【如是我聞】【張三李四】<四字熟語物語ー平成のたちくらみー>
《第九章》 アサミクレヨの過去(その8)
「ところで、お前、クレヨはどうだ?」
「アサミさんのことか。どうだって、どういう意味だよ?」
「実はな、どうも、あいつお前の事が気に入ったらしいんだ。それ
で、どうも悩んだり、ふさぎ込んだりしているらしいんだ」
「な、なんだって!」
ヒロキは口にしたコーヒーを一気に吹き出しながら、そう叫ぶの
だった。
「あのな、お前、びっくりするのはいいけど、人の顔にコーヒーを
吹き掛けるのはやめろ。この服、安月給で、やっと買ってもらった
んだぞ」
ユタカはおしぼりで顔を拭いながら、憮然とした表情で言うの
だった。
「す、すまん。そりゃ本当なのか?」とヒロキはまだ信じられな
い。
「※348【如是我聞】」
「い、一体誰から聞いたんだ?」
「この間、機会があって、あいつの妹の(李り四よ)[李四を使っ
た四字熟語に朝三李四(ちょうさんりし)がある、本当は※349
【張三李四】が正しい。ごくありふれた人、名も知れぬ人々、平凡
な人のたとえ]に会ったんだ。それで、話を聞いて……」
「だけど、そりゃ、何かの間違いじゃないのか?」とヒロキは答え
る。彼にはユタカの言ったことが、即座には信じられなかったのだ。
(つづく)
【四字熟語解説】
348如是我聞(にょぜがもん)
仏典の冒頭に置かれる言葉で、「わたしはこのように聞きました」
という意味。
それが仏の説であるということを表すために、釈迦が弟子の阿難
(あなん)に経典の冒頭に付けさせたといわれている。
大変限定的に使われる四字熟語で、普通、『僕はそう聞いたよ』な
どという軽いノリで会話に入ってくる言葉ではないのだが、ストーリ
ーの流れからはまず使われる状況が生まれてこないため、このような
使い方をしてみた。
この熟語を小説の中で実際に使った作家は平成以降、まずほとんど
おるまい。
などと自慢をしてみたりして……
349張三李四(ちょうさんりし)
張家の三男、李家の四男という意味で、どこにでもいるありふれた
人のこと。
張も李も中国ではごくありふれた姓で、(日本でいえば鈴木さんと
佐藤さんというところかな)そこらへんにゴマンといる平凡な人々の
たとえ。
日本の落語の『ハさん、熊さん(ありふれているかどうかは疑問だ
が)』の意味。
これも日常会話で使うのは至難の技の四字熟語で、筆者の苦労が分
かってもらえれば幸いである。
ただ用例としては使えませんのであしからず。
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