広原盛明のつれづれ日記  RSSを登録する

広原盛明が、まちづくり、市民運動、文化・芸術について語るメールマガジン。週1回配信。

現在休刊中です    
解除

規約に同意して

2008/07/20

広原盛明のつれづれ日記

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
2008/7/20 広原盛明のつれづれ日記 vol.122  
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  
http://www.hirohara.com/ 



◆目次◆

つれづれ日記

・7月1日:北九州市の生活保護行政の過酷さと惨状(2)
           (橋下知事の人物像を解剖する、番外編)

・7月8日:大阪府議会答弁で出た橋下知事のホンネ(1)
      (橋下知事の人物像を解剖する、その6)

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
7月1日:北九州市の生活保護行政の過酷さと惨状(2)
     (橋下知事の人物像を解剖する、番外編)

 今日から7月、梅雨明けにはまだほど遠いが、今月から大阪
府議会では全国注目の的の「橋下リストラ予算案」の討議がは
じまる。そういうこともあってか、昨夜10時からはNHKで
『橋下スペッシャル』が放映されて、夜遅くまで頑張って見た。

 しかし、台本は「1100億円削減ありき」がまず大前提になって
いて、そのなかで担当部局とプロジェクトチームのせめぎ合い
を描くという極め付きの「井の中」のシナリオだ。おまけに肝
心の場面では、知事が削減案を撤回して「命の安全と障害者を
守る」ために“苦渋”の決断をするという「美談」までが散り
ばめられている。

 NHK大阪放送局と大阪府庁はお隣同士で「ご近所の助け合い」
のつもりかもしれないが(建物が隣り合わせ)、これでは二重
三重の意味で「橋下支援番組」としかいいようがない。「なぜ
1100億円削減なのか」という予算編成の大前提がまず真っ先に
問われなければならないにもかかわらず、そこは素通りで「と
にかく借金を返す」ことが最優先され、府民の生命と生活を守
るための地方自治体としての大阪府の使命や役割、またそれに
即した財政運営の妥当性などがまったく問われないままに番組
が進められているのである。

 これではまるで1100億円削減という「リストラ行革の檻」が
公衆の面前に設けられ、その中で福祉・医療・教育・賃金など
の「弱いもの同士」が食い合いをするといった「残酷ショー」
ではないか。さしずめ知事は「檻の外」から「もっとやれ!」
とけしかける猛獣使いか道化師の役割だ。それが「透明性が高
い」と評価されている橋下流の予算編成作業なのであり、その
「実況中継」が今回のNHK番組だというわけだ。府議会の審議が
はじまれば、これらの点はいずれ大問題として取り上げられる
ことになるであろうが、そのときに橋下予算の本質を改めて論
じるとして、前回に引き続いて北九州市生活保護行政の報告に
移ろう。

 北九州市立大学で開催された今回の日本公共政策学会研究大
会では、1日目午後の「都市の貧困化と限界コミュニティ」に加
えて、2日目午前にも「現代日本の貧困・不平等について考え
る」と題する分科会が設けられた。しかしこのように日本の厳
しい現実と真正面から向き合う分科会が設けられたのは、公共
政策学会ではむしろ異例のことであり、いつもこのような分科
会テーマが掲げられているわけではない。公共政策学会そのも
のは、政府の構造改革政策を推進してきた名だたる新自由主義
イデオローグ(ネオコン学者)たちによってリードされている
学会であり、むしろ今回の分科会は異例の部類に入るのである。

 これらは、研究大会の開催校実行委員長の楢原教授の特段の
尽力によるものであって、北九州市立大学が開催校であればこ
その話である。しかし2つの分科会は、やはり「北九州市でなけ
れば聞けない」報告者と報告内容にふさわしいものであった。
2日目の分科会の最初の報告は、藤藪貴治氏の「生活保護『ヤ
ミの北九州市方式』の実態から、生活保護行政の在り方を考え
る」というものである。

 藤藪氏はまだ30歳代後半の若手研究者だ。ついこの間まで北
九州市役所の職員であり、職務は社会福祉担当のケースワーカ
ーだった。しかし過酷な市行政と自らの良心の狭間の中で長い
間苦しみ続け、その悩みを吹っ切って市役所を辞め、大学院に
進学して研究の道を志すことになった有為の人材だ。その最初
の業績が、京都の尾藤廣喜弁護士との共著、『国のモデルとし
ての棄民政策、生活保護「ヤミの北九州方式」を糺す』、あけ
び書房、2007年12月)だったのである。

 この日の報告もその要旨にもとづくものだった。しかし自ら
の体験と重ね合わせて赤裸々に語る市の実情は、聴く人をして
すべて慄然たる気持ちの渦に巻き込まずにはおかないものだっ
た。たとえば、生活保護申請の窓口にはすべて管理職候補と目
される男性事務職員を充て(女性は1人もいない)、申請に来
た人たちを威圧するような姿勢と態度で迎えるのだという。パ
ワーポイントの写真でもその一端が紹介されていたが、数人の
男性が一斉に立ち上がって申請者を見下ろす雰囲気は、まるで
どこかの「取り調べ現場」を想起させるに十分なものだった。

 昨年末、市は世論の批判を浴びてやっと設けた「生活保護行
政を検証する第三者委員会」の最終報告を受けた。だが、生活
保護現場に必ずしも通暁していない委員の検証作業によってさ
えも、(1)申請窓口であれこれと理由を付けて申請書を渡さない
「水際作戦」、(2)いったん受給しても自立するよう求め、生活
保護の辞退をしっこく迫る「辞退作戦」、(3)相談者数の2割以
下に申請を抑える「数値目標」など、北九州市独自の「ヤミ方
式」の存在が指摘されている。また保護受給を受けていても、
この半年間で孤独死が24人発生していた事実も判明している。

 北九州市がこのような「ヤミ方式」を長期間にわたって実施
してきたのは、国の半ば公然としたお墨付きがあったからだ。
31年まえから継続的に厚生省の天下り役人を迎え、その指揮
のもとに「ヤミ方式」を確立し、この北九州市方式が全国自治
体の生活保護行政の研修マニュアルとして推奨されるなど、
「厚生労働省公認」のお墨付きが与えられていたからである。

 この構図は、いま現在、橋下大阪府知事が国や財界の応援を
「追い風」にして府予算に大鉈(なた)を振るっている状況と
ソックリではないか。日本の4大工業地帯の一つである北九州
市は、八幡製鉄(新日本製鐵)などの肝入りで高度成長時代
(1963年)に門司・小倉・若松・八幡・戸畑の5市が合併して
政令指定都市となったが、しかしその後の鉄鋼、石炭、造船な
ど重厚長大産業の不振から停滞を極め、市民所得水準の低下と
生活保護世帯の急増に見舞われることになった。この事態に臨
んで、保守系市長による猛烈な労働組合潰しと生活保護行政切
り捨ての荒療治がはじまったのである。(続く)


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

08年7月8日:大阪府議会答弁で出た橋下知事のホンネ(1)
               (橋下知事の人物像を解剖する、その6)

 7月1日から始まった大阪府臨時議会は、各会派の代表質問
が7日で終わり、今日8日から一般質問に移った。代表質問に
対する橋下知事の答弁はこれまでの内容とあまり変わらないが、
それでも橋下氏のホンネ(意図と狙い)が次第に浮かび上がっ
てきたことは、事態が重大な局面にさしかかっていることを示
唆する。今回の日記は、北九州市が社会福祉行政をコミュニテ
ィ行政に肩代わりさせて、より一層の合理化を進めようとして
いる実態について書こうと思っていたが、とりあえず府議会の
やりとりに絞って論評したい。

 まず各派の代表質問の第1印象だが、最大与党の自民党は、
「結論」として賛成なのか反対なのか態度を明確にしないので
質問が総花的となり、いったい何を質したいのか極めてわかり
にくい。それは、知事から「ぎりぎりの判断をした。ご理解を
たまわりたい」といわれれば、「ハイ、わかりました」といっ
た程度で引き下がるレベルのものでしかない。どうやら真意は、
大リストラ予算案の本体には手を触れないで、周辺の「痛くも
痒くもない部分の一部修正」だけで「格好をつける」つもりな
のだろう。

 加えて民主党の代表質問は、「野党」のはずなのに恐ろしく
迫力がない。東京都議会の民主党と同じく、まるで「第2与党」
といわれても何ら違和感を感じさせないような腰の引けた追及
ぶりだ。なにしろこれまで長年にわたって自民党と行動をとも
にしてきたのだから、いまさら「別行動を取れ」といわれても
出来るはずがないのだろう。しかしそれにしても、今回は民主
党を支持している大阪府職員の自治労系組合員の賃金が大幅に
カットされようとしているのだから、もう少し頑張らないと次
の選挙では議席が危なくなるのではないか。

 注目されるのは、与党の有力会派である公明党の出方だろう。
大阪の公明党は「全国最強の宗教軍団」といわれるだけに、今
回の予算審議では、自民党よりもむしろ公明党府議団の動向が
全体の鍵を握る「台風の目」になりそうな気がする。なにしろ
「与党の見返り」として、これまではいろんな財政上の優遇措
置を利用して支持者の票を集めてきたのだが、今回の「大阪維
新プログラム」は、もはや与野党レベルの思惑や利益誘導を超
えた「大リストラ予算案」でしかないので、「与党であること
のメリット」がまったく期待できない。橋下予算案にウカウカ
賛成すると、「泥をかぶる」どころか「返り血を浴びる」危険
性すらあるからだ。

 だから、今回の公明党の代表質問は、自民・民主の質問趣旨
にくらべるとはるかにまともでポイントを突いている。すでに
今年2月の定例府議会でも、「知事の財政再建の「理念」、
「手法」は理解できるが、財政再建のスピードが拙速に過ぎ、
また、かつてないボリュームは、府民生活や市町村行政に大き
な影響がでるのではないか」、「財政再建ができるのなら府民
生活が犠牲になっても良いのか。財政再建そのものが目標では
なく、府民福祉の維持・向上を図るという府の責務を将来にわ
たり安定的に果たすための手段である」といったまともな論戦
を展開していた。今回の臨時府議会でも「府財政が「民間企業
でいえば破産状態」と言うのは正確ではない」、「仮定に仮定
を重ねた府の収支見通しにどれほどの信ぴょう性があるのか」、
「粗い試算でも府民に将来の見通しを数字で示すことが重要だ」
などなど、予算編成の大元に迫る鋭い質問をしている。

 共産党の質問は、橋下知事の予算編成の「ホンネ」を引き出
した点に最大の功績がある。今回の財政再建予算の根底にある
のは、「大型開発や同和行政を野放しにしてきた太田前知事時
代の方針をそのまま引き継ぐものではないのか」との共産党の
質問に対して、橋下知事は「住民サービスは市町村、府は産業
政策に特化する。これからの関西を立ち行かせていくためには、
関西圏で道路など基盤整備、インフラ整備は絶対に必要。府の
財政状況のなかで都市整備と住民サービスに充てるお金のバラ
ンスを考えて結論を出した」とホンネの答弁をしたのである。

 「大阪維新プログラム」のなかには、「大阪府の発展的解消
が将来目標であり、府県を超える広域行政組織を実現して「関
西州」へのステップを確かなものにする」ことが明記されてい
る。しかし府議会において、政府閣僚でも国会議員でもない1
地方自治体の首長が、国や財界の推進する道州制実現のために、
府民の生活サービスや住民サービスを犠牲にして大型開発など
産業基盤整備に対して税金を重点的に投入することを公言した
ことは極めて異常であり、かつ意味するものは重大だ。「子ど
もが笑う大阪」の実現を公約にして出馬した橋下氏が、その舌
の根も乾かないうちに「関西州の実現」を最大目標にかかげて、
住民サービスに大鉈を振るうことなど、これまで府民のだれ一
人想像だにしていなかったからである。

 このようなヒットラーまがいの「橋下トリック」に対しては、
従来の議会戦術や住民運動・市民運動を超えた対応が必要だろ
う。まずなによりも即効性のある「大きな討論の渦」を巻き起
こすことが必要だ。身近な近隣での連続小集会も開かなければ
ならないが、同時にインターネットの「討論広場」を開設して、
あらゆる人たちの意見を「大衆の知恵」すなわち「集合知」と
して結集することが不可欠だと思われるのである。

 2004年にアメリカで出版された“THE WISDOM OF THE 
CROWDS”(邦訳、『みんなの意見は案外正しい』、角川書店)と
いう本がある。著者は、雑誌『ニューヨーカー』の人気ビジネ
スコラムニストのジェームズ・スロウィッキーで、発売と同時
に全米のベストセラーになった。

 著者からの内容紹介は、「人間は集団になると烏合の衆と化
し、愚かな行動に走ると言われてきたが、それは違う。一握り
の天才や、専門家たちが下す判断よりも、普通の人の普通の集
団の判断の方が実は賢いのだ。多様な人間が、独立して判断を
下す重要性を説き、インターネット世界を中心に広まる「たっ
た一人のユーザーの判断の積み重ねが価値を生む」という新し
いコミュニケーションのあり方を提言する」というものだ。

 スロウィッキーは、多数派の意見は常に正しいとか、人々は
案外真実をつかんでいるといった主張をしているわけではない。
著者の主張は、ある事柄に関する推定の正確さについては、一
握りのエリートやエキスパートによる推定値よりも、専門的知
識もなくそれほど優秀でもない大衆それぞれの「平均値」の方
がより正確だというものだ。

 彼は集団が賢くなる条件として、(1)ありとあらゆる観点
からの意見が存在しているという多様性、(2)他者からの影
響を受けない独立性、(3)個々人がそれぞれの専門的知識に
基づいて判断を下す分散性、(4)多様な意見を集約する仕組
みの存在、の4つを挙げている。この4つの要件を満たした集
団が正確な判断が下しやすいのは、多様で自立した個人から構
成される集団は、その集団の回答を平均すると一人ひとりの個
人が回答を出す過程で犯した間違いが相殺されるからである。

 このような「みんなの意見」つまり「集団の知恵」(集合知)
を引き出すことは、橋下知事のようなトリッキーな権力者が牛
耳る大衆操作システムを打ち破る何よりの力となる。マスメデ
ィアをふんだんに利用して府民を烏合の衆のように扱い、自ら
の権力欲をほしいままにする独裁者をこのままのさばらせない
ためにも、早急に「大衆の知恵」を結びつける「討論の広場」
が必要だ。(続く)


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

本メールマガジンは、HP「広原盛明の市民フォーラム」にて
掲載された「つれづれ日記」をまとめて、
週1回配信しております。

発行:広原盛明
メールアドレス:hirohara@skyblue.ocn.co.jp
URL:http://www.hirohara.com/

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
現在休刊中です
解除

規約に同意して

最近の記事

上へ戻る