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2009/11/30

人と自然の研究所「ビオトープって何だ!」━ 植物の分布拡大作戦 ━

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               ■□■━━植物の分布拡大作戦━━■□■


 11月、秋も深まり、コオロギやキリギリスの仲間の声はいつの間にか聴こえなくなり、
落葉樹は紅葉した葉を落とし始め、徐々に冬の気配を感じるようになってきました。

 そういった冬への準備が始まっている中で、植物によっては子孫を残すための“種まき”
を始めているものもいますが、植物の種類によって子孫を残す方法というのは様々です。

 そこで今回は、植物が子孫をどのように残していくのか、いくつか例をあげて紹介します。



 まずは、自らが種をまく方法。
 種をまくといっても、方法は一つではありません。

 風によって種子を散布する「風散布」。これは、風向や風速などに影響されますが、
短期間で分布域を拡げられるという特徴があります。

 ハルニレやカエデ科のように種子に翼をつけた翼果、タンポポのように軽くて綿毛の
ついた種子、ラン科やケシ科の種子のように微小で軽い種子などがこの風散布です。
ケシ科の外来種でナガミヒナゲシはこの風散布のため、近年急激に増えたと考えられます。


 また、スミレ科やカタバミ科などは「自発散布」といって、何にも頼らずに自らの力で
果実から種子をはじき出して散布します。


 この他にも、風ではなく水の流れを利用して散布する「水散布」や、ドングリのように
重い種子を落下させるだけの「重力散布」といったものもあります。重力散布は分布域の
拡大速度は遅いですが、確実に同様の環境に散布することができます。

 また、植物によっては重力散布により散布された種子が、数十年たってから森林に
ギャップができたり伐採されたりすることによって発芽する、ということもあります。
このように、他の植物がいなくなるといったタイミングを長い間待ち続けている種子を、
埋土種子と呼んでいます。



 さて、ここまでは子孫を残すのに種子を散布するものを紹介しましたが、増え方という
のは種子によるものだけではありません

 むかごや、地下茎・塊根といった地下器官によって、無性的に増殖するものがあり、
それを「栄養生殖」といいます。むかごで増えるものとしてはオニユリやヤマイモ、
地下茎で増えるものとしてはヨシやユキノシタ、塊根で増えるものとしてはサツマイモ
などがあります。

 種子と地下茎の両方で増えるものもあるので、そういった植物は非常に繁殖力が強く、
雑草といわれてはびこっているものも多くあります。


 また、増え方ではありませんが、他の植物の生長を抑制する物質を放出し、自らが生長
しやすい状況をつくるという植物もいます。この作用はアレロパシーと呼ばれていて、
外来種のセイタカアワダチソウなどが有名です。



 このように、植物は自分の子孫を残すため、それぞれ自分にぴったり合った方法を取って
繁殖を行っています。それは、何億年も前に植物が生まれてから、進化の過程で少しずつ
培われてきた生きる術であり、究極の戦略なのです。ですから、今いる植物たちは、
他者との競争に勝ち続けてきた優秀な植物たちといってもいいでしょう。


 一方人間は、動き、手を使い、知恵を絞ることもできるのに、そんな植物たちの命を軽く
考え、外来種の移入や乱獲などによって植物の命を奪い、次々に絶滅させてきました。
食料や薬、観賞や遊び道具など、様々な場面でその恩恵を受けているにもかかわらず。
まったくおこがましい限りです。


 しかし、今はその現状もだいぶ明らかになっています。私たち人間は、植物や生きものも
含めた自然に生かされているということを謙虚に受け止め、彼らについてもっと学び、
今までのことを反省し、今後も彼らがちゃんと子孫を残していけるよう行動していく必要が
あります。それこそが、人間自身のためでもあるのですから。



 種子の散布方法には、他にも、動物と深く関わったものがあります。
 次号ではその方法や関係性についてお話したいと思います。


〔参考文献〕
松本忠夫著『生態と環境』 岩波書店2003年




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