2008/10/10
広原盛明のつれづれ日記
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2008/10/10 広原盛明のつれづれ日記 vol.125 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ http://www.hirohara.com/ ◆目次◆ つれづれ日記 ・9月20日:「あとは野となれ山となれ!」 (福田辞任解散劇、その3) ・9月26日:「口紅つけても豚は豚−ニューヨークタイムス」 (福田辞任解散劇、その4) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 9月20日:「あとは野となれ山となれ!」 (福田辞任解散劇、その3) 福田辞任解散劇もいよいよ「佳境」に入ってきたようだ。輸 入汚染米事件は「規制緩和」の波に乗って底知れぬ広がりを見 せているし、当初は「これは業者の責任だ」(農水省には責任 はない)と平然と居直っていた農水次官も更迭された。また 「ジタバタしない」と事態を座視していた太田大臣も、「責任 は全面的に農水省にある」と謝罪し、ついに引責辞任するなっ た破目となった。テレビでの街頭インタビューを見ていたら、 「ジタバタして辞めた」との秀逸なコメントが返ってきていた。 国民の怒りがそれほど大きく広がっているということだろう。 それにもまして、リーマン証券の破綻やAIG保険への公的 資金の導入など、アメリカ発の世界金融不安は日に日に激化し ている。世界の中央銀行がそろってアメリカにドルを緊急補給 しなければならないほど、事態は切迫しているのである。国際 金融の専門家たちが現状を「世界恐慌への崖っ淵だ」と指摘し ているのも、あながち誇張だとは言い切れない。 ここにきてテレビトークショーでも、「こんな緊急事態に自 民党の総裁選挙を(チンタラと)やっている場合か?」という 発言がみられるようになった。実際、5人の候補者の政策論争を みていると、現在の世界情勢の激変に対応できる発言は何一つ ない。「何とかの一つ覚え」のように、ただ「霞が関をぶっ壊 せ!」、「インド洋の給油を断固継続!」、「構造改革路線の 継承!」、「財政再建の堅持!」と口々にいうばかりで、現在 の国際危機に対する情勢分析や対策についてはほとんど語るこ とがないのである。「語りたくても語れない」程度の人物しか 総裁選に出ていない、ということだろう。 それにしても、私はこの総裁選を通しての「小泉神話」の劇 的な崩壊ぶりに注目したい。一時は、小泉チルドレンが小泉元 首相を本気で担ぎ出そうとしていたというし、また出馬しない までも小泉氏が応援すれば、もうそれで総裁選挙には勝ったよ うなものだとも騒がれていた。ところが先日、小泉氏が女性候 補に肩入れするとして「見せ場」をつくろうとしたが、大方の マスメディアはほとんど相手にしなかった。「いまさら小泉で もないだろう」という空気が、いまや世論空間には充満してい るのである。 この状況を目の当たりにして最も衝撃を受けたのは、他なら ぬ小泉氏自身だったのではないか。3年前の熱狂的な「純チャン ブーム」に比べて、今更の如く「平家物語」の「驕るものは久 しからず」の一節を噛みしめたに相違ない。またそれとともに、 小泉政権の司令塔だった経済財政諮問会議もひっそりと幕を閉 じた。最後は「慰労会」程度で水を濁そうとしたらしいが、い くらなんでもそれでは「格好がつかない」とのことで、形ばか りの会議を演出しての幕引きだった。 問題は、このように小泉神話が完全に崩壊したにもかかわら ず、支配勢力の中で「ポスト小泉戦略」の方向性がまだ定まっ ていないことだ。総裁選に当選確実とされる某世襲議員は、首 相選出直後のご祝儀相場の支持率を狙って解散・総選挙に踏み 切りたいらしいが、事態はそう甘くはないだろう。社会保険庁 の大掛かりな組織的操作によって年金が減らされるという事態 が日に日に判明してきているし、総選挙直前の10月15日には、 保険料や税金の天引きが一斉に行われる予定だというから、山 口補欠選挙の二の舞が全国規模で再燃するとみるほうが自然な のである。 またこの期に及んで、財界からの発言が少ないこともきわめ て不自然に思える。経団連や経済同友会の首脳部や事務局は、 依然として「構造改革推進」の一本槍でしかない。これほど国 民の不満が充満し、自民党に対する失望感が広まっても、「消 費税を大幅に上げて法人税を減らせ」としかいわないのである。 財界がこれほどの高姿勢を続けられるのは、おそらく彼らが現 在の政局を「体制の危機」と認識していないことのあらわれだ ろう。「自民党がダメなら民主党があるさ」というのが、財界 の率直な気持ちなのである。 でも民主党がたとえ総選挙で勝ったとしても、手のひらを返す ように小泉構造改革路線を続けるわけにはいかないだろう。年 金、雇用、医療、介護、物価などなど、国民生活の全てにわたっ て「もはや我慢が出来ない」ほどの分厚い矛盾が蓄積している からである。福田辞任解散劇は、間違いなく「小泉神話」崩壊 の引き金になり、延いては新自由主義国家体制の「終わりの始 まり」を告げる契機となるだろう。 その勢いは、もはや誰も止めることができないほどの巨大なエ ネルギーに成長していくに違いない。自民党の後継総裁選挙や 次期国会での政権争いなどは「コップの中の嵐」にすぎない。 たとえ政界再編によって自公・民主の大連立政権あるいはその 「ダミー政権」が誕生したとしても、福田辞任解散劇は、間違 いなく国民が「自民党をぶっ壊す」引き金を引いたのである。 (続く) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 9月26日:「口紅つけても豚は豚−ニューヨークタイムス」 (福田辞任解散劇、その4) 筋書き通り麻生世襲議員が自民党総裁に選出され、麻生内閣 が発足した。閣僚18人のうち実に3分の2近い11人が世襲 議員というのだから、世襲議員でなければ、もはや閣僚にも首 相にもなれない政党が自民党だ。世襲になればなるほど遺伝子 は劣化するというが、自民党の人材難の根源はおそらくここか ら来ているのだろう。 自民党の世襲議員化がどれほど体質化しているかということを 図らずも証明したのが、昨夜、突然引退表明をした元小泉首相 の次男後継者指名だろう。「自民党をぶっ壊す」はずだった小 泉氏が、その手先として使った「小泉チルドレン」を容赦なく 見捨てる一方、自分の議席だけは「次男に譲る」のだという。 選挙民を二重三重に愚弄する筋金入りの自民党体質ではないか。 それにしても自民党の体質は古い。財界の指示通り国民生活 や自民党の政治基盤を目茶苦茶に壊した小泉構造改革の後が、 古色蒼然とした麻生内閣の登場だ。イギリスの「タイムズ」は、 麻生氏のことを「不快な失言癖のある派手な国粋主義者」と評 し、アメリカの「ニューヨークタイムス」は、オバマ氏がマケ イン氏の政策を評して言った「口紅つけても豚は豚」と言った フレーズを借りて、麻生氏の言動を批判的に紹介する始末だ。 これではいくらブッシュ大統領にお世辞を言ってもらっても、 麻生氏の国際的評価は「決まり」だろう。 小泉、安倍、福田、麻生とこの間目まぐるしく交代した首班 指名を振り返ってみると、政策的には利益誘導政治から新自由 主義へ、そしてふたたび国粋主義へと大きく揺れたが、それを 担う人物像はいっこうに変わらなかったのが特徴だ。小泉氏の 言動がマスメディアによって「脱自民党」的なイメージで描か れ、多くの国民が「純ちゃん!」と叫んだことは記憶に新しい が、結局、彼の体質も「自民党世襲議員」の域を出るものでは なかったのである。 日本国民の不幸は、このような小泉氏と麻生氏に代表される 自民党政治の軛(くびき)からいまだ抜けられないことだ。自 民党の利益誘導政治に愛想を尽かして小泉構造改革に期待をか けたが見事に裏切られる。それでいて、今度は復古国粋主義の 麻生氏に期待するというわけだ。テレビの街頭インタビューを みていても、辛口の発言者は外してあるのだろうが、その反応 の甘さは見ていても辛い。これでは政治変革などとても望める 状況ではなさそうだ。 しかし、遅々としているが変化の兆しもあることはある。今 朝の各紙における最初の麻生内閣支持率の結果は興味深いもの で、朝日は支持48%、不支持36%、毎日は支持45%、不 支持26%、読売は支持49.5%、不支持33%という数字が出 ている。御祝儀相場にしては随分低い支持率だといわなければ ならない。この間の歴代内閣の最初の支持率は、小泉内閣70 %台、安倍内閣60%台、福田内閣50%台だったのに対して、 麻生内閣は40%台だからやはり確実に低下してきているので ある。国民の眼もだんだん厳しくはなってきているのだろう。 それにしても麻生内閣による国会の解散時期が支持率の動向 によって決められようとしていることは、政策で勝負するとい う政党政治の基本からも大きく逸脱している。政策を世に問う ことで総選挙に打って出るのではなく、その時々の内閣支持率 で判断するというのは、まさに「風任せ」、「風頼み」の政治 手法以外の何物でもないからだ。今朝の最初の支持率を見て麻 生首相がどのように判断するかわからないが、結果的には補正 予算の審議もしないで即解散に踏み切ることが出来なくなった ことは確実だ。このまま「景気対策」の実績もないうちに解散 すれば、支持率40%台は、直ちに「不時着ライン」まで急降 下することは目に見えているからである。 加えて昨夜の小泉氏の引退表明と次男への議席世襲発言が、 麻生内閣への波及はともかく自民党支持率に否定的な影響を与 えることは避け難いだろう。今回の支持率調査は内閣支持率と 政党支持率の両方を調査しており、内閣支持率はそれほど高く ないものの、自民党支持率は30%台を維持して民主党を上回っ ているので、選対関係者は一様に安堵していると伝えられてい た。そこに降って湧いたのが小泉氏の引退表明である。 この「サプライズ引退劇」は、小泉氏の人気がまだ落ちてい ないときには「潔い」とか「カッコいい」とかの称賛を浴びた であろうが、小泉神話が完全に崩壊した現時点においては、 「無責任な議席の投げ出し」としか映らないだろう。安倍、福 田内閣の崩壊と政権投げ出しに引き続く「元首相の議席投げ出 し」であり、かつ「議席の私物化」、「議員の世襲化」の象徴 として国民の鋭い批判を受けることは目に見えている。そして それが今度は一転して自民党の支持率低下に連動していくだろ う。(続く) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 本メールマガジンは、HP「広原盛明の市民フォーラム」にて 掲載された「つれづれ日記」をまとめて、 週1回配信しております。 発行:広原盛明 メールアドレス:hirohara@skyblue.ocn.co.jp URL:http://www.hirohara.com/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


