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2008/02/12

内藤証券メルマガ「中国株レポート」No.112

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2008/02/12 No.112
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
       ★内藤証券メルマガ「中国株レポート」★
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
━━目次━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【1】月一連載「中国街角ウォッチ」(第12回)
【2】チャイナストックワールドへの誘い
―中国株基礎知識のAからZまで(第64回)―
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

★☆月一連載「中国街角ウォッチ」(第12回)☆★

 またまた出て来た中国の食品安全トラブル。新聞やテレビの
大々的な報道振りは、一部で過剰報道ではないかという疑問の声
も上がっている。新聞には毒餃子(ギョーザ)の活字が躍ってい
るが、犯罪である限り輸入に当って、水際での防御なんてほとん
ど不可能に近い。輸入食品が危ないとすれば、日本の自給率を高
めなければならないが、カロリー計算で食糧自給率39%の日本が
受ける打撃は並大抵なものではない。

 河北省石家荘の工場で起きた今回の事件(?)。私はこの田舎
町に何度も足を運んでいる。北京から高速を飛ばして3時間ほ
ど、河北省の省都でありながら、国際化にはいまだ時間のかかり
そうな都市でもある。地域的には北京、天津なども内包している
地域でありながらなぜかもうひとつパッとしない。

 さて、私はこの河北省の経済顧問に任じられてすでに5年ほど
になるが、それだけに常日頃気にかけていた地域でもある。そし
て、この事件の経過を知ってすぐに感じたのだが、今回の事件は
中国が昨年中ごろから次々に発布している労働契約法(今年1月1
日施行)と密接に関係しているのではないかというものである。

 本来この法律は労働者保護のために作られ、経営サイドから見
ればむしろ不都合極まりない内容を含んだものであった。進出し
た日本企業の経営者の多くが慌てて社内規定、特に雇用規定を作
成したり、その対策には各社が大変なエネルギーを費やしたりし
ている。実際には顧問弁護士などとの共同作業になるのだが、中
国人弁護士は落ち着いたもので、必ずしも急ぐことはないと、む
しろ消極的と思われるほど鷹揚な物腰で日本人経営者を苛立たせ
た。弁護士自身が順法精神に欠けているのではないかと心配にな
るのだが、これが中国社会だと言ってしまえばそれまでのことで
ある。

 さて、件(くだん)の天洋食品で働くワーカーの多くは中西部
地域からの出稼ぎ労働者(農民)であり、この地域における労働
市場は完全な買い手市場でもあることから、経営者は比較的簡単
に労働者をクビにできる環境である。そんな中で解雇された人間
が会社に対して持つ恨みは計り知れない。実はぽっと出の経営者
自身が労務管理など真剣に勉強したことがなく、ただただ金稼ぎ
に夢中な強欲だけの人間であったりすると、解雇するときの条件
もいい加減で、まるでハエでも追い払うような辞めさせ方をす
る。

 結果として彼らは雇用主を恨み、工場に激しい敵意を持つこと
になる。1日13時間労働で月給は1万3000円という条件でも働いて
いる限りは、酒も飲めるし、仕送りも可能だが、職を追われると
いうことが彼らにとってどのくらいのものか、これは現場にいな
いと分からない。労働者に有利な新労働契約法施行にびびったの
は経営サイドであったろう。44歳以上のワーカーを一挙に解雇す
るということは経営経験の浅さから来るものだったろう。

 私は労働問題を講じるときに常に訴えるのは「中国は雇用が容
易だが、解雇は大変なんだ」ということ。運転手一人解雇すると
なったら、その日からいつ自動車事故にあってもいいと覚悟しな
ければならないし、ワーカーを解雇したら彼らは夜中に工場の主
電源部分の電線を切りに来ることを知らなければならないと言っ
た具合である。こうした報復は作業員でも、事務職でもやるのが
現場であり、それに加担するのが税務局、消防局、税関などの彼
らの人脈筋であった。

 そんな中で過日、中国国家品質監督検疫総局・魏伝中副局長の
談話には驚いた。「中日友好の発展を望まない少数の過激分子が
極端な手段に出たのかも知れない」というものだったが、ここで
工場管理そのものには瑕疵(かし)がないことを断定しようとす
るなら、品質監督検疫の役人の範疇を外れた発言であり明らかに
妙だ。彼は工場サイドから何らかの手心を加えることを依頼され
ていたのだろう。この辺りがいかにも中国的であるが、中国のイ
ンターネットの書き込みには「中国製品を排斥しようとする日本
の政治的陰謀」などとするものもあり、こうしたことは毎度のこ
とで驚くに当たらない。

 解雇された複数のワーカーが雇用主(企業)に対して復讐の目
的をもって、経済的損害を与えるために行なった行為に過ぎず、
そこには政治的に深い意味などありはしない。当該ギョウザの製
造日の一つが10月1日の国慶節であったというのは、最初に感じ
た不自然さだが、その後の調査では4つの製造日すべてが土日休
日であったという点が事件解決の糸口になるはずである。しかし
経験的には中国の警察当局の捜査能力にはあまり期待できないの
が現実であり、この点が何とも残念である。

 それにしても、中国製の冷凍食品のすべてに農薬が混入してい
ると思っているのか。各マーケットの中国食品の回収振りはほと
んどパニックに近い対応であった。こうした行動自体がむしろ恐
ろしい気がするのは私だけであろうか。

(日本景徳鎮株式会社代表取締役 金丸健二)

【執筆者略歴】
 総合商社で30年余り中国貿易に従事、中国各地の駐在経験を経
て、1996年からジェトロ北京にて海外投資アドバイザー。2000年
より日本景徳鎮(株)代表取締役の傍ら母校東京外語大学講師な
どを務め、2004年から千葉商科大学大学院・客員教授として企業
マネージャーを対象にした中国投資リスクマネジメント講座を
コーディネート。2007年からDOWAホールディングス(株)社外取
締役に就任、今日に至る。
 著書には「私は一度も中国人に騙されたことはない」(ジャパ
ンタイムス刊)「一番役立つビジネス中国語会話」(池田書店
刊)ほか月刊宝島にコラム「激闘中国」を連載中だが、現場主義
に立脚した分かりやすい講演には定評があり、日本各地を飛び回
る毎日。



★☆チャイナストックワールドへの誘い☆★
―中国株基礎知識のAからZまで(第64回)―

 「新年好!」。中国本土は今日まで旧正月連休。香港市場は一
足先に大発会を済ませましたが、本土市場は明日からです。5カ
月ぶりの「チャイナストックワールドへの誘い」ですが、今回は
マカオのカジノ産業を取り上げたいと思います。

■日本とマカオ■

 マカオは広東省珠海市に隣接した特別行政区で、マカオ半島、
タイパ島、コロアネ島からなる地域です。面積は28.6平方キロ
メートルで、東京都葛飾区よりも少し狭く、ここに50万人あまり
が生活しています。

 このマカオにポルトガル人が居留し始めたのは1500年代。1557
年に明王朝から居留権を得て、アジアにおけるヨーロッパ人の重
要拠点となりました。

 アジアでのカトリック布教の拠点となり、イエズス会のフラン
シスコ・ザビエルは、ここを拠点に活動していました。徳川幕府
が鎖国するまで長崎との貿易で栄え、キリスト教が禁じられた際
などは、日本を離れたキリシタンの目的地の一つでもありまし
た。その後、1840年のアヘン戦争をきっかけに、ポルトガルはマ
カオを占領。1887年に正式に植民地としました。

■カジノの発展■

 マカオでカジノ産業が栄えるきっかけとなったのもアヘン戦争
でした。香港が貿易港として繁栄し、マカオの地位が衰退。ポル
トガル政府は税収基盤の拡大と産業の多様化を図るため、1847年
にマカオのカジノ産業を合法化しました。マカオのカジノ産業は
大きく栄え、すでに約160年の歴史を有しているのです。

 長い歴史の中で、マカオのカジノ産業は過去にいくつかの会社
が交代で独占経営してきました。最後のカジノ独占経営企業は、
「マカオのカジノ王」として知られるスタンレー・ホー、2006年
に亡くなった全国政治協商会議の霍英東(ヘンリー・フォック)
副主席などが設立した澳門旅遊娯楽有限公司(STDM)という会社
です。

 STDMは1962年に誕生。これ以降、「葡京酒店」(リスボア・ホ
テル)、「葡京娯楽場」(カジノ・リスボア)を拠点に40年にわ
たってマカオのカジノ産業を支配してきました。

■マカオカジノ産業の特色■

 マカオのカジノはさまざまです。ルーレット、バカラ、スロッ
トマシーン、ポーカー、ブラックジャックなど欧米のゲームのほ
か、麻雀、「骰宝」(通称:「大小」)など中国独自のゲームも
多数揃っています。1998年には日本のパチンコも小規模ながら取
り入れられました。ただ、現在は統計から消えており、人気はな
かったようです。このほかにもドッグレース、競馬のようなギャ
ンブル。ロトや宝くじなども揃っています。

 マカオのカジノ産業は博彩監察協調局(DICJ)という政府当局
が管理しています。面白いのは、バカラや麻雀などのルールを政
府が制定しているという点です。例えば、麻雀はどのようにゲー
ムを始めるとか、どのように点を数えるかとか。こうした問題が
政府部内で話し合われたと想像すると、ちょっと笑えますね。こ
のほかにもカジノを楽しむ人に宿泊や交通などの便宜を図るカジ
ノ仲介人という制度もあり、免許制となっています。

■カジノ体験■

 わたしは2007年6月に初めてマカオを訪問しました。澳門博彩
股フン有限公司(SJM)の「グランド・リスボア」(新葡京娯楽
場)に行ったのですが、かなり大規模なものでした。オフシーズ
ンの平日だったのですが、体育館数個分のカジノフロアはかなり
の人数で、客の大部分は中国本土の人でした。

 3つのサイコロの出目を当てる「大小」のテーブルが目立ちま
した。掛け金は香港ドル建てで、勝負は最低100HKドル、約1400
円からで、けっこうな軍資金がないと、あっという間になくなっ
てしまいます。わたしは記念にスロットマシーンに100HKドルを
使ったのですが、10分ほどでなくなってしまいました。

■返還後■

 長くポルトガル人の支配下にあったマカオですが、1999年に中
華人民共和国に主権が返還され、特別行政区となりました。返還
前からカジノ産業の市場開放が検討され、1986年にカジノ経営権
を最大3つ発給することが決まりました。2001年にカジノ産業の
開放に関する法律を制定。40年に及んだSTDMの独占支配が終焉
し、2002年に3つの会社にカジノ経営権が付与されました。

■新規参入企業■

 新たにカジノ経営権を取得したのは、STDMの子会社のSJM、香
港に上場する銀河娯楽集団有限公司(0027.HK)の子会社の銀河
娯楽場股フン有限公司(ギャラクシーカジノ)、米ウィン・リ
ゾーツの子会社である永利渡假村(澳門)股フン有限公司(ウィ
ン・リゾート・マカオ)です。マカオのカジノ産業は、マカオの
地場系企業、香港系企業、米国企業で競い合うという構図となり
ました。

 さらに米国のラスベガス・サンズとMGMミラージュ、オースト
ラリアのPBLがサブライセンスという形で参入。計6社が競争する
ようになり、スタンレー・ホーのシェアを奪っています。ただ、
うち外資系の2社には、スタンレー・ホーの家族が資本参加して
います。

 マカオのカジノは2003年末時点で11カ所。すべてスタンレー・
ホーが支配するSJMが経営していました。その後、新たな参入企
業がカジノを開設。2006年末時点で24カ所に達しました。うち
SJMの経営するカジノは17カ所と全体の7割を占めていましたが、
この1年ほどで新規参入企業のカジノも次々とオープン。2007年
末のカジノは28カ所で、うちSJMが約64%に相当する18カ所、新
規企業が10カ所という状況になりました。

■マカオのカジノ産業の規模■

 中国の経済成長とカジノ市場の開放を背景に、マカオのカジノ
収入はすでにラスベガスを抜き、世界1位となっています。2006
年のカジノ収入は566億2300万マカオパタカ(以下、パタカ、約
7814億円)に上りました。うちSJMは352億2200万パタカ(約4861
億円)で、依然として全体の62%ほどを占めています。

 2006年末で5カ所のカジノを経営する香港系のギャラクシーカ
ジノは75億4100万パタカで、全体の13%。一方、ラスベガス・サ
ンズの傘下にある威尼斯人(澳門)股フン有限公司(ベネチアン
・マカオ)は1カ所しか経営していないのですが、カジノ収入は
112億3000万パタカ(約155億円)に上り、全体の20%を占めまし
た。ウィン・リゾート・マカオも21億3000万パタカと健闘してい
ます。

 2007年に入ると、ベネチアン・マカオのカジノがさらに1カ所
オープン。PBLと新濠国際(0200.HK)の合弁会社である新濠博亜
博彩(澳門)股フン有限公司(メルコPBLゲーミング・マカオ)
も最初のカジノが開業。さらにMGMミラージュの合弁会社「美高
梅金殿超濠股フン有限公司」(MGMグランド・パラダイス)も
オープンしました。2007年のカジノ収入は前年比47%増の830億
2200万パタカ(約1兆1457億円)に達しています。

■スタンレー・ホーとSJMの上場■

 外資にシェアを侵食されているスタンレー・ホーのSJMです
が、反撃の準備を整えています。澳門実徳(0487.HK)と合弁で
古い時代のマカオを再現したカジノホテル「Ponte16」(十六
浦)の開発を進めています。これにはパチンコチェーンのマルハ
ン(京都本社:京都市上京区)も参加しており、2008年2月1日に
開業式典が行われました。このほか数年前から、SJMの香港上場
が計画されています。

 スタンレー・ホーはSJMの上場を進めているのですが、大きな
障害となっているのが実妹である何婉キ氏(通称「十姑娘」)と
の確執です。この兄妹はSJMの親会社であるSTDMの株式をめぐっ
て争っており、新聞広告で互いに非難しあうほど関係が険悪化し
ています。SJMの上場計画にからんでも、十姑娘は数十件の訴訟
を起こしています。

 今年に入り、SJMの上場について香港の証券当局は、リスクを
明記すれば、上場に差し支えはないと判断し、1月末にも募集を
開始するとの報道が流れました。ですが、十姑娘が当局に新資料
を提供。これが引き金となり、SJMの上場は市況の悪化も加わっ
て、事実上延期となりました。

 新カジノの建設のため、マカオにはかなりの資金需要があるの
ですが、これにサブプライムローン(信用力の低い個人向けの高
金利型住宅ローン)問題による信用収縮が影響を与えているもよ
うです。メルコPBLゲーミング・マカオは2007年9月に銀行団から
17億5000万米ドルの融資を受けましたが、当初予定の借入規模は
27億5000万米ドルだったそうです。

 こうしたなかでIPO(新規公開)による資金調達は、シェア挽
回を狙うSJMにとってぜひとも必要な状況ですが、“骨肉の争
い”は泥沼化しています。外資の脅威に加え、妹との確執と上場
計画の難航に直面しているカジノ王ですが、マカオカジノの老舗
であるSJMの上場に関心を示す投資家は多いようです。

 マカオカジノの最大手企業が上場できるか否か?これ自体が賭
けの対象となりそうな雰囲気ですが、カジノ王は「上場できる」
に賭けているそうです。

(中国部課長 千原靖弘)

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