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2008/10/05

広原盛明のつれづれ日記

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2008/10/5 広原盛明のつれづれ日記 vol.124  
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http://www.hirohara.com/ 



◆目次◆

つれづれ日記

・9月12日:「あとは野となれ山となれ!」
              (福田辞任解散劇、その1)

・9月16日:「あとは野となれ山となれ!」
       (福田辞任解散劇、その2)


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9月12日:「あとは野となれ山となれ!」
            (福田辞任解散劇、その1)

 長い間の夏休みで「つれづれ日記」も一緒に夏休みをした。
読者のみなさまには、「ともづれ日記」に名前を変えろとお叱
りを受けるかもしれない。言い訳をすると、今年の夏休みは、
インドネシアの古都ジョグジャカルタでの震災復興ワークショッ
プ、北海道夕張での地域福祉研究交流集会、そして長野戸狩高
原でのゼミ合宿なとハード・スケジュールが相次ぎ、その準備
や後始末に追われて日記を書く余裕がなかったからだ。

 しかしその間に、日本の政局は激動した。こともあろうに
(果たせるかな)福田首相が9月1日に記者会見を開き、突然
辞意を表明したのである。この日は夕張での調査日程を終えて
函館の友人宅を訪問していたときだったが、そこで福田辞任の
第一報を聞かされ、ホテルに飛んで帰って夜の9時半からの記
者会見のテレビ実況にかじりついたというわけだ。

  それにしても、この人物に見る「首相の座」の軽さはどうだ
ろう。長野からのゼミ合宿の帰途、たまたま買った週刊朝日の
グラビアには、さっそうと早足で歩く福田首相の写真の見出し
に、「あとは野となれ山となれ、さよならだけが人生だ」とあっ
た。解説には、「辞任会見の翌日、自民党本部に到着する福田
康夫首相。すべてはもう“他人事”(9月2日)」と書かれて
いた。けだし名言だ。

 安倍前首相のときもそうだったが、自民党の直面する政策矛
盾の深刻さと世襲議員のこの脆さはどうだろう。事態を目の当
たりにして出るのは嘆息ばかり、国民の誰しもがそう感じたこ
とだろう。しかもこれほどの醜態を世界中にさらしながら、彼
が「私は自分のことを客観的に見ることのできる人間だ」と大
見得を切ったのには心底驚いた。せめても「敵ながらあっぱ
れ!」といった人物に一度でもいいからめぐり合いたいと心か
ら思ったものだ。

 それにしても、9月は大事件が起こる確率が高い。7年前の
9月11日は、ハイジャックされたジエット旅客機2機が世界
貿易センタービルに突っ込み、ブッシュ大統領が「テロとの戦
い」を掲げてアフガン戦争とイラク戦争にのめり込む切っ掛け
になった日だ。(昨年はニューヨークの現場、「グラウンド・
ゼロ」で追悼式を見た)

 また国内的にみると、3年前の9月11日は、小泉元首相が
「郵政選挙」を仕組んで自公両党で衆議院の3分の2を超える
議席数をかすめ取った歴史的な日だ。この日を契機にして、日
本の政治手法は「劇場政治」へと一挙に転換した。まともな政
策論争ができないまでの自公政治の矛盾の深まりのなかで、選
択されたのがテレビをフルに活用する「劇場政治」だったので
ある。

 それだけではない。1年前の9月12日は、安倍前首相が就
任1年たらずで突然辞意を表明し、政権を投げ出した日なのだ。
しかも国会の代表演説を目前にしての辞任表明だった。この世
襲議員も福田首相に負けず劣らず幼稚で無責任そのものの人物
だ。体調に問題があったというが、本当の原因は「民主党の小
沢代表と話をできなかった」からだという。

 「話をする」とはどういう意味か。小泉構造改革でボロボロ
になった国民生活を建て直そうとすることなく、政策的には同
根の民主党と政策提携をして、「改革路線」を続けるというこ
とだ。それが出来なくなったので、「辞める」ことになったと
いうのが辞任の理由らしい。しかしこれでは与党も野党も存在
しない「翼賛政治」でなければ、首相を続けられないことにな
る。議会民主主義も議会政治もあったものではない。

 今回の福田辞任解散劇も安倍辞任劇とまったく同じ構図だか
ら恐れ入る。小沢代表との大連立構想が御破算になった瞬間か
ら、福田首相の政策選択肢はすべて消えてしまったのであろう。
彼の小さな脳裏には、小泉構造改革の路線を変えようとか、変
えられるとかいった発想はまるきりない。いわゆる「ねじれ国
会」を乗り切るためには、彼には「政策変更」というカードは
ないのである。「手持ちのカード」は、小沢代表と話を着ける
ことだけだ。それが御破算になったので、「客観的に判断」し
て辞任するというのである。

 ことほどさように政策の手詰まり状態はなぜ生じたのであろ
うか。その背景には、政権与党である自民党のこれまでには見
られないほどの徹底した財界への屈伏と従属がある。少なくと
も「国民政党」と名乗って政権を維持してきた頃の自民党は、
「バラマキ」といわれようと何といわれようと、地元の選挙地
盤を維持するためには何がしかの予算を回してきたのである。
それが小泉構造改革によって「血も涙もない」までにぶった切
られることになった。

 本来なら、ここで「保守政党」である自民党は地方を基盤に
して頑張らなくてはならなかった。それが財界と提携したマス
メディアに「抵抗勢力」として徹底総攻撃されるなかで、脆く
も総崩れとなった。小泉元首相によって「刺客」として差し向
けられた新自由主義者の「小泉チルドレン」に対して、地方を
選挙地盤にしながら東京育ちの世襲議員のお坊ちゃん(お嬢ちゃ
ん)たちは、もはや「地方の痛み」を自分の政治信条として戦
うことができなかったのである。(次回からは、福田辞任解散
劇と夏休み中の現地報告を並行して連載します)


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08年9月16日:「あとは野となれ山となれ!」
         (福田辞任解散劇、その2)

 福田辞任解散劇は、「客観的に自分を見ることのできる」福
田首相自身が描いた稚拙なシナリオだった。彼が自民党集会の
席上で「ワクワクするような総裁選挙をやってほしい」といっ
たように、自民党の総裁選挙を民主党の代表選出の日程にぶっ
つけ、自公政権の行き詰まりや無責任な政権投げ出しを「小泉
型劇場政治」の手法で乗り切ろうとしていたことはまず間違い
ない。

 そしてその後の政局の展開は、一時は「福田シナリオ」の通
り進行しているかに見えた。すでに「出来レース」で本命は決
まっているはずなのに、NHKはもとより民放テレビ各社も挙っ
て「自民党総裁選挙特集」を組み、売名目的の泡沫候補でさえ
チヤホヤと取り上げる始末。とにかく国民を目眩ませるための
「お祭騒ぎ」いや「乱痴気騒ぎ」がはじまったのである。

お祭騒ぎにはそれ相応の踊り手が必要だ。それも外見で人目を
引くような踊り手が効果的だ。そこで「マダム回転寿司」とい
われる紅一点の女性候補、灰色の原子力潜水艦の「鮫(シャー
ク)」のような不気味な雰囲気を漂わせる元防衛大臣、「一点
の私心もない!」と大声を張り上げるだけで政策をまったく語
らない若手候補などの「脇役」が次から次へと起用され、遂に
は小泉元首相までが踊り手のひとりとして登場する有様である。

だが「刺客騒ぎ」に明け暮れた郵政選挙のときの総裁選挙とは
違って、今回の総裁選挙はいっこうに盛り上がらない。これで
は総選挙の前哨戦として華々しく打ち上げた総裁選挙の意味が
なくなってしまう。自民党員でもない国民を前にした全国各地
での街頭演説でも、前回は「純ちゃん」を一目でもみたいと思
う興味本位の人たちが大勢群がったが、今回は自民党関係者の
動員ばかりで派手な声援ひとつ飛ばない。第一、いつもは動員
の主力になる公明党や創価学会関係者が今回はそっぽ向いてい
るのである。
 
 しかし自民党の総裁選挙が盛り上がらない本当の原因は、候
補者の顔ぶれやマスメディア対策の不足にあるのではない。そ
れは総裁選挙と相前後してきた輸入汚染米の底知れぬ拡がりや、
昨夜から突如浮上したアメリカのリーマン証券の経営破綻など、
小泉改革路線の破綻が否応なく国民の目の前に明らかになって
きているからだ。保育園の給食や病院・介護施設の給食に用い
られたもち米からは、基準値の数倍にもあたる有害農薬が検出
されたというし、国民的人気のある芋焼酎の米麹にも使われて
いたというのだから、大人にとっても子どもにとっても汚染米
事件はもはや日々の最大の関心事になっているのである。

 汚染米が現在自由に流通しているのは、小泉時代に食糧法が
改訂されて規制緩和され、米の流通や販売を扱う業者が登録制
から届け出制(一定量以下なら無届け制)に変わったことが基
本的な原因だ。それ以降、農水省の食料事務所は事実上「どん
な業者」にでも汚染米を叩き売りするようになった。まともな
国産米に比べて破格の低価格で手に入る汚染米は、これら悪徳
業者にとっては「打ち出の小槌」になったのである。そして少
しでも原材料の経費を節約したい施設経営者や食品メーカーが、
これら「食用米」に飛びついたのはいうまでもない。

 汚染米事件がよりクローズアップされているのはそれだけで
はない。何よりもその立役者が、「食の安全行政は消費者がや
かましいからやる」、「汚染米については人体に影響しない低
濃度なのでじたばた騒いでいない」などと平然と発言する太田
誠一氏が担当の農水大臣だからだ。福田辞任がなければ、事務
諸経費問題でもうとっくの昔に罷免されていたはずの太田氏が
「最後の任務」をいまだ全うしているところに、福田政権の無
責任極まりない体質が余すところなく露呈されているというべ
きだろう。

 リーマン証券の経営破綻の日本経済に与える影響はもっと深
刻だ。負債総額が64兆円に上るというから、日本の年間国家
予算の3分の2にあたる巨額の倒産である。リーマン証券とい
えば、日本ではホリエモンの会社買収資金を提供して100億円を
上回る利益を得たというが、そんな博打まがいの経営とサブプ
ライムローンを組み入れた金融商品を世界中にばらまいてきた
ツケが今頃回ってきたのである。

 アメリカの金融不安にともなってこれから(今日からも)日
本の株価が暴落し、アメリカへの輸出不振など日本の経済を支
えてきた根幹が揺らぐようになると、自民党が「小泉改革路線
を続行する」と能天気に叫んでいるだけではもはや総裁選はも
たなくなる。労働者の賃金を限界にまで切り詰め、格安の輸出
価格で世界市場を席捲してきた外需主導の経済政策が劇的に破
綻しているその時に、これを打開する政策も能力も人材も持た
ない自民党はもはや捨てられる以外に運命がないからだ。(続く)

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本メールマガジンは、HP「広原盛明の市民フォーラム」にて
掲載された「つれづれ日記」をまとめて、
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