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2009/05/01

《たとえ話》で分かる物理221号◆たとえ話「あちら側の世界へ続く道」

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       楽しい《たとえ話》で直感的に分かる物理の考え方
                2009/5/1  221号 3111部
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田原です。
こんにちは。

毎日、本と格闘する日々が続いています。

この数日は、ギリシャ数学史の本を読んでいます。

歴史の順に学んでいくと、分かることが多く、
毎日が、発見の連続で楽しいです。

というわけで、数学史を学ぶ中で考えたことを、
たとえ話にしてみました。


たとえ話スタートです!

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■あちらの世界へ続く道
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数学者ピーター・ゴランスルのところへ、姪っ子のメイシーが遊びに来ました。

メ:数学なんて、何が楽しいのか、ぜんぜん分かんない。
  ピーターは、なにが楽しくて数学なんてやっているの?

ピ:僕はね、「なぜ、それを正しいと思ってしまうのか」というところに、
  惹かれてしまうんだよ。

  メイシーは、ピタゴラスの定理を知っているよね。

メ:学校で習ったわ。直角三角形3辺について、
  
    a^2+b^2=c^2

    が成り立つというやつでしょ。正直、「だから何?」と思ったわ。

ピ:ところで、メイシーは、「直角三角形を見たことがあるかい?」

メ:もちろんあるわ。三角定規を持っているもん。

ピ:でも、三角定規の辺は、拡大すれば直線ではないよね。
  そして、直角とされている角度も、90.00000・・・・・度
  と、無限に正確なわけではないよね。
  それでも、「直角三角形を見たことがある」と言い切れるかな?

メ:うーーーむ。そういわれると・・・。
  でも、私は、直角三角形を知っているわ。

ピ:本当の直角三角形に似せた三角形を目の前において、その「あちら側」に、
  真の直角三角形を思い描いているんだよ。

  真の直角三角形は、肉眼などの感覚によって見ることができる「こちら側」
  の世界に存在するのではなく、「あちら側」に存在しているんだ。

メ:なんだか、だまされているような気がしてきたわ。

ピ:ピタゴラスの定理の証明を見てみよう。
  どれでもいいから、納得できるものを読んでごらん。
  http://www004.upp.so-net.ne.jp/s_honma/pythagoras/pythagoras3.htm

  ピタゴラスの定理の正しさが納得できたかな?

メ:私は、ピタゴラス自身が考えたとされている証明2が分かりやすかったわ。

ピ:メイシー。君は今、肉眼では見ることができない「あちら側」に存在する
  直角三角形を理性の力で知覚し、さらに、そこにある数学的秩序の正しさ
  を確信したんだ。 

  今、君の精神は、「あちら側」の世界とつながったんだ!

メ:なんとなくピーターとは、住む世界が違う感じがしていたけど、
  本当に違う世界に住んでいたのね。

  なんだかいいにおいがしてきたわ。今日の昼食はサイコロステーキね。
  思い浮かべるだけでおなかがすいてきたわ。

  ピーターは、もしかして、このサイコロステーキの「あちら側」に、
  立方体を知覚してしまうの?

ピ:もちろんさ。立方体をカットしたときの断面を思い浮かべながら食べる
  ステーキは、最高さ。

◆たとえ話終了◆

ピタゴラスは、「あちら側」の世界に、数学的な秩序が存在することに
気づきました。

さらに、2本の弦をはじいたときに出る音が調和するときに、弦の長さが、
整数比になっていることから、「こちら側」の世界にも数学的な秩序が
見られることに気づきました。

純粋な「数」の世界である「あちら側」
純粋ではないがあちら側と似た部分をもつ「こちら側」

という2つの世界を考えました。

感覚で捉えられる「こちら側」の世界は、純粋な「あちら側」に
似せて作られていると思っていたそうです。

そして、「あちら側」の世界のほうが高次の世界で、
「こちら側」は、それに付随したものであると考えていたようです。

それが、「万物の根源は数である」という言葉の意味だと、
僕は解釈しています。

そして、彼は、数学を研究することで、精神を「あちら側」へ
つなげることができると考えていたようです。

そうすることで、魂が浄化されると考えたのです。

ピタゴラスが考えた「あちら側」の世界の存在は、現在まで、
脈々と受け継がれています。

ガリレオ・ガリレイが「見た」等速直線運動も、「あちら側」の
世界の運動です。

自然界を数学を用いて理解しようという近代科学の方法の根底には、
数学によって記述可能な「あちら側」の世界が想定されているのです。


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■編集後記
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今日は、アリストテレスの『形而上学』を読みました。

アリストテレスは、近代科学にとって乗り越えるべき巨大な壁だったので、
授業でも触れることが多いのですが、今回は、できるだけアリストテレスの
前提に立って読むようにしています。

ピタゴラスやプラトンが、

感覚によって知覚できる「こちら側の世界」
理性によってのみ知覚できる「あちら側の世界」

を想定し、第一に「あちら側」が存在し、それによって「こちら側」が
存在すると考え、

「第一原因であるあちら側の世界を目指して、がんばっていこう!」

と説くのに対し、アリストテレスは、第一原因としての「あちら側の世界」
の存在を否定します。

感覚世界が先で、感覚による認識がもとになって、抽象化された理解へ
いたると考えるのです。

そして、自然を記述するために、数学を用いることを否定します。

アリストテレスの自然哲学が、2000年もの間、正統派の自然学と
されたことにより、数理科学は、2000年間停滞します。

そして、その後、ガリレオ・ガリレイやニュートンによって、
再び、「あちら側」の世界を数学によって探求する道が開けるのですね。



こんな感じで、ギリシャ数学史について、いろいろと読んでいるのですが、

「こちら側」と「あちら側」との関係に注目するという視点は、
科学史を読み解くとくためにとても有効なのではないかと感じています。


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