◆話の小匣◆第327号(2008/10/10)
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毎週火・金発行 2008/10/10 Vol.327
話の小匣
http://www.geocities.jp/hanasino_kobako/index.html
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◆目次◆
◇ごあいさつ
◇主要登場人物
◇長篇小説『オルティアス戦記1〜竜の目覚める島〜』
◇あとがき
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◇ごあいさつ
ご登録いただきましてありがとうございます。
または、引き続きのご愛顧ありがとうございます。
このメルマガは、ミニまぐにて平日毎日連載している同名小説を週に二度、
まとめて配信しようというものです。
PCで知った方は携帯版もありますので、小説を持ち歩きたい方はそちら
もどうぞ(内容は変わりませんが、平日のお昼にちょっとずつ届きます)。
それでは、今回も楽しんでいただければ幸いです。
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◇主要登場人物
ドーラ王女…黒髪黒瞳。16歳。『颱風王女』
カーウィ…竜騎隊見習い生。おさまりの悪い赤毛に薄茶の瞳。10歳
その他登場人物→ http://www.geocities.jp/hanasino_kobako/orchara.html
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◇長篇小説『オルティアス戦記1〜竜の目覚める島〜』
第3章:罪と贖い5(042話)
実は、この竜はほとんどまともな調教を受けていない。貴族が乗るような竜
は、性格などの適性もあるし、何か間違いがあってはいけないから徹底的に仕
込まれている。王女が挑む竜は、不適格と見なされ、さらに性格上に問題があっ
たことから、熟練した竜使いが乗っていたものだ。だからこそ、生半可な気持
ちでやられては乗れるどころか、そのうち飽きた竜が暴れだす可能性がある。
竜騎士を目指すなら、野生種すら乗りこなせる技量が必要となる。ワーデン
はそこまで考えてはいなくとも、王女が自力で竜に乗り、それを御(ぎょ)すこ
とができるようにしようと本気で思ったのだろう。
本来なら、学院生時代にきちんと調教された竜に乗り、それから徐々に人に
慣れていない竜へと段階を踏んで進めていくのだが、どうやら短時間のうちに
そこまでもっていくつもりらしい。
少年からすれば無謀というか、何もこの時期にそこまでしなくともと思うの
だが、止める者が誰一人いない今だからこそ、王女にとっては最初で最後の大
きな好機となるかもしれなかった。そしてどうせやるのなら、成功してほしかっ
た。
(頑張れ、ドーラ)
少年にとってドーラは王女というよりも、同じ目標を持った同志という感覚
だった。彼女に初めて会ったのはほんの数ヶ月前、見習い生になってメルセス
隊長の世話係をするようになってからである。
――あなたがメルセスの新しいお世話係? ずいぶんと若いわねぇ。
その時はまだ誕生日が来ていなかったので、カーウィは九歳だった。それを
告げると、彼女は驚きつつも満面の笑みを浮かべ、
――あたしもちょうどその年に竜騎隊に入るって決めたのよ。同じ目標を持
つ者同士、仲良くしましょうね。
仲間だね、とカーウィが言うと、嬉しそうに右手を差し出してきた。
――ええ、仲間ね。あたしのことは、ドーラって呼んでね、カーウィ。
握手を交わしたその時、少年はまだ彼女が王女だとは知らなかった。ただ、
学院では女の人は見かけなかったのにどうしているのだろうかとか、隊長を呼
び捨てにするだなんて身内の人なのだろうか、などとは考えた。
それからすぐに正体が分かって、少年は態度を改めようとした。ところが、
王女自身がそれを許さなかった。彼女は竜騎隊の下で働いている時はまるっき
り王女の地位を捨てていたし、周囲もそれを許容していた。『颱風王女』の異
名通り、暴れると手がつけられなくなるから放っておいているのではなく、彼
女の竜騎隊の仲間になりたいという熱意が周囲にも伝わっていたからだ。
少年は、これまで一番間近で彼女を見てきた。真剣に竜と対峙する、王女の
強いまなざしと意志を。――それは今、この時も変わらない。
半分祈るような気持ちで見守っていた少年だったが、ふいに竜が頭を下げた。
「やったね! ドーラ! そのまま、目を見つめたまま近づいていって……首
筋を叩く!」
自分の目の前で実際に竜が首を曲げたのを、王女は興奮を隠せない様子で見
ていたが、そこに少年はすかさず助言する。
言われたとおりに動いた王女は竜の首筋を、ワーデンがやったのと同じよう
に叩いたが、竜から次の反応はなかった。
「ドーラ、その程度じゃなでられてるのと同じようなもんだよ! もっと思いっ
きり、力いっぱい叩いちゃっていいから」
ワーデンは殴っているように見えたが、やはりそれは見間違えではなかった
のだと、王女は改めて思った。だいたい、竜の体は硬い鱗の下に適度な厚みの
脂肪があり、その下に強靭な筋肉組織がある。その筋肉が反応するぐらいの衝
撃を与えなければならないのだから、相当な重労働である。
竜の首筋まで何とか辿り着いた王女だったが、そこからまたしばらく苦戦が
続いた。先ほどは気力の限界に挑戦し、今度は体力の限界に果敢に挑んでいっ
た。
ようやく竜が前屈みになった頃には、王女はもはや自分の身体を持ち上げる
だけの体力を残していなかった。しかも鋼鉄と言われる竜の鱗を何度も叩いた
手は真っ赤に腫れているし、手首は軽く捻挫している。痛みをこらえるだけで
限界だった。しかしそれでも、もがくようにして竜の背に乗ろうとする。
「……せ、っかくここまで……頑張ったん、だから……乗らなきゃっ……意味
ないのよっ……!」
その時突然背後から、誰かが彼女の身体を持ち上げた。振り返ってみれば、
カーウィである。その場には他に彼しかいないのだから当然だが、少年がそん
なことをするとは思ってもみなかった王女は、驚いて声を上げた。
「カーウィっ? ちょっと、何してるのよ!」
「なに、って。早く乗りなよ。ドーラって見かけによらず意外と重いから、お
れじゃあんまり長く支えられないよ」
「いいわよ、自分の力だけで乗るって決めてるんだから。離して!」
「ここまで来れば、自分で乗れたのと同じだよ。自力で超えなきゃいけないと
こは全部できたんだから。ここからは手伝っても問題ないから、大丈夫」
「……本当に?」
「本当だからっ。早くして!」
本気で限界なのだろう。王女の腰と背中にあてた腕が震えてきている。
「何よ、女の子一人支えられないなんて、これから困るわよ」
軽口を叩きながら、王女は竜の背中へひらりと乗った。
「おれはこれからが成長期なのっ! ……ドーラ、おめでとう。乗れたじゃな
いか」
「ありがとう。早速、飛ばしていい?」
そう言いながら、王女は手綱を引いた。
「ドーラ! 頼むからここだけにして、遠くに行くなよ!」
少年は、大声で天空に向かって叫んだ。すでに竜は、互いの顔が判別できる
かどうかギリギリの距離まで浮上している。
→To be continued!
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◇あとがき
前回は寿命の話をしましたが、
本編でちょうど竜に乗ってるところなので
竜についての寿命の話を。
竜の平均寿命は二十年から三十年です。
これは飼育下での話なので、野生なら当然もっと短いです。
竜騎隊の竜が現役で活躍するのは十年ほど。
引退後は竜使いに払い下げになるか野生に戻されるか、
他に貰い手が見つかればそちらへ引き渡すか。
辿る道は様々ですが、
よほどのことがない限り、生涯現役って感じですかね。
ここまでお付き合い下さいましてありがとうございました。
それでは、また。
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