出版プロジェクト・物語小説編  RSSを登録する

野間文芸新人賞作家の赤坂真理やキャラメルボックスの成井豊、『THE ANSWER』の鈴木剛介、『クリムゾン・ルーム』の高木敏光らが所属する株式会社アップルシード・エージェンシーがお届けするメールマガジン。作家と編集者が小説を世に送り出すまでの秘話が満載。

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2009/02/09

【出版プロジェクト・物語小説編】

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■■ 出版プロジェクト・物語小説編           2009.2.9
■■                              vol.96
■■                     発行:The Appleseed Agency Ltd.
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このメルマガでは、作家のエージェント・株式会社アップルシード・
エージェンシーが、あなたがベストセラー作家になるための情報とテ
クニックをお贈りします。

■CONTENTS----------------------------------------------------
★トピックス
★2月の新刊のご案内
★私の修業時代 
       第14回 高木 敏光(たかぎ・としみつ)さん
                〜読まれるということの大切さ〜

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■トピックス  〜所属作家たちの近況をお知らせします〜
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★2006年に『お客さん、こーゆーとこはじめて? 艶街経営日誌』で
 デビューした赤澤竜也さんの3年ぶりの新作『会社人間だった父と
 偽装請負だった僕―さようならニッポン株式会社』が発売。森達也
 氏絶賛!
 http://mo-v.jp/?e47b 

★2004年に河出書房新社から刊行され、話題を呼んだ『ハヤト』が、
 講談社から文庫になりました。
 http://mo-v.jp/?e46d

★高木賢治さんのノンフィクション『街金王 池袋アンダーグラウン
 ドの「光」と「闇」』が忽ち重版。映像化のオファー殺到です。
 http://mo-v.jp/?e2e5

★赤坂真理さんの5年ぶりの書き下ろしフィクション『太陽の涙』が
 岩波書店から発売。沖縄の伝承に根ざした、清冽で詩的なヴィジョ
 ン溢れる大人の絵本です。
 http://www.iwanami.co.jp/.BOOKS/02/9/0281730.html

★半年にわたって連載した読売新聞無料会員サイトyorimoで連載中の
 高木敏光さんの「ササイのことで思い出した」が、先週、最終回を
 迎えました。励ましや感想のメッセージをいただいた皆様、ありが
 とうございました。続報は、随時、報告していきます。
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■2月の新刊案内
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★『心のパワーの取り戻し方』
 奥田弘美/著 PHP研究所
 http://mo-v.jp/?e4d1
嫌なこと、気がかりなことを引きずって重たい気分で毎日を過ごして
いないでしょうか。あなたの憂うつ気分を5つのキーワード別にして
それぞれのストレスケア方法を紹介します。

★『借金の底なし沼で知った お金の味』
 金森重樹/著 大和書房
 http://mo-v.jp/?e4d2
自己破産すらできない本当の地獄の底からどう這い上がるか。乗り越
えられない壁はない。25歳で莫大な借金を背負った著者の、人生の
どん底からの生還と成功への軌跡を綴った1冊。発行部数31万部の人
気メルマガを書籍化しました。

★『会社人間だった父と偽装請負だった僕
      ―さようならニッポン株式会社』
 赤澤竜也/著 ダイヤモンド社
 http://mo-v.jp/?e47b 
かつて会社は永遠だった。「負け組」「下流」という言葉が跋扈し、
会社は平気で人を切り捨てるようになった。この国が目指した先にど
んな社会があるのか、今、誰もが気づき始めている。企業戦士として
生き抜いた父の人生と自らの体験を通して、働くことの意味と社会の
あるべき姿を問いかける渾身のノンフィクション。 

★『戸籍も本名もない男』
 村上早人/著 講談社
 http://mo-v.jp/?e46d 
太平洋戦争で、唯一の肉親である母と、戸籍や本名まで失くし、社会
の底辺でもがきながら、戦後の混乱期を駆け抜けた男「ハヤト」。そ
こには悩める現代の日本人が取り戻すべき、熱き生き方のヒントがあ
ります。『ハヤト』(河出書房新社)の文庫化。

★『中国人弁護士・馬さんの交渉術』
 馬英華/著 PHP研究所
 http://mo-v.jp/?e46e
日中両国をよく知る中国人弁護士が、仕事や生活などさまざまな場面
で使える交渉術を指南。交渉前の下準備から、駆け引きと議論を楽し
む中国人のテクニック、中国流の交渉ルールまで、日本人が交渉上手
になる知識が満載。 

★『わたしに元気をくれた99の言葉』
  リクルート・エージェント/監修 アスキー・メディアワークス
 http://mo-v.jp/?e46f
日本最大の転職エージェント「リクルートエージェント」が募った「
あなたの心のメモ帳にある、わたしの仕事に元気をくれた言葉」から
99個を厳選してまとめた言葉集。働くことに疲れたとき、迷ったとき
にこの本を開くと励まされます。

★『太陽の涙』
 赤坂真理/著 岩波書店
 http://mo-v.jp/?e396 
あたたかな海のただなかにまかれた、星座のような島々。その群島の
かたすみに僕らの小さな島はある。僕らは太陽から生まれた。あると
き、月からひとりの男が吐き出され……。清冽で詩的なヴィジョン溢
れる現代の神話。著者5年ぶりの書き下ろし作品です。

★『読書は1冊のノートにまとめなさい』
 奥野宣之/著 ナナ・コーポレート・コミュニケーション
 http://mo-v.jp/?e34c
何十冊、何百冊読んでも、ほとんど覚えていない……。多くの方が抱
えるこの悩み。でも、「覚えていない」は「読んでいないと同じ」。
この本では、読んだ内容を確実にあなたの「財産」にする、「インス
トール・リーディング」の技術を紹介します。1週間で3刷10万部。

★『わたしとおなか』
 橘 果恋/著 サンマーク出版
 http://mo-v.jp/?e29a
ある日、朝子は見知らぬ男子生徒にラブレターを渡される。でもそれ
は――親友の奈々宛てだった。そうだよね、私のはずがない。妄想だ。
どうかしてる。だって私は――太っているから。過酷なダイエットを
決意した高校2年生の恋と友情の日々を、笑いと涙で描いた日記小説。

★『君の心臓の鼓動が聞こえる場所』
 成井 豊/著 ポプラ社
 http://mo-v.jp/?e299
40過ぎのテレビ脚本家・根室。クリスマス目前のある日、19歳の
娘のいぶき14年ぶりにが突然やってきた。「パパ、私、小説家にな
りたいの」。 そして迎える驚きのクリスマスとは? 
ミステリー仕立てのクリスマス・ノベル。

★『街金王 〜池袋アンダーグラウンドの「光」と「闇」〜』
 高木賢治/著 講談社+α文庫
 http://mo-v.jp/?e2e5
かくも鳥肌のたつ人生を誰も知らない…。 
捨て子、ヤクザの鉄砲玉、TVリポーター、そしてヤミ金の世界でのし
上がった男の半生を描く、圧倒的スケールのノンフィクション。
事実は小説より危険なり。重版出来。

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■私の修業時代 
       高木 敏光(たかぎ・としみつ)さん
                〜読まれるということの大切さ〜
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(作家紹介)
高木敏光(たかぎ・としみつ)さん
作家、マルチメディア・クリエイター。
1965年、北海道生まれ。早稲田大学文学部美術専修を卒業後、株式会
社データクラフト入社。マクロメディア(現・アドビ)のソフトウェ
ア「Director」の先駆者的存在として、独創的なアニメーションやミ
ニゲームなどのデジタルコンテンツを数多く手がけ、セミナー講師と
しても活躍し、マルチメディア業界の巨匠と呼ばれる。インタラクテ
ィブゲーム『CRIMSON ROOM』の発表を機に、2005年、株式会社タカギ
ズムを設立。現在は、携帯電話向けコンテンツをはじめとした企画制
作やITコンサルティング業務を主に行う。
著書に『Director読本』(トッパン)、『高木工務店』(BNN)がある。 
一方で、大学時代には文芸誌の新人賞の最終選考に何度も残ったとい
う経歴もあり、2008年には『クリムゾン・ルーム』(http://mo-v.jp/?e426)
で小説家デビュー。読売新聞無料会員サイトyorimoにて連載していた
小説「ササイのことで思い出した」が先月、終了。

〜〜〜〜〜

 26歳を一つの区切りとして、僕はすっぱりと小説の創作をやめた。
理由は一つ、アルバイトの身分で経済的にも行き詰まり、それ以上は
どうしようもなくなったからだ。

 小説の代わりに目の前に現れたのは、当時まだそのはしりだったマ
ルチメディアだ。僕はある奇遇からそれを仕事とすることになったの
だが、そこでは不思議な現象が起きた。元々が理系族の分野であるコ
ンピュータを使って作品を作る中で、僕はかつて挫折した道である文
学の要素を、ほんの一滴ずつ、むしろ自虐的な意図すら含みながら加
えた。するとそれらが、ブラックな笑いだとか反逆的な試みだとして、
意外な評判を呼ぶことになった。自分で言うと身も蓋もないような話
に聞こえるのは承知の上で書いている――コンテンツ制作の世界が、
まだまだ未成熟だった時代の、甘い評価だということは当時から自覚
していたのだから。

 浮かれたような、それでいてどうにも居住まいが悪いような15年間
を経て、僕はまたある偶然から、小説に戻ることになった。
 気まぐれのように書いていた日記ブログの中に、ほんの悪戯心で、
ある謎の人物を登場させたのがきっかけだった。かの人物は、看板も
出していない僕の事務所に突然現れ、会うのは20年ぶりだが自分を覚
えているかと僕に尋ねた――そういう話をちらりと書いたのだ。
 その日のうちに多くの友人知人から、見知らぬ相手には警戒するよ
うにとの、親身な忠告が届いた。思わずにんまりした僕の中に、小学
6年生の自分が戻ってきていた。

 嘘をつけばさらなる嘘をつかねばならなくなるというのは世の戒め
だが、創作する者にとっては、必ずしも警句とはならないと思う。僕
は日記に、いくつものリアルな描写に混ぜ込むかたちで、その謎の人
物を織り込んだ。友人知人の心配は増していく――それは僕にとって
「続きはいつ読めるの?」と言われた12歳の興奮と似ていた。
 それからというもの、ほぼ毎日、僕はブログ上で嘘の上塗りを重ね
た。もちろん友人たちは炯眼だったので、途中からはその虚構に楽し
んで付き合ってくれたのだと判っている。だからこそ僕は、そのゲー
ムを楽しむためにも、話を荒唐無稽にしたり、夢オチなどで終わらせ
ることができなくなった。

 やがてブログ上での話は、いつかは書いておきたいと思っていた学
生時代に遡った。僕の頭の中はタイムスリップでもしたように、20年
前に戻った。忘れていた旧い友人たちやガールフレンドたち、彼らと
の思い出が蘇り、夢中で書いた。かつての文学修行とやらはどこへや
ら、ただただその情景を、読者にありありと思い浮かべて欲しい一心
で書きまくった。
 インターネットのブログで書くのだから、あまり好きではない横書
きになるのは必至だ。また、小難しい漢字にルビなど振れないので、
ひらがなばかりになる。
「これでは教養を疑われるかな」などと偉そうに照れていたのは最初
の数回だった。というのも、ブログへのコメントという形で帰ってく
る読者の方々からの反応から、僕は一つの結論を得たからだ。
 つまりそれは、
「創作の価値は、見た目ではない」ということだった。

 例の仏蘭西風詠嘆調も、そこでは許された。かなり不器用な記述も、
嘲られることはなかった。ただし、調子に乗って書いた明らかな虚構
は黙殺され、書くのを逡巡したような切ない心理や情景は、僕の不安
をよそによく理解され、共感を得ることもできた。
 途中からは、長く複雑になった人間関係やエピソードを記録して整
理してくれる友人にも助けられ、書き始めてからちょうど一年が経ち、
『ササイのことで思い出した』という長い作品が書き上がった。

「ササイ……」は今の僕が、作家のエージェントであるアップルシー
ド社にお世話になる契機となった作品だ。2009年1月現在、読売新聞
社のウェブサイトyorimo上で「ヨリモ・ノベル」として連載中である。
 また、それに先立つ2008年4月には、書き下ろし小説『クリムゾン・
ルーム』がサンマーク出版から刊行され、長年の宿願だった創作作品
での出版の夢が叶った。

 何事もしぶとく続けるのが第一だが、改めて思うのは、出版エージェ
ントや編集者など、プロフェッショナルのアドバイスを受けるのは、
とても有効で大切だということだ。
 今の僕にとって書き手としての課題はと言えば、綿密に練られた構想
に基づいて、コツコツと粘りよく書き続ける計画的な持続性なのだと思
う。
 しかしこれも幸か不幸か、僕は未だ職業的な作家としての身分を確立
できてはいない。言い換えれば「逃げ場は僅かながら、ある」と言った
ところだ。しかし、もう二度と逃げようとは思わない。手の届かない葡
萄を見上げて「どうせあの葡萄は酸っぱいのさ」と言っていた狐だった
15年を思うと、悔しくなることがある。

 もちろん自分の年齢や背負っているものの重さを思うにつけ、「俺は
今頃になって何を言ってるんだ?」と慄然とすることもないではない――
いや、毎日がそれだ。しかし僕はやはり創作を、職業と言うよりは一つ
の芸術の道だと考えている。だとすればこれは、終わりのない修行だと
いうことだ。せいぜい長生きを心がけないといけない。

 僕から誰かに教えられることは、今のところ無いに等しいが、僅かに
言うとすれば、
「恍惚の中で書きまくり、書き終えること。そして一度は、そんなもの
を書いたことすら忘れること。そしてやがて、自分にとって最も嫌な奴
になりきること。彼の視点で、その恍惚とした名文を切り刻み、やがて
愛をもって整えてやること」――それしかないのだと思う。

※『ササイのことで思い出した』は、
  2009年1月23日(金)に連載終了しました。

                            (終)
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くわしくは企画原稿検討の要項
(http://appleseed.co.jp/0_1.php)
をご覧ください。検討させていただきます。

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編集 栂井理恵  文責 鬼塚忠
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