内藤証券メルマガ「中国株レポート」No.114
2008/03/07 No.114
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★内藤証券メルマガ「中国株レポート」★
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━━目次━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【1】月一連載「生活のなかの中国株」(第12回)
【2】チャイナストックワールドへの誘い
―中国株基礎知識のAからZまで(第65回)―
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★☆生活のなかの中国株☆★
―第12回 牛乳も値下がりか?―
第11期全国人民代表大会(国会)・第1回会議が5日、北京の人
民大会堂で開幕し、温家宝首相が政府活動報告を行った。インフ
レ懸念が高まるなか、国務院(中央政府)は今年の消費者物価指
数(CPI)上昇率を、昨年通年と同水準の4.8%前後に設定。「上
昇幅の拡大は抑えねばならない」などとして、改めてインフレ抑
制に尽力する姿勢を示した。(6日付NNA紙面より抜粋)
今年も全人代の季節。毎年、開幕当日に行われる首相の施政方
針演説は、中国が今何を考え、どの方向に国政の舵を切っていこ
うとしているのかを読み取る絶好の機会となります。
2時間を超える演説をつぶさに分析し、中国政府の意図を正確
に把握、伝えることは、現在でも中国報道の大きな役割の一つで
すし、中国ビジネスや対中国投資においてはこれが、次の一歩を
見誤らずに踏み出すための道しるべにもなります。
私が所属するNNAは温首相の演説原稿を、冒頭のように書き出
しました。大見出しは「インフレ抑制に尽力」。ここに今年の中
国の最大課題が集約されていると読んだわけです。
昨年は豚肉や食用油の高騰が市民の食卓を直撃し、社会問題に
まで発展しました。今年に入っても1月のCPIは昨年同期比で7.1
%上昇、物価上昇が沈静化したとは言い難い状況です。温首相は
5日の演説で◇食糧の生産体制の強化◇食糧と工業用穀物の輸入
抑制◇政府による価格調整――などマクロコントロールによって
物価抑制を図ると明言しています。
■値上げ機に「格上げ」
さて、ぐるりと市場を見回してみると、値上がりが顕著なもの
の一つに牛乳があげられます。1リットルパックの普及品が8元く
らいだったのはほんの半年前でしょうか。今や10元を超えるもの
も珍しくなく、この大幅な値上がりによって、ひいきのブランド
や商品を変更する消費者も少なくないようです。
「今まで味と値段のバランスで8元の商品を買っていたけれ
ど、値上がりで10元になった。これなら10元台の高級品と変わら
ないので、これからは1クラス上の12元の牛乳にするつもりで
す」
私の周辺では、このように格上げ修正する声もあったので、大
都市を中心に消費者の購買力が高まっている現在、牛乳メーカー
にとってこの値上げは成功だったかもしれません。
一方、「牛乳の都」と呼ばれる内モンゴルで酪農業を営むある
農家は「飼育コストは30%も上昇したのに原乳価格はほとんど上
がらず経営が厳しい」と新聞で訴えていました。1日20リットル
を搾乳できる良質な乳牛でさえ1頭からの年間利益は3000元程度
だそうです。これ以下は肉牛として安価で売るしかないと、酪農
業者の現状を嘆いていました。
北京では北京三元食品股フン有限公司(600429.SS)、上海で
は光明乳業股フン有限公司(600597.SS)など、牛乳はご当地ブ
ランドがマーケットを押さえていますが、最近は生産技術や輸送
システムが向上し、大都市から遠い内モンゴルを地盤にしながら
も、香港上場の蒙牛乳業(2319.HK)や内蒙古伊利実業集団股フ
ン有限公司(600887.SS)が全国区ブランドとして躍進、中国の
牛乳市場を賑わせています。
アサヒビールの参入やダノンと光明乳業の提携解消など、話題
も豊富な牛乳業界。ここ数年、乳製品が中国の市民生活に深く浸
透してきており、「今まで考えたことはなかったけれど、身近な
会社だし、おもしろいかもしれませんね」と、投資歴が浅いMさ
んは興味を示していました。全人代で示された政府による価格調
整が牛乳にも及ぶのか、投資家にも気になるところです。
(エヌ・エヌ・エー 執行役員・中国事業本部長 三井信幸)
【執筆者略歴】
物流関係の専門紙記者から北京留学(新聞学専攻)を経て1998
年にニュースネットアジア(現エヌ・エヌ・エー)入社。香港、
北京、上海に駐在し、中国ニュース部門の編集長を務めた後、
2006年から中国法人社長、07年5月から現職(中国法人社長兼
務)。共著に「中国・台湾・香港の主要企業と業界地図」
(日刊工業新聞社刊)。
★☆チャイナストックワールドへの誘い☆★
―中国株基礎知識のAからZまで(第65回)―
■北京五輪、上海万博の後■
これまでも中国株関連の広告で強くアピールされてきた北京五
輪が、今夏に迫っています。その後のビッグイベントは2010年の
上海万博。では、その後は……。
中国株や中国株投資信託が日本で認知されるなかで、これら二
大イベントは“中国の著しい経済成長が日本の高度成長期に似て
いる”というイメージ、将来性をアピールするため、広く強調さ
れてきました。だが、数年前は“近い将来の話”だった二大イベ
ントの一つが実際に開かれ、終了することが意識されると、今度
は中国の経済成長や株式市場の発展までが二大イベントと同時に
終了するかのようなイメージも、一部で広まり始めているようで
す。
すでに以前から“北京五輪までは成長が続くだろう”と考える
人はけっこういました。なぜ“北京五輪までは”と限定的なのか
?その理由はあまりはっきりしていませんが、いろいろな意見を
わたしなりにまとめてみると、以下のような考えがあるように思
います。
「北京五輪は国際的なイベントであり、中国もメンツがあるか
ら、台湾侵攻など無茶なことはしないし、外国の話も少しはちゃ
んと聞くだろう。経済発展が大事となるから、昔のような社会主
義思想重視の政策はとらないだろう。文化大革命のような国内の
混乱も起きず、経済も発展するだろう……」
まるっきりこのままではなくとも、これに似たような意見は雑
誌や書籍などでも時折見かけます。
■政治・思想が視野に影響■
日本のチャイナウォッチは、昔から政治・思想面や文化面から
のアプローチが多く、経済面からの視点は少ない。それは一昔前
の中国が経済的に立ち遅れていたうえ、政治、思想を中心に動い
ていたからで、いまでも“中国は政治闘争や思想で動く国”、
“危険思想を持った国”といった考えが日本人の根底にあり、中
国を見る目に影響しています。1989年の天安門事件、ここ数年の
歴史認識問題や反日デモも、“中国は政治闘争や思想で動く国”
というイメージを日本人に強く焼き付けたのではないでしょう
か。
しかし、本当に“政治闘争や思想だけで動く”のであれば、今
日の中国の発展はなかったでしょう。いまの中国は経済が行動原
理の大きな部分を占めています。現在の中国と30年前の中国は、
同じ国だが中身は別物です。いつまでも政治面や思想面からのア
プローチを中心としていると、大きな“見誤り”を起こすのでは
ないでしょうか。少なくとも中国のファンダメンタルズ(基礎的
条件)から、“経済発展は五輪まで”というシグナルは出ていな
いと思います。むしろ、世界経済の不確実性が増していることの
方が、中国経済に悪影響を与えるのではないでしょうか。
■終着点か、通過点か■
話を二大イベントに戻します。東京五輪は1964年、大阪万博は
1970年。“北京五輪までは成長が続くだろう”という人への一番
簡単な反論といえば、「日本は東京五輪や大阪万博の後、経済が
衰退したか?成長が鈍化したか?」でしょう。
また、「五輪や万博が経済発展をけん引したのか?むしろ経済
が一定規模に発展したから、五輪や万博を開催できるのであり、
これらは発展する上での通過点に過ぎない」という言い方もある
でしょう。
こういう反論をされると、政治面や思想面が強調されがちで
す。
「中国は独裁国家であり、民意など反映しない国家だ。貧しい
農民が無数にいて、貧富の格差も広がっている。共産主義国であ
り、本質的に資本主義国と敵対している。軍事費も増大し、周辺
国との間に摩擦が生じる可能性もある。台湾に侵攻する可能性も
ある。経済を衰退させる要因はたくさんある。五輪まではそうし
た不安定要因を力ずくで抑えているが、これが終わると、こうし
た不安要因が爆発する」といった意見です。
■変化する中国政府・共産党■
しかしながら、こうした意見が指摘する問題に対して、中国は
何の手も打たないわけではありません。格差問題を強く認識して
いますし、軍事費も国家経済に悪影響を与えるほど膨らませてい
るわけでもありません。
また、為政者の選ばれ方は西側諸国のような“民主的な手法”
ではありませんが、“民意の反映”という点では、むしろ選挙で
の公約が守られなかったりする日本よりも敏感で迅速だったりす
ることもあります。中国政府の思想やメディアの統制について
は、民意や世論というものの恐さを十分に認識していることの表
れであるとの見方もできます。押さえ込める不安要因は抑え込も
うとしますが、逆に可能な限り民意や世論に応えることが政権に
とってプラスであることも知っていることでしょう。
株式市況をめぐって政権が敏感に反応するのは、この面での民
意に応えなければ、庶民の懐につながる問題だけに、社会不安や
政権への不支持につながる恐れがあることを認識しているからと
も言えるのではないでしょうか。
中国の政策運営は“教条的マルクス主義”や“教条的家毛沢東
主義”に基づくものではなく、改革開放・市場原理の導入、トウ
小平理論、社会主義初級段階論、「三つの代表」に見られるよう
に、国益と現実に即して変化しています。
その背景には、改革開放以降の中国社会や政策方針が、経済発
展にともない大きく変化していることがあります。マルクス風に
いえば、「下部構造(生産様式、つまり経済)が上部構造(社会
形態、つまり政治・国家、法律、哲学、人間意識)を規定する」
という動きが加速していると考えられます。
現実や国益に即さない政策に固執すれば、政権は民意を反映で
きず、場合によっては政権が揺らぐほど支持層を失います。つま
り下部構造と上部構造の矛盾が拡大します。中国共産党は革命政
権だけに、そうしたことに敏感です。支持基盤を失わないために
は、自らを変えなければならず、実際に“私有財産の保護”、
“民営企業家の共産党入党”など、“教条的共産主義”からみれ
ば“あるまじき行為”までも行っています。
■万博に巨大生物を出展?■
ところで万博に関連して、最近このような特撮番組をみまし
た。以下はそのあらすじです。
【あらすじ】
南洋の島で古代から生き続けていた巨大生物が見つかります。
これを万博に出展するため、生け捕りにする計画が立てられま
す。麻酔銃で巨大生物を眠らせ、空輸するのですが、途中で目が
覚めて暴れだします。
このため飛行困難となり、仕方なく2000メートルの上空から万
博会場付近の空き地に巨大生物を投下。だが、落下の衝撃でも死
ななかったうえ、かえって凶暴性が増し、暴れだします。
巨大生物は市街地に出没。金融街などを破壊します。このため
特殊部隊が出動。巨大生物の尾を切断します。さらに宇宙から来
た正義のヒーローが現れ、巨大生物と格闘。巨大生物の角をもぎ
取るなどして、やっとのことで勝利した。(おわり)
この特撮ドラマをみて感じたのは、人間の身勝手さと描写がす
ごく残酷なことです。巨大生物は万博出展という人間の一方的な
都合で空輸され、しかも上空から突き落とされます。尾や角が切
り取られるシーンは生々しく出血し、すごく痛そう。正義のヒー
ローも殴る蹴るで巨大生物を痛めつけ、死に至らしめます。巨大
生物がかわいそうでした。
さらに巨大生物が死んだ後、空輸した特殊部隊の隊員は、「つ
いに死んだか。憎むべき奴だったが、思えばかわいそうだった
な。剥製にして万博に展示してやろう」と言います。この発言に
も、身勝手さとある種の残酷さを感じました。
この特撮番組。お気づきの人もいるかもしれませんが、「ウル
トラマン」です。1967年1月に放送された「怪獣殿下」の前編と
後編。万博は大阪万博、巨大生物は古代怪獣ゴモラ、特殊部隊は
科学特別捜査隊(科特隊)、正義のヒーローはもちろんウルトラ
マンです。
幼稚園に通う息子が見たがるので、借りてきてみました。子ど
ものころはストーリーなどあまり理解せず見ていたのですが、大
人になって見てみると、面白さや格好良さよりも、人間の身勝手
さや残酷な描写の方が目に付きました。いまの日本では、こうし
たストーリーやシーンは、控えられるのではないでしょうか。で
すが、この番組が放送された当時は、特に問題視されなかったの
ではないかと思います。
このほか、科特隊の村松隊長をはじめ、喫煙する人がかなり登
場することにも、ある種の“違和感”を感じました。昔はタバコ
に寛容だったためでしょう。これほど多くの喫煙シーンは、最近
ではあまりみないと思います。米国の物をやたらとありがたがる
シーンもいくつかあり、これも同じような感じがしました。“米
国の物はすごい”という感覚が、この当時は一般的だったと思い
ます。この時代から40年が経ち、日本人のモノの考え方や意識が
大きく変わったことを痛感しました。
また、舞台となった造成中の千里ニュータウンは、いまでも中
国の都市でみかける風景にそっくり。登場人物の家にある調度
品、住宅の事情などからも、物質面で日本社会の大きな変化を感
じました。
■同じ国でも昔と今では…■
ウルトラマンに映っている風景は、今の、あるいはほんの少し
前の中国に似ています。また、そのなかに登場する人物たちの振
る舞い、番組製作者や登場人物のモノの考え方、モラル意識も、
やはり中国に似ているところがあります。
先ほど“現在の中国と30年前の中国は、同じ国だが中身は別
物”と書きましたが、“現在の日本と40年前の日本も、同じ国だ
が中身は別物”なのです。五輪、万博の後も、日本経済は発展
し、物質的な豊かさと余裕が生まれたことで、わたしたち日本人
のモノの考え方やモラル意識も、知らず知らずに大きく変化して
きたことが、ウルトラマンをみると感じられます。
文化大革命の中国と経済発展が著しい今日の中国を比較する
と、社会全体を覆うモノの考え方が、物質的な豊かさが生まれた
ことで大きく変化しています。中国は“1人あたりGDP(国内総生
産)を2020年までに2000年の4倍とし、全面的な「小康社会」
(いくらかゆとりのある社会)を構築する”という目標を掲げて
います。これは今後も経済発展を重視する姿勢の表明であり、実
現すれば今は自分のことで精一杯の人々にも“余裕”が生まれる
ことを意味します。
物質的な豊かさと余裕は、日本の発展にみられるように、人々
のモノの考え方やモラル意識に大きな影響を与えます。“現在の
中国と30年前の中国は、同じ国だが中身は別物”と書きました
が、“現在の中国と10年後の中国も、同じ国だが中身は別物”で
す。では、どんな10年後なのか?やはり繰り返しになりますが、
少なくとも中国のファンダメンタルズから、“経済発展は五輪ま
で”というシグナルは出ていないと思います。
(中国部課長 千原靖弘)
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