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2008/10/31

人と自然の研究所「ビオトープって何だ!」━ トンボとたんぼ ━

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                ■□■   ビオトープって何だ!   ■□■

                                     NO.47
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                 ■□■━━ トンボとたんぼ ━━■□■


 近頃だいぶ日も短くなり、徐々に秋も深まってきました。こんな季節になると、
稲刈りを終えた田んぼに沢山のトンボが飛んでいる景色を見たり、そんな光景を
思い出したりしている方も多いのではないでしょうか?

 そこで飛んでいるトンボは赤とんぼと呼ばれて昔から親しまれ、秋の風物詩
といった存在です。童謡「赤とんぼ」の歌も、思い出すと懐かしいですね。

 このトンボ、一般的に赤とんぼと呼ばれていますが、これは正式な名前では
ありません。大きなくくりで見ると、トンボ科のアカネ属が赤とんぼと呼ばれて
いるようです。その中でも、この時期に田んぼの周辺で一番多く見られ、代表的な
のがアキアカネでしょう。アキアカネは夏の間は暑さを避けるために山へ移動して
いますが、秋になり涼しくなってきた頃、産卵をするために一斉に平地へ下りて
くるのです。


 そんな秋の代名詞ともいえるアキアカネですが、今、その数がかなり減ってきて
いると言われています。10年ほど前からそのような傾向が見られるようになり、
この10月にも赤とんぼの減少を伝える下記のような記事がありました。

  『研究者らでつくる「赤とんぼネットワーク」事務局長の上田哲行・石川県立
 大教授は昨年、24都道府県64人の会員を対象にアキアカネの個体数に関する
 アンケートをした。回答した52人のうち40人が「最近、急減した」と答え、
 うち24人が「00年前後から減少が始まった」とした。 
  佐賀市の「佐賀トンボ研究会」の中原正登・副会長(46)も同じ意見だ。 
  00年、同市北部の棚田で7〜10月に15回の調査をし、アキアカネなど
 3種計1644匹を捕らえた。だが、同じ場所での今年7〜9月の調査では、
 7回で計29匹しか捕獲できなかったという。「以前は虫取り網一振りで4、
 5匹は捕れた。アキアカネは学校のプールでも羽化し、繁殖力は強いはずなの
 に」』(asahi.com 2008年10月19日 一部抜粋)

これを見る限り、減っていることは間違いないようです。


 では、原因は何なのでしょうか?ビオトープの視点で考えれば、やはりアキアカ
ネの生息環境に何か問題があると推測できます。では、まずアキアカネの生活史を
辿ってみましょう。

 アキアカネは卵の状態で冬を越し、4〜5月頃田んぼに水が入る頃に孵化し、
ヤゴになります。6月下旬から7月にかけて羽化をして成虫になり、その後高い山へ
移動します。7,8月の暑い時期を山で過ごし、9月の涼しくなった頃から平地へ降り
てきて、10月から11月にかけて田んぼなどの湿地で産卵をします。卵はそのまま
冬を越し、また春を待ちます。

 このようにアキアカネの生活史を見ると、田んぼへ水が入るタイミングで孵化し、
産卵は稲刈りを終えた田んぼの水面や泥に打ち付けるように行うなど、時期的に
田んぼのサイクルに沿った生活をしていることが分かります。人間が作り出した
田んぼという環境を上手く利用しながら生きてきたんですね。


 では、アキアカネのビオトープである田んぼに何か起きているのでしょうか?
 近年の田んぼは農業機械の導入等で生産効率が上がった一方、日本人の食事の
欧米化でお米の消費量が減ったことなどもあり減反政策が行われ、休耕田や耕作
放棄田が増えました。

 農法も伝統的なものから近代農法に変わり、効率を求めた農業機械導入のため、
田んぼを乾燥させる時期を長くするところが増えました。また、手間をかけない
ために殺虫剤や除草剤などの農薬も使用しているところはまだまだ多いです。


 このような状況はアキアカネにとってどうなのでしょうか?
 休耕田や耕作放棄田が増えて田んぼが減っているということは、アキアカネの
生息環境が減っているということになります。稲刈り後の田んぼが乾燥状態だと
したら、産卵ができないかもしれません。農薬などの影響を受ける可能性も十分
に考えられます。まるで田んぼと生きものとの繋がりを人間が断ち切ろうとして
いるかのようですね。

 ここ10年くらいの激減の原因ははっきりとは分かりませんが、数が減る要素は
十分にあるのです。このままの状況では、どんどんアキアカネが減っていって
しまうかもしれません。それを食い止めるには、やはり田んぼをちゃんと生きもの
が生きていける場所、すなわちビオトープとしながらお米を育てていかなければ
ならないはずです。


 そのような田んぼが沢山あれば、私たちが懐かしむ生きものと環境がひとつに
なった風景というのもなくならないはずです。それで米の生産量が増えるなら、
日本食をもっとちゃんと広めることで食料自給率の問題にも寄与しますし、日本
の食文化の継承ということにも繋がっていきます。
 それに、生きものと共に生長してきた米は、なんといっても美味しいお米として
生まれてきて、私たち人間の食欲を満たしてくれます。

 人間と生きものが切り離されず、多様な命を育んでくれる場所、田んぼ。そんな
大切な場所で沢山の赤とんぼが飛び交う光景を、「赤とんぼ」の歌を思い出しなが
ら、いつまでも目にしていたいですね。





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