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2008/06/22

広原盛明のつれづれ日記

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2008/6/22 広原盛明のつれづれ日記 vol.120  
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http://www.hirohara.com/ 



◆目次◆

つれづれ日記

・5月30日:大阪府議会の対応がカギ
      (橋下知事の人物像を解剖する、その3)


・08年6月6日:大阪府民に“大出血”を強いる「止血再建案」
        (橋下知事の人物像を解剖する、その4)


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5月30日:大阪府議会の対応がカギ
      (橋下知事の人物像を解剖する、その3)

 現在、大阪府をまるで一人で切りまわして(振り回して)いる
かのような橋下知事にとって、「怖いものがないのか」と大阪府
関係者に聞いたら、「それはマスメディアと府議会だ」という答
えが即座に返ってきた。

 いまのところ橋下氏とマスメディアとの関係は「絶好調」で、
連日連夜、橋下関連の記事やニュースが流れない日はないし、テ
レビ出演もタレント時代そのものの大活躍ぶりだ。よくこれで身
体と舌がもつなと思うほどの毎日だが、芸能事務所のスタッフが
特別秘書を務めているのだから、それはそれで手抜かりがないの
だろう。

 ただしかし、東京都石原知事の新銀行東京の経営破綻問題の例
にもあるように、一旦落ち目になると、今度は手の平を返すよう
な批判と攻撃が始まるのがマスメディアの常道だから、橋下氏と
て油断のできる相手ではない。とにもかくも、彼が「面白いうち
が花」、「絵になるうちが命」の世界なのだ。

 とすると、「当面の敵」は府議会ということになる。私などは
4月17日に行われた市長会・町村長会との「財政再建プログラ
ム試案」に関する知事との激論を目の当たりにして、橋下氏の
「眼下の敵」はてっきり府下市町村の首長かと思っていた。しか
し、言葉の上でのやりとりは結構激しかったものの、その内実は
「来年度からの財政削減はやむを得ないが、今年度だけは待って
ほしい」程度の意見だったと聞いて少なからず落胆した。

  市町村長は、日頃から知事に対しては「お願い」するばかりで、
「議論」しているところなど見たことがないと言われる。それほ
ど府の補助金や府を通しての国の補助金に雁字搦めされているか
らだ。だがこんな事態になっても、面と向かって意見を述べるだ
けの勇気と見識を持った人物があまりにも少ないのには、本当に
目を疑った。それほど首長の資質が落ちていて、「革新首長」が
輩出した時代との断絶はあまりにも大きいと感じざるを得なかっ
た。地方首長の資質の劣化は、中央政界と同様、いま現在その極
致に達しているのではないのだろうか。

 ところが驚いたことに、市長会・町村長会とのやりとりのなか
で橋下氏が落涙したシーンがテレビで繰り返し報道されると(彼
は「うまい時に涙が出た」と後で言ったという)、今度は「知事
をいじめるな」との抗議メールが市町村長の側に殺到したらしい。
しかしこの「抗議メール」とういうのは曲者だ。誰かに報酬付き
で組織されている集団が、「いざという場合」には数百通、数千
通のメールを送るぐらいのことは朝飯前だからだ。

 話をもとに戻そう。それでは府議会の方はどうか。府議会が橋
下知事にとって「最大の敵」なのは、知事提案が通るも通らない
も全ては府議会が帰趨を握っているからである。地方自治、地方
行財政は議会民主主義にもとづいているのだから、話は簡単で、
要するに駄目なものは否決してしまえばよいだけのことなのであ
る。まして橋下氏は自民党本部からの天下り候補である以上、自
民党府議団にとっては何の義理もない。もっといえば、知事の不
信任決議を可決して退陣に追い込んでしまえばよいのである。

 そんなことで4月下旬から5月中旬にかけて出された府議会各
派の「大阪府財政再建プログラム試案」(通称:PT試案)に対
する(中間)見解を読んでみた。ここではあまり紙面がないので
感想だけを記すと、まず第1は、真っ先に出された共産党府議団
の見解(4月)と最大野党会派の民主党・無所属ネット府議団の
それは(5月)、基本姿勢においても内容においてもよく似通っ
たものだということだ。

 民主党見解の冒頭の「1.将来ビジョンなく、1100億円削減のみ
を並べたPT試案は、市町村との信頼関係・府民生活のセーフティ
ネットの部分をそこなう。2.国の地方交付税削減(2004年△2兆6
千億円)や法人事業税の地方配分(府△265億円)、大都市圏の需
要と国の算定基準のギャップ(警察官で約1000人)が大阪府の財
政悪化の要因。3.国へモノ申す姿勢、増収策の真剣な検討なしに、
事務事業と人件費の一律カットは、府民の不安と混乱を招く」な
どの部分は、まるで共産党府議団の意見の丸写しともいえる中身
だ。

 一方、最大与党会派の自民党の提言の骨子は、冒頭の「福祉」
「医療」「まちの安全」「教育」等のうち、行政の基本的責務で
ある施策に関しては、事務事業の見直しから省くこと」に尽きて
いる。また「基本的な考え方」においても、「暫定予算の編成、
理念不明の経費削減、府内部の合理化や行革への取組み不足等、
「試案」の手法に多くの反論が寄せられている。特にハードラン
ディング的手法に対する反論には一定の合理性があり、知事や我
が党が目指す行財政改革を遂行するためには、一部ソフトランデ
ィング的手法の導入も考慮する必要がある」との部分は、橋下知
事の「荒っぽいやり方」に対する議員団の反感が投影されている。

 大阪では自民党に匹敵する政治勢力の公明党府議団の見解は、
この政党の是々非々的な体質を反映してか、基本的な態度は示さ
ず、主な事業について「これは是、これは非」といった個別意見
の列挙になっている。しかし見解の大勢は、健康福祉、次世代育
成、教育の充実、文化、中小企業者支援、安心安全、都市基盤整
備などの施策については、「維持すべき」あるいは「削減・廃止
は認められない」というものであり、弥生文化博物館、府立体育
館、ワッハ大阪などの府立施設についても「存続」を主張してい
る。

 こうした各党会派の見解をみてみると、6月上旬に明らかにされ
る「大阪維新プログラム」(橋下流の財政再建プログラムの名称)
などは、「一蹴される他はない」と思われるのだが、橋下知事は
この先の展望をどのように描いているのだろうか。(続く)


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08年6月6日:大阪府民に“大出血”を強いる「止血再建案」
       (橋下知事の人物像を解剖する、その4)

 6月5日、かねてからの予告通り橋下知事の「大阪維新プログ
ラム」が発表された。大阪府財政の「出血」を取りあえず止める
ための「止血再建案」だというが、実体は大阪府民に“大出血”
を強いる冷酷無比な行革リストラ財政の押しつけだ。

 とりわけ目に付くのは、私学助成金の大幅カットと府職員賃金
の1割を超える仮借ない切り下げだろう。これは「府民に痛みを
我慢してもらうためには、まずわが身を削れ」という世論を利用
したまことにあくどい手法だ。一方で子どもに多大の犠牲を強い
ておきながら、その批判の矛先を避ける手段として、「職員にも
我慢してもらう」という言い訳で、職員の人件費を削るという見
え透いた「両刀遣い」のやり方である。

 これでは、大企業への減税分を国家予算の3割にも及ぶ国債発
行で補い、アメリカへの「思いやり予算」や「防衛(軍事)予算」
の増加分を地方自治体の「財政健全化」で捻出しようとする政府
は大喜びだ。福田自公政権は、涼しい顔で「高見見物」をできる
というものである。何しろ政府には何一つ要求しないで、大阪府
民と府職員を対立させて、その「痛み分け」で財政の建て直しを
図ろうというのだから、政府にとってはこれほど「重宝でありが
たい知事」はいないのである。

 地方分権改革推進委員長の丹羽宇一郎氏(伊藤忠商事会長)氏
などは、早速手放しで橋下プログラムを評価する始末だ。「職員
給与の大幅カットなど痛みを伴う改革に全庁を挙げて取り組む姿
勢を大いに評価したい。改革案の中には府内の市町村に徹底して
権限委譲を進める方針も打ち出しており、分権委の改革方針とも
合致する。中央省庁は、自ら汗を流して改革案を作った大阪の姿
勢を積極的に評価し、支援するべきではないか」(日経、6月6
日)との談話である。

 橋下再建案に対しては日経のはしゃぎぶりが目立つ。「大阪改
革の手綱を緩めるな」との社説を筆頭にして、「橋下知事財政再
建案、収支改善1100億円堅持」、「財政危機回避へ迅速改革、
人件費などで歳出減」、「経済界、改革姿勢を評価」、「市長会
長、ぎりぎり及第、09年度以降は府と協調」、「改革の痛み、
理解求める」、「知事主導、調整省き改革案、他の自治体に影響」
、「橋下知事会見、まず出血止める、夢のような生活待つわけで
ない、変化示す」と、諸手を挙げて橋下再建案を鼓舞する記事の
オンパレードである。

 だが各紙の記事を注意深く読みくらべてみると、日経の露骨極
まる論調を除いては比較的「模様眺め」の態度が目立つ。その典
型は、毎日の紙面づくりだろう。毎日は、「大阪府再生なるか、
住民に痛みじわり」という見出しで2面ぶち抜きの解説記事を掲
載し、その上、優に2面分に相当する紙面を使って「借金先送り
信用されぬ」、「橋下改革の舞台裏、激論、知事の思惑」、「僕
は府民の代表者、メディア使いメッセージ」といった橋下氏の言
動を伝えているが、全体としていったい何を言いたいのかよくわ
からない。「真の敵に挑み議論を」という勇ましい見出しの割に
は、腰が引けている社会部長の論説がそのことを象徴しているか
のようだ。

 朝日は、「大阪府再建案発表、異論封じ橋下節貫く」、「強気
と涙、我慢訴え」と、これも最初はいったいどちらの方向を向い
ているのかわからないような見出しで始まったが、続く段落では
「与党、水面下修正はや模索」、「改革チエック、議会の出番」
として府議会による再建案の慎重な検討を求める方向に舵を切っ
た。「議会による修正が必要」との立場だ。

 また再建案の中身の紹介についても、「維新、痛み噴出」と題
して項目ごとに橋下知事の言葉を引きながら、その問題点を指摘
している。たとえば文化施設については、「知事:理屈じゃなく
て、文化とかなんとか言っている場合じゃない」という発言の後
に「児童書の散逸懸念」が続き、私学助成については、「知事:
あえて公立にはない付加価値を求めるなら、お金がかかるのは当
たり前」の後に「厳しい経営、負の連鎖」が付け加えられ、そし
て福祉・女性については「知事:障害者施策の堅持、行政最大の
責務だと思っている」に引き続いて「再構築---残る不安」といっ
た具合である。読者にはよくわかる記事の書き方だ。

 しかし、最も興味深いのは読売の論調だろう。「大阪府、歳出
665億円削減、医療・私学カット、府債185億円発行」とい
った事実報道の見出しに続いて、1面で「改革の先を示せ」とい
う社会部記者の署名入りの論説が掲載されている。この論説の他
には関連する社説も論説もないのだから、これが橋下再建案に対
する読売大阪本社としての見解だとみなしてもよい。 

 どんな主張かというと、「改革案の大部分は「削減」が占める。
「必要かどうかの検証」ではなく、「必要なものにも優先順位を
付けた結果だ」という。一刻の猶予もない府財政再建には、やむ
を得ない面もある。しかし、社会に格差が広がり、すでに「痛み」
を感じている府民も多い。知事が求める「少しずつのがまん」に
そうした府民が耐えられるかどうか懸念される。長い時間がはぐ
くんだ「文化」を守る施策に切り込んだことも気に懸かる。知事
は府庁改革として「府民ニーズの把握」を掲げた。弱者の暮らし、
文化の行く末に注意を払い、常に改革を見つめ直す柔軟な対応も
必要だろう。府民が不安に思うのは、改革の先に何があるのかと
いうことだ。知事は改革案を「再建に道が付いた段階で、大阪を
輝かせる次の手を打つ」と締めくくっている。改革案をめぐる論
戦は7月の臨時府議会で本格化する。議論を尽くし、知事はまだ
示していない次の一手の一端を語るべきだ」というものである。
歯に衣を着せない、しかも本質を突いた立派な主張である。

 これにくらべて、今回も「学識経験者」のコメントはお粗末極
まるものが多かった。その極め付きは某心理学者(女性)の「橋
下知事は、これまでの知事が先送りしてきた問題に手をつけた。
これだけ大なたを振るったら、返り血を浴びるでしょう。その覚
悟でやっていただきたい。妥協して整合性が崩れれば、政治不信
が強まる」(朝日、6月6日)という談話だろう。心理学者に財
政再建案について談話を求めることは取材の自由だが、それが
「返り血を浴びても」といった橋下知事への激励談話になると、
取材した側の意図と見識が問われることになる。それとも朝日は
こんな挑発的な談話をわざわざ掲載することによって、読者の奮
起を促すつもりだったのであろうか。


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発行:広原盛明
メールアドレス:hirohara@skyblue.ocn.co.jp
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