主義者同士の結託で、世界の運命を決めるWTOの意思決定がなされているのが実態です。 ジュネーブの各国交渉担当は、同じ米国の経済学の大学院やロースクールの同窓であることが多いと 言われています。だから、日本の担当官は議論すれば負けるとも言われています。 最近では、中国、韓国や開発途上国の担当官も米国の大学院出が多いようです。 私は米国東部の大学院で教えていたことがあるので、その出身者がどの程度のものなのかわかります。 神のご託宣を聞くように受け賜わるようなものではありません。 「中国経済が壁に突きあたる」 意外に思われるかもしれませんが、世界第二位の経済大国にのし上がろうとしている中国は、 このグローバルスタンダードに適合しようと必死になっています。 私は中国のこの姿勢はいずれ大きな壁に突きあたると見ています。 十数年前、まだ国家副主席だった胡錦濤氏に会ったときに、 「安全保障面で日中の連携は無理だが、経済については日中が連携して、米欧と対向すべきだ」 と言ったことがあります。 中国は、当時、米欧がつくったWTOに入れてもらおうと一生懸命でした。 胡氏は、私の発言に困ったような顔をしていましたが、結局、米欧にいろいろと注文をつけられたあげく、 WTOに入ることを認められました。 私が胡氏と会った数年前に、やっと中国は食糧自給率が百パーセントに達したばかりでしたが、 WTOに入ったいまでは、相当食糧自給率は低下しています。 WTOの市場原理主義者が決めた秩序に従う必要はありません。欧米経済と、その他の国々の経済を 切り離したら、彼らだけで成り立つはずはありません。 WTOに加盟しなくとも、各国は中国に商品を売り投資せざるを得ません。たぶん、日本や台湾の場合も同じです。 世界の経済は相互依存の関係にあり、米欧が一方的に恩恵を与えているのではありません。 現在、中国は資源を買いあさっていますが、中国の人口13億人は地球の全人口60億人に対して、 あまりにも、シェアが大きく、中国の資源戦略が壁にぶつかるときには、世界も壁にぶつかる。 世界がつまずくときには、中国が一番につまずくということに気づくときがきます。 資源を求めて、アフリカにODAを施しても、資源がなくなるときは必ずやってきます。 中国は、WTOに加盟して農業の自由貿易化を進めたので食料自給率は下がりました。 いくら中国の人件費が低いとはいえ、13億人の人口に対してアメリカなどの農業国にくらべて、 1人当たりの耕作可能面積がかなりせまいうえに、ダム建設などの結果、砂漠化が進んでいます。 小麦、大豆では競争力がありませんので、ほとんど米豪から輸入しています。 石油や金属は、他所から買い集められますが、水だけはどうしようもありません。 工業化に突き進んできましたが、国内の水資源を枯渇させ、食糧自給率を引き下げてまで得るものが それほどあるのか。 中国の賃金が高くなったとき、世界の大手製造業が投資先を別の開発途上国に移してゆくことは目に見えてます。 その場合に食糧はどうやって確保するのでしょう。 中国は、WTOのスタンダードに惑わされてはなりません。真の独立は、自分の常識を主張することです。 東アジア「経済」連携 日本人は江戸時代のようにいざとなれば鎖国をして慎ましい生活をするという腹構えがあれば強いと思います。 現実的には鎖国をしてはいけませんが、そのスピリットを中国人にも共有してもらいたいものです。 先日、中国の大使館に十数年ぶりに呼ばれて、公使に言ってきたことがあります。 「私が中学生のころの昭和30年代前半は、数字でいえば、生活水準がいまの十分の一かそれより もっと低くかったのですが、実感として、あの時代にもどったとしてもそんなに苦痛ではありません。 同じように、30数年前に訪れた中国の人たちの顔と、今の人たちの顔を比べて、30数年前の中国人の表情は 明るかった。経済発展の結果、得たものの方が大きいとは言えない。 皆が貧しければそれは苦痛でもなくやっていけます。 自分さえよければと、ガツガツすればするほど、人は不幸になってゆくのではないか。 それでも、いったん豊かさに突き進めば、もっともっとと、際限がなくなるのが人間の性である」と言いました。 共産主義国家で、日本を仮想的敵国視している中国とは、政治的、軍事的に組むことはありえませんが、 経済では中国と対話を進めて連携する必要はあります。 たとえば、大西洋のマグロのように利害が一致するようなことはいくらでもあります。 そういった場合には組んでやればいいのです。WTO対策も然りです。 中国はWTOに行けば、自分たちは貧しい発展途上国なのだといまだに言う。 世界の富を一国に集めようとしているのに、恥を知れと言いたくなります。 日本も中国も韓国も農業に関する事情は大体同じですから、一緒に組んでやるべきです。 WTOは地球にやさしくはありません。すべての国が、自分の国でできる範囲で食べてゆくことができれば、 それが一番地球にやさしいのです。 農産物貿易にせよ、金融商品の取引にせよ、経済に関しては、米欧のグローバルスタンバートこそ、 修正を迫られているのです。 暑い日が続きますが、ご自愛ください。ご意見賜わりましたら幸いです。 太田誠一



