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2008/04/27

▲▼ 東京地裁つまみぐい ▼▲ 第72皿目【万引き主婦の 心の支え】


 
  書を捨て 法廷に行こう ……  東京地裁つまみぐい   ・━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛ 2008/04/27


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   このマガジンの過去記事は、すべて公開しておりますので、お暇なとき
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   もし、そいつに目を通して、購読を後悔したら、どうもすみません。

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          >>>>>>> 読者の皆さまへ <<<<<<<



  「週刊ダイヤモンド」という雑誌、ご存知ですよね。 有名な経済誌です。

  来月19日発売の「5月24日号」で、経済人の視点から見た「裁判所」や
 「司法制度改革」に関する特集を組むそうで、私がそこに寄稿させていた
 だく運びとなりました。ありがたいことです。

  失笑や感涙という反応を多く頂戴している「裁判官の爆笑お言葉集」と
 違って、今回の雑誌企画は、裁判官の“非常識”な発言を「斬る」という
 構成になります。

  ただ、判決内容でなく、ひとことだけ取り出して、明らかに裁判官の失言
 といえるようなものって、政治家のそれに比べればはるかに少ないですよ。
 結局は、数十年前の資料まで引っ張り出して集めるハメに。

  私としては、逆に「日本の裁判官って、ちゃんとしてるんだな」と体感する
 機会となりました。あとは、原稿を仕上げるだけです。

 

  また、本マガジンの「ウィークリーながみね」コーナーで最初に採り上げ
 ました「日本各地の裁判員制度キャラクター」が、小学館「女性セブン」誌で
 近日にも採り上げられる予定です。

  地方のキャラ図鑑みたいな企画の一環で、収録していただけるそうです。
 あぁよかった。

 

  あとは、書籍です。 ただいま、3冊の企画が同時進行中です。

  裁判官のお言葉集の第2弾が、幻冬舎新書より、おそらく今年の夏、遅くとも
 9月末には刊行予定です。

  まだ原稿の半分も書けていない段階で、予告するのもどうかと思いますが、
 いちおう自分にプレッシャーをかける意味でも。

  お言葉集って、見た目はかなりあっさり書いてて、手抜きにすら見える感じ
 でしょうけど、読みやすくするため、説明文の字数調整という手間が余計に
 かかってます。

  私は、つい書きすぎるくせがあるので、字数を埋めるだけならほとんど苦労
 しません。 ただ、削るのはツライ。

  しかも、それぞれのお言葉の背景は全部バラバラ、つながってませんから、
 調べ物が意外と大変なのです。

  たとえば今回なら、自殺防止策と、米の流通と、韓国の司法制度と、
 アライグマをいっぺんに図書館で調べたりしてますから、軽くパニックに
 なりそう。

  でも楽しい。

  まあ、去年から迷いに迷って、最近ようやくゴールが見えました。双眼鏡で
 かすかに見えるぐらいの距離に。

  まるで苦労話みたいに書いてしまいましたけど、結局は「産みの苦しみ」
 ですので、近いうちに産まれる原稿は、きっと可愛いんだろうなと思います。

  今の段階で言えることは「単なる続編ではない」ということです。追究した
 のは、前作とは違う雰囲気の面白さですが、中身が難しくなりすぎないように
 調整しながらですので、遅々として進みません。自分でも焦ってます。

 

  それと、今年中に大和書房からも出していただけます。うちのブログで、
 静かに評判を呼んでいるカテゴリであります、「泥棒 ふしぎ発見!」の
 書籍化ですね。

  http://miso.txt-nifty.com/tsumami/cat3753367/index.html

  窃盗に限らず、たしかに悪人なんだけど、どこかドジで憎めない犯行を
 収録するんですが、その犯罪ニュースに絡めて、「法律論をわかりやすく
 解説してください」という注文も受けています。

  私は、ニュースの面白さ、笑える度を最優先にしたかったんですが、
 実用本で定評のある版元ですので、「法律的に問題となる点の解説」も
 入れてほしいと。

  さらに「犯行後の裁判での、裁判官のお言葉もあればいい」といわれたん
 ですが、そこまで終始一貫してキレイに揃ってる事例なんかありません! と、
 去年は大和さんサイドとけっこう揉めちゃいました。 失礼しました。

  たとえば、びっくりするぐらいのドジな犯人だけど、法律的には何の変哲も
 ない万引き事件とか、それをどうやって法律的に斬るべか……と悩んでたんです
 が、「たとえば、どの段階から窃盗が成立するかとか、そういう話でもいいです」
 と、編集者さんが言ってくださったので、だいぶ気持ちが楽になりました。

  こちらも少しずつ書き進めてます。

 

  あとは、小学館から「罪と罰の事典(仮)」を、来年2月に出版(←確定(^^;)
 することになりました。

  ニュースの報道で「自動車運転過失致死傷」とか「金融証券取引法違反」とか
 聞いたときに浮かぶ、「どんな犯罪だ?」「最高刑は?」「時効は?」という
 疑問を、さっと解決してくれる本を目指しています。

  詐欺とか放火などの刑法犯だけでなく、刑法以外の犯罪まで幅広く網羅する
 つもりですので、やはり今までに無い本となります。 完成が楽しみですが、
 細かく調べて原稿を書くのは私……。

  まだ、住居侵入と窃盗の章しか書けてません。先がまったく見えず、怖い。
 ともかく、お言葉集の原稿を書き上げてから、本格始動します。

  この企画においては、司法試験ドロップアウトの私だけでは内容の信用性が
 足りない、という判断が小学館内で出たようで、某大物弁護士さんが監修して
 くださることになりました。こないだ挨拶に伺ったんですが、話しやすい方で
 安心しましたよ。

  これで、安心してうっかりミスできます。 ほっ。


  ほっとするのは間違いですが。

 

 

 _______________                     _______________
 \   ┌──┴────────────────────┴──┐   /
  \  │   日本国憲法 第82条  (裁判の公開)      │  /
  /  │                          │  \
 /   │ 1  裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ。 │   \
  ̄ ̄ ̄ ̄└──────────────────────────┘ ̄ ̄ ̄ ̄




▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲ ネットで擬似体験する裁判傍聴!

▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲ 本日の つまみぐい法廷

                        (※印は、発行人注です)


 □
■□ 窃盗 被告事件


 【被告人】 主婦の女性(62歳)

 【法 廷】 徳島地方裁判所



 先週の続きです。

 スーパーマーケットで万引きをした被告人。被害は、冷凍紅ジャケなど
約3,500円相当。前科もあり、前回の裁判では「もう絶対しません。次は
刑務所に入ります」とすら答えていたが、子どもたちはまったく知らな
かったという。

 うつ病にかかり、腎不全で人工透析も受けている病弱な被告人が、証言台に
座り、絞り出すような声で語り出した。

 「寂しかったんです。いつもカラダがしんどくて」

 弁護人が、「うつや腎不全などの病気は、犯行に関係あったんですか」と
尋ねると、「ないことはなかった」と。

 もちろん、カラダがしんどいからといって万引きしていいことにはならないが、
家族からあまり関心を寄せられず、ひとりで堪え忍び、だまって主婦業を行って
いたのだろう。

 犯行当時、財布にはなんと50万円近く入れていたそう。

 生活費や小遣いなどとして使っていたというが、「持っていないと不安だった
んです」とも話している。 おカネをお守り代わりにして、心の支えにして
いたのだろうか。

 とはいえ、この件が発覚してから、夫が私選弁護人を依頼していたらしい。
せめてもの罪ほろぼしのつもりだったのだろうか。

 しかし、被告人は断ったという。「私は罪を認めるので、そこまでして
もらわなくていい。国選でよかった」と。

 

 本件で、もうひとつ問題になったのが、取り調べ段階での供述調書の取り方
である。

 警察段階では、4時間ほどぶっ通しの取り調べが続き、身体の弱い被告人に
とっては「倒れそうなほどつらい」ものだったという。

 警察が一番供述を取りたかったのは、被告人の「余罪」だったようだ。
「ほかにも2〜3回やったと認めたほうが、素直だということで裁判所の印象が
いいぞ」といわれ、そのとおりに認めたのだという。

 そのわりには、どこで何を取ったのかなど、余罪内容の詳しいことは尋ねられ
ず、そこが気になったそうだ。

 検察官送致のあと、検事の取り調べは20分ぐらいで終わり、それですべて調書が
つくられたとのこと。

 日本の刑事裁判は「調書裁判」などといわれるほど、密室で作成された捜査資料
である供述調書は、裁判官による判断において非常に重要な位置づけを占める。

 それだけ、捜査の手法が法廷で信用されているということだ。本件において
はたして「ほかに2,3件の余罪」という記載は、裁判官の目にどう映った
だろうか。本当に被告人への印象がよくなっているのだろうか。

 地方都市の裁判であり、判決公判まで継続して傍聴することは果たせなかったが、
少し気になった。



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 もっと、本格的な裁判傍聴録を読みたければ……

 絶坊主さんの 『 名古屋地方裁判所 やじうま傍聴記 』


           http://chisai.seesaa.net/

 

 「もう二度としません」

 「申し訳ありませんでした」

 「反省しています」


  じつは、刑事裁判に持ち込まれる事件の背景や、登場する被告人のセリフって、
 だいたいパターンが決まってるんですよね。

  にもかかわらず、これだけバラエティに富んだ傍聴記録をアップしつづけられる
 ということは……

  あっしには、わかりますぜ。 絶坊主さんは、少なくとも、エントリされている
 記事の数倍、数十倍、相当な回数の裁判傍聴をこなしておられるということを。

  頭の下がる思いがします。

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        桃栗3年 柿8年 … 出版企画のタネをまく
 
    ///  ウ ィ ー ク リ ー な が み ね  \\\

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□□■ PLAN 0005
□■
■    『裁判所が訴えられて、しかも裁判に負けた話』 その2

 

  先週の内容が「難しい」という声をチラホラいただき、反省しております。

  難しい話を難しく書くだけなら、私の存在理由はありませんので、今週は
 なんとか頑張ってみます。

  今度は、2004年の出来事。個人が大阪地裁の堺支部を訴えて、大阪地裁の堺支部
 が、大阪地裁の堺支部を敗訴とした裁判についてです。 

  ややこしや。 さっそく、ややこしや。

  簡単に説明できるかどうか、不安がよぎります。

  矯正がほぼ不可能な視覚障害と視野障害のある原告が、大阪府堺市の裁判所
 合同庁舎の玄関から外に出たところ、3段ある階段に足を滑らせて転び、右腕の
 骨折という傷害を負ったという事故。

  民事裁判の法廷に出席した帰りの事故だったようです。

  原告は、約1年間にわたり右腕の機能回復のため、痛みに耐えながら、リハビリを
 続けたのですが、結局は症状が固定。しかし、まもなく痛みは和らいでいったとの
 こと。

  とはいえ、1年にわたり痛みと闘いつづけた苦しみは重大です。食事やトイレ
 など日常生活での動きに著しく支障があったといいますから、いわば視覚障害との
 二重苦です。

  治療の費用ほか、慰謝料もあわせて、裁判所(国)に150万円を支払うよう請求
 しています。

  しかし、訴えられた裁判所も黙っていません。すかさず反論します。


 ・ 裁判所玄関の階段そのものは、特に危険なものではない。左右に手すりも付け
  ている。

 ・ 玄関にはインターホンが設置されていて、「ご用の方はインターホンのボタンを
  押して呼び出してください」と案内している。係員を呼び出して補助・介添えを
  申し出なかった原告にも責任はあるのではないか。

 ・ もちろん、点字ブロックや滑り止めを設置し、手すりを階段の中央にも増設して
  いれば、視覚障害者の福祉のために望ましいが、設置は法令上の義務ではない。
  なくても、ただちに違法とはならない。

 ・ 原告は、建物の外からの太陽光線が非常にまぶしかったことから、ポケットに
  入れていたサングラスに手をかけ、着用しようとしかけたところ、階段に足を
  取られ転倒したというのである。 これは、仮に点字ブロックや滑り止めが
  あったとしても、防ぎようがない事故である。



  原告側も言い返します。

 ・ 大阪府では「バリア・フリー」化を図るため、10年以上前から「大阪府福祉の
  まちづくり条例」を制定している。
   その「設計マニュアル」には『建築物の出入口には、傾斜路(スロープ)を
  設置して段差を無くす』『階段には手すりをつける』『視覚障害者の誘導用
  ブロックを設置する』『音声案内を行う』『階段では、識別しやすい“段鼻”を
  設ける』などの対策を求めている。

 ・ たしかにインターホンは設置されていたが、その存在を視力障害者に周知させる
  ような案内表示はなかった。

 ・ 本件の提訴後、さっそく裁判所が点字ブロックや段鼻ステップを設置したこと
  は、実施しようとすれば即座に可能だったのに、長い間にわたって設置を怠って
  いた事実を意味している。

 ・ 手すりは、幅の広い階段の両脇にのみ設置されても、視覚障害者にとっては
  認識しづらい。 実際、原告は事故当時に、手すりの存在に気づいていない。



  この原告vs裁判所の争いですが、この争いを裁くのが、その裁判所の3人の裁判官
 だということで、なかなか微妙な立場におかれたろうと思います。

  自分たちの職場の構造が、ちょっと法的に不利な状況というので。

  しかし、裁判官たる者、もちろん「法」と「良心」以外の要素をよりどころに
 判断してはいけません。

  最終的には、原告の請求(150万円の支払い)をすべて認めています。ここは
 ニッポン司法の公正さ・客観性を見せつけた格好です。

  ただし、原告にも落ち度があったとして、その過失割合を「原告3:裁判所7」と
 認定しました。したがって、結局は30%減の105万円の支払い命令となっています。

  

◆ 国家賠償法 第2条
1 道路、河川その他の公の営造物の設置又は管理に瑕疵があつたために他人に損害を
 生じたときは、国又は公共団体は、これを賠償する責に任ずる。

 ※ 瑕疵(かし)…欠陥のこと。


◆ 国家賠償法 第4条
 国又は公共団体の損害賠償の責任については、前3条の規定によるの外、民法の規定
による。


◆ 民法 第722条(過失相殺)
2 被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定める
 ことができる。



  そして、大阪地裁の堺支部(当事者)は、大阪地裁の堺支部(判断者)が出した
 判決を不服として、大阪高裁に控訴しましたが、棄却されてしまいました。

  ……うーむ、どこまでもややこしい事案だ。

  しかし、裁判所庁舎が、福祉の思想が十分に反映された建造物になっていなかった
 という点で、自分たちの落ち度・反省を、判決というかたちで示したのですから、
 なんだかんだで、この国の司法の動向には期待が持てます。

  あとは、この「優しさ」の裾野を、どこまで広げられるかでしょうか。

 

 

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 東京地裁つまみぐい ─ 裁判をネットで観てみよう [Magazine ID:0000148642]
 2008年4月27日付 通巻第78号             発行人:長嶺まさき
 (毎週日曜日に、あなたのメールボックスへ潜入します。ご注意下さい)
 ご意見やご感想、相互紹介、愛のメッセージは misoshiru83@yahoo.co.jp まで
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