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「歴史」を通して、今日の動向に多面的な視野をもつことが可能です。弊誌の執筆者は単なる歴史の愛好家にすぎません。弊誌で取り上げる時代は幕末以前(江戸時代後期まで)です。マイナーなテーマを取り上げることが多いですが、知識レベルは高校生レベルを想定しています。

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2008/10/11

【日本史斜め読み】 vol.158 地域性と「日本の歴史」@北陸地方 (その3)

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読者の皆様


おはようございます。
大阪の神谷(かみたに)です。

日本人研究者のノーベル賞ラッシュが
報じられた1週間でした。

受賞理由が数十年前の研究実績である
こともありますが、受賞者にとっては
(受賞されなかった研究実績も含めて)
それぞれの研究実績が忘れがたいもの
かもしれません。

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お怒りと誤解を覚悟で書くならば、

「北陸地方は『日本史』の中核になりにくい地域」

といえます。


●継体天皇など、初期の「朝廷」のキーパーソンが
 登場した地域である。

●「渤海」との関係を解くことで、中国・朝鮮半島の諸王朝
 以外の古代日本社会との外交関係に焦点をあてられる
 のではないか。

●木曾義仲(源義仲)が平家打倒を目指して進軍した
  のは北陸路ではないか。そもそも、義仲にとって最も有名
  な戦いともいえる「倶利伽羅峠の戦い」は北陸地方では
  ないか。

●「勧進帳」の舞台である。

●南北朝の争いで南朝方の最有力武将の一人、
  新田義貞は北陸地方で討ち死にしている。
  南北朝の戦いで新田氏を中心として北陸地方で
  北朝・足利氏と抗争した拠点ではないか。

●「加賀の国一揆」(一向一揆)に代表されるように、
  織田信長による本願寺制圧までは「戦国時代最大の
  民衆勢力」だったのではないか。
  「民衆の歴史」の観点から日本史を眺めるならば
  一向一揆の勢力拡大の契機となった北陸地方の
  風土・政治的背景を分析することは無視できない。

●「加賀百万石」という日本有数の穀倉地である。

また、弊誌の「範囲外」になりますが・・・

●幕末に登場するキーパソンの一人、松平春嶽(しゅんがく、
 または松平慶永、よしなが)の領国は北陸地方である。

●「安田財閥」(のちに、旧・安田生命、旧・安田火災、
 旧・富士銀行ほか)を一代で築いた安田善次郎の
 出身地は富山県である。
 日比谷公会堂や東大の安田講堂を「寄付」した業績は
 特筆すべきである。

●「米騒動」の発火点は「北陸地方」であり、当時の内閣・
  寺内内閣崩壊の大きな原因になったのではないか。
  寺内内閣をうけた原内閣が日本で最初の「本格的な
  政党内閣」(註)として小学生でも知っている。

(註)「最初の政党内閣」を形式的に解釈すれば、
   大隈・板垣による「隈板内閣(わいはんないかく)」が
   これに該当します。

などなど、数々の反論が思い浮かびます。
というより、前述のいくつかは弊誌誌面上でご紹介した
内容でもありますが。

さらに、

●「応仁の乱」発生の背景には、将軍継承争いがある。
  8代将軍・足利義政は当初、弟の足利義視(よしみ)を
   後継指名したが、応仁の乱をへて足利義政と日野富子の
  間に生まれた足利義尚(よしひさ)が将軍職に就任した。

  しかし、義尚が病死したために義視の子・足利義稙(註)が
   将軍に就任。
  義稙は管領・細川勝元の子、政元による政変によって
  将軍職を追われたが、足利義稙が一時身を寄せたのは
  越中(現・富山県)である。

(註)足利義稙は「足利義材(よしき)」など複数回の改名を
   行っていますが、ここでは一般的にもっともよく使われる
   「足利義稙」の名を用いています。
   なお、足利義稙はのちに西国一の守護大名・大内氏
   (大内義興)の後ろ盾をえて、将軍職に復位します。

などと書けば、「足利義稙と北陸地方」というネタだけで
弊誌を数回発行できるかもしれません(筆者にその
能力はありませんが・・・)。


前置きだけで前半部分を使ってしまいましたが、
以下、本題です。

(後半に続く)

【主要参考文献】■■■■■■■■■■■■■■■■■
●全国歴史教育研究協議会 編『日本史B用語集』
                 (山川出版社、2004年)
●井上 宗雄、武川忠一 編『新編 和歌の解釈と鑑賞事典』
                 (笠間書院、2005年)
価格:¥ 3,360(定価:¥ 3,360)
http://www.amazon.co.jp/dp/4305701901/ref=nosim/?tag=histjruscla-22
● 『広辞苑(第5版)』(岩波新書、電子辞書)
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

(前半からつづく)

本文冒頭で「『北陸地方は「日本史」の中核になりにくい
地域』といえます。」と書いた筆者が
墓穴を掘った形になりますが(苦笑)、ここであげた
日本史の史実をながめてみても、「○○の舞台」と
いった歴史のヒトコマにはなりうる要素は北陸地方に
たくさんあります。

「前半部分」で列挙したように、「北陸地方」をテーマにした
歴史的な挿話は枚挙にいとまがありません。
「日本の歴史に興味をもつ」ことを最優先にするならば、
「北陸地方」は(他の地域の例にもれず)多くの郷土史に
恵まれています。

ただ、
「北陸地方を中心として『日本史』をある程度の
体系性を備えた説明ができるか」

と問われれば、現時点での筆者では「否」と答えるより
ほかありません。

たとえば、古代(奈良以前・平安)には京都・奈良を
中心とした近畿地方、中世(鎌倉・室町)には
鎌倉・京都、近世(江戸)には江戸・大坂・京都
といったように、時代ごとに変遷するものの「核」
となる地域が出現します。

「地方の歴史」を描きやすくなるのは、

応仁の乱により朝廷・幕府の本拠地である京都
が荒廃し、文化の担い手である公家が地方に
「避難」し、諸国では足利幕府の凋落をみて
「群雄割拠」の状態になったことがきっかけです。

弊誌で個々の地域を取り上げた際に
「応仁の乱から戦国時代」にかけての時代に
言及することが多いのも、上述した背景があり
ます。

「朝廷・幕府との関係なく、ある程度の一貫性を
もった『日本の歴史』を編纂することができるか
どうか」というテーマに向かった場合、
京都・東京などを中心にすえられた記述を通して
「日本史」を学んだ筆者には大きな
カベとなってたちはだかります。

「日本の歴史」という文脈の中で
「世界の中の日本」をとらえなおした場合にも、
日本国外の勢力等にとっては「日本側の窓口」
を求めることになります。

そうなると、今日の概念でいえば「日本政府」
の代替ともいうべき「朝廷」「幕府」の存在を
無視することができないのです。

もっとも、たとえば「各地の生活習慣・風土の変遷」は
既存の「日本史」では描ききれていない
(多くが未開拓の研究分野)になっているとも
いえるでしょう。

【勝手な書評】■■■■■■■■■■■■■■■■■■

破軍の星 (集英社文庫)北方 謙三
価格:¥ 740(定価:¥ 740)
http://www.amazon.co.jp/dp/4087480941/ref=nosim/?tag=histjruscla-22
主人公は、南北朝の南朝方の公家・武将である北畠顕家。
後醍醐天皇による「建武の親政」で奥州に向かいます。
後醍醐天皇が足利尊氏を討伐しようとして失敗して
京都攻略を一度は許しながらも、奥州から急遽かけつけた
北畠親房・顕家らに率いられた軍勢により、足利尊氏が
九州落ちを余儀なくされたことは有名かもしれません。
その後、九州で勢力を大きく盛り返した足利軍は一気に畿内に
なだれこみます。


武王の門〈上〉 (新潮文庫)北方 謙三
価格:¥ 700(定価:¥ 700)
http://www.amazon.co.jp/dp/4101464049/ref=nosim/?tag=histjruscla-22

武王の門〈下〉 (新潮文庫)北方 謙三
価格:¥ 660(定価:¥ 660)
http://www.amazon.co.jp/dp/4101464057/ref=nosim/?tag=histjruscla-22

主人公は、後醍醐天皇の子・懐良親王と九州武士・菊池武光。
九州での南朝勢力の躍進が鮮やかに描かれた時代小説です。
上述の『破軍の星』と同じく、神がかった描写への好みは
別れるかもしれませんが、脚光を浴びにくい時期・地域を
題材としてはオススメです。
個人的には、宿敵としてたちはだかる
北九州の雄・少弐頼尚が存在感が印象に残っています。
のちに足利幕府の派遣した今川了俊(りょうしゅん)軍によって
あまりにも呆気なく崩壊するので、「今川了俊ファン」の方
にとっては物足りないかもしれませんが・・・。

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【お知らせ】■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
今後の連載企画予定

11月・12月
未定

幕末以降は歴史認識等の政治的な論争になるおそれが
ありますので弊誌誌面上では取り上げられません。
私信でのやり取りでしたら遠慮なくおたよりください。


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神谷 英邦 (かみたに ひでくに)

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